232 :影響を受ける人:2014/06/07(土) 15:10:17
ライスイン様 支援SS
艦コレネタが入っています。
艦魂ネタが入っています。
艦娘=艦魂と言う扱いです。
にわか知識野郎が書いています。
残酷な描写が入っています。
自己解釈があります。
それでもよろしければお読みください。



金剛級戦艦『金剛』の狂喜・静怒・心哀・壊楽



戦艦【金剛】はイギリスで生まれた日本の戦艦だ。
生まれ出でた時、彼女はこの世に生まれた喜びと、二つの故郷を結ぶ役目を自覚する。
連装砲塔四基、細長い船体は優麗であり。
彼女自身、なによりも活発で明るい子だった。
もっとも、日本にきたらアッと今に八人姉妹になったのはさすがに引き攣ったが・・・

「私頑張りますネー! 大陸の日本と、ロイヤルネイビーのイギリスが手組んだら、敵無しネ!」

そう言ってみんなに自慢していた。
傲慢と言うなかれ。
彼女の言い分は正しく、夢幻会もそれに近い状況を目指していたのだから・・・
その純粋な期待と思いが裏切られたのは悲劇である。
生まれ故郷であるイギリスが窮地に陥ったとき、彼女は自分が見える提督などに必死に訴えた。

「今いかないと、大変な事にナルネ!」

元々は県好きだった日本は彼女の姉妹全てと、扶桑級戦艦八人姉妹のうち、四人を派遣した。
大陸国家ならでは名の派遣規模だ。
潜水艦も猛威を振るっていたが、沢山の駆逐艦たちを連れているから問題ない。
自慢の主砲を放つべく、欧州に向かった。
当初こそ想像通りだったが、運命を変えたのは独艦隊との戦いにおける英艦隊の撤退だった。

「ヘィ! どうして帰るノデスカ!!」
『仕方ないわ。うちの司令官が混濁した意識で、撤退指示してしまったの。』
「で、でもそれなら!」
『司令官は私達が見えないの・・・』
「それでもほかの幕僚が・・・!」
『・・・ごめんなさい。もう、決定されて・・・覆せない。』
「そんな!!」

有名な、


     「主たる我ら白人に奉仕する有色人種の義務を果たせ」


の電文を受け取った金剛は、急いで英艦隊旗艦の艦魂に通信を繋げて説得した。
この地に来てから少し不安だった姉妹達を、自分が仲を取り持つ形で英国の艦魂達と仲良くなった。
その友軍は・・・来ない。

『お姉さま! 味方は、味方は来るのですか!』
「ひ、比叡・・・それは・・・」
『比叡落ち着きなさい。』
『霧島姉ぇ! でも、もうすぐ艦隊決戦だよ!』
「わかっています! だからと言って、お姉さまに詰め寄っても意味が無いのよ。」

霧島の優しさが・・・嬉しくも、痛かった。
いくら大口径の主砲と言えども、数の暴力にはなかなか勝てない。

『勝手は、榛名が、許しません!』

主砲を放ち、敵を撃つ。
しかしこちらが放つ以上の砲弾が降り注ぎ、確実に傷つけていく。

233 :影響を受ける人:2014/06/07(土) 15:10:51

『きゃぁぁぁぁぁ!!』
「榛名!」
『お姉さま! 前を向いて下さい!!』
「でも、榛名が・・・!」

後ろで黒煙を上げてのたうち苦しむ船体を・・・妹を見て蒼褪める。
あれはまずい、誘爆でもしたら確実に沈む!

『だ、大丈夫です・・・注水が間に合いました・・・』
「榛名・・・よかった。」

痛みに苦しみ、よろけながらも報告をしてきたことに安堵し、少しだけ気が緩んだ。
それがいけなかったのか、砲弾彼女を削った。

「あああああ!!!」
『『『お姉さま!!』』』

幸い砲弾は弾薬庫ではなく、舷側の一部を削るだけに終わった。
しかしこの損傷により海水がなだれ込み、行き足が鈍ってしまう。
仕方なく金剛は先頭を二番艦の比叡に譲り、自らは排水作業をしながら隊列の後方に移っていく。
しばらくして調子を取り戻し、再び線れるに戻ったとき・・・榛名の三番砲塔基部に砲弾が直撃、注水できずに爆発し、そこからへし折れて轟沈した。

