608 :ルルブ:2015/02/13(金) 08:59:48
「最終話 みらいに告ぐ 」



ユリアンは妻のカリンと共にカルフォルニア共和国のある墓地を訪れる。
そこにはこう記されていた。

「ヤン・ウェンリー」

「フレデリカ・グリーンヒル・ヤン」

『最愛の伴侶と共に、永久の旅に出る』

と。
彼ら二人を夕焼けが照らし、影を作る。
そして、彼らは去った。



これから記載する物語にはあえて日付を残さない。
だが、私、ヤン・ウェンリーは皆に知っておいて貰いたい。
この世界にはたしかに望まれなかったが、それでも精一杯生きようとした人々が存在していた事を。

609 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:00:20
第一幕

「何故こうなったのか、分かるにな、芳男」

父親が銃口を向ける。
後ろには数名の憲兵隊がいた。

「はい、分かっております。全て覚悟の上でした」

「では後悔はないのだな」

「ありません」

母が泣いている。
父も泣いている。
本当に後悔はないのだろうか?
それともそう信じたいだけ?

「村中、連れて行ってくれ」

「分かった」

そう言って僕はこれから先一生出ることのない監獄に送られる。
月に二度、合計1時間だけ両親との面会は許さる。
が、それも父が自分が退役する事で責任を表明したから。

『東条閣下にお話があります』

そう言って始まった土下座により、息子の死刑だけは免がれた。
だが、本多芳樹大佐は二階級降格となり、パナマ基地の憲兵隊副司令官に島流しとなる。
その後もマリアナ諸島、沖縄基地など純軍事的に決して重要ではない拠点の一介の少佐として勤務。
それから20年間、体を酷使し、退役時にようやく中佐にまで戻してもらえたが、彼の軍内部での出世という事は無くなった。
帰国も年に数回しかなかったという。
だが、その代わり息子よりも2年先に病没できた。
妻の波は、それだけは良かったと心から思っている。
やつれた息子の死に目に会うことなく、そして二度と息子と会わない事で己の責務を全うした。
また、神戸のアドルフ・カミルは一冊の書物を書き上げる。
それは「あるドイツ人の物語」という題名。
大日本帝国で生まれた日独混血児がナチス・ドイツ第三帝国の政策で歪み、純潔という血統にとらわれ、しかも恋した相手が滅ぼすべきユダヤ人の女性。
運命に翻弄されて、同じドイツ人のドイツ軍からも笑われて死んだドイツ人は帰国すら叶わない。
彼は、ここで徹底的にナチスの言う人種差別を批難する。それは後に大ベストセラーとなり、反ナチス運動を大いに盛り上げる。



出典 「アドルフに告ぐ」

本多芳樹     (大日本帝国陸軍憲兵中佐 退役)
本多芳男     (本多家一人息子 国家反逆罪・情報漏洩罪にて軍刑務所に終身刑)
本多波      (本多家妻。息子に先立たれること1年ながらも、半世紀、息子と共に生きる)
アドルフ・カミル (亡命ユダヤ人協会委員長、あるドイツ人の物語作者)

610 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:00:52
第二幕

「もどったのね、007」

MI6の局長席に座るM局長。
彼女は忌々しげに洒落たスーツで入ってきた男、ジェームズ・ボンドを睨む。

「ええ、なんとか」

彼はあろう事か大日本帝国内部で大量のドイツ人連続殺人事件(表向き)を引き起こした。
ドイツの伍長閣下はお怒りであり、首相は大笑いだった。
そう、彼の持ち帰った時計とメガネにドイツ要人らのブラックファイル。
我らが望んでいた以上の結果を彼は大英帝国と円卓会議、そして国王陛下に献上する。

「香港で死んだと聞いたのだけど?
では、これは無駄だったかしら」

香港で彼は事故にあった。
それは香港総督府のスワン総督やノリントン提督らの手助け。
彼とエリザベス・スワン、ウィリアム・ターナーの手引きでドイツの香港にいたコートの下の短剣を安全に回避した。
そう、香港で大英帝国円卓会議により、大日本帝国での責任を取らされて粛清された、という形で。
まあ、威風堂々とヒースロー国際空港に来れば直ぐにバレただろうが。

「なんです?」

一通の文面。
簡潔なもの。

『大英帝国と国王陛下に忠誠を尽くした、大英帝国最高の紳士、ジェームズ・ボンド中佐。
全ての国民に愛されて、祖国の大地に眠る』

と。

「ええ、とても無駄だった」

それを屑篭に叩き込むM。
何がです?
007は尋ねる。と、叩き込んだ紙にインクで丸をつける。

「たしかに、惜しい文面ですね。本当のことだけに」

どこが。
印がついた場所。

『大英帝国最高の紳士』

という一文。

「最高の紳士、という文面ですよ」

悪い冗談を言うな。
Mの顔にそうでる。
傍らで報告書を書いていたQは爆笑した。

「まあ、いいわ。で、そこのQが変な事と妙な人形集めの為にまた日本に行きたがってる。
貴方から彼を止めなさい。
それと、何か次の配属先はある?」

ではお言葉に甘えて。
どうぞ。

「ペンウッド卿の部下にしていただきたい。知らず知らずの内に私は彼には命を救われていたようだ。
意味通り、文字通り命を賭けて。
だから恩を返したいのですが?」

よろしくお願いします。
珍しく頭を下げる007に、Mは一言。

「珍しく控えめね、いいわよ、元々そのつもりだったから」

「僕はそんな事より日本に帰りたいんだけど・・・・あ、無視かい・・・・・待ってくれ007」

ボヤくQを尻目に、007はアストンマーティンの置いてある駐車場に颯爽と向かう。
ワルサーPPKと共に。

「ところ、007、君の名前って本当はなんなの?」

ああ、こいつ本当に日本のコミケの事しか頭にないのだな。
まあ、いいか。

「ボンド、ジェームズ・ボンド」



出演 「映画・007シリーズ」

ジェームズ・ボンド (大英帝国海軍中佐、MI機関所属・コードネーム・007)
Q         (大英帝国MI機関 情報分析官)
M         (大英帝国MI機関 MI6局長)

