ペトロザウォーツクは陥落した。
それは間違いない。

しかし、ペトロザウォーツクの領地のカレリア州の半分はEU勢力圏内であり
今、現在も野戦防衛陣地にEU軍がペトロザウォーツクの再奪還を目指して大攻勢していた

バルドレン司令官はそれだけでも頭が痛いと言うのに、内部にも問題を抱えていた

まず、一つ目はカレリア州政府は北欧に帰順しながらも、EUが勝てるだろうと予測の下、妨害をする政治家達がいて、政府が統一して無い事
これには、拘束や軍政を掛けてもいいのだが、戦後の問題が面倒になるため、おいそれとやる事が出来なかった


二つ目は、カレリア軍が静観している事
これは、政府が統一的な見解を出していないため、北欧軍に協力をしなかったのである。EU軍にも協力しないだけマシと言えるが・・・
これも強硬策を仕掛けるには問題がありすぎた為に実行していない


三つ目は、ペトロザウォーツクには大勢の民間人が残っていた事
この事は、バルドレンも予想外の事であった。民間人は多少残っているだろうと予想はしていたが、実に60%近くの15万人がいたのである
これは、北欧軍の進撃速度が速すぎた事、EUの工作員が北欧の占領政策に負担をかける為に工作をした事が原因であった
で、現在はロシア系のEU派とフィン系の北欧派と二分して、いがみあっているとか
今は睨みあいだけで済んでいるが、いずれにしても内戦状態になるのは確実だった


「どうにもならんな・・・・」
バルドレンは憂鬱そうに呟く



ペテロザウォーツク内にある飛行場に偵察機が降り立つ
偵察機は連日離着陸しているから、誰も気にする事は無かった

「・・・・殿下、体の加減は?」
「ありがとう。大丈夫よ」
謎の会話を残して



広場には大勢の民間人が集まっていた
そこには、炊き込みがやっており、食料の配給に並んでいたが些細なことで
険悪な空気に包まれていた

「どうせ、北欧軍は勝てないんだ!今から遅くないEUに戻ろうぜ!」
「何を言ってる!EUがどれだけ弱かったのか、先の戦争で分かったじゃないか!」
「あれは、ジャップとブリキが強すぎただけだ!ラップランド(北欧の蔑称)と一緒にするな!」
「なんだと!俺達の事を馬鹿にしてるのか!?」
「おう、やんのかよ!」

一触即発な事態が包まれる中で、綺麗な声が通る


「皆者共!喧嘩を止めて私の話を聞け!」
その声に民衆は手を止め、声がした方を向ける
そちらに向けてみたら

「あ・・・・コーデリア姫殿下だ・・・」
誰かが呟くように言う
そう、コーデリア・ゴットルプ=グリュックスブルクがいたのである


「私は、コーデリア・ゴットルプ=グリュックスブルク。
皆も知ってのとおり、スカンジナヴィア王国の国王名代である。
本日には皆に伝えたい事があってここに参ったが、先に伝えたい事がある」

そういうと頭を下げて
「そなたたちの住み場所を戦場にして申し訳ない。家や家族を失った者もいる事だろう。国王に代わって謝罪を申し上げる」
「あ・・・いや、頭下げる必要無いですよ・・・」
「そ・・・そうですよ。戦争でしたし・・・」
民衆は戸惑いながら、頭を下げないでほしいと言う


「ありがとう・・・・・そなたたちが不安を感じているのは当然である
我々、スカンジナヴィア王国は北欧三州の国とは言え、EUと比べると小国であり、EUは弱体化したとはいえ強大な国だ。
そのまま、独立しないで、EUに留まり続けるのも選択肢の一つであろう
        • しかし、それが最善と言えるのか?」
コーデリアは問いかけるように聞く


「EUはフランス革命を機に、王政政治から、市民による市民の政治を目指した、民衆政治を始めた
その、考えは素晴らしいと言えるだろう。市民が参加する平等な政治だから。しかし、実際はどうだ?
市民平等と唄いながらも一部の企業と政治家が都合のいい政治を行い、貧富の差は広がるばかりではないか
逆にEUが否定した、立憲君主政治をとった大日本帝国と神聖ブリタニア帝国はどうだ?
彼らはお互いに協力し合い、競争し、世界第一位と第二位の国となった。そして、彼らを支援したユーロブリタニアが
欧州に帰ってきて、欧州の大半を王政復古し、欧州の経済を見事に向上させたではないか」
ここでまたも言葉を切り、責めたせるように言う


「翻るにEUはどうだ?
彼らは、変わらぬ政治を取り続け、少数民族・非主流国への圧政を強いているばかりではないか
ロシアなどのEU主流国は変わらぬ暮らしをしていると言うのに、我々ばかりにツケを払わされ続けている
このような腐敗政治を続けるEUには、もはや未来は無いと言えるだろう」
そして、大きく手を振り


「だから、我々は立ちあがったのだ!
このまま、坐して衰退していく未来を歩み続けるよりも、自分でよりよい未来をつかみ取る為に!
しかし、我々の力は弱い・・・だが!1の力を複数に合わせれば、10の力に・・・
10の力を複数合わせれば100の力となるように、決して負けない力を持つ事ができる!
スカンジナヴィア王国はカレリアが必要なように・・・カレリアもまたスカンジナヴィア王国が必要である!
どうか、共に手を取り合って・・・輝かしい未来を勝ち取りましょう!
その為に貴方達の力を貸していただきたい!」
コーデリアの演説が終わると同時に、民衆は爆発的な歓声を上げた

「ウラアアアーーーー!!」
「コーデリア姫殿下テルべ!!」
「スカンジナヴィア王国バンザーイ!」
先ほどまでいがみ合ったのが嘘のように肩を組み合ってコーデリアを称える
コーデリアは彼らに手を振ると、ゆっくりと去る

彼女の姿が見えなくても、歓喜の声は上げ続けたのであった


「コーデリア姫殿下様・・・・」
バルドレンは突然着いたテレビの中継で演説を見て感動したかのようにつぶやく

と、突然、部屋の中に兵士が入ってきて、敬礼をするや、持ってきた紙の報告書を上げる
「バルドレン司令官!カレリア第一軍から連絡です!『我、馳せ参じる!』とのことです」
「!それは本当か!?」
「はい!他のカレリア軍も参軍知らせが入っています。そして、作戦の指示が欲しいとのことです」
「そうか・・・よし!参謀長達を集めろ!急いで作戦会議するぞ!」
「了解です!」

そういって、兵士は敬礼をして、慌ただしく部屋から出る

その様子を見送ったバルドレンは呟く
「・・・勝ったぞ!」
小さく、強い確信を持った言葉だった



その後、ネームレスが後方を攪乱し、EU攻略軍が混乱した所を、北欧軍・カレリア軍の合同部隊が強襲し、撃退に成功するのだった

後の歴史家が言う。
真の北欧独立戦争の始まりはここからだったと・・・・・



終わり

ニコニコ動画でたまに見かける、泣ける演説を考えるのは大変だった・・・
こんな駄目な演説ですが、どうかご勘弁を

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2014年08月17日 17:39