563 :ひゅうが:2013/12/03(火) 20:01:26

大陸日本ネタSS――「オーバーロード・ポートレート」

――西暦1947(昭和22)年12月26日 アメリカ本土 東海岸沖合

「見ろよ。ユウ。『ごっつい』光景だ。」
「確かにな。俺たちのレーコも『ごっつい』が、この光景もなんというか…」
そりゃそうだ。と偵察席のレノンが笑う。
リバプール出身の彼は、日英共同で運用されている6式「戦略級戦術偵察機」景雲に英国側代表として乗り込んでいる。
2発のターボジェットエンジンと1発の加速用テールラムジェットエンジンを有するこの機体を見せられて以来、この表現を好んで使っていた。
まぁ確かに「艦隊の弾着観測機であり空中警戒機」というこの機体は、いろいろな意味でごっついがそれ以上に眼下の光景はすさまじいな。と、山本優海軍大尉は思った。

現在の高度は5000、真下にはこれから征途の最終段階に達しようとしている上陸用輸送船団と、そこから吐き出される無数の大型上陸用舟艇。
俗に千トン大発と呼ばれる大型揚陸艇や、それを改装したロケット砲艦、大小の揚陸艇が海上で突撃態勢を作ろうとしている。

その間には、上陸海岸へ突入し直協火力支援を行う専門の「海上機動堡塁」が展開し、まるで巨大な壁がそのまま海岸へ押し付けられるようにも見える。
幅100キロを優に超える上陸正面の端はここからではかすんで見えない。
いや、搭載されている赤外線カメラを使えば見ることはかなうのだが、今は機内の電力は水平線上にいつ湧き出るかわからない敵航空機や海上艦を警戒する「ルックダウンレーダー」に向けられているために無理はさせたくはないだけだが。

上陸用船艇は一万をはるかに超えていた。
国籍もさまざまだ。欧州諸国だけでもドナウ・デンマーク・フィンランドと多彩だ。少数ではあるが自由ロシアや極東合衆国からも兵力が提供されていた。
アジアからもトルコ・タイなどが加わっているがエジプト・インドなど英連邦諸国が目立つ。
陸上兵力だけでなく彼らは航空隊や、軍艦を艦隊に派遣している。
そしてそれらの国を上回る数の「軍艦」を投入していたのは中核となる三国であった。

大英帝国、大ドイツ帝国、そして大日本帝国。
世に三帝連合といわれる諸国だ。
彼らが投入した戦力はまさに空前絶後。
戦艦62空母76(護衛空母含む)巡洋艦以下1272 作戦用航空機1万6500
このほかにも日本領新須賀に展開し連日合衆国を焼いている戦略爆撃隊のものを加えれば航空機は2万に達するかもしれない。


564 :ひゅうが:2013/12/03(火) 20:01:58

と、山本たちの機体、愛称「レーコ」号の横を戦闘機隊がフライパスしていく。
雁行編隊を組んだジェット戦闘機だ。
蛇の目や日の丸、アイアンクロイツ(鉄十字)をつけた彼らの大半は日本本土の生産設備がフル稼働して作り上げたものだった。

「畜生め。なんて数だ。」

編隊機が敬礼をするのに答礼しながら山本はつぶやく。

「肉眼で見える星の数は4000だそうですよ。」
「なら文字通り星の数を超えているわけだな。この海域は。」

そう。
山本たちの周囲を飛び越えて大量の爆弾を海岸の防御陣地へ叩きつけに向かっている機体の数はこの時点で5000に達していた。
爆撃終了後はキューバかカナダの基地に降りる機体もあったが、大半は空母機動部隊の反復攻撃のローテーションに参加するはずだった。

冷たい空気の中を白い無数の飛行機雲を引きながら、攻撃隊は速度を上げながら海岸へ向かっていく。
と、ぱっと光が輝いた。
海上艦による艦砲射撃がはじまったのだ。
これもすさまじい数だった。
艦隊は5列に分かれている。
最前列には旧式であるがその分使い込まれた八八八艦隊以来の10隻の戦艦群が英国のクイーンエリザベス級やドイツのバイエルン級戦艦とともに展開し、周囲の大型巡洋艦筑波型やロンドン級、キール級とともに最初から全力斉射を行っている。
続く列には条約型戦艦の比叡型やネルソン型、フッド型が隊列を整えていた。
さらに後方にいたのは、条約明けに建造された怪物じみた巨大戦艦群だ。
英国、セントアンドリュー級。ドイツ、フリードリヒデアグロッセ級。そして日本、大和級と常陸級。
塔型艦橋を基本にした城塞のような外見は各国ごとに特徴があり、英国のそれはドーバーキャッスルのような中世の城塞を思わせ、ドイツのそれは北ドイツの騎士たちが集った山岳の居館のようである。そして日本のそれは今も各地に残る天守閣を思わせた。
これら戦艦だけで、排水量は300万トンを超える。

「第1斉射、順調に飛行中。修正データ送る。」

レーダーに映った砲弾の弾道を解析しながらレノンが言った。

「了解。回線に異常なし。弾着観測に移行する。」

山本も返し、機長席でいくつかのスイッチを操作しはじめた。
この光景を見たものは、誰でも同じ行動に出ると信じて。

――雲に隠れていた太陽が、紺碧の海上と眼前の新大陸を照らし出す。

その間に展開する無数の艦船と、空を埋め尽くす航空機、そしてそれらの間を超音速で飛翔する大量の砲弾。
その光景をとらえた数十枚の写真は、歴史に残る大上陸作戦「オーバーロード(造物主)」、日本名「神‐1号」作戦の空前の規模を示すものとしてよく知られることになる。


565 :ひゅうが:2013/12/03(火) 20:02:38

【あとがき】――というわけで一発ネタでした。
ここまでたどりつけるのはいつの日か…w


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最終更新:2014年05月31日 08:40