478 :237:2013/12/31(火) 02:20:30
太平洋戦争の議論、永遠の0を見たことによってネタが浮かびました。
休日世界での外伝だと思ってください。

とあるパイロットです

479 :237:2013/12/31(火) 02:22:30
―――俺は、何処にでもいる極普通のパイロットだ。

他のパイロットと違うところは他人よりも少し長生きしたというところかな。
ただ、開戦以来ずっと戦い続けたパイロットであるのは間違いない。

俺の様な貴重なベテランはそう多くは無い。事実、この部隊には俺と同じように開戦当初から戦ったパイロットは極少数だ
後は、中途に入って来た補充か、数合わせの新兵しかいない

だが、その経歴は無意味である

なぜなら、ブリタニア相手には俺たちに等しく死を振りまくからだ
腕が強かろうと弱かろうと関係ない

最近では、ブリタニアも零戦を超える機体が出てきたので、損害が加速的に増えだした。
それでも、俺たちは戦わねばならなかった。なぜなら、軍人で、国を・・・故郷を・・・愛する人を守るためであった・・・



「――――中尉!もうすぐ出撃時間です!」
「おう、ありがとう」

中尉か・・・・開戦当初は曹長だったのに、上がボンボン死ぬから昇進が早くなったじゃないか
そして、中隊長を預かる立場になった・・・・。


昔は憧れた立場だったものだが、今では嫌になる。
なぜなら・・・・戦死した人の名前を覚え続けるからだ。自分が指揮した部下の名前を




「本日は基地を爆撃する、爆撃機の援護だ。不測の事態に対応するために、直掩と制空に分ける
直掩は追い払うことに専念してもらうが、制空部隊は先立って基地に攻撃する。そして現地に留まって、爆撃機の帰投を支援せよ
その制空部隊を第一中隊が執れ」
(そら、来た)
俺は、危険な任務である制空の役割が回ったことを呪いたくなった。

だが、軍人である、俺は否とは言えず、了解と返したのである



―――数時間後、俺はブリタニアの基地上空で空戦をやっていた

幸いにも攻撃は成功し、爆撃機は全機無事に帰投することができた。
それを確認した俺は無線を取り出して、命令を下す

『全機、作戦は終了した。これより帰投せよ』
『了解』
『りょう・・・あが!
『・・!どうした!何が起こった』
『お・・・大島が撃墜されました!そして、黒い機体に・・・白い十字架が見えます!』
『な・・・・黒い死神がいるのか・・・』

黒い死神、それはブリタニア皇帝の直属であるラウンズの一人に与えられた異名だ
彼らは機体に黒いカラーリングに白い十字架を施していた中隊であった

彼らとまともにやり合っては全滅必須だと判断して、急いで命令を下す

『全機、各自に撤退しろ!無様になってもいいから生きて帰れ!』
『了解です!隊長も速く!』

その無線にふっと笑みをこぼすと

『俺はここで殿を務める。普通には逃がしてくれないな。お前たちは速く行け』
『な・・・・隊長!でしたら、私も・・』
『いらん!お前達のへっぽこ腕には邪魔なだけだ!帰れ!これは命令だ!』
『っ!・・・・隊長・・・幸運を祈ります!』
『おうよ』

そう言うと、無線を切りスロットルを全開にして、雲の中に隠れ
そして、雲中から飛び出して、戦闘機1機に狙いを付ける

その弾は相手が素早く反応されて、かわしたが、これで1機追撃は行えなくなった
素早く右に旋回して、同じ様に別の戦闘機を狙うも、これもかわされてしまう

「・・・俺の射撃はうまい方だったんだけどなー」
そうごちるが、後ろに戦闘機が狙われているのを気付いていた。
戦闘機に機銃が発砲してくるも、直前にクィックロールを取って背後を取ると機関砲を撃つ
火花がいくつか散ったが、致命傷とはならなかった。しかし、黒煙が噴き出したので、追撃は不可能だろう


