30 :ライスイン:2014/12/08(月) 21:57:16
1906年5月13日、欧州同盟軍が海南島へ向けて出港した翌日、脅迫して停泊・補給を容認させていたタイ王国で事件が発生していた。

「陛下、急ぎ王宮を脱出してください。欧州軍がすぐそこまで迫ってきております。」

「軍が抵抗しておりますが力の差は大きく全滅は時間の問題です。」

側近からの報告にタイ国王ラーマ5世は苦虫を噛みつつ脱出を決断する。
今現在、タイ王国は欧州同盟軍の一方的な宣戦布告による攻撃にさらされていた。
切っ掛けは欧州同盟軍艦隊主力の出港前だった。上陸していたイタリア軍兵士がタイのご婦人を強引にナンパしようとした事だった。
騒ぎを聞きつけたタイの警官隊が現場に到着し制止したが邪魔されたイタリア兵達が逆上し発砲。双方に死傷者が出た。
同盟はこの件を利用してタイ側に港湾の租借や軍隊の駐留権、犯人の引き渡しや賠償を要求したが当然の如くタイ側は拒否。
拒否の回答を受けた同盟各国は

「わが軍の兵士を殺害した悪逆非道な無法者を討伐する。」

と声明を出しタイ王国に宣戦布告。
砲艦や駆逐艦に援護させたイタリア軍1個師団とフランス植民地兵1個師団、スペイン軍1個旅団に
モンテネグロ軍1個小隊(2個中隊中戦闘可能な数。残りは疫病や食中毒でダウンし接収したタイの病院に収容)を投入。
圧倒的な戦力により首都バンコクは陥落寸前になっていた。
以後、タイ王国は奥地に後退しつつ徹底抗戦を宣言。全土より兵力を集中しつつ機会を待つことになる。
また日本はこの事態を受けてタイ王国支援を表明した。
英国も一度は非難の声明を出したが水面下で同盟側から権益保障ほか優遇措置を持ちかけられ口を噤んだ。
また米国はこの暴挙を激しく非難し制裁として同盟向け戦略物資の大幅値上げを実施した。

                  孤立大陸 第4話「海南島沖海戦」


 1905年6月16日未明、海南島沖に帝国海軍連合艦隊が集結し欧州同盟軍主力艦隊を待ち受けていた。
司令長官東郷平八郎大将が率いる艦隊の戦力は

○第1艦隊 戦艦:10 装甲巡洋艦:6 巡洋艦:7 駆逐艦:22

戦艦 長門(連合艦隊旗艦)、陸奥

戦艦 扶桑、山城、伊勢、日向、伊賀、伊予

戦艦 河内、和泉、摂津、讃岐

装甲巡洋艦 鞍馬、伊吹、磐梯、乗鞍

装甲巡洋艦 筑波、生駒

巡洋艦 球磨、多摩、北上、大井、木曽

巡洋艦 天龍、龍田

駆逐艦 若竹型8隻 神風型14隻

31 :ライスイン:2014/12/08(月) 21:57:48
○第2艦隊 戦艦(旧式):10 装甲巡洋艦(旧式):6 防護巡洋艦:7 駆逐艦:18

戦艦 薩摩、安芸

戦艦 香取、鹿島

戦艦 敷島、初瀬、朝日、三笠、十勝、羅臼

装甲巡洋艦 春日、日進、

装甲巡洋艦 出雲、磐手

装甲巡洋艦 八雲、吾妻

防護巡洋艦 筑摩、矢作、平戸

防護巡洋艦 新高、対馬

防護巡洋艦 笠置 千歳

駆逐艦 神風型18隻

○第3艦隊 巡洋戦艦:5 巡洋艦:6 駆逐艦:4

巡洋戦艦 金剛、比叡、榛名、霧島、剣

巡洋艦 長良、五十鈴、名取、由良、鬼怒、阿武隈

駆逐艦 海風、山風、浦風、江風

という帝国海軍の総力を挙げた大艦隊であった。
出撃に際して英国が観戦武官の派遣を申し出てきたが”身の安全を保障できない”など様々な理由を付けて断った。
しかし一部の艦は就役後間もない為、練度に不安はあったが・・・。

