196 :ホントはフライルーが出したかった:2013/06/05(水) 00:15:20
小論:戦略弾道空挺KMF-ある歪な兵器について-

戦略弾道空挺KMF、通称ファイバー。
本機はシーランド公国成立~欧州解放までの極短期間のみブリタニア帝國に配備されていた特殊部隊専用KMFである。
本論ではこの異形のKMFがたどった軌跡を追ってみたいと思う。

1.萌芽

事の起こりは欧州はイギリス近海にシーランド公国、という島嶼国家が成立したことである。
地理的・軍事的にはEUに一瞬で踏み潰されて終わり、という運命以外持ちようのなかったこの国家は、
その位置故にブリタニア帝國及び大日本帝國の国家承認と保護のもと、生き延びることとなる。
  • 主に欧州帰還を至上命題とするユーロブリタニア、及びその保護者たるブリタニア帝國による対欧州の橋頭堡として-

さて、ブリタニアとしては国家承認をし、KMF・KGFを日本と共に供与までしたこの小国を如何に守るか、という問題が発生する。
無論、兵器供与に始まり航空艦艇の展開態勢強化など、様々な手を打って早期に制圧されないための備えは必要十分なだけ施した自負はあった。
それでも、島数個でしかない小規模国家、とあればEUが新規開発した兵器等によって電撃的に制圧される、という未来もありえないわけではない。
故に、如何なる相手をも上回る電撃的な展開を可能とするナニかをブリタニアは欲していた。

上記のような経緯に基づいて出された要求は…
 ・有事発生から1時間以内にシーランド公国へ戦力を投射できること。
 ・シーランド公国の保有する軍備と連携し、敵対武装勢力(最低でも第五世代KMF装備のバランスのとれた軍備保有を想定)の侵攻を抑止できること。
 ・陸海空に展開するあらゆる兵器に対して攻撃が可能であること。
 ・友好国であるシーランド公国の国土を可能な限り破壊しないこと。

というものであった。
無論、堅実な兵器開発で知られるブリタニア兵器メーカー各社は口をそろえて言った。
「無茶だ」、と。
口さがない技術者は、不敬罪ととられかねないことまで口走ったという。

だが、その無茶を可能にしてしまえるアイデアが極東には存在したのである。

197 :ホントはフライルーが出したかった:2013/06/05(水) 00:16:04

2.進展

そのアイデアをもたらしたのは-正確に言えばブリタニアに持ち帰ったのは-
駐日武官モニカ・クルシェフスキー卿であった。

彼女は丁度その頃、軍とも関わりの深い皇族、コーネリア皇女が駐日大使となるのにあわせて
日本に赴任した、という関係もあって皇女から私的に相談を受けることもあった。
そうした私的な相談の中に先ほどの「無茶」に関するものがあった、と言われている。
一方で彼女は倉崎重工にて後にフリーダムと呼ばれることになる第九世代KMFのテストパイロットとして
同社兵器開発チームとも関わりがあった。
そして、第九世代KMF開発の過程で彼らが用意した膨大な原案の一端に、ソレは存在した。
そう、変形・換装システムに偏執的な情熱を燃やす倉崎の一開発チームの暴走によって
「領域支配KMF」と名付けられた一連の設計図の中に「侵攻・制圧兵器システム」と記されたそれは眠っていた。

それを見つけたクルシェフスキー卿は興奮のあまり彼らにこういった、という。
「この設計図を売って欲しい。ブリタニア帝國は貴社の言い値で本機を発注する!」と。

無論、現在では倉崎の宣伝のための創作であった、とされているが(ナイトオブラウンズといえど平時はそこまでの権限はない)、
彼女が本機を見出し、それによって倉崎・日本ブリタニア両政府を巻き込んだ一大外交交渉が行われ、
その結果倉崎が受注を獲得した、というのは事実である。

198 :ホントはフライルーが出したかった:2013/06/05(水) 00:17:24
3.開戦と実績

清とEUの紛争、通称シベリア事変の終決から間もなく、イギリスでの分離主義者の「暴動」を煽った黒幕としてEUは
シーランド公国を名指しで批判、内容を知った夢幻会某幹部をして「ハル・ノートより悪質」と言わしめた「覚書」を
公国に通告、24時間以内の受諾を迫った。
  • 現在では事変での敗北を糊塗するための外敵と勝利を欲したEUの言いがかりとするのが通説である。-
そしてシーランド公国の回答(柔らかな拒絶と対案の提示による交渉を求めたもの)を受け取ったEU外相は一言、
「では戦争ですな」
と述べたとされている。
ここまであからさまな言い方ではなかったかもしれないが、兎にも角にも覚書の通告から
約30時間という短時間で戦端は開かれ、公国の四面から過剰としか言いようのない規模の上陸侵攻船団が押し寄せることとなる。
通称シーランド危機の開始である。

