南雲とドロテアSSでの休日モニカ





モニカ「今日はエイプリルフールなのでしたね」


所用で参上していた皇宮内のサロンで物思ったのはパーソナルカラーである黄緑色のマントを着た金髪碧眼の美貌のラウンズ。
彼女は嘘つきの日という特段興味があるわけでもないイベントにつきあってみようかなと考えた。

「どうせなら人を不快にさせる嘘よりも気分が良くなる嘘にしましょう」

彼女の考え出した嘘は不本意ながら彼女自身のプライドが傷つくものだ。
でも事実は事実なのでどうしようもない。

「なんだか悲しくなる」

落ち込みながら向った先は調理器具の集まる地にして喫緊の課題が山積みの料理を作る調理場であった。






「クッキーを焼いてみましたのでどうか召し上がってください」

サロンから出ていったと思えばしばらくして帰ってきた檄まず料理妖怪金髪赤リボン黄緑マント。
その手には皿が乗っていて皿の上には美味しそうに見える色とりどりの毒物 自称クッキーが載せられている。
焼かれたばかりのクッキーに見える毒物を目にしたナイトオブテンルキアーノはすぐ隣で談笑していたナインのノネットとフォーのドロテアに小声で囁いた。

(で誰が毒味するんだ?)

問われたノネットは答える。

(正露丸味のクッキーなど私はいらないぞ)

続くドロテア。

(私は数日間味覚が戻らなかった)

三人は共に食べたくないと思った。
なにを進んで毒物など食べたいものか。

生贄をもとめて視線をさまよわせるとスリーのジノはいつのまにやら耳にイヤホンをつけて音楽に聴き入り 聞かなかったことにしていた。

(ヴァルトシュタイン卿は不在 ではあの毒物の処理は)

三者の目は自分達はイヤだとばかりに別の誰かを捜す。
ラウンズの専用サロンとはいえ執事やらメイドといった皇宮の使用人もいるのだ。
生贄候補には事欠かない。
しかし誰もが皆あさっての方向を向いたり聞こえないふりをしている。
はっきり言ってしまうと金髪赤リボン黄緑マントが作った食関係のものは皆 ま・ず・い。
紅茶やインスタント食品なら大丈夫でも一から作った料理は例外なく美味しそうに見える毒物とかしてしまうわけで 皆からは嫌煙されていた。

結婚したから少しは上達するかと期待したら期待するだけバカだったと自省を促されるという結果でそのときに食べたものがノネットが食べた正露丸クッキーである。

「みなさん遠慮なさらずに召し上がってください」

遠慮してんじゃねーよ!!食いたかねーだけなんだよ察しろ!!
ルキアーノ ノネット ドロテア ジノ 控えている使用人達。
全員が心の声を揃えて叫ぶ。

そんな生贄を求めていた者達のところへとやってきたのが「・・・・」ピンクマントの無口少女シックスのアーニャ・アールストレイムだった。


「あ 丁度いいところへ」

「?」

檄まず料理妖怪金髪赤リボン黄緑マントはそっと手に持つ皿を差し出す。

「クッキーいかがですか?」

「・・・・」

とくになにも答えずに無口な少女は手だけを動かし皿に載る焦げ茶色のクッキーを取ると ひょいと口に放りこんだ。

*1)))

「もぐもぐもぐ」

表情は変えずに口だけ動かし咀嚼するアーニャはそのまま飲みこむ。

「お味のほうはどうでしょう?」

「・・・・おいしい」

*2)))

アーニャは無口だが物事をストレートに言う人だ。
檄まず料理妖怪金髪赤リボン黄緑マントことトゥエルブのモニカ・クルシェフスキーによるラウンズ内でのクッキー初披露でも 「個性的な味」など当たり障り無い感想を述べる他のメンバーに対しはっきり「まずい」と答えていた。
そのアーニャがおいしいというからには本当においしいのだ。

ルキアーノは驚愕。

(ま まさかアールストレイム卿がうまいと口にするとはな)

ノネット半信半疑。

(い いやまだわからんぞ 一枚だけ奇跡の味に仕上がったとか)

天を仰ぐドロテア。

(まさに未知との遭遇だ)

三者三様だが揃いも揃ってひどいことを考える三人はまずルキアーノが動いた。

「で ではクルシェフスキー卿 私もひとついただかせてもらうとしよう」

「どうぞ」

手にしたクッキーは見掛けが美味しそう。
今まで幾度も見てきた美味しそうに見えるだけの毒物と同じ。

(ええいままよ!)

覚悟を決めて口へ放りこむ。

「もぐ」ひと嚼み「もぐ」ふた嚼み「もぐ」み嚼み「ごくん」最後は飲みこみ。
そのお味のほどは。

「う・・・・」

「「「「う?」」」」

「ううう」

「「「「ううう?」」」」

「うまい!」

ルキアーノは神の奇跡がこの世にあるということを この日初めて実感したような気がしていた。

続いて真偽を確かめるためにノネットとドロテアが さらに無視を決め込んでいたジノにその他の使用人達がひとつずつ食べ同じ感想を持った。
すなわち「おいしい」という。

(これはシマダ卿への愛が毒物を変換させ壁を打ち破る原動力となったのだろうか?)

いま自分で確かめたにもかかわらずしつれいなことを囁くルキアーノはどう思う?とノネットへパス。

(娘が生まれたことから母親として進化しなければならんと本能が働いたのではないか?)

ノネットもしつれいだった。

(恋する心が女を変えるのだな そういえば私も最近料理の腕が上達してきたような気がする 女とは斯くあるべきなのだろう)

(ん?ドロテア 卿は女を捨てたのではなかったのかな それともナグモ卿への愛がお前の女性的なところを進化させたか)

(うるさいだまれ!)

ドロテアは女だった。


しかしサロンにいたメンバーは誰もが失念していたことがある。
4月1日の今日はエイプリルフールこと嘘つきの日であることを。
クッキーは彼女が作ったものではなく皇宮の料理人が作ったものだった。
プロが作ったのだからおいしくて普通なのだ。

(喜んでもらえる嘘は誰も傷つかないからいいけれど複雑な心境です)

人が喜ぶ嘘をついたかわりに妻そして母親としてのプライドが大崩壊。

(どんなに味が悪かろうとも私の料理を心からおいしいといってくださるのはやはりシゲタロウだけなのですね・・・・)

人に優しく自分に厳しいモニカのなんともほろ苦いエイプリルフールだった。

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最終更新:2015年06月14日 16:10

*1 (((く 喰ったぁぁぁ!!!

*2 (((な なんだってーーーーッ!!!