611 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:01:35
第三幕

「それで、あの新型巡洋戦艦はどうなった?」

シンガポールの晩餐会。
栗林中将にも話を振ってみたが、振られた。
これも何度目だろうか?
全く、日本人も日本軍も抜け目がなさすぎる。

「さあ、よくわからないよ、ブリガンテ」

ナイゼル・ブリガンテの問に笑いながら答える男、バンゼルマシン・シャイロック8世。

「それに、だ」

「なんだ、シャイロック?」

「言うじゃないか、日本のことわざだよ」

「ああ、あれだな」

二人は誰もいない事を確認する。
グ=ビンネン商業ギルド連合の用意した酒を飲む。
乾杯。

「「君子危うきに近寄らず」」

そう、彼らの野心はまだまだこれからなのだから。
過ぎ去った獲物を思い出すのはもっと先の「みらい」で良い。

「さて、栗林中将らを歓待しなければな」

「ああ、やがて来るであろう、我らの海の為に」



出演 「ドリフターズ」

バンゼルマシン・シャイロック8世 (グ=ビンネン商業ギルド連合 代表取締役社長)
ナイゼル・ブリガンテ       (グ=ビンネン商業ギルド連合 専務)

612 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:02:15
第四幕

時間か。
彼の亡命申請は受理されて、今、大日本帝国海軍大将だった男は香港沖にいる。
そして、黒い巡洋艦に乗っていた。

「これは旧米軍のアトランタ級か、それも後部甲板を回転翼機向けに改装した。
黒一色とは。
いくら船籍は民間船とは言え、まるで海賊船だ。あのユニオン・ジャックの下にはためく海賊旗といい」

パナマ運河を経由して、太平洋を横断、その後日本の呉市で修理を受けたあと、日英の謀略によりこの軍艦に乗ったある人物。
彼もようやく安堵した。これで祖国からの追求を逃れられると。
ふと、後ろに人影できた。それも複数。

「ノリントン提督?」

男は振り返り、そして。

「ああ、キャプテンか」

海賊風の男が嫌そうな顔をする。
なんでこの、如何にもカリブ海の海賊です、みたいな格好しかしないのだろうか、この巡洋艦の乗組員は?

「キャプテン、キャプテン・ジャック・スパロウだ、ミスター」

「それで、何かようかな? そんなに大勢引き連れ・・・・?」

よく見るとおかしい。何故小銃をほぼ全員が持っている?
パチンと指を鳴らす。
男たちが一斉に銃口を向けた。
身構える前に彼の体に複数の穴があく。

「お、おま、え、あの時の、やく、そ、く」

血だまりに倒れふす亡命希望者。
だが、実は亡命など受理されてない。
最初から厄介払いと死刑執行を代行してもらう予定だったのだ。
大日本帝国は大英帝国に。
まだ息がある。必死にもがく。
それを見て彼らは笑った。

「ミスター・米内、我らの先祖が何かお忘れか?」

男、ヘクター・バルボッサが黒い帽子を靡かせて、ペットの猿にピーナツを渡しながら笑う。

「あんたが言っていた事は・・・・掟というより・・・・単なる・・・・心得だ、なあ、ジャック?」

笑い声が夜の海上に響いた。
そして。
茶目っ気たっぷりに帽子を脱ぎ、ジャックは言った。

「悪いな、俺たちは」

「「海賊だ」」

ゲラゲラ。
下品な笑い声。

「ブラック・パール号へようこそ、そしてさようなら、ミスター・米内」

キャプテン・ジャック・スパロウの黙祷とバルボッサ副長の悪乗り。
その後ろでかなり、いいや、露骨に嫌な顔をする海軍将校が通信をするよう部下にいう。

「総督に連絡、任務完了、と」

ジェームズ・ノリントンは祖国を捨てようとして、結果的に全ての国から捨てられた男を一瞥する。
死体は証拠のために、と、写真を取ったあと、海に重石付きで投げ捨てられた。
その電報は日本人と会談していたウェザビー・スワンにも届く。

「お父様、こちらを」

「ああ、ありがとう。すまんが、エリザベス、紅茶を持ってきてくれ
ウィリアム君。君も一旦席を外したまえ」

その言葉にウィリアムとエリザベスは頷いて部屋を出る。

「これで彼は始末しました。
大英帝国の友誼として大日本帝国政府にお伝えください、村中少将」

「ありがとうございます、総督」

朝日が昇る。

「太陽の帝国、か」

「太陽の帝国、です」



出演 「パイレーツ・オブ・カリビアン」

ジャック・スパロウ   (ブラック・パール号 船長)
ヘクター・バルボッサ  (ブラック・パール号 副長)
ジェームズ・ノリントン (大英帝国東洋艦隊香港艦隊提督 少将)
ウィリアム・ターナー  (大英帝国香港総督府 主席秘書官)
エリザベス・スワン   (大英帝国香港総督府 総督)
ウェザビー・スワン   (大英帝国香港総督府 総督令嬢)

613 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:02:45
第五幕

「もうすぐ帰国かしら?」

「彼が気になるのかい、エマ?」

「少しだけ」

妻のエマは部屋で刺繍をしながら思う。
あの嵐のような伊達男にして洒落男、ジェームズ・ボンドと彼に振り回されたサー・ペンウド。

「ウィリアム・サー・ジョーンズより?」

夫は意地悪だ。
そっと私の髪を撫でる。

「まさか、そんなことありません」

「冗談だよ、それにしても」

「え?」

「エマは怒った顔も可愛いな」

ジョーンズ夫妻の一日はもうすぐ終わる。
彼らにとっての祖国はいまだ健在であり、彼らにとっての日常も変わらない。
それは、この戦後世界ではある意味で黄金に匹敵する、いいや、それさえも凌駕するであろう価値を持つもの。

「おやすみ、エマ」

「おやすみなさい、ウィリアム」



出典 「エマ」

ウィリアム・サー・ジョーンズ (大英帝国駐日大使館員 貿易会社ジョーンズ・カントリー若旦那)
エマ・サー・ジョーンズ    (大英帝国駐日大使館員 貿易会社ジョーンズ・カントリー若奥様)

614 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:03:18
第六幕

「ホテル・カーディナルか、いい場所だな」

「サーシャとの結婚式の二次会はここか、お前は幸せ者だよ、我が義弟よ」

「守兄さん、私にも誰か紹介してほしいな」

「はぁ、お前は自分で見つけろ、貴子」

「ねえ守兄さん、お母さん、僕も結婚できる?」

「あなたにもいつか運命の人が現れるわよ」

「父さんみたいに?」

「ああ、私みたいに、だ」

「猫もいるんだ、それも数匹」

「上官というか戦友というか、まあ、色々あって」

「彼は顔に似合わず無類の猫派だったな」

と、二次会の音頭を取ってくれている副支配人がきた。
名前を来島泰三という。
彼が直々にワインを注ぐ。
いいや、カシスと混ぜたカクテル、「カーディナル(枢機卿)」だった。
妻の、真紅のドレスを着たアレクサンドラ・スターリナ・コンドラチェンコにして藤堂サーシャ夫人のワインを満たす。
自分には白いタキシードに合わせて「キール」だ。白ワインベースのカクテル。
妹と弟の進、母の礼子にはオレンジジュース。
父もなんとか息子と娘の晴れ姿を見ている。

