607 :202:2013/07/09(火) 19:18:30

世界には多種多様な人種と民族 そして国がある。
大は大日本帝国や神聖ブリタニア帝国という他国の追随を許さぬ超大国から、
小はシーランド・シンガポールといった狭い国土しか持たない国まで様々。
その中に列強国やその庇護下に入らず独自の路線をひた走る国々があった。

イラク社会主義共和国
西イラン王国
サウジアラビア王国
アラブ首長国連邦
パレスチナ王国
イエメン王国
オマーン王国
カタール王国
バーレーン王国
ヨルダン王国
クウェート王国

中東と呼ばれる地域に存在するこれらの国々の経済を支えている主要な資源は主に石油。
燃える水とも呼ばれる石油は衣料品などの繊維製品に用いられ 世界中に輸出されていた。
オイルマネーと呼べるほどの外貨を稼ぐことは出来なくとも ある程度の豊かさを得られているこれら中東の国々。

しかし 世界の主要産業を支える資源は飽くまでもサクラダイトであり 世界経済を動かしているのはサクラダイト産出国。
決して自分たちが世界経済の主役に躍り出る事はない。

殆どの国の人々はこの事実を真正面から受け止め日々を平穏に過ごしていたが ある一人の男だけは違っていた。

イラク社会主義共和国書記長ラムジ・フセイン

かつて王制国家だったイラク王国でクーデターを起こし 格差を是とする王族を粛正して平等を謳う共産主義体制を確立させた希代の革命家であった。
彼は自身が作り上げた共産党による一党独裁体制を確立させたのち 国内の反動分子や政敵を不等裁判に掛けて次々に処刑。
“強いイラク”と“ペルシャ帝国の再建”を標榜して徹底した軍拡路線へと舵を切った。

そしてイラク共産党書記長フセインによる皇暦2000年のミレニアムクーデターから10年。

中東随一の軍事大国へと変貌したイラクは日本・ブリタニアといった大国が開発した人型戦闘兵器ナイトメア。
ナイトメアに対抗して作られた中華連邦や清のガン・ルゥ EUのパンツァーフンメルなどを圧倒する為 長大な大口径リニアガンを搭載した大型装甲兵器バミデスを開発。
15年掛けて約1000騎のバミデスを順次国内に配備していった。


そして皇暦2030年。

革命によって王政を打倒したフセインは 世界経済に何の発言力も持たない現状を良しとし
挑戦しようという気概すら見せない堕落した中東の王政国家群に対し 産油国会議の席上で耳を疑うような発言をした。

「イラクはアラブをペルシャの名の下に一つとし 大ペルシャ社会主義共和国連邦の建国を目指す事を提案する」

アラブがバラバラのままでは列強国に対抗していくのは不可能。
列強の後塵を拝しない為にもアラブの国々を一つの巨大国家へと再編するべきである。
自身の考えを会議の席上で全て明かしたフセインであったが これを是とする国は一つとしてなかった。

608 :202:2013/07/09(火) 19:19:00

確かにフセインの言うとおり個々がバラバラでは列強に対抗する事など不可能。
だが なにも欧州・環太平洋列強に対抗する必要など無い。
今まで通り繊維製品に必要な石油を適正価格で売って 平和的な付き合いをしていけばそれでいいではないか。
それもなぜ多数派の王制が共産主義に鞍替えしなければならないのだ。

多くを望まず身の丈にあった現状を維持していこうと考える他国の態度に失望した彼は会議を途中退席してイラク本国に戻ると陸海空三軍の司令官を召集。

「同志諸君 東部国境沿いに兵を集めよ!戦いのときが来たのだ!今こそ軟弱な王侯貴族を排し世界革命の狼煙を上げるとき!」

イラクと西イランの国境沿いに僅か一ヶ月という電撃的な速さでイラク赤軍の軍勢を集結させ

戦車1000両
大型装甲機バミデス200騎
S10戦闘機150機
20個師団30万の兵力を持って西イランへと雪崩れ込んだ。

「大変です陛下!イラク軍が!」

「まさかッ まさか本気であったのかフセインめッ!!」

これに対し永の平和に慣れきり 碌な軍備を持たない西イラン王国は各地の戦線で一方的な敗北を喫する。
特にイラクの新兵器バミデスには既存の戦車では対抗不可能で 一騎撃墜するのに数十両の戦車が撃破されるという事態が各戦線で起き
西イラン軍の戦意を削いでいく そして開戦より一月も持たずして軍の八割を失い、西イラン王国は無条件降伏を余儀なくされた。
イラクが国境沿いに兵を集結させている事は知っていた物の まさか本当に攻め入ってくるとは考えもしていなかった西イラン国王は国を追われ
国家中枢を支えていたブルジョワ階級の富裕層は次々に土地と財産を没収 最悪処刑される者も少なくなかった。

「虐げられし西イランの人民諸君!諸君を抑圧する王はもういない!我らプロレタリア人民の勝利である!」

抑圧するほどの圧政を敷かれていた訳ではなかったが 王も庶民も無く皆平等であるというフセインの甘い言葉に踊らされた国民は
まだ残っていた富裕層の屋敷を襲撃して金品を強奪するなど、王都は無法地帯と化し、多くの血が流れる。

西イランを電撃的に制圧したイラクは次にヨルダンを攻め滅ぼしこれを併合。

こうして始まった中東戦争はイラクと並ぶ中東の雄サウジアラビアを盟主としたアラブ連合との全面戦争へと突入。
半年に渡る攻防の末に両者の戦争によって生じた繊維製品の高騰に難色を示した日本とブリタニアが間に入り停戦。
イラクは占領していたナフード砂漠をサウジに返還し 国境沿いにまでイラク赤軍を後退させ サウジは全領土を奪い返す事に成功。
しかしヨルダンと西イランの独立に付いては頑なに拒否し 両国の主権回復にまでは至らなかった。


ただ一国 中東に於いて日本・ブリタニアと本当の意味での庇護下に入っていた小さな産油国クウェート王国だけはイラクが起こした侵略戦争を対岸の火事として眺めていた。
すぐ間近で複数の国家が絡む大規模な戦争が起きているというのに海水浴を楽しむほどの平和ボケ。

クウェート王など「狂犬フセインも中々頑張ってるなァ」とか欠伸をしながらラムネを飲む余裕っぷりを見せている。

彼らは知っているのだ 日ブは決して友好国を見捨てないと。

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最終更新:2013年09月09日 00:52