11 :ライスイン:2014/11/25(火) 16:43:22
注意:この大陸日本は技術は進んでいますが味方は誰も居ません。
   最初は長々と文章が続きます。


1905年7月31日  極東ロシア・ハバロフスク  陸軍第3軍


「遂に此処まで来たな。」

「漸くです、これであの皇帝も講和を受け入れざるを得なくなるでしょう。」

第3軍司令官である乃木希典大将の言葉に参謀長の:伊地知幸介少将が返事を返す。
この極東ロシアの要衝であるハバロフスクは激戦の末に昨日付で第3軍が占領していた。

「彼らの奮闘のお蔭でしょうな・・・ここまでやれたのも。」

2人は共に夢幻会の構成員(非転生者)であり彼らの目的に賛同して協力していた。




         孤立大陸 第1話「勝ち過ぎた代償」



 舞台は江戸時代中期に遡る。
江戸時代初期から徐々に現れ始めた彼ら逆行者は徐々に集結し始め組織化を開始。
そして7代将軍徳川吉宗(※1)の頃に「夢幻会」として再編成された。将軍自身が逆行者だったお蔭で
庇護を受けた彼らは徐々に権限を拡大し、代が変わるころには朝廷とも繋がりを持つ「影の幕府」と呼ばれるくらいに
影響力を得た。
そして様々な改革や革新、それから得られた成果を下に日本の大規模な改造を実施。
ペリーが来航する頃には複数の蒸気動力軍艦を保有するまでになる。
 それを武器に卑屈になることなく外交を行い、生麦事件(※2)から発生した薩英戦争が起こるも何とか切り抜けて諸外国と
対等な関係を結ぶことに成功する。
 日清戦争では初の対外戦争(北方での対露紛争除く)であり、国全体が緊張したものの予想を覆すほどの勝利の連続で終結。
大陸にあまり深入りしたくなかった為、遼東半島全体ではなく代わりに旅順を含めた大連一帯と海南島を割譲させた。
しかしそれが列強による干渉の呼び水となった。

 「ロシア」「フランス」「ドイツ」だけでなく「オランダ」「ベルギー」「スペイン」「ポルトガル」「イタリア」「オーストリア」という
史実以上の干渉である9か国干渉(※3)を招き、大連一帯の割譲を放棄せざるを得なくなってしまった。
(海南島については平時は最低限の軍備しか置かないことを条件に放棄を免れた)。

12 :ライスイン:2014/11/25(火) 16:43:56
この理不尽な干渉の後、国全体が「臥薪嘗胆」を合言葉に猛烈な勢いで軍備を拡大。新型の火器のほかに英国から購入した
軍艦を元に純国産の艦艇(※4)を次々と就役させていった。
 また「前回」を経験した者達は英国に対して不信感を抱えていたものの、戦略上の必要性から同盟交渉に同意し、史実同様に
日英同盟が結ばれる事となった。そして日露戦争が幕を開ける。

 大方の予想を裏切って開戦当初から日本軍は連戦連勝だった。
旅順口攻撃では三景艦による長距離砲撃の隙を縫って口内に機雷を敷設。更に数日後に行われた閉塞作戦が成功し
旅順艦隊を無力化(後に陸海からの砲撃により壊滅)。
その後も陸戦においても優位に進め、旅順要塞攻撃では艦砲改造列車砲の他、須式迫撃砲や散弾銃に短機関銃に火炎放射器といった
兵器(※5)を導入していた為、相応の損害を出しつつも比較的短い期間で攻略。
回航してきたバルチック艦隊との日本海での海戦に対しては大陸化による国力増大により新型艦や主力艦を数多く揃えた日本側が
史実以上の一方的勝利を飾り、病院艦や降伏した艦を除き全てを撃沈した。

 日本軍はその後も進撃を続け満州全域を占領。一旦停止してロシア側へ講和を勧告するも無視された為、止むを得ずロシア領内へ進撃。
ウラジオストクや北樺太を陸海軍の共同作戦で占領。その後も進撃を続け1905年7月末には要衝ハバロフスクを占領。そして冒頭に戻る。


「米国の仲介で講和会議が来月中頃には始るな。」

「はい、大本営からは満州総軍を通して再度の進撃停止と自衛以外での戦闘は禁ずるとの通達が来ております。」

乃木と伊地知が会話を続けていると・・・。

「しっ失礼します、だ・・大本営からの緊急連絡であります。」

満州総軍司令部から派遣されてきた連絡将校が息を切らせながら慌てて入ってきて乃木に連絡文を渡した。

「こ・・・これはっ!!」

分を見た途端に絶句する乃木。

「どうしたのです・・・なぁ!!」

横から見た伊地知も絶句した。連絡文には


”フランス・ドイツ・イタリア・オーストリア・オランダ・ベルギー・スペイン・ポルトガルが我が国に宣戦を布告。派遣軍の準備に入りつつあり”

と書かれていた。

13 :ライスイン:2014/11/25(火) 16:45:15
このフランス等による対日宣戦布告の犯人はロシア皇帝ニコライ2世であった。
当初は甚大すぎる損害や自国の重要拠点を占領された事によって臣下の説得もあり一度は講和を了承していた。
しかし次第に”有色人種に惨敗して領土を奪われた皇帝”として歴史に名を刻まれる事の恐怖や革命の機運により地位を追われる事への不安が日々募っていた。
そして不安や恐怖が頂点に達した彼は独断である行動を起こす。
英国を除く欧州各国の王室や政府、主要な新聞各紙に書簡を送ったうえで声明を発したのだ。その内容は要約すると

