33 :ライスイン:2014/12/20(土) 21:36:15
 1907年11月某日 アメリカ合衆国 ホワイトハウス


「大統領閣下、駐オランダ大使からの報告ですとオランダは債務の支払いに応じようとしません。」

国務長官がルーズベルト大統領に報告する。

「そればかりか債務の減額に加えて資金援助まで要求してきました。」

「それで・・・奴等は何を対価にしているんだ。」

続いた報告にルーズベルト大統領は額に青筋を浮かべ名がら質問する。

「日本との戦争に勝利し・・・得られた利益から支払うとしか・・・・・。」

「チクショーめぇぇぇっ!!」

その言葉を聴いた瞬間、ルーズベルト大統領は机を叩きながら絶叫をあげた。

「あれだけ借りておいてもっと貸せだとぉ!!、返す当てもないくせにアンポンタンがァっ!!

「あの・・・非常に言いにくいのですがベルギーとポルトガルも債務の減額や資金援助の要請を・・・」

怒り狂う大統領に対して申し訳なさそうに追加の報告をする国務長官。

「よかろう、議会の同意は取り付けてある。奴等がそのつもりなら此方から取り立ててやる。」

落ち着きを取り戻した大統領。そして・・・

「国務長官、商務長官、陸軍長官、海軍長官、法務長官・・・準備はできているな。」

「はい、すでに事務や折衝に当たる官僚は選抜済みです。」国務長官

「対象地の資産は調査済みです、いつでもいけます。」商務長官

「治安維持部隊およびMPも編成完了しています。」陸軍長官

「各艦隊および海兵隊の準備は完了しています、事務専用の船舶も準備済みです。」海軍長官

「法律上も抜かりありません、奴等に文句は言わせません」法務長官

各閣僚からの準備完了報告に大統領は満足げに頷く。

「では行こうか諸君、わが国を都合のよい金蔓扱いする旧大陸人共を丸裸にしてやるのだ。」

34 :ライスイン:2014/12/20(土) 21:36:55
孤立大陸 第7話「落ちる白・広まる黒」


 1907年11月、欧州同盟は驚愕に包まれていた。イタリア領エリトリア・フランス領ジブチおよびイタリア領ソマリアに日本軍が上陸したのだ。
これは事前に計画されていたもので講和会議開催前に船団ごとメダンに終結していて決裂と同時に出向していたのだった。

○イタリア領エリトリア

陸上:歩兵師団×2、自動車化歩兵連隊×1、海軍陸戦隊(旅団)×1

海上(艦砲支援):戦艦扶桑、山城

○フランス領ジブチ

陸上:歩兵師団×1、海軍陸戦隊(旅団)×1

海上(艦砲支援):戦艦伊勢、日向

○イタリア領ソマリア

陸上:歩兵師団×2、個自動車化歩兵連隊×1、海軍陸戦隊(旅団)×1、実験戦車中隊(※1)

海上(艦砲支援):戦艦伊賀、伊予

○紅海封鎖艦隊:戦艦長門、陸奥、常陸、周防 装甲巡洋艦筑波、生駒

そして更なる恐怖

遊撃艦隊:戦艦加賀、土佐 巡洋戦艦天城、赤城、愛宕、高雄  巡洋艦古鷹、加古 夕張、雨竜 川内、神通、那珂

完熟訓練も終了した41cm砲9~12門の巨大戦艦群及び新形式の巡洋艦群がついにその姿を現したのだ。
防護巡洋艦すら存在せず、雑多な警備艦しかない現地欧州海軍では太刀打ちできず、破滅的な艦砲射撃の後に悠々と上陸を開始した。
当然の事ながら軽装備の植民地警備隊やそれ以下の現地人部隊では真面に抵抗できず、極めて短期間で占領されていった。
この事態に欧州側は何もできなかった。
英国は当初日本側に

「スエズ運河の通航は認めない」

と通告してきたが日本側は英国が同盟各国の艦隊を通過させていることを指摘し、

「これ以後同盟の部隊を通過させた場合は戦争協力とみなしてスエズ一帯を占領する」

と通告。英国もやむを得なく受け入れた為、日本側もスエズを利用した欧州攻撃は出来なくなったが逆に同盟側もアジアへの最短ルートを
使用できなくなった。それは同時に植民地を奪還する術を失った事でもある。
また長くなった日本軍の補給線を攻撃しようにも日本軍は過剰なくらいの護衛を付けていた。もっともそれ以前にアフリカ東部の拠点を
虱潰しに艦砲射撃で破壊されていた為に通商破壊艦艇を展開させることも出来なかったが。
また日本軍もアメリカとの秘密協定(※2)によりポルトガルやベルギーの植民地への攻撃は避けていた。
これだけでも同盟にとっては深刻な打撃であった。そして次なる恐怖が彼らを襲う。

35 :ライスイン:2014/12/20(土) 21:37:26
「オランダ、ベルギー、ポルトガルは我が国からの債務の支払いを拒否し貿易代金の支払いも滞っている。にも関わらず戦争を続行し
 我が国に資金援助や債務の減額を要求してきた。我が国はこの事態に対して確実に債務を取り立てるためにこれら3国の植民地を代償として
 接収する。」

11月下旬某日、ルーズベルト大統領の宣言と共に米軍が動き出した。建造が早められた事で就役していたサウスカロライナ級や
デラウェア級といった新型戦艦すら投入された米艦隊、通称”債権回収艦隊(※3)”は手始めにカリブ海のオランダ領アンティル各地や
南米のスリナムを11月中に占領。現地では抵抗すら起きなかった(※4)。

