84 :KY:2012/07/24(火) 22:27:46
銀河憂鬱伝説IFネタ 『日銀同盟閑話 ハッブルの絶望』

宇宙暦791(帝国暦482)年

自由惑星同盟最高評議会議長 ジョン・ハッブル
彼は憂鬱というよりも絶望していた。
現在、市民やマスコミは彼の失政を大声で罵っていた。



事の始まりは、日本の夢幻会の存在を知った世論が暴走して、これに日本の技術と経済力と利権に目がくらんだ財界、軍部、政治家が便乗した事だった。
ハッブルはこれを危険視して反対した。

大体、彼らの考えは余りにも楽観的すぎる。
そもそも日本に簡単に勝てるとは限らない。
日本と接触してまだ時間が経っておらず情報が十分ではなかった。
つまり現状では日本の能力はよく分からない。
ただ圧倒的な国力と技術力はあることが、ハッブルを警戒させていた。
戦争は国力が物をいうし、技術力が高いということは兵器の質も同盟を圧倒している可能性が高い。

しかし、そう説得してもまるで聞き耳を持たず、世論の圧倒的な支持を武器にして強硬論を主張する彼らに、ハッブルは押し負けてしまった。
結果として、日本に恥知らずな要求(同盟市民からみれば当然の要求)を突き付けることになった。

今にして思えば、この時に辞職して反対を訴えるべきだった。
たとえ世論から叩かれても、少しでも国民に訴えることは意味があったはずなのだ。
だがそれも意味もない仮定でしかないだろう。

その後の転落は語るまでもない。
我々の要求(日本は議長である私ではなく、対日外交を担当しており、実際に要求を突き付けたのがトリューニヒト議員だった事からトリューニヒト・ノートと呼ぶことにした)にハル・ノート以上の屈辱的要求と朝野を問わず激怒して、要求を拒絶すると共に、国交断絶と日本国内にいる同盟人の国外追放を行った。(※1)

これに過剰に反応した世論によって対日侵攻が行われたが、日本など一蹴してくれるなどと態度だけは大きいかったロボスは化け物じみた要塞陣地によってボロ負けした。
そして最悪なことに、日本と帝国が手を組んでしまった為に、同盟は二正面作戦を余儀なくされた。
ここである程度まともな頭を持っていた者は顔を青ざめたが、最早手遅れであった。

日本が一年と立たずに40個艦隊60万隻というキチガイじみた大艦隊で侵攻して、同時に帝国軍も10個艦隊で侵攻してきた時、ようやく馬鹿共は自分たちのしでかした事の愚かさを理解した。
その結果、同盟軍主力艦隊が日本軍に一方的に敗北し、別働隊も帝国軍によって壊滅した。
もはや同盟のどこを見ても戦力は存在せず、後は蹂躙されるだけとなった。

85 :KY:2012/07/24(火) 22:28:44
「自分たちが強硬に支持して私にやらせた癖に、今になって私を非難するか。勝手なものだな」

ハッブルは確かに失政を犯した。
しかし、そうさせたのは紛れもない同盟市民なのだ。
同盟市民は、自分たちが支持した癖に、失政だと分かると手の平を返して政府を非難した。
彼らから見れば大真面目なのだろうが、端から見れば無責任以外の何物でもない。
それは第二次世界大戦時のメキシコ人がやったことと同じだった。(※2)

「これが民主共和制だというのか! これが民主主義の末路だというのか!」

ハッブルはこれまで民主共和制を人一倍愛していたし、愛国心だって持っていた。
しかし、今の同盟の姿に彼は絶望した。
今のハッブルはルドルフが何故あれ程までに民主共和制を弾圧したのか理解できた。
彼は民主共和制に絶望したのだ。
そして地球時代から議会政治を運営していた内郭連合が何故非民主的な賢人機関をもっていたか痛感した。
彼らは民主主義の暴走を恐れたのだ。

既に帝国軍がハイネセンに迫ってきている。
帝国に処刑させる事が分かりきっている政治家達は日本に亡命しようと躍起になっているが、多分無理だろう。(※3)
ひたすら職務を遂行しているのは私とトリューニヒトぐらいなものだろう。

しかし、思えばトリューニヒトにも悪いことをしてしまった。
彼も要求に反対していたにも関わらず、彼に日本に要求を突き付ける仕事をさせた所為で、あの要求がトリューニヒト・ノートと呼ばれることになり、彼は日本人の怒りを買ってしまっている。
議長である自分は当然だが、彼も亡命など受け入れて貰えないだろう。
だからこそ、せめて最後まで職務を遂行するしかない。
帝国軍に捕らえられるまで……。



※1:夢幻会にとって、彼はハッブルって誰?というほど知名度が低く、同盟の議長といったらトリューニヒトでしょう。という理由からトリューニヒト・ノートと呼ぶことにした。
要するにトリューニヒトが原作で目立っていたからだ。

※2:同盟市民の余りの無責任さに、嶋田はこの時代に村中がいたら何といっただろうなと発言している。

※3:実際日本は同盟要人達の亡命を拒絶している。

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最終更新:2013年01月07日 22:06