917 :ライスイン:2016/03/18(金) 23:09:05
 1936年9月1日 大日本帝国 嘉手納空軍(※1)基地

この日、大日本帝国は歴史的な日を迎えようとしていた。
空軍基地に臨時で設置された巨大なロケットと発射台へ管制塔や観測室からは期待に満ちた視線が送られていた。

「須川大尉、状態はどうですか?」

管制官から巨大ロケット・・・世界初の有人ロケット暁(※2)先端の宇宙船の操縦席へ確認の通信が送られる。

「各機器異常無し、自分も異常無しです。」

操縦席にいる須川耕太大尉(※3)管制官へ異常無しと報告する。

「(ついに来たぜ、今こそ宇宙に萌えを広める時だ。)」

優秀ではあるが重度のオタクである彼は原隊の仲間たちから送られたアイ○スキャラが描かれたタスキを握りしめながら呟いた。

「カウントダウンを開始します。10・9・8・7・6・」

管制官が宣告すると同時に暁のエンジンが始動する。

「5・4・3・2・1・・・発射ぁ!!」

そして猛烈な衝撃と共にエンジンが勢いよく噴射しロケットが飛翔を開始する。

「うぉ!!・・こいつはキツイ、律○ちゃんに春○下・・・我を守りたまえ。」

猛烈な衝撃の中で崇拝する存在を思い浮かべながら耐える須川大尉。それからしばらく時間が経ち、暁は遂に目標に到達した。


「成功です、暁は宇宙に到達しました。」

暁からの信号を観測していた管制官からの報告に見守っていた一同は歓声を上げながら喜んだ。何せ祖国の英知と技術の結晶が成した
人類初の快挙の瞬間に立ち会えたからだ。彼らが喜びを噛み締めていると暁の須川大尉から通信が入った。

”地球は青かった・・・・・そして萌えで満ちていた”

 その言葉は政府声明により快挙の内容と共に世界中に伝えられた。もっとも後半部分は削除されたが。




                      孤立大陸 第25話「孤立する日本、そして・・・」




 大日本帝国による世界初・・・そして人類初の有人宇宙飛行は世界中を驚愕させた。世界は改めて日本の技術力の高さと強大な国力を
思い知った。だが(欧米の)一部では嫉妬や憎しみといった負の感情を増大させていた。

「おのれジャップめぇ、本来ならば合衆国が受けるはずであった栄光をよくもぉぉ」

ホワイトハウスの執務室ではルーズベルトが発狂していた。何せ彼の思考では”合衆国が受けるべき栄光”を”劣等人種の日本人”に横取りされたからだ。

918 :ライスイン:2016/03/18(金) 23:09:38
「念のために調査いたしましたがジャップによるスパイ活動は確認できませんでした。」

FBI長官のフーヴァーが話しかけた。彼は

”日本人の独自技術の筈が無い、我が国から盗まれたもだ”

という史実の某国並のルーズベルトの命令を受けて緊急で調査していたのだ。

「大統領閣下、科学者たちの話では我が国が宇宙に到達するには最低でも20年は必要との事です。」

別室で科学者たちから説明を受けていたロングが戻ってくるなり言い放った。

「なぜだ・・・何故なのだ。」

「おそらく・・・日本は今まで欧米各国から優秀な技術者を大勢スカウトしてきました。それが原因ではないかと。」

慟哭するルーズベルトに遠慮がちに進言するハル国務長官。

「やはりそうなのか、裏切者共めぇ!!」

その言葉を聞いて再び発狂するルーズベルト。ほぼ同時刻、ベルリンでも総統閣下が発狂していた(※4)


 欧米で巻き起こる不況を余所に大日本帝国とその勢力圏は空前の発展とそれに伴う好景気を見せていた。
それによって得られた莫大な資金を使い、各地の防衛力を強化すると同時に軍備の強化も図った。これによって様々な革新的装備が誕生したのだった。


