238 :taka:2013/02/01(金) 11:35:21

オーシア軍の大攻勢を退け、南ベルカの解放を半ばまで達成したその日。
機体のオーバーホールの為休暇予定だった2人の傭兵は、ベルカ空軍南方方面総司令部に居た。
久し振りに羽根を伸ばせると休暇を楽しみにしてたピクシーが愚痴をこぼし、普段は寡黙なサイファーがやんわりとそれを窘めていた。
司令部だけあってカッチリと皺のない制服を着込んだスタッフが行き交う中、どことなく着崩した2人は悪い意味で目だった。
しかも、明らかにベルカ系ではない2人、しかも傭兵ときていたのでとても歓迎的な雰囲気ではなかった。
とは言え、ベルカ人が気位の高い存在である事は充分承知していたし、その程度歴戦のパイロットである2人にとってはどうでも良いことだ。
途中で出会ったロト隊の隊長に嫌そうな顔をされたりしつつ、2人は司令官の部屋の前まで来ていた……来ていたのだが。

「あれ、どうしたんだろな?」

さっきから何度もノックしているのに、全く反応が無いのだ。
わざわざ呼び出されて予定時刻キッチリにやって来たのに、本人がドタキャンとか有り得るのか?
少しムカッと来たピクシーがドアノブを掴む。こうなったら中に居るか確認し、居なかったらそのまま帰ってやると思いながら。
遅まきながらサイファーが止めようとしたものの、僅差でドアが開き―――。

「戦う理由は見つかったか相棒!」
「戦いに慈悲はない 生きる者と死ぬ者がいる それが全てだ!」

片手に新鋭機らしき模型と、もう片手に羽根を片方赤く塗った模型。

「奮い立つか? ならば俺を落してみせろ !」
「不死身のエースってのは 戦場に長く居た奴の過信だ、お前の事だよ相棒!!」

片足を接客用のデスクに載せ、その高級将官の制服を着た男は。

「撃てよ臆病者、C'moooon! C'moooon! C'moooon!!!!!!!!!」

模型を手に海老ぞりになって叫んでいた。

「くぅぅぅぅぅぅ、堪らない、エース同士、しかもかつての相棒だぜよう相棒まだ生きているかぁそれが問題だぁ!!
 つーか、空戦しながらの戦争哲学とか互いの信条叫ぶのってスパロボ的もしくはガンダム的だよな!!
 ピクシー最高、マジ最高、サイファーも良いけどアイツ無口だし、ラストでよう相棒って笑顔で語るピクシーマジ最高!!
 エスコン最高!! イエッフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!…………あ」

悦に浸っていた男、この基地の司令官であり空軍大将であり近い将来参謀長のポストが確実とされている男と目があった。


ピクシーは静かにドアを閉め、飛びっきりの笑顔でサイファーに告げた。

「相棒、酒飲み行こうぜ酒、ベルンハルトに教えて貰った美味いベルカ料理を出してくれる店知ってるんだ」


二分後、本当に出口に向かった2人を正気に戻ったらしい基地司令が追いかけてきて必死に引き留め。
2人の更なる昇給と将校待遇、そしてベルカが開発した新鋭機への乗り換えの提案があったそうだが―――。
その後、2人のエースがあの部屋で起きていた狂乱を誰かに話す事は生涯無かったそうだ。

やおい

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最終更新:2013年02月10日 18:36