「これからもよろしくお願いします、藤堂明大佐」

「こちらこそ、不肖の息子を頼む、アンドレイ・バラノヴィッチ・コンドラチェンコ中尉」

敬礼する義理の兄にして戦友と多忙ながらも家族のために時間を割いてくれた父親。
それにしても、これからあの「剣虎」とも「魔王」とも呼ばれる人々と付き合うのか、そう思うとちょっと自信がない。
そのお相手であるユーリア・ロマノフ・ツァーラと新城直衛、それに二人の義理の父親になるであろうクラウス・フォン・メレンティンが1920年もののフランスワインを持ってくる。
あ、よく見ると海軍大佐の笹嶋定信さんもいた。

「中尉に武運長久があらんことを」

そう言って会釈する。
ほかにも色々な人がひっきりなしに挨拶に来る。
サーシャのローゼンメイデンとかいう音楽サークルの先輩、後輩、同級生、父の戦友たち、進の学友や貴子の同僚らに、母の友達。

「おめでとう、中尉」

「よかったわね。サーシャ」

「姫様と新城殿の様なお子様だけはご勘弁ください」

三者三様。
新城は陸軍の礼装、ユーリアは白のブラウスに青いスカーフ、そして青いロングスカートに結んだ金髪。
クラウスはどこから引っ張てきたか、ロシア帝国軍の将官服。
そして、猫の千早。
彼女が鳴き声をあげて、皆の注目が新郎新婦に集う

「どうも、ありがとう」

「ありがとうございます、皆さん」

守とサーシャの心からの感謝の気持ち。
それをみて頷く面々。
藤堂家の女たちも、ユーリアも泣いていた。

「それでは、みなさま、サーシャ様と守様の未来に、乾杯」

「なおちゃんと、ユーリアちゃんに祝福を」

駒城蓮乃が付け加えて。

「「「「乾杯!!!」」」」



出典 「バーテンダー」 「征途」 「皇国の守護者」

来島泰三 (ホテル・カーディナル副支配人)

藤堂明  (大日本帝国海軍 戦艦大和 大和艦長   大佐)
藤堂守  (大日本帝国海軍 空母大鳳 疾風搭乗員  中尉)
藤堂進  (藤堂家次男)
藤堂礼子 (藤堂家夫人)
藤堂貴子 (藤堂家長女 日本航空 国際線 客室乗務員
アレクサンドラ・スターリナ・コンドラチェンコ (藤堂サーシャ 藤堂家次期家長夫人)
アンドレイ・バラノヴィッチ・コンドラチェンコ (大日本帝国陸軍 近衛師団「剣虎」所属 中尉)

新城直衛 (大日本帝国陸軍 近衛師団 「剣虎」指揮官 中佐)
笹嶋定信 (大日本帝国海軍 戦艦武蔵 艦長 大佐)
ユーリア・ロマノフ・ツァーラ  (ローゼンメイデン第三代会長、後継組織ネルフ初代会長 コードネーム アルトリア・ペンドラゴン)
クラウス・フォン・メレンティン (ツァーラ株式会社初代社長 ロシア帝国軍少将)
駒城蓮乃 (駒城家当主夫人)
千早   (新城直衛の最初の家族、既に祖母・高齢猫)

615 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:03:51
第七幕

「アシャン、香、それにみんな、ただいま。元気になったか?」

「獠、ようやく帰ってきた・・・・心配したのよ、本当に」

「とりあえず、おかえりなさい、でしょ、香さん」

「冴子の言うとおりだな、香」

「素直になるのが一番だ。泣いてもいいぞ。誰も笑わん」

「兄貴に冴子、それに海坊主さんまで。まあ、そうね」

と、アシャンが冴羽に抱きつく。
半泣きな状態で。
今にも号泣しそうな感じで。

「香マーマ、ね、言ったとおりでしょ?
獠パーパは帰ってくる、そう言ったでしょ!」

「はいはい、負けました。お疲れ様、私の旦那さん」

「ああ、そうだ、今度ここにいる全員で正装してまた写真をとろう。
香には、シンデレラの様な花嫁衣装。
俺は・・・・まあ、花婿衣装だな」

「本当!?」

「ついに冴羽も年貢の納め時がきたな」

「まさかこいつが香さんとくっつくとは思わなかったけどね」

「冴子、先に新しいコーヒーを飲むか?」

「ねぇ、香マーマと獠パーパ、私は何を着ればいいかな!?」

キャッツ・アイには相変わらず無愛想な男がコーヒーを入れている。
元アメリカ合衆国海兵隊軍曹、通称ファルコン、或いは海坊主。
彼は無言で三人、いいや、槇村と冴子に俺と自分の7人分の有田焼のコーヒーカップにコーヒーを注いだ。

「それでだ、お前が無事だったという事と先日見た書類。
で、「みらい」とかいう軍艦に関する政府からの仕事は終わったのか?」

「まあな。俺は香とアシャンの元に帰った。それでおしまいだ」

香瑩の頭を撫でなながら、冴羽はファルコンに答えた。
それを見て、すっと香が獠の肩に体重をかける。

「帰ってきてくれた、それで十分よ」

額の傷、残ったな。
アシャンの顔に傷は残らない。
残らなかった。
だから私は後悔しない。

「いいわね、秀幸」

「ああ、いいな、冴子」

俺たちも結婚するか。
そうしますか。

616 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:04:27
冴羽の新しい家族を見る海坊主の後ろからある美女が現れた。

「で、いつになったら私を彼らに紹介してくれるんです、ファルコン?」

その言葉に冴羽獠が振り向いた。

「き、きみは!?」

冴羽が思いっきり色目を使う。
そこには長髪の黒い大和撫子がいた。
誰だ?
この美人?
そんな疑惑を向ける冴羽家と槇村秀幸に野上冴子らにファルコンは顔を真っ赤にしながら言った。
そして慌てて香がフォローに入る。

「あ、あたしが海坊主さんに紹介したんだ!
いや、さ、あの戦争でずっと海坊主さんの事探してたらしくて・・・・その」

香の言葉に意味わからないという顔をするアシャン。
察する兄と冴子。

「ま、まさか?」

「え、うそ?」

彼女はあの時舞鶴で別れた、たしか北陸地方出身の女性で。
それから2年も?

