920 :yukikaze:2014/05/05(月) 00:26:04
1950年11月。大陸での戦火は一応の終結を迎えた時、自由主義社会の盟主であるアメリカは、苦々しい顔で日ソの勝利宣言を聞いていた。
それも無理はないだろう。彼らにしてみれば、幾ら国家として問題があったとはいえ、中華民国には、東トルキスタンや福建程度ならば確実に叩き潰せるだけの実力を与えていたのであり、そして日ソの介入についても、核によって封じているという確信があったのだ。
だが、東トルキスタンと福建の必死の抵抗により、中華民国の侵攻は遅々として進まず、挙句の果てに、日ソ両国は核カードを平然と無視して軍事介入を行い勝利したのである。

空軍の一部は、「日ソに核を落とすべき」なとという意見を出したりもしたが、暴論もいい所であった。確かに核の大規模投射によって、最終的には合衆国は勝利を収めることが出来るだろうが、その代償としてアメリカ合衆国の半分と欧州の主要地帯が核で吹き飛ぶのである。
アメリカや欧州が直接攻め込まれたのならばともかく、中華という彼らからみれば辺境の地の為に、そんな博打に出てやる必要性などどこにもなかった。

と・・・なると、核抜きでの介入となる訳だが、これもまた難しい話であった。
当たり前の事ではあるが、現在の中華大陸の情勢を考えると、強力な陸軍と空軍を送らないといけない。だが、そうした部隊は、まず欧州で必要とされており、極東に振り分ける余裕などどこにもなかった。
また、『強力な陸軍と空軍』にも疑問符が付けられる。
陸軍の場合は、第二次大戦でドイツにぼこられたことから、パーシングへの改編が急ピッチで進められていたがそれですら3式中戦車と互角でしかなく、4式重戦車やT-44を相手にした場合、射的の的になるのがオチであった。
(そしてそれは中華大陸で実証されることになった)
何より陸軍は、第二次大戦でのノルマンディーやアルデンヌでの失態から「数だけは多いが烏合の衆」というレッテルを貼られており、彼らの実力については、アメリカ国内ですら懐疑的であった。
空軍にしても、潤沢な予算はあったものの、その大半は戦略爆撃機に費やされ、期待のジェット戦闘機であるF-86はようやく部隊に行き届こうとしている状況であり、数的主力はF-80やP-40Qという状況であった。
既に日ソでは疾風やMIG17が主力戦闘機として配備されていることを考えれば、これで立ち向かうのは自殺行為であった。
こうなると、取りうる手段としては海軍による砲艦外交しかない訳だが、この時期のアメリカにその手段を取ることは不可能であった。

921 :yukikaze:2014/05/05(月) 00:31:12
アメリカ海軍は強大であった。
主力となる戦艦は、モンタナ級2隻にアイオワ級4隻。そしてエセックス級12隻。
まず間違いなく最強のラインナップと言っていいだろう。
国家財政の悪化により戦艦の保有を諦め、アメリカから供与されたエセックス級3隻を運用している英国と比べたら、実力は隔絶としていた。
だが・・・その内実はお寒い限りであった。
空軍との予算獲得競争に敗れ去った事で、モンタナ級全てとエセックス級の大半は予備役扱いであり、更にレーダーや艦載機の更新もままならない有様であった。
主力戦闘機が未だにベアキャットであった事が、彼らの悲惨さを物語っているのだが、これでもまだマシな方であり、攻撃機に至っては、スカイレイダーなど影も形もなく、未だにヘルダイバーが統合攻撃機として主力なのである。
つまり、当時のアメリカ合衆国海軍の状況を要約すれば「張子の虎」でしかなかった。
それでも相手国の海軍戦力が低ければ問題なかったのだが、対峙する相手は世界最強と言っていい海軍国家であった。

