622 :トゥ!ヘァ!:2016/02/21(日) 21:59:11
憂鬱ワールド・ウォーZ


19ⅩⅩ年。

日本 九州

「そっちはどうだ?」

「ダメだ。歩く死体だらけ。生存者は…いなかった」

「そうか…三十分後にはここも爆撃予定だ。ずらかるぞ」

「了解」


世界に謎のウィルスが蔓延した。
それはアフリカの奥地、インドの内陸部、モザイクロシア中央、南米。
正確にこの奇病の発生が確認された時には既に手遅れ。
これといった感染源が特定できぬまま初期の封じ込めに失敗し、陸空海の三系路にて徐々に感染範囲を拡大。

遂には欧州、英国、日本本土、北アメリカ諸国へと飛び火。

これに至って日英独伊仏は共同で非常事態宣言を発令。

北欧のWHO本部へと医者、学者、軍人など各国の関係者が集められ、この奇病への対策ワクチンの研究が始められた。

各国の軍隊は非情とも言える手段を持って拡大を続ける感染者の封じ込めと処理を開始。
一部では封じ込めが失敗した都市部への大規模な爆撃が開始されるところも出てきていた。
対処が遅れ崩壊した国なども出てきている。そういったところへは容赦なく爆弾の雨が降り注いだ。

各国ともに大きな被害を受けながらも自国民の避難とゾンビに対する対策を模索しているのが現状である。
しかし、その中でもいち早く体制を立て直し、次の行動へ移った国がある。
極東の大国 大日本帝国。
始めは日本海を始めとする海域を徹底的に封鎖し、難民諸共本土への侵入を防いでいた。
ゾンビから逃げようと何百、何千、何万もの難民が日本海の荒波に沈められようとも、
海保や海軍の船や航空機に沈められようとも殺到し、一部の船に密航し、諸々の部署の処理能力を超えた結果幾つかのルートにおいて感染者が日本本土へと侵入した。

感染者侵入からの本土でのパンデミック発生においては、初期においては封じ込め、もしくは滅菌は成功していたが、それが何度も発生するとなると話は別だ。
九州のとある地方にて発見と対処が遅れたところから徐々に本土でも感染が拡大し、
パンデミックは九州全土へ派生。一部では中国地方と四国にも感染の上陸が確認された。

だが日本が異常とも取れる動きを見せるのはここからであった。
初期においては感染者の侵入を防ぐため指揮系統の本拠が多く存在している東京周辺の限定的封鎖と、外地への住民の避難。
未だ感染が見られていない地域の住人においてはゾンビの行動が鈍る気温の低い東北、または北海道、カムチャツカ、アラスカへの大規模避難を行った。
九州への感染拡大においては、まるで最初から本土においてパンデミックが起きた際のことを見越していたかのように、すぐさま広範囲の封鎖と生き残りの救助を開始。

現在では九州、中国地方、四国の半ばにおいて感染は食い止められており、生き残った住民の救助作戦が行われている。

623 :トゥ!ヘァ!:2016/02/21(日) 21:59:52
某所 夢幻会

「杉山さん。現在の封鎖線の状況と住民の救出作戦はどうなってます?」

「現在封鎖は順調だ。だが一部の地域においては避難してきた住民との衝突が懸念されている。
救助作戦においては順調だ。だが各地で取り残された人々が予想以上に多く、時間がかかりそうだ。
大陸の方では東条君が頑張っていてくれているが、早めの援軍を求めている」

「わかりました。太平洋方面から戦力をどうにか抽出して送りだせないか検討しましょう。
山本。どうだ?」

「できなくはない。すぐに取りかかろう。だが大陸から海を渡ろうとしている難民は更に増えているらしい。こちらへの対処も手一杯だからそう多くは送れんぞ」

「わかった。辻さん復興予算の試算はどうなっています?」

「現状の試算だけでも恐ろしい数字になってますね。更に増える可能性は高いのが現状です」

夢幻会の会合ではいつもの面子がこの度の大災害においての対策と経過を話合っていた。
まさか自分達が生きている世界で映画のような災害が起こるとは夢にも思わない。
しかし彼らは日本を動かしてきた重鎮。諦める訳にはいかなかった。

「みんな聞いてくれ。どうやら連中は人重い疾患を持っている人間には興味を示さないようだ。
なので現状では連中に我々が重病者だと錯覚させる方向性のワクチンを開発中らしい。
早ければ来月あたりにでも開発ができるという話だ。
同時進行で噛まれても感染を防ぐことが出来るワクチンも開発中とのことだ。それまで頑張って欲しい」

「病人には興味を示さないとはまるで某小説のような特性だな」
「しかし、感染者は走ってくる、体の体液が粘性へ変化しているわけでもない。
海底を歩いてくることもないし、砲爆撃を普通に効いているぞ」
「ということはどちらかと言えば映画版の方に近いのか?」
「だが、ワクチンへ対応してくる可能性もあるぞ。気は抜けないままだ」

嶋田さんからの報告に沸き立つ会合。彼らは一様に疲れたような顔をしていたが、
その表情には明るい顔を浮かべることとなった。

「とにかく、現状は孤立した生存者の救出と、封鎖線の現状維持と北方への国民の避難だ。
ワクチンが開発されるまでの辛抱だ。もうひと頑張りして欲しい」

そして会合で進行役となっている嶋田さんはその中でも特に疲労の度合いが濃かったそうな。

この世界規模での大事件は一月後にはワクチンが開発され、各国の混乱は約1年前後。
ゾンビの掃討にもう1年。一応の復興に8年の合計10年を必要とした。
これらは後にワールド・ウォーZと言われ、人類と新しい種類の病原体もしくは災害との戦いの幕開けとなった。

彼らの戦いは続く


※続かない

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2016年02月23日 05:21