132 :ぽち:2012/06/21(木) 04:46:41

はい、新作投下しちゃうよーん


憂鬱西南戦争 第三話

「で、桐野どん、聞いてもよかと?」
「おう、何をじゃ」
「俺は戻ってくるまで絶対出陣してはならんというたはずじゃ。
 そいをなんでおんしら鹿児島から出とっとじゃ?」
「あー、そいは・・・・・・・なんせ10年ぶりの戦なんで
 薩摩隼人の血が沸き立つんを抑えきれんかったとでのぉ」
「納得はいかんが理解はした。
 で、俺は出兵する場合は熊本城なんぞ放っておいてひたすらまっすぐ下関向え言わん勝ったかの?」
「そん場合後ろに敵残るっちゅうんが気持ち悪くてのお 一応帰順させようと手紙は出したんじゃが」
「見せてみい」
渡された手紙を読んで、猛烈な頭痛に襲われる野村忍介。
その手紙は

自分たちはこの度政府の行いに色々納得できない事があるので一軍率いて東京まで詰問に向う
ひいては熊本城所属の鎮台兵は城門を開き武器弾薬糧食の全てを我等に明け渡し指揮下に入るべし

かいつまんで言えばそんな内容だった。 はっきり言って喧嘩売ってるだけだ。
これで本当に城門を開く奴がいると思っているのかこいつらは
・・・・・・・・本気で思ってるんだろうな
薩摩の教育は基本薩摩武士をひたすら刀のごとく磨き上げるのが基本
そして、他藩の者を貶め侮辱し低く見るように教え込み続けた。
しかも鎮台兵といえば徴兵制により集められた兵であり百姓兵が殆どといってよい。

ならば生粋の薩摩武士としてとことん馬鹿にするのが普通なのだろう・・・・・・・

「ほじゃ聞く。熊本城は名将加藤清正公が我等薩摩武士を防ぐために築いた天下の堅城。
 それを落とすのになんぞ策はあるのか あるならなぜその策を使わん」
「策?」
本当に本気で言われた言葉を理解できない、と言った風情でその場の薩軍上層部は全員小首をかしげた。
「百姓兵の立てこもる城なぞこの青竹棒(いさらぼー)でひとたたきごわす」
天幕の中を笑いが満たす。

こいつら、本気でそう思ってやがる

「では聞きごわんと 一体何時あの熊本城を一撃で砕いてくれるんか」
「そいが簡単にはいかんとじゃ あれを見てくれ」

辺見が熊本城を指し示す。
「まず城の周りに鉄で出来た茨……鉄条網いうんか? あれがきっちりはられとって簡単に近づけん。
 しかも城門のそばに鉄の塔がたっとってな」
「鉄の塔?」
「ああ、城の壁から生えるような形で出来とるあれはいわば二階にガトリング砲が置かれとる。
 高みから降り注ぐ銃弾に一方的に殺される」
「……続きを」
「そいな塔が五つも六つもあっとじゃ。
 しかも城内の大砲も数多くあって城に近づくことすら出来ん」

青竹で一叩きとかさっき言ってなかったか

「おんしのいつもの小知恵でなんとかならんかの、もう三千ほどが死んでしもうとる」

うわぁ、こいつ殺してぇ
っつーか緒戦で全六万中三千死なせたのかよ

133 :ぽち:2012/06/21(木) 04:48:27

「ちっと待っとってくれ」
急いで陣幕を離れる
そうでないと奇妙な叫び声をあげてあの阿呆どもに殴り込みをかけてしまいそうだったから

「野村さん」
振り向くと、そこには宮崎八郎どんが立っていた。
「判かっとる だから黙ってくれ」
「いいえ、言わねばなりません   薩摩軍は兵糧を殆ど用意していません」
「……おそらく鹿児島から運んで来ればいい程度に考えとっとじゃろ
 鹿児島をがら空きにしたんも西郷どんや海軍に顔が利く坂本どんが止めてくれる、と根拠も無く信じとる」

「「馬鹿ばっか」」
「まったくじゃの」
唐突に聞こえてきた言葉に驚く二人。
「「ろ、老師!」」
「ほっほっほ、なんかそろそろ忘れられかけとるような気がして出てきたぞ
 すまんな、あの阿呆ども抑える事が出来んで」
「いえ、老師に出来なかったのならまず誰にも抑える事など出来なかったでしょう」
「そう言ってもらえて少しは心の荷が下りるわい。
 しかしあの城、本気で百姓兵の寄り合いと考えておったら火傷じゃすまんぞ」
「と、仰いますと?」
「わしも年の功でな、それなりに裏にも多くの知り合いが居る。
 それなりに腕利きのそいつらを忍び込ませて調べてみたが、殆ど戻ってこん」
「…………つまり、『それなりの腕利き』を倒せる腕利きがあの城にはおそらく複数いる、ということですね」
「判ったのはあの城の城主が『谷干城』」
「一筋縄ではいかない相手ですね」
「そして城内に『隠密御庭番衆』頭領四乃森蒼紫を飼っておるという事
 つまりは潜入、暗殺はまず不可能といってよいじゃろ」
「………勝ちの目をだいぶ失った、というか自分から投げ捨てたんですね、我々は」
「しかも工廠から奪った一万二千発の銃弾、、あれがまた拙かったのぉ」
「そいはわかりもす 計六万ほどの軍勢が一万ちょっと銃弾を手に入れたところで全員に行き渡りもはん
 よって幹部とか生粋の薩摩モンのみに配られることになっとでしょう
 今の俺らは薩摩武士だけでなかとです。
 佐賀や秋月からのモンは俺らに拭い難い不信を抱いたンは容易に想像できもす」
「で、勝つ方法はあるかの」
「熊本城は放って置き、接近しつつある征伐軍を打ち破って篭城兵の心を挫く、これしかないと」

その場合鹿児島に戻るのが最善なんだがあの阿呆どもは今更引きはしないだろうし



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最終更新:2012年07月01日 17:15