大日本帝国海軍。未だかつて外敵と戦って敗れ去った事のないこの海軍は、戦艦6隻、
空母8隻を主力としており、空母の隻数ではアメリカが上回っていたのだが、レベルが違いすぎた。
まず戦艦だが、紀伊級戦艦2隻と大和級戦艦4隻が主力となっている。
大和級戦艦は金剛級戦艦の代艦として建造された高速戦艦である。
1939年のエスカレーター条項を以て建造されたのは、アイオワ級と同じ経緯であり、またその中身も似通っていた。
基準排水量45,000t、41センチ砲3連装3基兼ね備え、速度こそ30ノットとアイオワ級より劣るものの、防御力はアイオワ級を上回る高速戦艦であり、長らく日本海軍の主力であった
長門級(憂鬱版長門)や天城級(艦船スレ6yukikaze投稿ver)よりもバランスのとれた堅艦である。
そして紀伊級は、列強海軍全てが呆然とした代物であった。
基準排水量は10万トン近くあり、主砲も空前絶後の51センチ3連装砲3基。これを28ノットで疾駆するのである。
まさしく最大にして最強の戦艦であり、これを知ったアメリカ海軍はモンタナ級建造を2隻で取りやめ、同じく10万トンクラスの大戦艦であるユナイテッドステーツ級4隻を建造しようとしたほどである。
(そして空軍によって見事に撃沈された)
もっとも、戦艦の差についてはまだ何とかなるレベルである。空母に関しては絶望的とさえいえた。
日本海軍が大戦中に完成させた装甲空母翔鶴級(基準排水量45,000t。憂鬱大鳳の縮小ver)4隻だけでも頭が痛いのに、これに大鳳級4隻(憂鬱版と同じ)まで完成させているのである。
おまけに艦載機は全てジェット化されており、予備艦となっている蒼龍級(憂鬱版と同じ)6隻ですら全てがターボプロップ機。艦載機の質・量全てが圧倒的に日本が上なのである。
これだけでも「もうどうにでもなーれ」状態なのだが、巡洋艦以下でも対空ミサイル艦の就役が間近であり、潜水艦も水中高速艦が主力(極秘裏に原子力潜水艦も就役していたが)と、総合戦力で言うと「核使わなきゃどうにもならない」差がついてしまったのである。
国力が同一レベルである以上、この差は致命的であると言えた。

922 :yukikaze:2014/05/05(月) 00:33:58
故に、アメリカ合衆国は極東情勢の急激な推移になすすべもなかったわけだが、日ソが自発的に進撃を停止したのを見て色めきたった。
彼らはこれを「日ソ両国も米国との全面的紛争を望んでいない」と解釈したのである。
これは当時の日ソ両国首脳部の回顧録を見る限り、おおむね間違っていなかったのだが、彼らは再び過ちを犯すことになる。

彼らはこの停戦を利用して、中華民国へのテコ入れを計ろうとしたのである。
無論、彼らとてアメリカ合衆国の軍隊が中華民国に駐留すれば日ソを刺激することは理解していた。
そこで彼らは「国連軍」という名を利用し、更にアメリカ以外の国を停戦監視国として駐留させ、表面上は停戦状況を監視させつつ、実際には中華民国の体制立て直しが終わるまで停戦交渉を長引かせる腹積もりであった。
要は、国連監視団は日ソに対する『人間の盾』でしかなかったのだが、それに加えてアメリカは、国連監視団の一部の構成国(オーストラリア)に、日ソの行動に対しては重箱の隅をつつくように嫌がらせをするよう求め、反日感情の高いオーストラリアは、経済支援と引き換えにそれを了承している。
かくして、アメリカは機能不全に陥っていた国際連合を招集し、極東平和の為の停戦監視団派遣を要請。
日ソもアメリカへの嫌味を言いつつそれを了承することになる。
この結果に、ホワイトハウスは祝杯を挙げたとされるが、これはアメリカが蟻地獄に落ちる一歩となったのである。
何故なら、ホワイトハウスは、この後中華の論理に徹底的に振り回され続けることになるからである。

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最終更新:2021年04月15日 11:49