793 :ひゅうが:2013/11/10(日) 22:48:47

>>790
おお! そんなこといわれたら妄想してしまったじゃないですか!
どうしてくれるw

ネタ――「黒船来航」

――1853(嘉永6)年7月8日 日本 江戸湾

「なんだこれは…」

マシュー・ペリー代将は唖然としていた。
彼の目の前では、何本もの煙突からさかんに煙が吐き出されている。
湾内は凪いでいる。
彼らを先導する日の丸と葵の紋を持ったスクーナー船「ハママツ」は覚えたての英文手旗信号を器用にこなしてから舵を左に切った。
アメリカ合衆国が有する蒸気軍艦の大半が割かれた東インド艦隊は二列縦陣をとっていたが、その左右、日本側から提供された海図によると「フッツ」や「ヨコスカ」と呼ばれる場所周辺からは合計12隻もの大型戦闘艦が接近しつつあったのだ。
時折明滅している灯火は明らかに発光信号だ。

「日本艦より手旗信号!『ワレ、じゃぱん・ねいびー・いーすとじゃぱんふりーと(日本海軍東日本艦隊)、遠来ノ賓客ヲ迎ヘル喜ビヲ表ス。ヨウコソ日本へ!』」

「・・・返信。『御好意感謝ス。米日両国ノ末永キ友好ヲ願イテコレニ答ヘム。コレヨリ礼砲ヲ発射ス。ワレニ敵意ナシ。空砲ナリ。』」

ペリーは双眼鏡の先に見えるエドの町を見ながら傍らの副官にそう命じた。

「陸を蒸気機関車が走っているぞ。いつの間に…」

「チャイナよりも小さい国のはずだろ?なんだあの沿岸の煙突の数は…」

「あの街道の上をみろよ。サムライ・サーベルを振り回すだけの蛮族だ?
なんで大砲をならべて『捧げ銃』をしてるんだよ!?」

「閣下。ご覧ください。」

サスケハナ号艦長が引きつった声で前を指さす。

「蒸気動力軍艦・・・!?」

彼らの前には、葵の御紋とともに菊の御紋の旗印を高らかに掲げた中型の内海船舶がこちらに接近しつつある光景が展開していた。
驚くべきことにマストは中央部に一本。それだけに、中央部の屈曲した煙突から吐き出される黒煙がよく見て取れた。
舳には、時代がかった礼装――シーボルトの本によると衣冠束帯というらしい――に身を包み冠をかぶった典雅な人物と、その護衛らしい裃(かみしも)姿のサムライたちが立っている。
周囲には、洋服に身を包んだサムライらしい男たちが1個小隊ほど長い銃を持って立っていた。
ペリーは知らないことだったが、この軍艦は数か月前にようやく就役したばかり。
現在幕府海軍で唯一の蒸気動力軍艦である。


「手空き総員、甲板へ! みっともない姿を見せるんじゃないぞ!!」

ペリーは笑みを浮かべながらそう命じた。

「彼らはバルバロイじゃなかった!世界に新たな友人を迎えるホストをわが合衆国がつとめるのだ!」

彼をはじめ、艦上の多くの兵士たちや特使たちも大なり小なり感動をしていた。
対立はするだろう。
しかし、太平洋を挟んだ隣人としての付き合いは、今日の感動的な光景にいつかは回帰するはずだ。
新たに生まれる日米の絆、それを自分はとり持たねばなるまい。
ペリーが生涯をかけて追い求める目標は、この瞬間定まった。

「全艦、礼砲準備!!」

この日、日本の近代がはじまった――


794 :ひゅうが:2013/11/10(日) 22:50:56

【あとがき】――というわけで、夢幻会と慶喜公はアヘン戦争後に海軍建設に力を尽くされたようですw
少し楽になったとはいえまだまだ喉と頭が痛い…
今日はこのへんで。

なお、ペリーさんは小笠原探検中に幕府海軍のスクーナー軍艦に遭遇。
その場の協議で江戸湾入港を許可され先導を受けてきたという感じです。

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最終更新:2014年01月29日 21:06