対する同盟側は名目上はロシア主導のため、総指揮はロシアのグリゴーリイ・チュフニーン大将(派遣艦隊司令官任命後に昇進)が取り、
編成は

○第1群(ロシア、ベルギー、ポルトガル)戦艦:7 防護巡洋艦:3

戦艦:モスクワ級(旧英R級)モスクワ、ウラジオストック、ハバロフスク、オデッサ、ボロディノ級スラヴァ

戦艦ブリュッセル 戦艦リスボン (両方とも旧英バーフラー級)

防護巡洋艦:ボガトィーリ級3隻

○第2群(フランス オランダ)戦艦:13 装甲巡洋艦:4 防護巡洋艦:6

戦艦:ブレニュス、シャルル・マルテル、カルノー、ジョーレギベリ、マッセナ、ブーヴェ、シャルルマーニュ級3隻、イエナ

戦艦:マールテン・ハーペルソン・トロンプ、コーニンギン・レゲンテス級海防戦艦3隻

装甲巡洋艦:デュプレクス級3隻、デュピュイ・ド・ローム 防護巡洋艦:フリアン級3隻、アルジェ級3隻

○第3群(ドイツ、トルコ)戦艦:12 装甲巡洋艦:2 防護巡洋艦:6

戦艦:カイザーフリードリヒ級5隻、ヴィッテルスバッハ級5隻、トゥルグート・レイス級戦艦(旧独ブランデンブルク級)2隻

装甲巡洋艦:フェルスト・ビスマルク、プリンツ・ハインリヒ

防護巡洋艦:ヴィクトリア・ルイーゼ級5隻、防護巡洋艦ハミディイェ

32 :ライスイン:2014/12/08(月) 21:58:19
○第4群(イタリア )戦艦:6 装甲巡洋艦:3 防護巡洋艦:4

戦艦:レ・ウンベルト級3隻、ルッジェーロ・ディ・ラウリア級3隻

装甲巡洋艦:ヴエットール・ピサニ級3隻

防護巡洋艦:エトナ級3隻、ジョバンニ・バウサン

○第5群(オーストリア)戦艦:3 装甲巡洋艦:1 防護巡洋艦:2

戦艦:ハプスブルク級3隻、装甲巡洋艦:カイゼリン・ウント・ケーニギン・マリア・テレジア 

防護巡洋艦:カイザー・フランツ・ヨーゼフ1世級2隻

○第6群(スペイン)戦艦:2 装甲巡洋艦:1

戦艦ペラヨ、バルセロナ級(旧英R級)2隻 バルセロナ、カタルーニャ 装甲巡洋艦エンペラドル・カルロス5世

その他に

○輸送船団 

装甲巡洋艦マルコ・ポーロ(艦隊より脱落していたがタイ停泊中に追い付いてきた)

駆逐艦:10 特設砲艦(※1):12 輸送船:多数

○タイ侵攻部隊援護艦隊 防護巡洋艦ゲフィオン(艦隊より脱落していたがタイ停泊中に追い付いてきた) 駆逐艦:6 砲艦:9

という編成であった。
士気の統一が完全とは言えず、駆逐艦以下の艦艇はタイ侵攻部隊の支援や後方の輸送船団護衛に送り込んでいるため、支援艦艇が
極端に不足していた。また体調不良の兵士も多く、戦闘能力が低下しているなど無数の問題を抱えていた。
そして・・・


 1905年6月16日09:00 両艦隊は海南島沖にて会敵した。ここに史上初の超大規模海戦の幕が開ける。

「な・・・なんなのだ、あの巨大な戦艦は」

先頭を進んでいた第1群旗艦モスクワの艦橋は驚愕に包まれていた。否、モスクワだけではなく第1群のすべての艦が。
なにしろ日本側の2つの艦隊の内、片方(第1艦隊)が途轍もなく、そして多数の主砲を持つ艦で構成され、それが高速で迫ってくるからだ。

