191 :202:2013/07/05(金) 14:53:16


アッシュフォード新聞部 超常現象特集



特集! 帝都東京に住まう鬼ババアの怪!


UFO 宇宙人 幽霊 超能力 兎角この世には不思議なことが多いもの。
世界最先端を行く日本の科学力を持ってしても解明できないこれらの中に 年を取らない怪人の情報がある。

今日は危険を顧みず取材を受けてくれたシゲチー氏(仮名)にお話しをお伺いしたいと思います。


「どうも こんにちは」

「こんにちは」

「今日は編集部にまで足を運んで頂きましてありがとうございます」

「いえ 歩いてこれる距離ですから大した事はありませんよ それより僕の名前・顔・住所・年齢・素性 全て非公開でお願いしますよ」

「それについてはご安心下さい シゲチー氏に関する一切の情報は外部に漏らさないよう 万全の体制を整えておりますので」

「ならいいのですが」

「では早速 シゲチー氏は年を取らない怪人を御存じであると耳にしたのですが これは事実なのでしょうか?」

「はい事実です 今日も顔を合わせたのですが ハッキリ言って化け物です」

「ば 化け物ですか? ではその人物というのは怪物のように恐ろしい顔をしていると?」

「ええ鬼のような老婆です 世界で三本指に入ると推測される戦闘力を持つ恐るべき老婆です」

「な なんと それは恐ろしい」

「人間には限界というものがあるのは御存じかと思われますが この老婆は若い頃に 確か二十代の前半にどうしても必要に駆られて肉体改造まがいの訓練を受けて限界を超えてしまい
 以来 一騎当千は疎か 一騎当万の力を身に付けたらしいのです」

「では 元は普通の人間だったと?」

「いいえ違います 元より超人の類であったのですが 殻を破って怪物に変貌してしまった生き物なのです・・・・ そして外見がまた恐ろしいのひと言」

「外見? 確かに先ほどお伺いした鬼のような老婆というなら恐ろしいのひと言に尽きますが そうではないと?」

「はい 普段はまったく別の姿をして油断を誘っていますね ひと言で言うなら女子大生です」

「女子大生? まさかとは思いますが 女子大生に見えるくらいお若いとか?」

「その通りです 外見的な特徴としては長い金髪に碧い目 背丈は高くもなく低くもない二十代のブリタニア系日本人女性かブリタニア人と言ったところですが しかしその実 今年で還暦を迎える老人なのです」