「これは欧州白人文明の危機である。野蛮な有色人種の白人社会への侵略を欧州諸国が一致団結して阻止するべきだ。」

これが欧州各国の主要な新聞に掲載されたお蔭で各国の反日世論は予想を超えた高まりを見せた。
そして様々な思惑もあり、ドイツとフランスが宣戦を布告。数時間遅れでイタリアとオーストリアが宣戦し更に数時間後に残り4か国が宣戦を布告した。
更に日本の不幸は続き、欧州各国の対日宣戦布告を見た清国が日清戦争や義和団事件の痛手から立ち直ってないにも拘らず宣戦を布告(※6)。
おまけに大韓帝国内では反日勢力によるテロが発生。そして軍の一部を義勇兵(※7)と称して密に清国へ派遣した。

 この事態に日本は全軍に非常態勢を取らせつつ各種兵器を緊急に増産。そして英国へ同盟国としての参戦を求めた。
しかし帰ってきた返事は

     ”我が国は英日同盟を破棄し、中立を宣言する”  という一方的な条約破棄宣言であった。

 この事態に日本は全国民が国家民族の存亡をかけた戦いを覚悟する。
しかし一度は一路の講和会議を仲介したアメリカが(何故か)英国と共に再度講和を勧告。
欧州側もアメリカの面子を潰し関係が悪化することを恐れて講和会議の開催を了承。日本も裏切った英国が講和仲介国に名を連ねた事に不信と不満を感じるも了承。
結局講和会議は参戦国を増やしつつも1905年9月10日にアメリカのポーツマスで開かれることが決定した。


※1:将軍としては優秀であったが奇抜でエキセントリックな行動から”暴れん坊将軍”のあだ名を付けられた。ごく一部で「中身は富○じゃないか?」との疑惑あり。

※2:島津家の行列を目撃した英国人一行が警告に従わずに”中指を立てる”や”サルの物まね”をして挑発した為に切られた事件。その後に賠償交渉の決裂から
   薩英戦争が勃発。双方が相応の被害を出し、結局は白紙和解となった。またこの時、コバンザメの如く英国艦隊に同行していたベルギーの軍艦が英国の撤退勧告に
   従わずに攻撃を続行し、島津側に接舷切込みを敢行され乗っ取られている(後に爆破処理)。

※3:ドイツとフランスについては史実通り。オーストリアはドイツへの付き合いで参加しイタリアはエチオピアへ敗北したことで低下し続けた威信回復の機会と考えた為。
   ベルギーは薩英戦争での恨みからでオランダは有効よりも自国植民地に対する引き締め効果を優先し、スペインは「有色人種なら少しくらい強く出ても問題ないだろう」
   と低下し続ける国威を回復する機会と捉え、ポルトガルは「このままではマカオが危ない」と勝手に危機感を抱いて参加した。

14 :ライスイン:2014/11/25(火) 16:45:46
※4:富士級までは英国に発注し、以後国産に切り替えた。以下一部紹介

 敷島型戦艦:主砲の30.5㎝砲を45口径へ、副砲を50口径14㎝砲へ変更。魚雷発射管を撤去し機関出力も強化し最大速力19kt。
       01:敷島 02:初瀬 03:八島 04:三笠 05:十勝 06:羅臼

 香取型戦艦:45口径30.5㎝3連装砲塔を前後に1基づつ搭載した3連装砲塔実験艦。その為、基本設計より大型化し速度も若干低下した
       中間砲は搭載せず50口径14㎝砲副砲を装備している。19kt  01:香取  02:鞍馬

 薩摩型戦艦:45口径30.5㎝連装砲を全部に背負い式に2基、後部に1基の計6門搭載した新型戦艦。香取型と同じく実験艦的な性格が強い。
       副砲も連装形式で砲塔に収められ、対小型艇・気球名目に40口径7.6㎝砲も搭載している。22kt  01:薩摩 02:安芸

 河内型戦艦:4隻建造中。1905年末には全艦就役予定。連装形式の主砲を背負い式に前後に2基づつ搭載した全く新しい戦艦。

※5:須式迫撃砲=ストークス・モーター、国内の技術者により開発。 散弾銃:ウィンチェスターM1897。米国からの輸入&ライセンス生産。
  短機関銃:トンプソンM1919擬き。口径8mm×21、30発箱型弾倉。試作品を緊急増産。 火炎放射器:不明

※6:国内各地で暴動や反乱が多発。地方・中央でも横領やピンハネが横行。陸軍は装備の更新も出来ておらず海軍に至っては壊滅したまま。
   にも関わらず欧州各国の対日宣戦布告を見てこれなら勝てるかもと楽観的になり、日本憎しの感情もあって勢いで宣戦布告した。

※7:100名程度。装備や兵站などは清国に依存。

15 :ライスイン:2014/11/25(火) 16:46:19
あとがき

落日の欧州の番外編が進まない中、新作を投下してしまいました。
今回は早期の権力掌握により国力や技術力が大幅に上がっていて更に不平等条約とか一切ないという設定ですが代償として
味方は一切存在しません。良くて中立です。
またそのおかげで落日では扱いの良かった国々も劣化し敵対します。そして定番ですが英国は今回も「汚英」です。
落日では落日では少なかった会話も多くできるようにします。

~予告~

 アメリカ(と裏切ったイギリス)による仲介で恥じまる講和会議。しかしロシア(と欧州&清国)側は日本が絶対に受け入れることが出来ない
条件を突きつける。そして日本へ更なる苦難が・・・。
 次回”茶番の講和会議” 果たして日本は国を守れるのか?

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最終更新:2015年01月31日 19:51