「う・・・撃てっ!!」

焦った一部の艦が命令を待たずに独断で発砲する。しかし当然のことながら日本艦隊のはるか手前で着弾する。
そして・・・破滅は訪れる。

「全艦砲撃開始」  「砲撃開始っ!!!」  「撃てぇー」

旗艦長門の艦橋で東郷長官の命令が響き渡るや第1艦隊に属する戦艦・装甲巡洋艦が一斉に砲撃を開始した。

「ぐぁっ、なんだこの水柱の大きさは」  「損害を報告しろ」

日本艦隊が発砲した時、彼らはまだ余裕だった。距離が2万以上離れているため絶対に当らないと思っていたのだ。

「ベルギー戦艦ブリュッセル爆沈、戦艦スラヴァ大破。」  「ポルトガル戦艦リスボン大傾斜、沈没しまーす」

いきなりの味方戦艦の轟沈報告に動揺を隠せないモスクワ艦橋。

「不味い、後方の味方と合流するのだ。このままでは不利だ。」

チュフニーン大将が命令を下す。しかしその時、戦艦扶桑の放った砲弾がモスクワ艦橋に命中。
彼を乗せたまま欧州同盟軍総旗艦モスクワは海底に沈んでいった。

33 :ライスイン:2014/12/08(月) 21:58:59
ほぼ同時刻、欧州同盟艦隊遥か後方を航行中の同盟軍輸送船団。
彼らの士気は緩み切っていた。日本海軍如きに負けるはずがない、彼らは勝利を確信していた。
自分たちは日本領土に乗り込んで日本人を駆除して富を奪うだけ・・・そう考えていた故に迫りくる艦隊の発見が遅れたのだ。


「「「「私たちの力、見せてあげるね~」」」」

第3艦隊旗艦金剛の艦橋で上記のセリフが響き渡った。司令・参謀長・艦長・副長(※2)の4人が一斉に叫んだのだ。
そして白ける環境、周囲は静寂に包まれた。

「船団まで25000を切りました。」

見張り員からの報告に我に返る金剛艦橋。そして船団との距離が2万を切った頃・・・

「金剛を先頭に全艦突撃、すべて海に沈めるのだ。」

司令官の号令のもと、金剛を先頭にして船団に突入する第3艦隊。そして行われる一方的な殺戮。
数時間にわたる戦闘の後、欧州同盟軍輸送船団は文字通り全滅。
降伏が間に合ったトルコ軍2個師団を除き、10個師団・3個旅団の陸兵と数万にも上る水兵・船員が魚の餌となったのであった。


~主戦海域~

「やはり無傷とはいかぬか。」

長門の艦橋で東郷長官が呟いた。敵第1群を壊滅させている最中に2~6群が合流し陣形を整えたのだ。
そして砲戦が開始されようとしている時に横から第2艦隊が殴り込みに成功。欧州同盟艦隊を半包囲する形となり乱戦になった。
性能と練度に優れ、優位に戦う連合艦隊だが敵の数は多くこの時点で戦艦十勝、羅臼、初瀬、朝日 装甲巡洋艦筑摩、矢作などが沈没。
防護巡洋艦以下も損失を出していた。長門も目立つだけに攻撃が集中したが小破に留まっていた。

「やはり損害は第2艦隊に集中していますな。」  「旧式だから仕方ありません。上村司令官もよくやってくれています。」

秋山参謀長らの会話の通り、損害は比較的旧式艦の多い第2艦隊に集中していた。

「そこまでだ。あと少しで決着がつく。」

参謀たちの会話を遮るように東郷長官が話す。
目前の欧州同盟艦隊はすでに無傷の艦は居なかった。主力艦は大破状態のレ・ウンベルトのみ。
残った他の船も中~大破状態であった。

「この一撃で決着を付けろ、撃てぇー!!」

東郷長官の言葉と共に無数の41・36・30.5㎝砲弾がレ・ウンベルトへ放たれる。そして発生する爆音と水柱。
それらが消えたとき、レ・ウンベルトもまた消えていた。

その後、行われた残敵掃討は夜になる頃には終了。欧州同盟が威信をかけた主力艦隊は海南島沖にて消滅した。

※1:2000~3000t級の輸送船に47㎜~15㎝級の艦砲を搭載した特設砲艦。船団護衛の為に急きょ用意された。

※2:4人とも転生者で前世は歴戦のT督。それぞれ金剛型4姉妹を嫁にしていたらしい。

34 :ライスイン:2014/12/08(月) 21:59:47
おまけ

日本海軍艦艇一覧(巡洋・駆逐艦)~1907 (機銃は表示省略)