「・・・・・・はるな?」

応答は無かった。
悲鳴すら上げられずに沈んでいった。
あまりの出来事に金剛は茫然としてしまう。
相手は格下の戦艦のはず。なのになんであの子が死んでしまったのか?
必死に考えていても何も考えられない状態に陥ってしまい、混乱で思考が混濁していく。

それに影響されたのか、彼女の放つ砲弾はなかなかな命中せず。
ただ焦りだけが募る。
霧島が大破して漂流し、比叡が艦橋に直撃を喰らって戦闘不能になり、敵の猛連射により次第に喫水線を下げて海中に没した。
金剛は気を失った比叡を必死に起こそうとした。
だがその甲斐なく彼女は目の前で沈んでいく。
敵は確実に減っている。でも・・・
味方もどんどん落後していき、東郷提督が指揮不能になり混乱したのも拍車にかけた。
戦闘の流れは、どうにもならなかった。

敵艦体がボロボロになって撤退した時、残ってたのは扶桑級が三隻と、金剛と霧島のみ・・・
金剛も大破状態だったが、曳航可能だ。
すぐに作業が始まったが、彼女の視線は姉妹で唯一残っていた霧島に向けられていた。

「キリ・・・し、ま・・・」
『お姉さま・・・』
「終わった。終ったカラ、帰ろう・・・」

金剛は裏切ったイギリスをもう故郷とは思えなくなっていた。
一刻も早く日本に帰りたかった。
残った霧島が彼女を支えていた。

『・・・ごめんなさい』
「え?」
『私は・・・もう、持ちません。』

絶句する。
見た目の火災はそれほどでもない、ならばどうして?

『喫水線以下の浸水が止まりません。』
「は、早く防水扉を!」
『機関部が死にました。排水も出来ません。
 それに・・・先程雷撃処分が決定しました』

血だらけの霧島が、手すりに寄り掛かる様にして艦尾に立つ。
右腕は折れているのか有らぬ方向を向き、両足から流れ出る値は止まる気配がない。
トレードマークのメガネは無く、口から流れ出るものはせき止められない。

『ごめんなさい。一緒に帰れそうもないです。』
「そんな・・・そんな!」

234 :影響を受ける人:2014/06/07(土) 15:11:25
必死に這いずって残された妹の元に向かおうとする。
両腕で必死に動かすが、行き足の止った己の体の様にまるで進まない。

『あなたの妹で・・・良かった・・・』

霧島が敬礼をし、綺麗な笑顔をする。
思わず手を上げて止めようと声を上げた・・・
しかし無慈悲にも、魚雷直撃の水柱が二人の間を遮る。
そして水柱が消えた時・・・もう霧島の姿は無く。
有ったのは艦尾を下にして沈んでいく残骸だけだった。

「あ、ああ・・・」

上体を起し、座り込む。

「いや・・・」

涙があふれ出る顔を両手で挟み込むように掴む。

「イヤァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

最後の妹が死んだ。
それを否定したい。
でも目の前で妹だったものが沈んでいく。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!!!!!!!」

もう悲鳴は声にならない。
慟哭が響き渡り、悲鳴を上げる自分が気に入らないかの様に爪でガリガリと引っ掻き続けた。
皮膚が裂け、血が流れ出ても辞めず。
彼女が見える人物が慌てて止めに来るまで、その行為は止まらなかった。

戦争が終わり、日本に帰国した彼女に待っていたのは労いの声ではなく、嘲りと罵り、そして侮蔑の視線。
常日頃から英国の肩を持っていた金剛に対し、今回の裏切り行為は艦娘達にとって許せないモノだったのだ。
だから彼女以外の艦魂に対しては優しかったが、誰も近寄ろうとはしない。
そして金剛も何も反応しない。
いくら感情をぶつけてみても、帰ってくるのは沈黙だけ。

鬱憤が溜まった一部の艦娘が船内に入り、彼女達しか知らない部屋に侵入した。
直接罵ってやろうとした彼女等は、異様な部屋の惨状に息を飲む。
整えられた英国式の部屋だったその場所は無残に朽ちている。
その部屋を言い表すならば 残骸 と言った方がいい。
時折お茶会に呼ばれた事のある艦娘には、信じられない惨状だった。