「そ、その、一目惚れだって。あの満州で」

「「「え?」」」

頷く赤い顔の二人。
ファルコンと、

「はじめまして、美樹です。この度、ファルコンと婚約しました」

そういって腕を絡ませた。

「「「ええ!!!!」」」」

「?」

香とファルコンを除いた大人たちの叫びが再建されたキャッツ・アイに木霊する。
それは冴羽獠の新しい家族たち。
彼らの新しい人生が、新しい祖国で始まる。



出典 「エンジェル・ハート」 「シティ・ハンター」

冴羽獠   (シティ・ハンター 大日本帝国情報局契約社員)
冴羽香   (旧姓、槇村。東京都新宿市民センター勤務・看護師) 
冴羽香瑩  (エンジェル・ハート 大日本帝国 学習院大学幼年学部所属)
槇村秀幸  (大日本帝国内務省東京都新宿区新宿西署勤務 警部)
野上冴子  (大日本帝国内務省東京都新宿区新宿西署勤務 警部)
ファルコン (喫茶店 キャッツ・アイ店長 元アメリカ合衆国海兵隊軍曹)
美樹    (喫茶店 キャッツ・アイ副店長 東京都新宿市民センター非常勤・看護師)

617 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:05:00
第八幕

「戦後30年、か」

そこにはあのドイツ第三帝国初代総統であるアドルフ・ヒトラーの甥が座っていた。

「あ、そこは」

傍らには自分の補佐官であり、愛人でもある女がいる。
喘ぎ声をあげる。
ローマ帝国をモチーフにした浴室で睦み合う二人。

「ミーゼラ、で、何か報告があるんじゃなかったのか?」

男は不敵に笑う。
反ナチス党の野党勢力でさえその政治手腕と戦略、海軍航空隊のエースとしての英雄らしさ、カリスマ性には誰もが一目を置く。
彼こそ、次世代のドイツ代表に最も近い男だと言われていた。
彼の側近も内務省中堅官僚のレドフ・ヒス内務次官、アフリカ掃討作戦と中東作戦の英雄であるエルク・ドメル少将ら。

「あ、その、報告しますから、そこをなでないでください」

そこは女なら一番敏感な場所ですから。
なんとか声を抑えて女は顔を半分まで湯船に沈める。
目だけはもっとと言っているが、それが男の諧謔心をくすぐるのだ。

「そうか、では、またの機会にしよう」

言われて女は裸のまま一度湯船から出る。
名残惜しいという雰囲気である。
バスローブを着て、彼に彼女は報告する。

「総統主席秘書官、明日、我が軍の最新鋭空母フューラー・アドルフにて欧州統合の成果を見せる観艦式を行います。
主席秘書官と私は予定通りに総統からの招待を受けて乗艦します」

女は一礼する。
水が滴り落ちる。
その長い髪が肌につく。

「分かった、護衛役のヴァルケ・シュルツ大尉と艦長のガル・ディッツ大佐には宜しく言っていたと伝えてくれ」

わかりました、アベルト様。
そう言って彼女は退出。
彼、アベルト・デスラーは叔父に呼ばれたあの日を思い出す。

618 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:05:32
『・・・・・アベルト』

『余の頼みを聞いてくれ』

『余は1945年に20名近いドイツ人を日本で殺した』

『最初は許せなかった』

『あれだけ期待した。同じアドルフの名前を持つものとして、絶対に余の期待を裏切らない、と』

『だから失敗の報告をカナリスから聞いたときは激怒した。
奴らの家族から市民権を奪うとまで、アドルフ・カウフマンに至ってはドイツへの帰国を許さん、奴はドイツ人ではないと罵った』

『ああ、アベルト、すまん、そんな目をするな。
余とてお前の叔父であり、人間だ。、無茶も無理もするし、後悔だってしている』

『アドルフ・カウフマンには本当に悪いことをした。
彼らの死体はせめてドイツに持ち帰るべきだった。
たとえ成果が80年先の技術という狂言と狂人の報告書でも。
少なくとも、彼らの命懸けの報告を信じるべきだった』

『今なら分かる、彼らは任務を全うしたドイツ人の誇りだった、と。
だからこそ、後悔しているのだ。自分のあの時の対応が許せんのだ』

『だが、あの事件を認めるわけにはいかん。
あれはもう、極東の皇帝の手にある。絶対に手を出してはならぬ存在なのだ』

『しかし、それでは死んだカウフマンらがあまりにも哀れだ。いいや、そうしたのは余だったな』

『過ちは正さぬばならぬ。かつて敗戦し降伏したカイザーの失態を余が注いだように』

『だから、アベルト、ここにカウフマンらが残した手帳がある。
彼らが接触した「みらい」に書いてあった妄想だが、2025年までの大まかな歴史と空母というもの存在価値だ』

『大日本帝国海軍から見た今後の空母というもののノウハウ、その一篇をお前に渡す』

『だから、お前が総統になった時、もうこの世にはおらぬであろうアドルフ・ヒトラーの代わりとしてアドルフ・カウフマンらの名誉を回復してやってくれ』

こうして、病棟で死を待つだけとなったナチス最高指導者しかしらない、一つの報告書は甥であるアベルト・デスラーに渡った。
デスラーは持ち前の才能とその未来情報を使う。
彼の血筋と実力で、欧州統合艦隊に約四半世紀の時間をかけてアングルドデッキとカタパルト採用の大日本帝国海軍の常用配備している空母を一隻建造。
遂にドイツ海軍の、いいや、第二次世界大戦以降の各国海軍全ての悲願である大日本帝国海軍機動艦隊に対抗可能な艦隊を、空母一隻のみで一個だけであるが、なんとか提唱、整備した。

「叔父上、おさらばです」

そう言って彼は葉巻を蒸す。
と、着替えて執務室に戻って現総統のスケジュールを調整する。
来客が二人。
件の内務省の人間に、自分の戦友にして右腕のドイツ陸軍の将官。