 1937年1月1日 東京・夢幻会会合場所

「「「あけましておめでとう」」」

会合場所では恒例となる新年会が開かれていた。前年度からの有人ロケット打ち上げに続く様々な快挙に参加者達は喜びに満ち溢れていた。

「それにしても有人ロケットに続き原子力艦と大和型戦艦ですか・・・。以前では考えられなかったことですね。」

海軍大臣に就任していた嶋田繁太郎大将(※5)は感慨深げに言った。
現在海軍では初の原子力潜水艦「伊666 十六夜」及び天龍型原子力防空巡洋艦が就役。大鳳型原子力空母及び大和型戦艦の建造に入っていた。

「空軍も同じだ。新型の各種ジェット機に弾道弾・・・とんでもない進歩だよ。」

空軍次官の山本五十六中将も同じ思いだった。

「陸軍もだ。新型戦車に自走砲、各種ヘリコプターにロケット兵器・・・予算があるって素晴らしいな。」

陸軍参謀総長の杉山大将も順調な進捗具合に素直に喜んでいた。

「今まで稼いだ予算や欧米から分捕った資金も大量にありますからね、将来への投資ですよ。」

大蔵大臣に就任していた辻が珍しく大幅な予算投下を承認する。彼らはルーズベルトが当選した時点で欧米との戦争は避けられないと判断して
様々な準備を既に開始していた。

919 :ライスイン:2016/03/18(金) 23:10:14
「では宴会に入る前に各自報告を」

近衛総理の言葉に各自は姿勢を正して報告を開始する。

「現在各海外拠点にて大規模な要塞と飛行場にミサイルサイロを建設しています。また完全孤立状態になっても数年間は戦える様に原子力発電所の
   整備や可能な場所では地下拠点並びに地下都市の建設を開始しています。」

最初に杉山が報告する。輌ぢが大幅に広がった日本はそのせいで戦力の分散を余儀なくされ、各拠点が各個撃破される可能性が出てきていた。
その為に各地に要塞とそれに付随する防衛設備やインフラの整備を始め、同時に物資の備蓄を開始していた。
また弾道ミサイル用のサイロ建設や核爆弾及び投射手段の配備も開始されていた。

「かねてより計画されていた日本連邦を本年10月に発足予定で参加各国に根回し済みです。また軍と共同して遠隔地の友好国に旧式兵器を
  大量に売却する予定でいます。」

続いて重光外務大臣が発言する。日本連邦構想は草案では天皇陛下を共通の君主とした国家連合であったが政治状況の変化や王家を持つ国家に
配慮した結果、日本を盟主とする国家連合という形に変更になっていた。現時点での参加予定国はタイ王国・ベトナム王国・インドネシア共和国
及びエチオピア帝国とイラン帝国(※6)であった(将来的には更に増える予定)。
 また先の大戦時に製作された戦車の中で現在でも十分通用する74式中戦車の各型を改4仕様(※7)に改装した上でそれらの国だけでなく
北欧やトルコなど連邦構想外の友好国家に供与。また自国採用外兵器として制作されたパンツァーファウスト150やフリーガーファウストを
製造権ごと譲渡する予定であった。

「我が国に関しては今の所順調だな。では世界情勢についての報告を頼む。」

自国の状況に一宇は満足した伏見宮元帥の言葉に重光は再び報告し始める。

「前年度末の時点でオーストリアとチェコスロバキアを併合したドイツはポーランドに狙いを定めたようで国境付近の軍備を急速に強化しています。
  またソ連も同様に狙いを定めたようです。こちらはバルト3国も狙っている可能性が非常に高いです。」

憂鬱本編と比べても余裕がないドイツは形振り構わず動いていた。親ナチス派にクーデターを起こさせて政権を握らせ、それによる要請という形で
オーストリアを併合。間を開けずに同様の手口でスロバキア地方で独立運動を起させ、それに介入する形でハンガリーと共に侵攻。チェコスロバキア側は
猛烈な抵抗を行ったが英仏及びアメリカがドイツを支持した事により敗北を悟ったチェコ側が降伏。スロバキアとして独立した地域を除いて
ドイツとハンガリーにより分割併合された。

