833 :New ◆QTlJyklQpI:2013/05/04(土) 02:26:19
※これはearth氏作品と違い夢幻会の日本掌握が早期に達成された設定です。
※本編準拠の流れです。

大陸ネタSS ~チャーチルの憂鬱~

1941年の中頃、大英帝国の首都ロンドンの官邸では今日も大英帝国宰相であるウィンストン・チャーチルは執務をこなしていた。
何時間か前の空襲のサイレンと爆撃の振動も今は無く、葉巻を咥えて空襲時に放置した決済途中の書類と睨めっこしていたが
部下が被害報告を伝えに来たので一時中断となった。

「ふむ、被害はそれほどでもないか・・・・流石はRAFと言ったところか」
「はい、日本製のレーダーと日本製の戦闘機、それに日本人パイロットがいればこそですが」

大まかながら被害をまとめた書類をパラパラと捲りながら自国の空軍を称賛するチャーチルであったが
部下が苦笑しながら放った自軍の状態を示す言葉にチャーチルも同じく苦笑で返すしかなかった。

ドイツのポーランド侵攻で始まった第二次世界大戦。一応警告しておいた夢幻会の願いも虚しく
英仏連合軍はドイツ軍の電撃戦に対処できず大陸から叩きだされフランスも敵に回したことにより
切羽詰まった英国は英日安保条約に基づいて日本に支援を要請した。
夢幻会は”一度目”の反省に基づき「兵力・物資の出し惜しみはなし」として前倒しで開発した烈風・飛燕など最新鋭機で構成した
飛行隊を派遣、大陸国家と化したことで手に入れた膨大な生産力にものを言わせての物資供給を実行した。

その結果、バトル・オブ・ブリテンにおいてドイツ空軍に凄まじい損害を与える事となる。
ドイツ空軍の主力であるBf109Eでは烈風や飛燕に速度で100km/h以上の差を付けられ易々と護衛対象である
爆撃機を餌食にされ、帰還しようとしても速度差から追いつかれ、それでも何とか逃れようと激しい機動をすれば
元々少ない搭載燃料を消費して不時着することとなった。

ドイツ海軍相手でもそれは同様で十分な護衛のついた輸送船団への攻撃を行った独仏伊の潜水艦部隊の損耗は著しく、
余裕があった日本の空母機動部隊にジブラルタルなどの港湾施設を爆撃されると活動自体も徐々に鈍化していった。
カナリア沖での海戦に続く日本軍の活躍は英国の士気を更に上げたがチャーチルはこの戦果によって新たな問題に
直面し頭を悩ませていた。

「(確かに極東の同盟国のおかげで持ちこたえている。だが、それが我が国に亀裂を生むことになるとは)」

出し惜しみなしとして全力で英国を支援をしている日本であったが欧米の基準を遥かに上回る兵器の性能と
アメリカには劣るものの英国よりも遥かに強大な物量により、あれほど手こずっていたドイツ軍が目と鼻の先でボコボコ
にされていくのを見た英国内の一部から黄禍論じみた日本脅威論が噴出、そして東南アジアを中心とする植民地では
日本軍の活躍が徐々に知れ渡り一時は大人しくなっていた独立運動が再燃し始めていた。

「(植民地人共のこともある。うまく立ち回らないといけないというのに馬鹿どもが)」

今のところ大英帝国が戦争を続行できるのはアメリカと日本という2つの大国の支援があるからといっても過言ではない。
だが、この両国は中国市場や太平洋を巡って対立しており、この両国の間を上手く保ちつつ対独戦を勝てねばならない
チャーチルには綱渡り的なバランス感覚が要求されていた。

「(日米、どちらかがもう少し弱体であれば良かったのだが・・・・いや、我が帝国が凋落していなければこんな
ことにはならなかったはずだ。大英帝国も落ちたということか・・・・・・・)」

チャーチルの自嘲しながらも帝国内外の問題の解決法を思案し続ける。
大英帝国が栄光ある勝利を手に入れるその日まで。

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最終更新:2013年09月04日 20:49