「主席秘書官どの、こちらにサインを」

「ドイツ・アラビア軍団の全軍、その閲兵準備整いました。ご許可をお願いします」

世界は新しい時代をたしかに迎えている。



出典 「宇宙戦艦ヤマト2199」

アベルト・デスラー   (ドイツ第三帝国総統主席秘書官 ドイツ海軍海軍航空隊所属 退役中佐)
ミーゼラ・セレステラ  (ドイツ第三帝国宣伝省二等職員 元アメリカ合衆国脱出者子女)
ヴァルケ・シュルツ   (ドイツ第三帝国陸軍大尉 オーストリア人 妻子有り)
ガル・ディッツ     (ドイツ第三帝国海軍大佐 空母フューラー・アドルフ艦長 妻子有り)
レドフ・ヒス      (ドイツ第三帝国内務省高級官僚 内務次官)
エルク・ドメル     (ドイツ第三帝国陸軍少将 ドイツ・アラビア軍団司令官)

619 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:06:17
第九幕

「あなた、本気でこの車で行くのですか?」

「ああ」

既に戦後15年。
碇の家にも新しい春が来る。
その前に、だ。

「いくら急いでいるからと言いましても・・・・・これはいささか拙い気がしますけど?」

「問題ない」

夫婦の乗車していた車は国家公安委員会所属の黒塗り大型車「クラウン」である。
しかも、護衛も黒塗りカローラが4台、パトカー2台が先導。

「結」

「なんです、玄道さん?」

真面目な表情で後部座席に座っている夫に妻は話しかける。
そう、いつになく真剣に。

「このままでは真司の卒業パーティーに間に合わん。
その為なら冬月の寿命を縮めても私は全く考慮しない。後悔もしない。
運転手、竹中、必ず30分以内に到着せよ、以上だ」

電話が鳴る。
携帯電話。あの軍艦がもたらした技術革新。

「わたしだ」

『碇!! きさま、この交通整理計画は一体何だんだ!?
お前、何をしているかわかっているか!?』

「冬月先生、これは訓練です。以上です、それでは」

「あの、それでいいんですか?」

そう聞くのは結の隣に便乗している恭子・ツェッペリン・ラングレー。
だが、碇玄道はあろう事かその携帯を、

『あ、待て!!』

一方的に切る。
電源も落とす。
二度と繋がらないように周囲にも冬月からの小言はつなげるなと厳命する。

「すみません、私は亡命者としてあまりそういう事されると困ります。飛鳥の為にも」

「玄道さん、その、いいんですか? 冬月先生は今はもう一応警視総監でしょう?」

「かまわんさ、竹中警視。私にとって真司の初めての晴れ舞台を邪魔した冬月幸三は敵だ」

やれやれ、どうなっても知りませんよ?
君が考慮することではない。
そう言って車は学習院大学に向かう。

620 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:08:04
一方で。
到着する政府公用車の列を窓から見る人々。
もう、注目の的以外の何者でもない。
敬礼する警官たちにペコペコするのは恭子と結。
玄道はそれをさも当然に受け取る。この辺は性格の問題か。

「あれ、碇君のお父さんでしょ?」

「え?」

「お、ほんまや、さすがせんせーのおやっさんは違うなぁ」

「てか、あれクラウンの政府専用ナンバーじゃん! 初めて見た!!」

「ちょっと、黎、最後の打ち合わせよ。変な事言わないで!」

「飛鳥も大変ねぇ」

笑い声。
夫を叱る妻の結、何事かと加持良治先生と葛城美里先生が玄関に慌てて向かう。
そりゃあサイレン鳴らして、警察の白バイが先導して車が来たのだ。
警戒もするだろう。

「ああ、もう、もうすぐ新城伯父さんや蓮乃姉さん、それにママたちがくるのよ!?」

「だから父さんも来たのか。でも、あの如何にも政府関係者です、というのは、ねぇ」

「それより碇君、明日は私と飛鳥を誘ってご両親に挨拶するんでしょ?」

「あ、そ、それは」

「いやなら良いわよ、真司」

「ええ、良いわよ、碇君」

飛鳥と黎に言われてタジタジになる真司。
追い打ちが来る。

「新城様、冴羽様、アシャン先輩、、サーシャ様、ユーリアお姉さま、蓮乃お姉さま、ママにあの事ちくるから。それもある事ない事全部含めて」

「あ、飛鳥、あの事って?」

嫌な汗が流れる。
だが、黎も便乗する。

「私も加持先生と葛城先生に、美樹さん、ファルコンさん、香さんと冴子さんにキャッツ・アイで泣きながら言うわ」

「え、え、ちょ、君まで? な、何を!?」

真司の焦りを見た黎と飛鳥は勝利を確信した。

「「私たち二人の純潔を昨夜一緒に捧げたのに、私たちの「みらい」を捨てた、って」

沈黙。

「「私たちを弄んでいる責任はとってよね、碇真司」」

「「男らしく」」

そして軽蔑。嫉妬。

「あれ、どうしたんだい?」

と、何も知らずに部屋に入ってきた渚薫の言葉だけが部屋に妙に響いた。



出演 「新世紀エヴァンゲリオン」 「ブラック・ラグーン」

碇玄道          (大日本帝国情報部所属 国内情報部部長)
碇結              (大日本帝国東京帝国大学 医学部大学助教授)
冬月幸三            (大日本帝国内務省所属 警視総監)
恭子・ツェッペリン・ラングレー (大日本帝国外務省所属 対ドイツ担当情報分析官 旧名 エリザ・カウフマン並びアンネローゼ・フォン・グリューネワルト 現ネルフ会長)
碇真司             (大日本帝国学習院大学第壱中学 中学三年生)
駒城黎             (大日本帝国学習院大学第壱中学 中学三年生 次期駒城家分家である綾波家当主)
惣流・飛鳥・ラングレー     (大日本帝国学習院大学第壱中学 中学三年生 亡命者子弟 カルフォルニア共和国、自由国旗大学卒業済み)
鈴原藤司            (大日本帝国学習院大学第壱中学 中学三年生)
相田健介            (大日本帝国学習院大学第壱中学 中学三年生)
洞木光里            (大日本帝国学習院大学第壱中学 中学三年生)
渚薫              (大日本帝国学習院大学第壱中学 中学三年生)
加持良治            (大日本帝国学習院大学第壱中学 日本史担当教員)
葛城美里            (大日本帝国学習院大学第壱中学 国語担当教員)

竹中              (大日本帝国公安委員会所属 本名不明)

621 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:12:23
第十幕

「アーサー! アイランズ!! 久しいな」

「よぉ、ロブ、お前前線に復帰したのか?」

「ほう、無事でなにより。目は問題ないようだが?」

「ふん、俺がその程度くたばるか!」

円卓会議が終わり、既にいい年をした男たちが相変わらず葉巻を吸っている。
英国もようやく安定した。これも、どれもこれも。

「ペンウッドの間抜けに全部押し付けたからな、M局長も、そこで優雅にお茶を注いでいる若作りの黒執事も罪なことだ。
あいつに無理難題を全部押し付けてあとは知らんふりだ。全くといつもこいつも人でなしだよ」