「英仏はともかくアメリカのドイツ支持はルーズベルトの独断による大統領声明という形だったようで議会が物凄く荒れている様です。」

その言葉の通り、アメリカによるドイツ支持の声明はルーズベルトの独断だったようで議会両院では

”侵略者を支持し、アメリカの正義と良識を汚した”

として与党である民主党からも非難され、釈明に追われている有様だった。

「まあこれ以上は何も起きて欲しくないな。」

嶋田のその言葉により報告はいったん終了し、参加者達は料理と酒を楽しむ。だがそんな願いが叶うはずも無かった。

920 :ライスイン:2016/03/18(金) 23:10:46
1937年1月8日 ドイツ・ポーランド国境

「畜生っ!!撃つんだ・・・ドイツ野郎を一歩も入れるな。」

ポーランド軍兵士が絶叫しながら機関銃を侵攻してくるドイツ軍へと撃ちまくっていた。
本日未明、ドイツはポーランド軍によるドイツ軍兵士殺害(※8)を受けてすぐさま宣戦布告しポーランドへと侵攻していた。
この事態を受けてポーランドは直ちに予備役を招集すると共に米英仏各国に支援を要請した。しかし英仏は度重なるポーランドの要求(※9)に
いらだちを募らせていて、更に内々にドイツ支持を決定していた事から領土の大幅割譲による和平を提案する有様だった。アメリカに至っては
ポーランドとの貿易摩擦や領土問題(※10)により非常に冷淡で国境を越えて旧東プロイセンに避難する一般市民の保護のみを行っていた。

「元帥閣下、ドイツ軍の侵攻が止まりません。スロバキア軍及びハンガリー軍・ルーマニア軍も確認しました。」

ワルシャワのポーランド軍総司令部ではシミグウィ元帥が報告を受けながら指揮を執っていた。
ドイツによる侵攻のから1日後、追加でルーマニアとハンガリーまでもがドイツ側で参戦しほぼ袋叩きの様相を呈していた。

「予備役をワルシャワへ集合させて防衛線を張るのだ。ここで引き付けている間に騎兵集団と装甲集団を側面に迂回させてドイツ軍を攻撃する。」

かれの戦略は予備役を含めた膨大な戦力をワルシャワに集めて防衛線を敷き、そこでドイツ軍を受けとめながら迂回させた精鋭部隊による挟撃を
行って撃破する事だった。騎兵集団とはポモルスカ騎兵旅団など3個騎兵旅団からなるポーランド最強の騎兵部隊で装甲集団とはスウェーデンが制作した
輸出用戦車のL60と改良型のL61(砲塔を大型化して37㎜砲を搭載)を200輌装備したポーランド唯一の戦車部隊であった(※11)。
それに最新鋭のPZL P.24戦闘機と試作中にもかかわらず増産したPZL 37爆撃機を可能な限り配備して上空を固めた。
上手く行くかもしれない・・・もしかしたら講和に至れる位の打撃を与えられるかもしれない、ポーランド軍上層部に希望を抱かせられるだけの戦力。
しかし現実は無情であった。


 1937年1月12日 ワルシャワ正面

「中々苦戦させられたがやっと追い詰めたぞ。」

ドイツ軍のポーランド侵攻軍総司令官ヴェルナー・フォン・フリッチュ上級大将はワルシャワを見詰めながら呟いた。
彼らの侵攻は当初こそ上手く行っていたがワルシャワに接近した直後に迂回機動を行い背後に回り込んできたポーランド軍への対処にかなり苦労した。
だが60口径50㎜砲を装備した3号戦車L型や48口径75㎜砲装備の4号戦車H型、Me109FやJu87D及びJu88など陸空の最新装備(※12)を有する部隊を
迎撃に充てて粉砕していた。

