548 :237:2013/06/29(土) 13:24:13
「すいません、ロイドさんは突然、閃いた!とか言って、窓ガラスをぶち破りながら出ていったんですよ」
「そうですか」
僕が、次の瞬間目覚ました時は病室だった。なぜ、僕が病室に入っているのかは意識を失う前の事は覚えていなかった。
ただ、もう一度挨拶しなおしてセシルさんに出会った時に、出された料理にビクついたけど何だったんだろう?
ロイドさんは、変人のようだけど倉崎の人達よりもマトモだと思ったんだが、やはり変人だった。
「それでは、おじゃま「すいませーん、書類できました」・・・っ!」
僕は、部屋に入ってきた人に驚愕してしまった。
その人は・・・・・
「お疲れ様です。クッキーいります?」
「すいません、ダイエット中なのでいりません」
前世の彼女にそっくりだった。
「そうなのよ!パパとママはいい年こいてラブラブなのよ!娘のあたしに少しは気を使いなさいよと思うのよ」
「そうなんだ・・・・」
彼女は、セシルさんの新しい部下で大変優秀だというらしい
セシルさんは二人だけで交流して頂戴と言って離れて行ってしまった。
聞けば聞くほど、前世の彼女にそっくりだった。
だけど、僕のことを覚えていなかったり、両親が健在であったりなどと差異があった。
「うん?」
そして僕は気になるところを見つけた
「ねえ・・・左手のそれは?」
「あ、気がついた?私ね婚約者がいるの」
そういって、左手の薬指を見えやすいように手を持ってくる。シルバーリングがきらりと輝く
「そうなんだ・・・おめでとう」
ちょっと胸にずきりときた
「パパが紹介した人だけど、最初はどこにでもいる普通の男だと思っていたのよ。だから、結婚とかは乗り気ではなかったのよ。
だけど、彼はなかなか気使いが上手い人で、あたしの我儘にも文句をいわないし、優しい人だった
気がついたら、彼の事が好きになっていたのよ。だから、あたしは紹介してもらえてよかったと思っているよ」
そういった彼女は幸せそうだった。
この後、僕達は少し会話をして、彼女も仕事があるということで、その場はお開きになった。
彼女がいなくなった後・・・・僕は堰が切れたかのように涙を流し続けた。
「そうか・・・・・彼女は幸せになれたんだ・・・・・・」
前世の僕は彼女の人生を歪んだ原因の一つになってしまったのではないかと思った。
彼女は父が目の前で殺され、僕を復讐の道具にしようとまで歪んでしまった。
それでも僕は嬉しかった。例え、復讐心からであろうと傍にいてれたことがどんなにありがたかったことか
だけど、僕はそんな彼女を幸せにすることができなかった。これが唯一の心残りだった。
この世界も彼女に出会えたが、僕のことを覚えていないことを寂しくは思ったが
それ以上に幸せな彼女の姿を見られて良かったと思っている。
この世界の彼女は両親が健在で、そばにいてくれている相手もいる。
それ以上ない幸せな環境だろう。
だから僕は告げる
「ありがとう・・・・・僕のそばにいてくれて・・・・
サヨナラ・・・・・僕の初恋・・・・・・・」
こうして、僕は一つの気持ちにケリを付けることができた。
最終更新:2013年09月08日 15:32