○古鷹型巡洋艦(9000t 20.3㎝45口径連装砲×3、12.7㎝40口径高角砲×6、試製61㎝4連装魚雷発射管×2 32kt)
 01:古鷹(1907年5月) 02:加古(1907年7月)

○夕張型巡洋艦(3141t 12.7㎝40口径連装高角砲(砲塔型)×2、7.6㎝40口径高角砲×2 試製61㎝連装魚雷発射管×2 33kt)
 01:夕張(1906年12月) 02:雨竜(1907年1月)

○川内型巡洋艦(5595t 14㎝50口径連装砲×3、7.6㎝40口径高角砲×4、53.3cm連装魚雷発射管×4 33kt)
 01:川内 02:神通 03:那珂 全艦1906年9~12月就役予定

○長良型巡洋艦(5570t 14㎝50口径連装砲×3、7.6㎝40口径高角砲×4、53.3cm連装魚雷発射管×4 32.5kt)
 01:長良 02:五十鈴 03:名取 04:由良 05:鬼怒 06:阿武隈

○球磨型巡洋艦(5500t 14㎝50口径連装砲×3、7.6㎝40口径高角砲×4、53.3cm連装魚雷発射管×4 32kt)
 01:球磨 02:多摩 03:北上 04:大井 05:木曽

○天龍型巡洋艦(3500t 14㎝50口径砲×4、7.6㎝40口径高角砲×2、53.3cm3連装魚雷発射管×2 31.5kt)
 01:天龍 02:龍田

○筑摩型防護巡洋艦(5000t、14㎝50口径砲×8、7.6㎝40口径高角砲×4、53.3cm魚雷発射管×4 26kt)
 01:筑摩 02:矢作 03:平戸

○新高型防護巡洋艦(3360t、14㎝50口径砲×6、7.6㎝40口径速射砲×10 23kt)
 01:新高 02:対馬

○笠置型防護巡洋艦(史実通り米国製) 01:笠置 02:千歳

○吉野型防護巡洋艦(史実通り英国製) 01:吉野 02:高砂

○須磨型防護巡洋艦(史実通り) 01:須磨 02:明石


○磯風型駆逐艦(1227t 12.7㎝40口径高角砲×3 53.3㎝連装魚雷発射管×3 33.5kt)
 01:磯風 02:浜風 03:天津風 04:時津風 全艦1907年3~5月就役予定

○海風型駆逐艦(1150t 12.7㎝40口径砲×3、7.6㎝40口径速射砲×2、53.3㎝連装魚雷発射管×2 32kt)
 01:海風 02:山風 03:浦風 04:江風

○若竹型駆逐艦(850t 12.7㎝40口径砲×3、53.3㎝連装魚雷発射管×2 32kt)
 01:若竹 02:呉竹 03:早苗 04:早蕨 05:朝顔 06:夕顔 07:芙蓉 08:刈萱

○神風型駆逐艦(550t 7.6㎝40口径速射砲×2 53.3㎝魚雷発射管×2 29kt)
 01:神風~32:綾波  32隻

○春雨型以前は本土防衛及び予備


如何でしたでしょうか。戦闘描写が苦手なため、碌に交戦シーンを書けませんでしたが
海戦はこれにて終了。運よく降伏が間に合ったトルコ軍2個師団(とその輸送船)以外は全滅。
残るはタイ侵攻部隊と現地武装勢力にボコられている各国の植民地駐留部隊だけといった状態です。

~予告~

欧州同盟の大艦隊は壊滅した。この機に日本軍はアジア各地の欧州軍の撲滅を開始する。
しかし何故か大陸と半島では日本軍惨敗の噂が広まっていた。
火の手が上がる大陸、そして極東に迫るロシア第2陣50万。

次回”燃える大陸、燃え尽きる半島”

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最終更新:2015年01月31日 19:45