開戦が決意してからは、戦力を少しずつ夜にまぎれて日数をずらして移動して行く
衛星や偵察機、スパイに見つからないように、あらかじめスピオトフォズが綿密に偵察したルートで移動していく

森の中で黒い機体が数日かけて集結していく


そして、国境線をひそかに超えて、それぞれ部隊を北部隊・中央部隊・南部隊の3つに分けられ
最終的には、各攻撃部隊は基地の近くのうっそうと茂る森の中で集結することになっていた


私は最終出発組でクルトとリエラと同じく南部組であった。サザーランド・ソードマンのコクピットの中で
クモモドキの後をゆっくりと付いて行った


やがて、森の中でも、上面は木と葉に覆われているが、地面は開けた場所に辿り着いた
先に付いていたマザーの指示に従って、駐機して停止すると降りて行く

マザーナンバー達は蟻のようにサザーランド・ソードマンに群がると整備を始める


私は周りを見回すと、あるものは昼間から酒を飲んでいたり、あるものは読書したり、あるものはポーカーをやっていたりと
それぞれが、何かをやっていた。クルトは、スカウト組と一緒に真剣に話し合いをしており、リエラは木の根元で昼寝をしていた

隊員達は思い思いに過ごしながらも笑いあっていた




私は、彼らの中に加わることなく、その場をそっと離れた・・・・












私が木の根元で体育座りしながら顔を埋めていると、ザッザッと足音が聞こえる
顔を上げてみれば、クルトが皿を持ってやって来た

「イムカ、ここにいたか。食事の時間なのに、姿が見えないもんだから、探したぞ
どうだ?食べてみるか?」

クルトはいつもと変わらぬ笑みを浮かべて、問いかける。
だが、私は

「いらない」
本当の事だ。食欲が湧かないのだ。

「やれやれ」
クルトは苦笑すると、隣に座る

「イムカが食べたいと言うまで待っているよ」



それから、二人は無言だった
もうすぐ、戦争がはじまると言うのに、場違いにも平和な森だった

小動物や鳥が鳴き、木々がざわめく

「・・・クルト」
「ん、どうかしたか?」
「・・・私は・・・怖い。私は成し遂げねばいけない事があって、軍に志願した。
でも・・・・実際に戦争に参加して、私は怖かった。戦場の酷さは知っていたが
想像以上に酷かった・・・なのに、あいつらは笑っていられる。どうしてだ?クルトは怖くないのか?」
私はせつせつと言う

思い出すは、数か月前に、ムノウ大佐が出した無謀な救援作戦だ。
出だしは順調だったが、いつの間にかキルゾーンに嵌められたワイバーン隊が全滅した作戦だ
その過程で多くの命があっさりと消えて行く様は常人には分からない気持ちだろう


クルトはうーんと難しい顔をしながらいう
「俺の体験談になるが、聞くか?」
「かまわない」

私は聞きたかった
「そうだな・・・実は俺も怖いんだ」
「クルトもなのか?」

私は驚いた。クルトから怖いという言葉を聞くとは
「ああ、俺の作戦と指揮が作戦の成功か失敗かに転ぶ。成功すればいいのだが、闇雲に人の命を消費しては果たして成功と言えるのか?
更に、失敗すれば、自分の指揮した部隊のみならず、戦線全体の部隊にも後方の部隊にも危機になる。つまり、自分の指揮が部隊を左右するんだよ
        • それに、自分が立てた作戦・指揮にどれだけの命が失われるかなんて考えたくもない。だから、怖いんだよ」

クルトはそういって、ため息をついたが、私はまだ、納得できなかった
「・・な・・・なら!どうしてあいつらは笑っていられるんだ!あんな風に馬鹿みたいに・・・」
「・・・俺もそうだが、あいつらもここまで生き延びたのは運としか言いようがないんだ。
ほんの数センチ離れただけの戦友が目の前で死んでいく。中には庇われた者もいるだろう
俺たちは、死んでいった者達に生かされているんだ。だから、生きている事がどれほど
尊いことか・・・いつでも死んで、後悔しないように笑い合うのだよ」
「生かされている・・・」
私はポツリとつぶやくように言う


「イムカも生かされた経験はないか?」
「そんなことは・・・ない・・・はず・・・」
「なら、その人を思いながら、生きろ。生きて・・・戦い抜いて・・・・家庭に入ることが最大の供養になるだろう」
「クルト・・・」
「俺から言える事はそれだけだ。ほら、食事を置いて行くから食え」

そういって、お皿を置いて立ち去っていくクルト
私はいつの間にか食欲が復活しており、モソっと食べた


            • 美味しい








それから、まもなく開戦となった・・・・

終わり

スレを見たら、最後に投稿したのが10スレ以上も昔だったw
もちろん外伝もちょくちょくはさんでいますから、違いますけどね

なにはともあれ、もうすぐ開戦です。そして二二三様のリクエスト完了したぞー!!
しばらく脳を休めよう。疲れた

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最終更新:2014年08月17日 17:49