「閣下、予定通りソ連軍による侵攻が開始されました。」

参謀長のボック大将が報告に現れた。ドイツは事前にソ連と密約を結んで侵攻していて彼らはそれに従い本日ポーランドに攻め込んだのだ。
ティモシェンコ大将率いる60万人以上のソ連軍は多砲塔重戦車T35を定数100両保有する5個親衛戦車旅団(※13)を先頭に侵攻し。僅か半日で対ドイツ戦の
影響で防備の薄くなった国境を突破。抵抗するポーランド軍や民兵を粉砕しながら順調に進撃していた。だが対するドイツ軍はワルシャワで苦戦していた。
10個師団近いポーランド軍が前線に送られる予定であった重砲と共に猛烈に抵抗し、装備に勝るドイツ軍でも被害が続出していた。

「閣下、このままでは無駄な犠牲が出るばかりかソ連軍が到着してしまいます。」

此の侭攻撃を続ければ無駄な犠牲が出るばかりか、ソ連軍が到着して主導権を奪われるかもしれない。そう懸念する参謀の一人に対してフリッチュは

「奴らを使う。」

と嫌悪感を滲ませながらも不気味に笑った。そして翌日・・・

921 :ライスイン:2016/03/18(金) 23:11:20
「突撃ィィィィッ!!」  「ニダァァァァァ」

戦場に不気味な絶叫が響き、多数の朝鮮系の老若男女が口から涎を垂らしながらワルシャワのポーランド軍陣地へと突撃していく。そしてその背後からは
武装SSの督戦隊(大半が朝鮮系ドイツ人・・・所謂ハーフで構成 ※14)が追い立てるように進撃していく。彼らはテソウル市を始めとしたドイツ国内から
集められた朝鮮人20万人で構成され、粗末な武器を持たされた挙句、麻薬を打たれて突撃させられていた。その任務はポーランド軍の弾薬を消耗させる事である。

「頑張ってポーランド軍を消耗させてくれよ。」

「序に不良民族の処理も出来ますしね。」

彼らの突撃を見ていた将校たちは愉快そうに呟いた。だが対するポーランド軍は悲惨な状態に陥っていた。

「撃っても撃っても後から湧いてきやがるぞ。」

「麻薬をやってるな、多少被弾しても止らないぞ。急いで砲撃支援を」

ゾンビの如く多少銃弾を受けても足を止めないヤク漬け朝鮮人の大群の迎撃にポーランド軍は大量の弾薬を消費してしまい、翌日に行われたドイツ軍の総攻撃を
撃退する事ができず敗北。政府首脳部が爆撃で全滅した為、事実上の最高権力者となったシミグウィ元帥が降伏を宣言しポーランドはドイツとソ連に分割され
滅亡したのだった。


 1937年1月20日 東京 夢幻会会合場所

「まさか此処まで事態が急変するとは・・・。」

近衛総理を始め、会合メンバーはあまりの事態の急変に戸惑いを見せていた。
確かにドイツがソ連と共にポーランドへ侵攻する兆候はあったが彼らは38年以降だと予測していたのだ。

「それにこの時点で3号・4号の長砲身型やMe109Fが登場したか・・・やはり我々の影響か。」

「それもあるがどうやら民需を犠牲にしているようだ。」

同時にドイツの軍備状況も彼らの知る史実より進歩していた。これは先の大戦における日本製兵器の性能の高さに脅威を受けたのが要因であった。
日本を追い越す為に民間経済を犠牲にして兵器開発を行い、この時点で史実と比較して高い性能の兵器を手に入れていた。しかしその代償は大きく
経済対策は不完全で不況から脱却できず、ヒトラーのカリスマ性と過激な反日と巧みな宣伝で誤魔化している状態であった。

「これは警戒態勢を更に強化するしかないな、いつ自作自演で言いがかりつけてくるか分からん。」

「ですな、独立予定のインドネシアからはオーストラリアによる嫌がらせが後を絶たないとの報告が来ています。」

「またオージーかよ。」

その言葉の通り、独立予定のインドネシアではオーストラリア領となっているニューギニア島東部からの密入国者に悩まされていた。彼らは越境しては
勝手に伐採や採掘を行い現地住民と争いを繰り返していた。日本の警官隊や憲兵隊、そして現地人で構成されるインドネシア警察が対処に当っているが
豪州人は白豪主義に基づいた差別的な言動をするばかりであった為に殆どの場合で銃撃戦に発展し双方に犠牲者を出していた。豪州政府に抗議しても

