673 :earth:2013/01/28(月) 23:25:49
大陸日本ネタ
「よりにもよって、再転生した先で真珠湾攻撃をすることになるとは……」
日本帝国海軍中将・南雲忠一は思わずぼやいた。
彼が居るのは西暦1941年12月7日。ハワイ諸島の北方海域に展開する正規空母8隻を中核とした大日本帝国海軍第1航空艦隊
旗艦『赤城』の艦橋であり、今この瞬間にも多数の航空機がオアフ島を空爆すべく発艦しつつあった。
「……一度目よりはマシと思いましょう」
そう小声で慰めたのは同じく転生してきた草鹿少将だった。
「しかし『質』は低下しているぞ」
南雲の視線の先には1度目の転生先では九六式戦闘機と呼ばれた戦闘機があった。尤もこの世界ではこの機体こそ『零戦』だった。
「少なくとも当面は中国と全面戦争する必要がないだけマシです」
「……内地では東条さんも嶋田さんもそう言っているだろうさ。そう、あの10倍も広くなった列島、いや大陸で」
夢幻会は再び生を受けたこの世界は、日本が史実の10倍というトンでもない広さを持った世界だった。
一部の人間はこれなら米国ともやりあえる……と息巻いたが、10倍に広がった国土、国土に応じて増えた人口の管理はかなりの
負担だった。おまけに資源が豊富にあるために列強にもやたらと干渉される始末であり難易度は高かった。
「やることが多すぎる!!」
夢幻会メンバーはそう絶叫した。
明治維新に貢献することで何とか帝国中枢に入り込んだ夢幻会だったが、色々と勝手が違ったこともあり実権の完全な掌握に梃子摺り
最終的には皇道派が引き起こした2.26事件を利用することになった。
「まさかカウンタークーデターもどきのことをする破目になるとは」
「前の世界では歴史をひっくり返し、次の世界では史実をなぞるか……歴史の神は本当に意地悪だ」
「達磨さん達が無事ですし、まだ何とかなるでしょう」
東条と嶋田、辻はそうぼやきつつも、夢幻会の同士たちと共に必死に軌道修正を行った。
674 :earth:2013/01/28(月) 23:28:01
だが歴史はそうそう簡単に止まらない。
中華という市場を巡って日米は対立を深めた。日本が資源を自給できるということもアメリカが日本を敵視する一因となった。
さらにスターリンがアメリカから(かなり無理をして)大きな買い物(例:工業プラント)をすることで世界恐慌に苦しむアメリカ産業界を
巧みに取り込み親ソ派の形成を成し遂げたために、米政界では親日派は大幅に勢力を減らすことになった。
そんな中、勃発する第二次世界大戦。
夢幻会は前回の裏切りの記憶もあって対英不信が燻っていた上に、この世界では第一次世界大戦以降は英ともぶつかることが多々あった。
このために連合国での参戦が困難だった。
「中立しかないか」
高みの見物を決め込み、ソ連とも不可侵条約を締結することなく極東に引篭もる日本だったが……そんな彼らも容赦なく激動の世界に巻き込まれた。
日本がソ連へ睨みを利かせて満州や樺太に大軍を派遣して、ソ連軍を極東に張り付かせたために、独ソ戦でモスクワが陥落するという事態を
引き起こしたのだ。連合国も各地で劣勢を強いられ、東南アジアでは独立運動が活発化する始末だった。
しかも独立運動に日本人が関わっていたというニュースが世界に報じられると、日本が火事場泥棒を目論んでいると非難されるようになった。
当然のことだが、日本は「関わりは無い!」と主張した。
だが度重なる敗勢に焦るイギリスとソ連は、日本を批判して大きな譲歩を要求するようになった。日本は外交での決着を図ったものの、返って
きた答えは容赦が無かった。
「ドイツへの禁輸措置に、戦力の引き下げ? それも代償はこれだけかよ!」
「それに各地のテロに日本が関与していないことを示すために、軍事基地への査察受け入れ?」
日本国内では不満が噴出し交渉は空転。
そんな中、フィリピンで起こったテロ事件。これがアメリカを本格的に動かすことになる。
「日本は正面から戦うこともせず、テロで列強を東南アジアから追い出そうとしている。これを見過ごすことは出来ない!」
そして幾つかの交渉の末、日本は開戦を決断することになった。
資源を国内で自給できることと引き換えに、衝号という切り札もなく、前回よりも質が落ちた軍備で戦うというマゾゲー仕様の、そして夢幻会
にとっては二度目の日米戦争の幕が開ける。
最終更新:2013年03月07日 21:32