その部屋の主が片隅に座り込み、壁に顔を向けていたのを共に入ってきた艦娘が見つけた。
そっと近寄り、声をかけると・・・金剛はユックリ振り返る。

「ひっ!」

彼女の眼はどす黒く汚れm、光が無い。
更に掻き毟った爪の跡が顔に残り、以前の美貌はかけらもない。
頬はコケ落ち、自慢の栗毛色の髪は白くなっている。
お団子のように纏めていた髪はボサボサで、手入れを一切していないのがわかった。
口からは涎が流れ出て、下にたまっている。

服装もボロボロのまま・・・
金剛の異常な様子を見て、あわてて残っていた扶桑級戦艦を呼んだ。
それなりに分別をつけ、金剛を許していた彼女等は優しく声をかけ・・・金剛は恐怖にゆがんだ顔と絶叫を上げて暴れだした。
物をぶつけるとか、殴りかかるというわけではない。

自分の頭を壁に打ち付け、爪が剥がれるくらいに壁を引っ掻き始めたのだ。
驚いた艦娘達は取り押さえようと掴みかかる。
だが金剛は暴れつづけ、拘束から逃れようとする。
遂に部屋から飛び出し、通路を走っていく。
最悪の事態を恐れて艦娘達も追った。

235 :影響を受ける人:2014/06/07(土) 15:12:01
艦内中捜し、外に出た所でようやく見つけた。
艦尾の片隅で、何かを恐れる子ども様に小さくなり、小さな声で必死に謝り続けている彼女を・・・
それから艦娘たちは必死に彼女を支えはじめる。
何時自殺しないとも限らない様子を見て、必ず二人以上張り付く。
新しく生まれた艦娘を紹介し、見える事が出来る人間達も彼女を癒そうと努力を続けた。

それが功をそうし、次第にオドオドしていた様子が消え始め。
艦娘を見ても怯える事が無くなり。
扶桑級姉妹をばったり会っても狂乱せず、何とか対応出来るようになっていった。
金剛は今後練習艦となり、ヒヨコたちを育てることが決まったとき。
あるイベントに呼ばれた。

1937年5月20日 イギリス ジョージ6世戴冠記念観艦式

再び欧州にやってきた金剛は、ただボーっと英国を見ていた。
大好きだった紅茶はもう飲んでいない。
得意だったスコーンも作っていない。
何も感情が浮かばない。
彼女にとって英国など、どうでもよくなっていた。

ココにあるのは辛い思い出だけ。
さっさと帰って、お茶が飲みたかった。
その様子を英国の艦魂である艦娘達が複雑な思いで見ていた。
以前は快活だった彼女は、今では見る影もない。
自分達の意思ではないにせよ。裏切り行為を働いてしまった後ろめたさがあった。

何か言ってほしい。
罵りでもいい。
侮蔑でもいい。
何か言ってほしかった。
だけれども、金剛の視線はどこも見ておらず。

彼女達が視界に入っても何の反応もなかった。
そんな時だった。
あるモノが目に入った金剛から・・・暗い、暗くて静かな怒気が膨れ上がっていく。

ジョン・ジェリコーの銅像

それを見た瞬間から金剛の雰囲気は様変わりした。
まるで影のような空気から、地獄の業火が吹き上がる様に。
金剛は銅像を見ながら嗤う。
金切り声のような声で嗤い続ける。
それを見たその場にいた艦娘達は一様に息を飲み、自らが殺される姿を幻視した。

「私達は・・・とんでもない物を生み出してしまったのかもしれない・・・」

英国の艦娘の呟きは、叫びを押し殺すように震えていた。
帰国した金剛の様子はまた変わっていた。
以前のような快活な雰囲気に変わっていたのだ。
それに安堵する者、心の内を想像して震える者・・・
ただ忠実に金剛は動き続けた。

世界が三大国家を中心に、欧州を食い物にしている間でも。
戦争がまた始まっても。
金剛は変わらなかった。
海戦を全て打ち崩し、勝利して、これ以上の艦艇の増産は無意味となり。
小型船舶に絞って建造し始めた時、金剛は最後の奉公として欧州の輸送船団護衛隊旗艦として向かった。

