778 :yukikaze:2013/12/05(木) 00:11:22

皆々様方乙であります。ではお目汚しとは思いますが英国戦艦史その4
を投下させていただきます。
※転載者注.その5です。

俗に言う「マーシャル事変」の衝撃は世界を震撼させた。
世界でも1、2位を争う大海軍が全力全開でガチバトルをやったにもかかわらず、日本海軍の完全勝利で終わるという、誰もが予想しなかった結果だったからである。
アメリカの力の象徴とも言われたサウスダコダ級姉妹の全てが撃沈破され、何とか生き残った艦も、ハワイ沖で仲良く漁礁と化した末路は、まさにアメリカの凋落を示すかのような一コマであった。

そしてその光景を英国海軍は半ば諦観しきった表情で眺めていた。
当然だろう。自分達よりも艦隊戦力が上のアメリカ海軍が鎧袖一触と言わんばかりに叩き潰されたのである。
勿論、日本側も撃沈艦こそ大型艦にはなかったものの、かなりの数の艦が大中破したのだが、それでも八八艦隊のほぼすべての艦が威容を誇っていたのを見れば、誰が勝者かはおのずと明らかであった。

そしてイギリス側が憂慮したのは、自分達の戦艦戦力のリニューアルが停滞しているのに対し、いつの間にか仏伊海軍の勢力が伸長し始めた事であった。
仏伊とも戦艦保有量である50万トンを満たすつもりはさらさらなかったが、その分、個艦性能に優れた良艦を導入することは熱心であった。
両国とも、15インチ砲を装備した4万トンクラスの高速戦艦を複数隻配備することを計画したのは今の英国海軍ならば、質によって量を凌駕できるのではと考えたからであった。

こうした動きに英国海軍は頭を悩ませる。
ネルソン級が失敗であることは誰の目にも明らかであったが、しかしネルソンに代る新型戦艦のコンセプトについてはまだまとまっていないのが実情であった。
一応、4万トンクラスの高速戦艦までは同意を得られたのだが、主砲を18インチにするか16インチにするかで半ば感情的な対立が生じたのである。
英国海軍にはもう失敗するだけの余裕がないのである。

こうした状況に、英国海軍部内の妥協案として、QE級とフッド級の大規模改修を行う事で短期的な解決とし、次期新型戦艦の配備によって中長期的な解決策にしようという動きがで、争いに疲れた両派ともその妥協案を受け入れることになる。
かくして英国は1935年からフッド級とQE級の大規模改修に取り掛かるのだが、船台確保と技術交流の一環として、カナダ海軍に配備予定のQE級『ヴァリアント』『バーラム』の2隻の改装を三菱重工に発注したのである。
これは、海軍艦載機と新型高角砲の技術供与(並びに割安なライセンス生産)の見返りだったのだが、三菱重工は

「一番美しい淑女にしてみせる」

と、全身全霊を傾けて大改装を執り行い、QE級の中でももっとも使いやすい戦艦に変貌することになる。

かくして1939年までに、フッド級とQE級の大半が大規模改装を終了し(7・8番艦のキング・ジョージ5世、プリンス・オブ・ウェールズは改装中)、それぞれが4万トン級の高速戦艦及び3万5千トン級の中速戦艦へと生まれ変わることになる。
これにより英国海軍の戦力の底上げはなされるのだが、同時にそれは新型戦艦建造のリソースを減らすことでもあった。
彼らが新型戦艦建造を開始した時、欧州に再び世界大戦の足音が響いてきた。

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最終更新:2014年02月06日 21:43