114 ：ぽち：2013/03/28(木) 12:56:19
「おじさん、どうしたの」
「腹ぁ減って死に掛けてるんだ」
「硬いパンと粒の数えられるとうもろこしのスープくらいならあるよ」
「なあ奥さん、この町ぁ見た所そう貧しくもないようだがなんでこんなに寂れてるんだ？」
「この町を挟んで二つの盗賊団がいましてね、双方に食い物にされてるんですよ」
「出て行こうとは思わないのかい？」
「おれのじいちゃんが井戸を掘って作った町だ！
おれの父ちゃんが木を植え道を整えて作った町だ！
二人の墓もあるしおれはこの町を守って死んでいく！」
「元気だねぇ坊主」
「親分、なんか始めてみる野郎が！」チャキッ
「やめろ あいつの背中を見な」
「なんかヘンなもん背負ってますね」
「ありゃサムライ・ソードだ 銃で撃ちソードで斬る、西部最強の男『サムライガンマン』
そして一度交わした約束は絶対破らねぇ」
「親分さん、俺を用心棒として雇っちゃくれねぇか」
ぱらぱら 分断された銃が彼らの足元に転がる
「なあ親分、おれを用心棒として雇わねぇか？お得だぜ」
「確かにこの強さはお買い得ってヤツだな だがお前ぁ、あっちに雇われたってきくぜ」
「向こうはな、ほら分るだろ？色々払いが悪いシブチンでな」
「サムライガンマンが金で転ぶのか」
「食うモン食わなきゃサムライでも生きていけねぇってモンさ」
「ありがとうございます、あなたのおかげで盗賊どもは双方とも壊滅しました
罵ったりしてなんと詫びればいいか･･････」
「気にすんな奥さん パンとスープの礼だ」
「おじさん、おれもおじさんのような男になるよ 強いサムライガンマンに」
「そいつぁ駄目だ お前は俺のようになっちゃいけねぇ お前はお前のような男になれ」
とっとの部屋 これタイトルね
「あー、本日の『とっとの部屋』ゲストは俳優にして映画監督のクリント・イーストウッド氏です」
「失礼ですが英語が上手ですね」
「ええ、わたし国際子供保護機関に参加しておりますのよ
同じようなお題目をあげながら寄付金で豪邸建てるユ偽フなんて組織もあるので
差別化、というワケでもありませんがより深く世界の子供たちに近づくためにもいろんな言葉を話せないと」
「なるほど」
「で、あなたは先ほど流れた『荒野の用心棒』という映画で一躍スターダムにのし上がられたんですよね」
「青虫の夢を見るくらい三食キャベツをかじりながらのし上がるチャンスを探し続けてました、あの頃は
そして知り合いにタカって見に行った映画がアキラ・クロサワ先生の『用心棒』
映画館から飛び出して、なけなしの金で用紙買い込んで脚本もどきを書いて映画会社の重役のところに強盗寸前な態度で飛び込み、これを持ち込んだんです
俺が主役、というのを条件にして」
「行動力ありましたのねー で、この『荒野の用心棒』が全世界に広まる大ヒットになったと しかもこれにより西部劇に『サムライガンマン』という新たなジャンルが出来てしまいましたね」
115 ：ぽち：2013/03/28(木) 12:59:54
「この後いくつかの西部劇に出た後『ダーティハリー』が当たって小銭ができたんで日本へ行ってクロサワ先生に謝ったんだ
『荒野の用心棒』はセンセイの映画のパクリだったってね
そしたらセンセイはばちーんと俺の頭引っぱたいて『面白かったから良し』と言ってくださったんだ
ホントあの人にはいくら感謝しても仕切れないよ」
彼は黒澤明が亡くなった後、毎年命日には来日して墓参りをしている
「ところがここしばらくやる気が起こらなくてね、気晴らしにエアレースを見に行ったんだ
あるチ－ムが予選突破したものの機体がブッ壊れちまってて嘆いてたんだ
そしたら何故かやってきた日本人のお爺さんがそいつらを一括して
『しゃきっとせんかい若僧ども！わしらが６０年前戦ったメリケン兵はそんなヤワじゃなかったぞ！』ってね」
「それで思い出したんだ あの時の戦争、ホワイトハウスの阿呆のせいで色々駄目だったけど
出兵する大人達は背を伸ばしまっすぐ前を見つめていた
俺たちの親父たちは俺らが誇るべき立派な大人だった なんら恥じるところのない素晴らしい男だった
だから作ったんだ、この『父親たちの星条旗』を」
「第一部は主人公がパイロットとして中国大陸で戦いスティルウェル将軍の脱出を援護した『アジアの翼』
そして第二部がハワイでの決戦を描く『珊瑚礁は血に染まった』
わたしのアメリカへの愛のすべてを注ぎ込んだ映画です
テレビの前のみなさん、ぜひ映画館においでください」
118 ：ぽち：2013/03/28(木) 14:11:27
この作品は映画「用心棒」「荒野の用心棒」漫画「アンリミテッドウィングス」を見た結果です
どれも超お勧め
最終更新：2013年04月07日 11:37