艦齢が古くなり。
そろそろ退役してもいい頃だったから。
最後の花道として、今回の任務が下された。
潜水艦相手の戦いは以前経験していた事もあり、更に装備も以前とは比べ物にならない。
カルガモよろしく輸送船団と、駆逐艦を率いて何度も輸送作戦に従事し。

完全に守りきれなかった時でも被害は最小限に収まった。
何度目かの輸送作戦の時に通信が入った。

236 :影響を受ける人:2014/06/07(土) 15:12:33

【イギリスより、有力な艦隊が出撃。輸送部隊は航路を変更せよ。迎撃可能な部隊は発見しだい攻撃せよ】

この通信を聞いた金剛は努めて笑顔だった。
それを横目で見ながら草鹿龍之介中将は小さくつぶやく。

「金剛、進路を変更するぞ。」
「ハァイ。わかりましたネ~」

返事は良い。
しかし笑顔のままなのが不気味に思える。
いかに私怨を持とうとも、任務は任務、輸送船を守るのが仕事だ。
この時草鹿龍之介中将は油断していた。
近海には友軍の大艦隊がおり、自分達には関係ないと・・・

そんな思いとは裏腹に、事態は思わぬほうこに動いていた。
敵の必死の行動によりドーバー海峡を突破。
一安心したカニンガム大将は、このままどこに向かうかと思案する。
橋頭堡に向かっても意味は無い。むしろ袋叩きにされる可能性がある。
となると・・・

「カニンガム大将。偵察機が輸送船団を発見したようだが?」
「ジェリー(超巡洋戦艦ジョン・ジェリコーの略称)・・・それは本当か?」
「ああ・・・・・・軽空母がいるのがな。」
「これ以上悩んでいても仕方がないな。攻撃目標をその輸送船団にする。」

命令にきびきびと動く兵士達を見詰めて思う。

(済まない・・・こんな決死作戦など、させたくなかった・・・)

心の内で謝り、指示を出していく。
先手必勝なのは変わらないから全力で攻撃隊を発艦させる。
だが護衛の艦隊は思っていたよりも強く、全機撃ち落されしまう。
落胆したカニンガム大将だったが、突撃命令を下して空母に避退命令をだした。

「退避しないだと?」
「ああ、【コロッサス】は退避しない・・・」
「なぜだ! 艦載機が無い今、残っていても。」
「『的は多い方がいい』だそうだ。」
「・・・・・・・・・すまない。」

嘆き悲しみ、カニンガムはコロッサスの方を向いて謝る。
そして敵艦載機が襲撃してきて、コロッサスは自ら囮となって沈んだ。
だが、被害は甚大だった。

撃沈
軽空母コロッサス
軽巡洋艦リアンダー
トライバル級駆逐艦×4

大破
トライバル級駆逐艦×2

中破
トライバル級駆逐艦×2
超巡洋戦艦ジョン・ジェリコー(後部第3砲塔射撃旋回不能 速度15ktまで低下)

リアンダーもジョン・ジェリコーを庇って撃沈したが、砲塔を一つ潰されたのは痛い。
更に最悪な事に、戦闘機の機銃掃射で照準装置に不具合が出ている。
各艦に被害が出ており、引くともできなくなった。
もう出来る事は、無謀な突撃しかなくなっていた。
幸いなことにもうすぐ夕暮れ・・・

艦載機は出せない。
護衛空母の様な小型の空母ならなおさらだ。
そこに勝機がある。勝ったならば・・・投降しよう。
そう心に決めて敵に向かっていった。
彼等は知らなかった。今から立ち向かう敵艦が、とんでもな悪魔だという事に。

まだ日が明るいうちに衝突した両軍は一時反抗戦だったが、追い抜きそうになった護衛艦隊はすぐに反転、同行戦に入った。
敵の陣容はわかっている。
巡洋戦艦と重巡洋艦二隻、駆逐艦四隻。
敵帰還を潰したいジョン・ジェリコーは最大射程で砲弾を放つ。

237 :影響を受ける人:2014/06/07(土) 15:13:14
味方の駆逐艦はどれも損傷している。
突撃させてもやられるだけ、ならば護衛に徹しさせる。

「とにかく【金剛】さえ潰せば!」

何度も試射し、精度を高めていく。
レーダーは戦闘に入った途端に壊れた。
修理するのも惜しい、とにかく放って当たりさえすれば!
そんな思いを知らない金剛は、艦首に立って必死に砲弾を放つ敵を見る。
味方の駆逐艦は果敢に攻めているが、こちらの敵も必死に妨害している。