日本ブリタニア両国とも覚書通告について公国より通報があって以後、警戒態勢の上昇と動員などを行なっていたが、
さすがに通告から30時間でこれほどの物量を用意したEUに対し、開戦後10時間弱は有効な抑止力を公国に派遣できる状況になかった-ファイバー一個小隊を除いては。


シベリア事変以来即応体制に置かれていたファイバー小隊は開戦後30分でシーランド公国首都上空へ到達。
ハドロン砲をはじめ、ヴァリスやその他ウェポンカーゴ搭載のありとあらゆる兵装を用いてEUの第一次侵攻船団第一波を粉砕。
以後、シーランド公国軍と共同しつつ、シュナイゼル宰相直率のブリタニア軍及びユーロブリタニア軍到着までの貴重な数時間を稼ぐこととなる。

199 :ホントはフライルーが出したかった:2013/06/05(水) 00:20:27
4.性能と退役

コアユニットとなる第7世代KMF:ギャプランにドラムフレームを介して、
連装ハドロン砲ユニット×2・ウェポンカーゴ・ブースターユニット・ブレイズルミナス発生ユニット・フロートシステム・大型エナジーフィラー搭載ユニット(※)
を一体化した支援ユニットを装着した状態。
コアユニットの武装としてはヴァリス×2・スラッシュハーケンが基本となっている。
弾道飛行形態と通常形態の2形態を持ち、次のような使い分けを行う。

弾道飛行形態をとり自国基地のマスドライバーより打ち上げられ、目的地へ最短時間で降下、武器を展開した通常形態へと変形し敵対勢力の排除を行う、という運用思想に基づいている。
シーランド危機に際して見せたような、初動展開と通常兵力受け入れまでの地ならしの他に、敵後方の策源地へ降下、撹乱/制圧といった運用も想定されていた。
そのため、1騎あたりの搭載兵装はかなり多めに設定されている。
また、どうしても大型化を避けられずブレイズルミナスを搭載してなお、被害は免れ得ないとの想定から、
消耗したブースターユニット・ウェポンカーゴ・大型エナジーフィラー搭載ユニットは使い捨ての盾として切り離すことで、
被害を局限すると共に闘いながら機体を小型/軽量化することが可能となっている。

なお、シーランド危機から続く欧州解放戦争においては、
 ブリタニア・ユーロブリタニア両軍がEU軍を圧倒したこと。
 指揮官のシュナイゼル宰相・ヴェランス大公ともに堅実な運用を好んだこと。
 弾道飛行による展開が機体・デヴァイサー双方に与える負担が大きかったこと。

などを理由としてシーランド公国に留まって防衛任務につきつつ、終戦を迎え、
戦後仮想敵の消滅による軍縮の中でコストパフォーマンスの悪さから、生産打ち切り、退役を余儀なくされていく。
このため大口受注を期待していた倉崎は若干の損失を被ることになり、ユーロブリタニアにジンクスシリーズを納入していた関係で、
欧州への警備用KMFの受注を勝ち取ったスメラギコンツェルンによって、KMF市場のシェア争いにおいて主導権を一時的に奪われることになる。
(なお、過度な倉崎による独占を懸念する日本ブリタニア両政府によるスメラギへの支援もあった、とするのが現在の通説である)



※大型エナジーフィラー搭載ユニット:エネルギー消費の激しいハドロン砲・ブレイズルミナス・フロートシステムを同時運用するために新開発された
 大型エナジーフィラーを複数搭載し、各兵装の初期エネルギー源とするためのユニット。
 本機の運用上、展開直後に大規模攻撃を行い敵を排除してしまえば、これらの兵装を全力稼働させる必要には迫られない、との想定に基づき
 展開直後に全力が発揮出来ればよい、との割り切りの元使い捨てエネルギー源という超大国にしか許されない贅沢な運用となっている。
 また、そうならざるをえないほどの被害を敵に与えることを目的としている。

200 :ホントはフライルーが出したかった:2013/06/05(水) 00:24:28
以上です。

TRシリーズの機体を出したい欲と、シーランド公国って余りにもEUに近くて危なくね?という私の杞憂が
元になった乱文ですが、ここまで読んで頂きありがとうございました。
あとできれば、スメラギをちょっと救済したいのもあったかもしれませんw

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最終更新:2013年10月21日 11:56