「還暦でありながら見掛けは二十代 まさに年を取らない怪人ですね それでいてとてつもない怪力を持つ化け物 これは一度直に見てみたいものですが?」

「止めた方がいいです 命の保証が出来ません その代わりといっては少々物足りないと思いますが 写真があります」

「どれどれ 拝見させて頂きます・・・・ こ これは・・・」

「どうです若いでしょう これで六十歳の老婆なんです」

「お美しい方ですね 思わず見惚れてしまいそうですが」

「しかし ひとたび荒ぶると それは恐ろしい形相で襲いかかってくる恐怖の鬼ババアなのです!」

「成程 この見掛けはまさに食虫植物と同じだと しかし何故年を取らないのでしょうか?」

「これが未だもってわからないんです 科学で解明できない事もあるとしか言えない状況でして」

「人間を超えた怪力を持ち年を取らない鬼ババア・・・・恐ろしい」

「そう この恐るべき鬼ババアはこの帝都東京に潜み 今この時も獲物を探しているのです」

192 :202:2013/07/05(金) 14:54:26


「シゲチーくんお疲れ様」

「お疲れ様」

「どうだった報道関係テイストなインタビューは」

「思った以上に緊張したよ~ まさか新聞部の手伝いをさせられるなんて思いもしなかったから」

「でも鬼ババアの怪なんて突発でよく思い付いたね」

「ま モデルがいるからね お陰ですらすら答えられたよ でも超常現象特集であの内容はつまんなかったかな?」

「ううん 上出来だよ 大体学校の校内新聞で本物と同じような出来を求められても困るし でもあの写真って口に出来ないけど・・・・その・・・侯爵様・・・・」

「ああ~うん それは大丈夫だよ 名前も写真も載せないなら誰のことかなんてわかんないし」

「でもさ 六十歳ってのは幾ら何でも言い過ぎじゃないの?」

「だいじょぶじょぶ! 校内新聞なんだから面白可笑しくするほうがいいじゃん それより取材料のほど宜しく」

「わかってるよ さすがに現金はマズイからクルシェフスキー系列の商品券二千円分でいい?」

「いいよ 放課後にでも金券ショップ寄って現金に換えるから 今月小遣い減らされちゃって困ってたんだよね」

「シゲチーくんってよくお小遣い減らされてるけど何やってるの?」

「主にテストの点数かな? その他の理由としては母さんがケチというのがある」

「ケチって・・・・ 侯爵様はお金持ちなんでしょ? それにお父さんだってお金持ち」

「まあね 自慢じゃないけど金持ちではあるよ 下手すりゃ南ブリタニアとか中近東の王族並の財産はあるみたい でもケチなんだ だって僕の今のお小遣い一日五十円だよ? 高校生にもなって五十円は無いよ~」

「それならバイトしたら?」

「バイトはダメなんだ 母さんの勅令でバイト禁止 勉強に専念して成績を上げてから判断するとのお達しが出ててね」

「それはキツイね」

「だからいい小遣い稼ぎになったよ 一撃二千円! うちの系列の商品券なら金券ショップで交換しても千九百円にはなるし」

「考えてみたらシュールだね 自分とこの商品券を金がないから売る侯爵家の息子って」

「これも全部母さんのケチが原因だ」

「でもクルシェフスキー侯爵様って日本でもブリタニアでも好感度高いよ 自らは質素倹約しながらも領内にお金回して領地経営しっかりしてるから 最近のクルシェフスキー領移住者や移住希望者の数知ってるかい」

「知ってるよ 母さんは庶民の味方全開な貴族だから その僅かでも僕に振り向けてくれたらな~ と思わないでもない今日この頃」

「だけど領地経営めちゃくちゃで領民を路頭に迷わせた伝説の大貴族を知ってるから オレみたいな平民の家庭に生まれたヤツとしては侯爵様みたいな貴族は神様のように感じるなあ」

「伝説の大貴族?」

「うん 昔オレの父さんが住んでたカンザスの端の端の端にある 小さな男爵領の領主だった自称大貴族で 領地経営ほったらかしで遊び歩いては貴族の権威を笠に着て横暴な振る舞いをしてた通称 バカ男爵
 アイツのせいで首を括り掛けたって父さんから聞いた事があるよ」

「へえ~そんなヤツがいたんだ 平民を大切に が合い言葉のブリタニア貴族としては珍しいね でも“いた”って事は失脚したの?」

「うん 何でも先代の男爵領領主様が先代のクルシェフスキー候 つまりキミのお爺様に掛け合って相談した結果 爵位剥奪と領地追放処分になったらしいんだ よく知らないけどペンドラゴンの大通りで侯爵様を侮辱したとか」

「母さんを侮辱? ブリタニアの貴族で母さんを侮辱するヤツなんていたんだ 度胸あるなそいつ」

「違うよ 度胸あるじゃなくて無謀で物を知らないバカなんだよ だから付いた渾名がバカ男爵 爵位剥奪されたあとも男爵様って呼ばれてたらしいけど バカ男爵って意味の男爵様だったらしいよ」

「うわ~ そんな貴族とお近付きにだけはなりたくないな 鬼ババアとバカ男爵ならまだ鬼ババアの方がいいや」

「侯爵様とバカ男爵を比べるのがそもそも間違ってるよ キミもさ いい加減な生き方してたらバカ男爵みたいになっちゃって 説教とか小遣いの減額程度じゃ済まなくなるよ?」

「お 脅かすなよ! いくら僕でもそんなバカみたいにはならない!」

「冗談だよ それにキミの場合はそうなる前に侯爵様の手でクルシェフスキー騎士団に放り込まれて 一から性根を叩き直されるから大丈夫!」

「絶対に嫌だそんなの!」

「ま キミの将来がどうなるのかはさておき そろそろ行かないと店閉まるよ」

「あ そうだった じゃあ僕行くね それとまた手伝いがあったら声掛けて 商品券千円以上で引き受けるから」

「がめついなあ」

「タダで引き受けるわけ無いだろ 貧乏人なめんなよ」

193 :202:2013/07/05(金) 14:55:17
終。

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最終更新:2013年09月09日 00:46