しかし重巡の砲撃が命中すれば崩壊する。
そんな事を考えているのだろうか?
      • 違う。
断じて違う。
金剛は嬉しそうに、狂気の笑みを浮かべていた。

誰にも見られない場所で、暗い狂喜を、静かな憤怒を、妹達を見捨てた国に対する心哀を、相手を破壊する壊楽を得るために。

「撃て。」

底冷えする声と共に放たれる砲弾。
そして砲弾は敵艦を覆うように着弾した。挟叉だ。

「撃て。」

再びはなたれた砲弾。
今度は二発命中した。

「撃て。」

二発命中、うち一発が砲塔基部に命中するも注水が間に合ったようだ。
爆沈しない。

「撃て。」

放つ。

「撃て。」

放つ。

「撃て。」

敵艦がもだえ苦しむように反撃する。
しかし金剛は許さない。
髪を掻き毟り、ガリガリと削る。

「撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て
 撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て
 撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て
 撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て
 撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て
 ウテェェェェェェェぇェェ!!」

狂ったような笑い声と共に金剛は泣き叫ぶ。
その度の砲弾はジョン・ジェリコーを削っていく。
猛烈なパンチを受け続けているジョン・ジェリコーにはわからなかった。
何故敵は当てられた自分は当たらない?

「がはぁぁぁっ!」

艦腹に当たった砲弾が激痛をもたらし、その場に崩れ落ちる。
彼女は艦尾にいた。
そこから金剛を見詰めている。
わからない。
わからな過ぎる。

238 :影響を受ける人:2014/06/07(土) 15:13:47
ただわかるのは・・・敵がこちらを激しく憎悪している事だ。
艦娘の卓越した視力は、狂気の笑顔で、涙を流し、髪を掻き毟り、暗く汚れきったオーラを出した艦娘しか映っていない。
出航前にきいた話を思い出す。
この地で生まれ、この地で裏切りにあった悲劇の船を・・・

ああ、そうか・・・
だからか・・・
これは、贖罪なのだな・・・

砲弾が艦橋を破壊した。
火にあぶられる事無く即死したのは、幸いなのか不幸なのか。
少なくとも戦火の業火に見舞われる故郷を見なくてよかったのかもしれない。
味方の駆逐艦を撃沈した護衛艦隊の駆逐艦が、避けられない距離で雷撃を放つのが見えた。
それを呆然見て・・・直撃した。

跳ね上がる船体に釣られて自分も宙に舞いあげられる。
そこに金剛の砲弾がやってきた。

(ああ、これで・・・楽なれる。)

砲弾は彼女の体を粉々に打ち砕いた。
海戦は終わった。
轟沈をした敵艦を見て金剛は只立泣き続けた。

「皆・・・やったヨ・・・」

フラフラと後退り、足をもつれさせて尻もちをつく。

「は、はははは・・・」

乾いた笑い声が響き渡る。
俯いて両手で自分を抱きしめ・・・顔を再びあげた時には狂気は無く。
子供が泣くような顔で、グシャグシャになっていた。

「皆、仇とったよ・・・」

あふれ出る涙。
感極まった金剛は暗くなって一番星が見え始めた空を仰ぎ見る。

「皆の仇、討ったネェェェェェ!」

大声で叫んだ。
自分の出来うる限りの声で叫んだ。
慟哭の叫びは艦魂を見れない者達にすら聞こえさせたほど。

「だから・・・」

しかしそれは歓喜であり、そうではなかった。

「だから・・・許して・・・」

金剛はただ哭く。

「許して・・・皆、許してヨ・・・」

艦体が合流しても、提督が駆け付けても金剛は泣き続けた。
これにより金剛が救われたかわからない。
どうなったのかも知らない。
彼女に幸多からんことを・・・



以上です。
ちょっと暗い御話になりました。
金剛大好きな皆様、申しわけありません。
でもこの世界だと彼女、結構不幸なのです。
第六艦隊の子達に癒されているといいな・・・

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最終更新:2014年06月16日 22:28