「次はアフリカにおける植民地を接収する。」

12月1日に発せられたルーズベルト大統領の宣言の通り、”債権回収艦隊”はアフリカへ向けて動き出した。
一連の行動について同盟各国や英国は

「アメリカによる対日協力行為である。」

と声明を出して即座に中止と接収地の返還を求めたが

「債務支払いを拒否する3国に非がある。嫌なら即座に何らかの形(※5)で支払うか英国から借りて返せ。」

との言葉が返ってきただけだった。
この結果、12月中にベルギー及びポルトガルのアフリカにおける植民地がアメリカによって接収された。
無論3国も取り返したかったが債務を返す当てもなく、奪還する兵力すらなく、アメリカによる対欧州宣戦布告に繋がる為に断念した。
また付随効果としてアメリカから資金を借りている他の欧州同盟諸国からの返済が滞りなく行われるようになった。


 1907年12月某日 東京 夢幻会会合場所

「アメリカもやりますな、割に合うかは別として。」

「だが追い詰められた同盟が何をしてくるか・・・。」

会合参加者が話し合っていく。現状では日本が圧倒的に有利である。
心配された補給に関しても占領地の港を簡単であるが改修して大型艦も利用できるようにし、試作移動式ドックや多数の工作艦も動員して
万全の態勢を敷いていた。

「実験戦車中隊も問題なく戦果を挙げているな。

実験的に編成した戦車部隊の活躍に満足する一同。そこへ・・・

「駐スイス大使館からの緊急報告です、フランス国内でペストが蔓延し始めているとの事です。周辺国にも広まりを見せていると。」

「なんだと、何が原因なんだ。」

衝撃の報告に驚きを隠せない会合参加者。

「本国での政情不安定に対応するために植民地駐屯部隊を多く呼び戻していましたのでそれが原因かと。」

この報告は真実であった。相次ぐ敗北で政府への不満が高まっていた同盟各国ではデモやストライキ、暴動が多発していた。
特にフランスではその動きが多く、そのためにアフリカ駐屯部隊を呼び寄せて治安維持に当らせていた。帰還した部隊の多くが体調不良
に陥っていたが状況が状況の為、即座に投入されたが実は彼らの多くがペストに感染していた(※6)。
この時点で死者はフランス国内だけでも感染者は1万人を超え、死者も数百人に上っていた。
このペストは”フレンチ・ペスト”と称されるようになり徐々に猛威を拡大していった。

36 :ライスイン:2014/12/20(土) 21:37:56
「わが国は念の為に開発しておいたペニシリンなどの抗生物質がありますが・・・・。」

「彼らにはそれがない、黒き悪夢再びといった所か。」

念の為に用意しておいてよかったと安堵する彼ら。

「普通ならこの時点で講和を申し出てくるだろうがあいつ等の事だ、決戦でも挑んでくるだろう。」

同盟の対応に懸念を示す会合参加者。その懸念は当たっていた。

 同盟各国はこの状況を打開するために紅海周辺の日本艦隊に決戦を挑んで撃破し、アジアへの道を開くことで植民地奪還を可能にすると共に
低下し続ける国威や威信、そして国民の支持を回復することを狙っていた。更に国内資本家や白人至上主義者らの突き上げを食らった英国が
ドレッドノートを旗艦とする義勇艦隊を同盟側に派遣することを決定した。

※1:40式戦車(重量12t 18口径57㎜砲×1、6.5㎜機銃×1 装甲厚最大25㎜ 12㎞/h 乗員3名 史実チハを小さくし車体前面に機銃を装備)×16両
   と砲塔を取り外して短砲身の76.2㎜砲をオープントップ形式(展開式屋根付き)で固定装備した40式自走砲×4両で編成。

※2:米国が債権回収の為に占領するので攻撃せず、代わりに戦略物資の融通や情報提供で便宜を図る取り決め。

※3:実力で債権を回収するために特別編成された艦隊。戦艦・装甲巡洋艦や海兵隊・陸軍を満載した多数の輸送船に各省の官僚が乗り込んだ複数の
   大型船(チャーターした大型客船)で編成されている。

※4:借金を返さないという弱みや圧倒的な力の差に加え、米国の参戦を招きかねない事から抵抗は行われなかった。

※5:本国内での鉄道管理権や主要企業の株式・経営権の譲渡に無期限での軍隊駐留権や領内通航自由権など自国内の権益を代わりに差し出す事でも
   良しと伝えていた。

※6:原因は様々だが現地人・動物との不用意な接触や密林に展開中に蚊に刺された事が原因ではないかとされている。


 如何でしょうか? 遂に一部の同盟参加国にブチ切れたアメリカが行動を起こしました。
アメリカに債務がある国は戦々恐々とし、返済財源確保の為に植民地からの収奪と増税に走りそれが余計に国内の不安定化と植民地の治安悪化に
繋がります。そして遂に登場した天城に加賀、そして戦車部隊。更に再び訪れるペストの悪夢。

~予告~

後がない欧州同盟は英国義勇艦隊の援軍を得て紅海周辺に展開中の日本艦隊に決戦を挑む。その頃日本では同盟の往生際の悪さや英国の不誠実さに
激怒しある作戦の実施が許可されていた。

次回”同盟の悪あがき、紅海海戦” 

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最終更新:2015年01月31日 19:40