920 :yukikaze:2013/11/29(金) 01:11:35

ではアメリカ赤化のエピローグを・・・

「ここが我らのカナンか・・・」

そう呟くアイゼンハワーの声はどこか暗く重い。
それはこれまでの長い旅の疲れからくるものであったか、あるいはこれからの前途多難な未来を予想しての事なのか、それは本人にもわからなかっただろう。
それだけ、彼らに突き付けられた現実は非情であった。

南部連合が崩壊した時、多くの南部の民衆は持てるだけの財産を以て国外へ逃亡した。
共産アメリカ軍の南部に対する行動は、もはやジェノサイドと批判されても文句の言えない程、非道な取扱いであり、多くの南部の男達が、雑多な小火器で狂気じみた抵抗を示すのも当然と言える代物であった。
故に、国家崩壊が誰の目にも明らかになった以上、マッカーサーが最優先で執り行ったのが、1人でも多くの南部の民を国外に脱出させることであったのも、国家指導者として当たり前の行動であっただろう。何しろ交渉に行った特使を平然と撃ち殺す連中なのである。
戦時国際法とか道義的責任とか、期待するだけ無駄である。
かくして、脱出作戦「アークエンジェル」を発動させた南部連合は、最終的に100万人近い人間を国外に脱出させることに成功する。だが・・・これは悲劇の序章に過ぎなかった。

まず、最も多くの人員が落ち延びたのが隣国のメキシコであった。
地続きであり、共産アメリカの制空権も確立されていない米墨国境は、難民たちが最も安全に脱出できるルートではあった。
しかし、およそ90万人近い難民が一挙に押し寄せたことで、メキシコの治安や経済は一気に悪化し難民たちは即座に厄介な無駄飯食らいとみなされてしまう。
おまけにメキシコ大統領カルデナスは、左派の色合いが強く、彼はメキシコの安全保障の確保とアメリカ国営産業の移転の交換条件として、これらの難民をアメリカに送り返すことを秘密裏に決定。
かくして悲鳴と怒号と泣き声が響く中、難民達は「帰国事業」の美名の元、アメリカに強制送還され、そしてその末路は共産アメリカ崩壊まで完全に歴史の闇へと葬り去られてしまった。

一方、決死の脱出劇により大西洋へと繰り出した10万人近い難民達も負けず劣らず悲惨であった。
多くの人間を乗せる為に、輸送船の居住性は悪く、衛生面も悪化。食料の配給のトラブルや医療品の不足など、体の弱い女子供や老人にとって地獄の船出と言っていいものであった。
しかも、パナマの途中で寄港しようとした中米諸国から完全に足元を見られる羽目になり、彼らがパナマを経てハワイに到達した時には、悪天候と疫病と船内の騒乱によって、実に1万もの人間が命を落とすか行方不明になっている。


921 :yukikaze:2013/11/29(金) 01:25:18

だが、彼らの苦難はここで終わりではなかった。
臨時の指導者となっていたアイゼンハワーは、大日本帝国に対して自分達の受け入れを懇願するが、日本側は、彼らに物資の補給や治療等はするが、受け入れについては明言をしなかった。
これは共産アメリカの成立に政府の目が向いていた事と、これまでのアメリカの態度から、日本では国民世論において反米路線が常態化しており、アメリカの難民に対して同情心が碌になかったというのも大きかった。

結果、彼らはハワイから移動させられたトラック諸島において、1年近く難民キャンプで過ごすことになる。
祖国が赤く染められていることを聞きながら。
それでもなお必死になって駆けずり回ったアイゼンハワーのもとに、日本政府の決定が通達されたのだが、それを聞いて彼は心底「亡国」の悲哀を味わうことになった。
彼らに伝えられたのを要約すれば以下であった。

・大日本帝国は貴官らをアラスカへと移送する。
・貴官らはアラスカへと移送後、その地にアメリカ政府を立てる。
・大日本帝国並びにアジア諸国は、貴官らの政府を認め、国交も樹立する。
・大日本帝国は貴国と安全保障条約を結ぶ。また経済協定も結ぶ。

要は「アラスカを日本の統治下にする」といっているものであった。
アラスカ単独で国を維持するなど不可能である以上、日本の影響力に縋るしかないのは子供でも分かる論理であり、そして日本は合法的にアラスカを利用して、アメリカへのプレゼンスを高めることにしたのだった。
そしてアイゼンハワーに、それを拒絶する選択肢はどこにもなかった。

1951年9月8日。帝都東京において、アメリカと中米を除くほぼすべての国が、アラスカに建国された自由アメリカ共和国の建国を認めることになった。
ここに太平洋を挟んでの冷戦の火ぶたが切って落とされることになった。


922 :yukikaze:2013/11/29(金) 01:26:06

アメリカ赤化。これにて終了でございます。
又のご愛顧よろしくお願いします。

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最終更新:2014年01月28日 21:22