「そして、僕も、ですか? アイランズ卿?」

セヴァスチャンの入れる紅茶を飲む大人。
それはセシル・サー・ファントムハイブ伯爵。
相対するのは私用で別室にいるシェルビー・M・ペンウッドを除く、ヒュー・サー・アイランズ、ロブ・サー・ウォルシュ、アーサー・サー・ヘルシング。
そしてアーサーの執事兼ゴミ処理係。
あの漢の中の漢、現在世界的には「ジョンブル・オブ・ザ・ジョンブル」の一言で通じる男は今頃、次期ヘルシング伯爵になる女性に詰問されているだろう。
詰問、いいや、尋問だな。査問会に軍法会議と異端審問かもしれんが。

「ああ、無論君もだファントムハイブ伯爵。
一人だけ無関係を装うな。あの「MIRAI」の後始末を押し付けるように円卓会議で提案したのは君なのだ。
それ故に我々はペンウッドの馬鹿にに大きな借りがある、ならば尚更彼を重要な役職につける必要がある
彼は馬鹿だ馬鹿だとみんなに馬鹿にされるほど大馬鹿者だが、誰にも真似できない最高の英国紳士であり、我らのかけがえのない親友だからな」

「あいつは俺たちの大事な友達だ。
ここにいる全員もそうだ。
それをナチの蛆虫どもが殺そうとしていた。
許さんぞ、糞蛮族が」

「そうだ、あの愚行の報いは与えてやる。
デブの国家元帥め、楽に死ねると思うなよ」

アーサー・サー・ヘルシングの微笑みに、今まで黙っていた赤い目をしている白いコートに白系統の服、それに白い手袋をした少女が微笑んで言う。

「そうか、そうか、それはそうだな。
素晴らしい、実に素晴らしい。
君らはまさに人間だ。自らの意思で歩む存在だ。実に羨ましいな、我が主、伯爵、黒執事」

だが、

「私は手を貸さんぞ?
至極残念なことにドーバー海峡の向こうで、あの闘争を歓喜としている我が同類は、私の生きていた頃の祖国を蹂躙した東方蛮族どもは、まだ私に直接鉄火を向けてない。
残念だ、それは残念だ。実に残念だ。が、鉄火を持って闘争を始めぬ者に私はまだ応射しないのだよ」

少女はそういってワインを飲む。咎める者はいない。この異様な少女を。

「ところで、アーサー、そのこの国でVIPの円卓会議人道委員会委員長のペンウッドだが」

「なんだ、アイランズ?」

「何故君の娘は彼を呼んだのだ?」

ああ、あれか。

「それはアーサー・サー・ヘルシング卿に代わりまして僕が説明しましょう」

モノクロメガネをした全身黒づくめに何故かドクロのネクタイをしたアーサーの執事が主人に代わり答える。

「皆さんと同じですよ、彼を犠牲にしたのです。我が主は」

そう、黒執事セヴァスチャンに躾されてきたウォルターは優雅に答えた。
見るからにできる執事、だ。

622 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:14:13
『そんな事もできないのですか、無様ですね』

『そう言う台詞は大英帝国貴族階級に仕えて恥ずかしくない技量を身につけてから言いなさい』

『まだまだ、ですね』

『このクソガキ』

容赦なく殴られ、蹴られ、マナーを叩き込まれたウォルター。
あの問題児がこうまで立派になるのだから、ある意味でセヴァスチャンには教育の才能もあるのだろう。

「そうだな、あれは見事だ。
人間は諦めを拒絶したとき人道を踏破する権利になる、そうは思わないか私と同じ存在よ?」

少女の視線の先には黒執事がいる。

「私には意味はわかりません、ミス・・・・・」

「アーカード、そう呼ばれている」

「そうですか」

「だが、何故だ? 人間を打ち倒すのも人間ではないか?
それを人間であろうとは到底思えるお前が分からぬというのは道理が通らぬなぁ?」

笑う二人。

「お答えできません」

「ほう?」

優雅に一礼する黒執事。
傲岸不遜に腕を組む少女。

「私はあくまで執事ですから」

にやりと笑い合う二人。
オロオロするのは外で聞き耳を立てているひとりの元女性警官だえk。
あとはニヤニヤするのみ。流石は大英帝国。
妖精に国籍を発行する世界帝国だっただけの事はあった。

623 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:16:11
一方で、同じペンウッド侯爵家の別邸の別室では。
くつろいでいる友人らとは異なり修羅場が出来ていた。
ペンウッドは相変わらずの貧乏くじを引いてしまった。
笑える。

『ペンウッド様、お話があります』

『な、何かな、インテグラ?』

『父は昨日誰と会っていましたか?』

『え、いや、それは、その』

『質問を変えます、嘘をつかず、黙秘せずに、願いますね。
世界各国に誇れる大英帝国と陛下の誇りであるジョンブル・オブ・ザ・ジョンブルとして誠実にお答え願います』

『あ、え?』

『父はこの一ヶ月、いいえ、母が死んでから半年間、どの女と会っていました?』

『げ!』

『バーバラ、ミレーユ、フローラ、デボラ、ビアンカ、ゼシカ、ミーティア、マリベル、アイラ、アリーナ、マーニャ、ミネア、ロザリー』

『な、何故それを?』

『お答えください、サー・ペンウッド卿』

実は全員と会っていたとは口が滑っても言えない。
まして、

『それとも今から述べる面々ですか?』

『ちょっと待って!! まだあるのか?』

『エアリス、ティファ、ユフィ、リノア、キスティス、セルフィ、ガーネット、フライヤ、エーコ、ユウナ、リュック、ルールー、パイン、アーシェ、パンネロ、フラン』

『それに』

『そ、それに?』

『ルビスとアルタナ、止めにセラスさん』

全員、この女性18歳の少女の友人たち。
絶句した。
絶望した。
もしも、誰か一人、いいや、あのジェームズ・ボンドと一緒だったから全員と関係してる可能性がある。
そうなったら・・・・・・アーサーが死ぬ!!
顔に出た。
にこりと笑う彼の娘。

『私、父に問い詰めます』

そう、物騒なモノ、大英帝国次の女王陛下から授かった伝統あるヘルシング家の刀剣を抜いたインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング。
彼女を宥める間、ペンウッドに全てを押し付けた男らはこんな事を談笑している。

「奴は無能だ」

「だが、漢の中の漢だ」

「あいつは俺たち友人を裏切るくらいなら悩み抜いて自殺してしまうだろう」

「そうだな。アイランズとは違って」

「バカを言え、私が裏切るときは君ら全員に予め書面にして配布するさ」

笑い声と鳴き声が響いたのは同時。



出典 「HELLSHING」 「黒執事」 「ドラゴンクエストシリーズ(名前のみ)」 「ファイナルファンタジーシリーズ(名前のみ)」

シエル・ファントムハイヴ (大英帝国円卓会議メンバー ファントムハイブ伯爵家 当主)
セバスチャン・ミカエリス (大英帝国円卓会議メンバー ファントムハイブ伯爵家 筆頭執事 ???)


