429 :二二三:2013/11/14(木) 23:35:50
何となく書いた二番目男
休日モニカルート


俺が一番


ペンドラゴン中心部から離れた郊外の裏通りを一人の男がフラフラと歩いていた
目は虚ろでどこを見ているのか焦点が定まっていない物の酔っているわけでもなければ、リフレインなどの危ない薬をやっているわけでもない
ただ、何も考えず歩いているだけなのだ



数日前



「民間に就職か…」

男は来たくもない士官学校の教官室に呼び出されるや開口一番にそう言われた

「君の人生だから君がどういう道を選ぼうと自由ではあるのだが、しかし、考え直す気はないかね?」

俺の人生だからというなら放っておいて欲しい。貴方には関係のない話なのだから
男は煩わしさを感じていたが、それを押し込め教官の話を聞いている

「君ほどの腕ならば即戦力として欲しがる部隊は幾らでもある。それに行く行くは皇族の方々やラウンズの方々の親衛隊へも抜擢されるだろう」

ラウンズの親衛隊だと?
そのラウンズに俺はなるはずだったんだ

「ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキー卿も君の進路について伺いたいと申されていたのだが」

ぎりっ

モニカ・クルシェフスキー
その名を耳にした瞬間無意識に歯軋りしていた
二度と耳にしたくない名だ。聴くだけで耳が腐る
ヤツの…ヤツのせいで俺の未来は閉ざされたんだぞ
そんなヤツが今更俺の進路を気にしているだ?

「もし配属される部隊が決まっていないのなら推薦するとも仰っておられた」

すい……せん……?


誰がっ!誰がヤツの推薦など受けるものかっ!
ヤツの推薦を受けるくらいなら道端の糞でも喰らった方がましだっ!

「いえ、クルシェフスキー卿のお心遣いは大変有り難いのですがもう決めたことですので
もし教官がクルシェフスキー卿にお目通りなされる機会がお有りでしたらよしなにお伝えください」

教官からされた聞きたくもない話。それを聞いていた彼は、人当たりの良さそうな爽やかな表情を崩すことなく心の中で毒づき続けた




そうアイツ
全部アイツのせいだ
あの何でも持っている大貴族のお嬢様が何もかも台無しにしてくれたんだ
持たない貧乏人の俺が士官学校での死に物狂いの努力の果てに辿り着いたラウンズ候補生の座
だが、アイツは俺の努力をあざ笑うかの如き類い希なる才能で追い抜いていった
後一歩、後一歩だったというのに、持つ者であるアイツが持たざる俺から奪い取っていったんだ

実技も勉学も、アイツが来てから二番、二番、二番、全部二番…っ!

皇帝陛下の御前で行われたラウンズを決める最終試合に全てを賭けた
心では、思いの強さでは、あんなお貴族様には負けてなかったはずなんだ


だが、結果は……、アイツの勝ち……

あのとき、アイツの汚らわしい手で握手を求められたとき、その手を振り払わなかった俺を誉めてやりたい

アイツはそのままトゥエルブに就任し、士官学校から姿を消したが主席で卒業したのは言うまでもなく、残された俺には次席などという不名誉極まりない経歴が残った

どこに配属されるにしてもアイツが上で俺が下なのは変わらない

430 :二二三:2013/11/14(木) 23:37:15
そんな耐え難い屈辱を味わうくらいなら軍や騎士の道など纏めてゴミ箱に捨ててやろうと民間に進む事を決めたのだが、そんな俺を教官はもちろん同輩の者たちも皆止めた

“考え直せ”

“それほどの腕を埋もれさせるのは間違っている”

必死に引き留めてくれたが、ヤツらも皆内心では二番である俺を哀れんでいるに違いない
本当なら久しくなかった平民出身のナイトオブトゥエルブとして皇宮に上がれたはずなのに、後から来たアイツが…!

おまけに俺を推薦するだと?

お前みたいに苦労知らずの金持ち貴族がこれ以上俺を嘲るか?

何様のつもりだクルシェフスキー!!


「……」

ガッ―!

「ってーなコラァ!」

思い出せば思い出すほどに腹立たしいアイツの事を考えながら歩いていると前から来た二人組の男と肩がぶつかった
如何にも柄の悪そうな二人組だ。こんな郊外の裏通りでたむろっていそうな社会のゴミ
相手にする必要も無い

「人にぶつかっといて挨拶もなしか?教育すっぞ!」

肩を掴んできた男
ああ……煩わしい

その手を振り払ったと同時に男の顔面に拳を突き刺した

「がはッ!」

たかが軽く殴ったくらいで吹っ飛ぶとはひ弱なヤツだ
ああ、そう言えばもう一人いたな

「君もやってくれるかい?教育」

「ひいッッ!」

逃げようとするそいつを捕まえる

「教育してくれないなら俺がしてあげるよ」

「か、勘弁してください、」

もう一人のヤツはさっきの威勢はどこへやら平謝りしてくる
弱い、弱いな

「問題、俺と君の関係は?」

「は…?」

「答えは俺が一番で君が二番だ」

掴みあげたそいつの顔面にも思い切り拳をぶちかました




そうだ、俺が強くてお前たちは弱い
俺は一番でお前たちは二番なんだ



少しは気が紛れたような錯覚を覚えた彼は、再びフラフラと歩き出し、夜の裏通りへと消えていった

431 :二二三:2013/11/14(木) 23:38:23
とりあえずこんな風になってるけど彼にも色んなルートがあると思いますです

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最終更新:2013年11月16日 12:37