ふと、天井の太陽をチラッと見たら、逆光の中で2機急降下してくるのが見えた。
そこで、緩く横滑りさせて、ある地点に着いたら、急激に操縦棹を倒す

天地がひっくり返り、前には海面が見える。左横で後ろからの赤い火線が見え
直後に大きな戦闘機が見えたが、すでにOPLの枠内に入っており、機関砲を撃って、尾翼を吹き飛ばし、コントロール不能にさせる
戦闘機はキリキリ落ちて行ったが、落下傘を開くのが見えた

480 :237:2013/12/31(火) 02:23:08

(さあ!次はどいつだ?)

そう思っていたら、自分の周囲から戦闘機が離れて行くのが見えた。
入れ替わりに真正面に新たな黒い戦闘機がやってくる。

但し、十字架は血のように紅かった
「真紅がやって来たのか・・・」

俺はますます、覚悟を決める

真紅はこの黒い機体を率いるラウンズだ。情報によれば若い男性との事だが、詳しい情報は入ってこない
ただ、腕前は恐ろしいほどに強く、我が軍の多くのエースが真紅によって撃墜されたという
普通の俺には絶対敵わないエースである。

だが、それと同時に心の奥底から湧き上がるものがあった。それは、エースと戦いたかったという少年じみた憧れの様な気持ちだ

「さあ!尋常に勝負!」

そう言うと旋回に持ってくる。
もちろん、真紅も乗ってくれた。



まだ、グルグル回り続ける。乗っている零戦は旋回能力は高く、大抵の戦闘機は後ろを取れたのだが、真紅の後ろは取れなかった
それは、相手の技量が恐ろしいほどに凄いことをしていた。

「なら!?」

旋回中にロールを取る。すると、真紅もロールを取り、上下で交差し合う
まるで、ハサミのような機動である

そして、オーバーシュート気味に減速してみて、一度真紅が前に出てくるも
すぐ様、後ろに下がってしまう。

俺は狙われないように大きく左に倒す。真紅が追いかけてきたところで、バレルロールを取って
後ろを取って、機関砲を撃つも、すぐに身を崩して狙いが外されてしまう

「さすが!一筋縄ではいきませんか!」

俺は真紅を称賛する

そして、再びバックを取られた俺はそこで持てる限りの機動をするも、何処までも後ろを取り続けた
ただし、撃ってこない所を見ると狙いが付けれてないとも見えた。

「こうなったら・・・・あの秘儀をやるしかないか!」

そこで、大きく上昇する。勿論、真紅も追いかけてくる。
俺は、上昇しながら、宙返りを打つ。更には小さく周せるように、ラダー、操縦桿を左・右と絶妙なタイミングを取って小さく周す

「どうだ!?」

俺の予想では、目の前には真紅がいると予想した。
そう、いる筈だった

「えっ?」

そこは、何もない大空が広がっていた
俺は茫然と後ろを振り返った。普通に動いたのにスローモーションのように感じた
そこには、黒い色に紅い十字架をした機体が至近距離で後ろを取っていた

機銃はまっすぐこちらに向けていた
俺はそれを認めながらつぶやく

「俺は・・・・エースになれなかったな・・・・」

次の瞬間、凄まじい衝撃と共に意識が消えた・・・・・








その後、制空部隊は半数近くが帰投することに成功した
だが、その奇跡を演じた隊長は未帰還となってしまった
それでも、多くの隊員は隊長を忘れることは無かったという

まだ、戦後に記された、とあるラウンズの回顧録に
『彼は、最も勇敢なサムライであった』
と称賛されたのであった。

これは、もうすぐ戦争の終わりが見えてきた頃であった・・・・・

481 :237:2013/12/31(火) 02:24:50
終わり

空中戦闘ネタを書いてみたかった。空にも騎士がいるのでは?と思って、空のラウンズを登場させました。
これで、今年の投稿はおしまいです。来年もまた、よろしくお願いします。
みなさん、よいお年を。

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最終更新:2014年02月22日 17:07