アーサー・サー・ヘルシング    (大英帝国円卓会議メンバー ヘルシング伯爵家 当主)
ヒュー・サー・アイランズ     (大英帝国円卓会議メンバー アイランズ侯爵家 当主)
シェルビー・サー・M・ペンウッド (大英帝国円卓会議メンバー ペンウッド侯爵家 当主)
ロブ・サー・ウォルシュ      (大英帝国円卓会議メンバー ウォルシュ子爵家 当主)
インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング (ヘルシング家次期当主)
ウォルター・C・ドルネーズ (大英帝国円卓会議メンバー ヘルシング伯爵家 筆頭執事)
アーカード         (ヘルシング伯爵家 従僕 ???)
セラス・ヴィクトリア    (大英帝国内務省 婦人警官 ???)

アリーナ、マーニャ、ミネア、ロザリー (ドラゴンクエスト4)
フローラ、デボラ、ビアンカ      (ドラゴンクエスト5)
バーバラ、ミレーユ          (ドラゴンクエスト6)
マリベル、アイラ           (ドラゴンクエスト7)
ゼシカ、ミーティア          (ドラゴンクエスト8)

エアリス、ティファ、ユフィ       (ファイナルファンタジー7)
リノア、キスティス、セルフィ      (ファイナルファンタジー8)
ガーネット、フライヤ、エーコ      (ファイナルファンタジー9)
ユウナ、リュック、ルールー、パイン   (ファイナルファンタジー10、10-2)
アーシェ、パンネロ、フラン       (ファイナルファンタジー12)

ルビス                (ドラゴンクエスト ロトシリーズ)
アルタナ               (ファイナルファンタジー11)

624 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:16:41
第十一幕

「ようこそ、副長」

津田一馬中佐は艦長であり、この国の軍艦では戦略原子力潜水艦にや正規空母、大和旧戦艦に匹敵する艦の艦長に敬礼する。
名前を草加拓海。大日本帝国海軍少将。

「は、津田一馬中佐以下200名、本日1200丁度に着任しました」

「よろしくな」

この艦隊は以下の主力打撃部隊で構成される。

超弩級戦艦      「大和」「武蔵」「伊吹」「鞍馬」
大型正規空母     「大鳳」「白鳳」「海鳳」
特務戦闘艦      「日本丸」
攻撃型潜水艦     「ながと」「むつ」「おわり」「きい」「りゅうきゅう」「えぞ」

旗艦は昨年進水したばかりの「日本丸」だ。

「知っての通り、艦隊司令官に藤堂明中将が、参謀長に滝栄一郎少将がいる。
この艦隊は欧州統合艦隊と大英帝国本国艦隊を圧殺するために編成されている。
1960年としては破格の部隊であることはわかるな?」

日本海軍が整備を推し進めた攻撃型潜水艦は潜水艦搭載型対艦ミサイルと最新鋭ホーミング磁気・音響探知魚雷を装備した、最高潜水深度2500mというチタン製の海のサメ、化物だった。
さらに大日本帝国海軍最高の戦艦「大和」と「武蔵」、最優秀戦艦と世界名高い「伊吹」と「鞍馬」の主砲。
イラン大演習で、インド洋大演習で、そして太平洋でその実力を見せつけた大日本帝国海軍の正規空母大鳳級三隻には「疾風」の後継機たちが。

が、この艦隊の最も恐るべき存在は戦艦でも空母でも潜水艦でもない。
あえて、日本海軍が忌避していた名前を引退した嶋田繁太郎直々につけた軍艦、「日本丸」だ。

「本艦には120発の射程820kmの零式対地対艦両用徹甲誘導弾、つまり「むらさめ」と200発の射程320kmの対空迎撃誘導弾「ゆきかぜ」がある。
艦砲こそ120mm速射砲のみで、対空砲も後部と前部、そして左舷と右舷にある回転式レーダー連動機関砲の合計4つ」

が、と、草加言った。

「この日本丸最大の武器は何か聞いているな、津田中佐?」

そう、それは本艦の特務長である菊池雅行少佐から言われた言葉。

「は、人工衛星と連動した超長距離対空・対地・対海上監視システム、と」

「と?」

「搭載されている8発の大陸間弾道戦略核弾頭ミサイル、「はげたか」、です」

そう。
特務長、副長、艦長、同乗している艦隊司令長官に艦隊参謀長、そして政府特務派遣文官三名の合計8名の承認と確認をして発射体制に移行できるこの「日本丸」最大の武器。
それは「みらい」の残したデータから手に入れた「水爆」である。
情報も数年前に打ち上げられた「きぼう」と「ゆめ」という人工衛星からのデータをリアルタイムで受信するイージスシステム。

625 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:17:12
大日本帝国が「みらい」の持つ「未来技術」を総動員して奪い取った、新型特務戦闘艦、通称、護衛艦「日本丸」である。
名前の由来は単純。
この軍艦が戦うことになり、あまつさえ沈没する、若しくは拿捕される時は大日本帝国終焉だと思え、そういう戒めを夢幻会が後世に強く伝えるためにそう敢えて名づけた。

「では、最初の仕事にとりかかろうか、津田中佐、菊池少佐」

そう言う彼らの眼前には、この「日本丸」と全く同じ外見の軍艦が錆び付いていながらもいた。
その名を「みらい」という。
当然だ、兵員室に自動販売機、パソコンから電灯、機関室からCICまでありとあらゆるものをその「変態と言って良い職人芸」で模倣したのが「日本丸」である。
排水量が2万2千であり、装甲も戦車が使うチタンと複合装甲という以外は外見はほぼ同じ。
それがいま、ある場所にいる。

『全艦隊の手空き乗組員、ならび参謀、司令官、艦長に告ぐ、総員捧げい、敬礼!!』

数万近い視線と、数千近い敬礼。
その先にいるのはようやく横須賀から最期の航海に出ること許された一隻の軍艦。
北緯30度43分、東経128度04分、坊ノ岬沖。
史実で戦艦大和が沈み、大日本帝国海軍終焉の地となった場所。

「草加少将、君が押せ」

そう言って艦隊司令の藤堂明中将は草加拓海に一つの無線機を押す。
彼はそれを受け取ってしばし、外から見える「未来」の、「異世界である日本国」から何故か来訪した招かれざる客人を見る。

「みらい」

そう、

『みらい』

なんと。

「なんと皮肉な名前だ。この日本丸に象徴される我が大日本帝国の「新しい戦後未来」を生み出すために、「滅びた戦後未来」から漂流した軍艦。
有り得たかもしれない歴史として「日本国」の「未来」が、誰にもその真意を知ることなくこの地に葬り去られる」

大日本帝国海軍終焉の地に、日本国海上自衛隊の軍艦が沈む。

「そうか、角松ニ佐。あなたはこの光景だけは見たくなかったのだな」

今なら分かる気がする。
そう独白した。
数十秒の沈黙の後、草加拓海も過去の自分に決着をつけた。

「さようなら、「みらい」よ。安らかにとは言えぬが、静かに眠れ」

この日、大日本帝国に見守れて、この世界唯一の日本国は世界から消える。
数十秒後、「みらい」は「日本国」という存在の全てを背負って海に没した。



出典 「ジパング」

草加拓海 (大日本帝国海軍少将 連合艦隊第1艦隊(本国艦隊) 連合艦隊旗艦「日本丸」艦長) 
津田一馬 (大日本帝国海軍中佐 連合艦隊旗艦「日本丸」副長)
滝栄一郎 (大日本帝国海軍少将 連合艦隊第1艦隊(本国艦隊) 艦隊参謀長)

梅田三郎 (日本国海上自衛隊一佐 海上自衛隊イージス護衛艦「みらい」艦長)
角松洋介 (日本国海上自衛隊ニ佐 海上自衛隊イージス護衛艦「みらい」副長)
菊池雅行 (日本国海上自衛隊三佐 海上自衛隊イージス護衛艦「みらい」砲雷長 大日本帝国海軍少佐 護衛艦「日本丸」特務長)
尾栗康平 (日本国海上自衛隊三佐 海上自衛隊イージス護衛艦「みらい」航海長)

626 :ルルブ:2015/02/13(金) 09:17:44
最終幕

「さて、1945年8月から11月と1960年の4月7日の日本軍の一隻の軍艦自沈作業は私が調べたことは歴史の断片に過ぎない。
そして、私は不本意な軍人としての名声と違って、ようやく人生の本道に戻れた。
2流ながらもそれなりの食い扶持とフレデリカと一緒に、ジェシカやラップ、アッテンボローやキャゼルヌ家と馬鹿騒ぎできるくらいは幸福な生活をしている」

だから君が言うように、或いは校長の思惑にのってカルフォルニア共和国でもう一度軍人になるのはゴメンだ。

「せっかく、中華系でしかも自由フランス軍という厄介な出身でありながら30手前で将官になれた不敗の名将でしょうに。
閣下が望めばこの北米大陸最大の国家の主にだってなれましょう?」

ドイツからの亡命ユンカーであるワルター・フォン・シェーンコップ中佐はしれっと言う。
だが、夫の、親友の、友人の、父の、後輩の、先輩の決意は揺るがない。

「私は退役した、もう現役には復帰しない」

「私の知る限り、あなたには独裁者嶋田繁太郎を凌駕する人物になれる素質がありましょう。
あなたが本気を出せば我々が住んでいるこの三極した地球世界に恒久的な平和が訪れ、統一した地球政権が誕生するかもしれません。
いいえ、それは誇大妄想ですが、あなたがその気になれば四半世紀くらい後にはカルフォルニア共和国が世界の中心になれる日も来るでしょう。
その点はどう思います?」

ヤン・ウェンリーはただこう述べた。
紅茶にブランデーを入れて。

「人類の歴史に恒久的な平和なんてなかった。
だが、平和で豊かな時代は存在する。ちょうど今の大日本帝国や環太平洋諸国のように。
それとてあの第二次世界大戦で出来たまだ100年も経ってない、しかもごくわずかな地域の仮初の平和だ。
だが、私はこの100年の平和は全人類が戦争に明け暮れていた20世紀前半に勝ること幾億倍だと思う。
要するに、私が望むのは私の家族と友人、そして君たち退役した部下たちや先生方に生徒らとの平和な交流なのさ。
だが。その平和こそ我々が後世に残さなければならい「みらい」そのものだ。
決して、軍艦や「平和の為にすべてを犠牲にする」などいう思想じゃない。
私はベストよりもベターを選びたいんだ。第一、私に独裁者なんて服は似合わないさ」

「貴方には軍服だって似合ってない。なら独裁者でも上手く演じられそうですが・・・・まあいいでしょう。今日のところは」

ああ、最後に。

「私には養子にユリアンという男の子がいるが最近カリン、カーテローゼ・フォン・シェーンコップという女性と付き合っているらしいが。
彼女は君の知り合いかい?」

ふ、

「不敗の魔術師にも分かりませんか?」

「分かりたくない」

「ええ、では閣下のご想像通りの人物でしょうな」

「ああ、やはりそうか」

「私の娘です。では、また会いましょう、ヤン・ウェンリー助教授」

ひとつの歴史を紐解く事に終わりはない。
それは、人が生きていたという事を後世に残す唯一にして最大の手段なのだから。



出典 「銀河英雄伝説」

ヤン・ウェンリー          (カルフォルニア共和国軍陸軍准将 退役将官 通称「奇跡のヤン」 現、同国「自由国旗大学」歴史学部大学助教授
フレデリカ・グリーンヒル・ヤン   (カルフォルニア共和国軍空軍少将 女性将官)
ワルター・フォン・シェーンコップ  (カルフォルニア共和国軍陸軍中佐 ドイツ系亡命部隊「薔薇の騎士連隊」連隊長)


「みらい」を巡る物語は終わる。
だが、「未来」を巡る物語には終わりはない。

劇終

作者   ルルブ
原作者  earth様、かわぐちかいじ様他多数。
協賛   夢幻会

全ての読者に敬意と感謝を込めて。
そして、ありがとうございます。

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最終更新:2015年02月13日 22:22