”日本の非人道的な対応を非難する”   ”神聖な豪州領土を侵しているのはお前達だ”

などとマトモに取り合おうとしなかった。そのため日本は国境の閉鎖を決断。国境付近に複数の基地を新たに整備すると共にヘリコプターを装備した
陸軍機動憲兵隊や熱帯戦技教導隊、そしてインドネシア警備隊から森林警備大隊(レンジャー部隊)を投入して対処に当っていた。更に犯罪の長を理由に
オーストラリアに対してインドネシアへの入国制限を課していた。

922 :ライスイン:2016/03/18(金) 23:11:54
「まあ見せしめに違法漁船や海賊船を撃沈していますから最近は大人しくなっていますよ。」

海軍インドネシア戦隊司令官 兼 海上保安庁東南アジア管区司令の南雲少将が報告した。

「なら良いだろう、次を」

近衛総理が次の報告をするように行った。

「内務省が目を付けていた要注意人物が複数行方不明になっています。」

阿部内務大臣の報告に全員が驚愕した。要注意人物とは帝国に害を与える行為を行った若しくは現在も行っている人物で証拠を掴む為に内偵捜査を
続けていた対象達の事であった。現時点での代表的人物は

○石原莞爾 (元陸軍大佐 強固なアジア主義者で戦争中も中華との和解や連帯を訴えていた。最終戦争など危険思想や過去の行動を理由に軍を追放。

○米内光政 (元海軍少将 欧州やソ連のハニートラップに引っかかって機密情報を流していた為、軍法会議後に不名誉退役。不況により

○鳩山一郎 (元議員 軍備を放棄した上で海外領土を独立させて非武装共同体を建設しよう等の妄言により所属政党を追放され失職。

の3人で他にも親中派やアジア主義者、共産主義者や無政府主義者等が多く居た。

「米国のパスポートで米国籍の船で出国した事までは掴みましたが行き先が不明です。」

「フランクリンのクソ野郎めっ!!」

米国の関与があるとの報告に嶋田は思わず絶叫を上げた。

「落ち着いて下さい島田さん。それにしても影響力の無い連中ばかりを確保して何を企んでいるんでしょうね?」

嶋田を宥めながら疑問を呈す辻。彼からすれば国内や領域内での影響力の無い・・・悪評のみの連中で何をしようと考えているのか理解できなかった。

「軍や外務省と協力して引き続き調査をします。」

明確な証拠が無い為、現時点でアメリカを追求できない。その為に継続して調査を行う事になった。

「それとバルカン半島・中東情勢はどうかな?」

話題を変えようとした伏見宮の言葉に今度は外務次官の吉田が発言を開始した。

「バルカン半島と中東は一応は安定しています。トルコが未だ広大な領土を保持し軍備も強力な為、軍事同盟を結んでいるアルバニアやマケドニアも
  含めて攻め込もうとする国は居りません。」

中東やバルカン半島ではトルコが未だ広大な領土を保持(※15)していた。更にトルコから独立したマケドニアやアルバニアが自国を狙うバルカン諸国に
脅威を感じてトルコと軍事同盟を結んでいた為、問題児のギリシャを含めて何処も手出しできなかった。また中東もイランが日本連邦への加盟を打診し
実質保護下に入った為、イラン占領を狙っていたイギリスや共産政権樹立工作を企んでいたソ連も手を引いてのだった。

「但しイタリアがソマリア駐留兵力を増強しています、恐らくエチオピアを狙っているのでしょう。」

イタリアは日本との戦争でエリトリアを失い、先の大戦でも未回収地域を完全に回収できなかった。その不満はムッソリーニが政権を握っても消えず、
経済はある程度回復したがそれでも国民の不満は燻り続けていた。それを打開する為に勝てる戦争を欲していたイタリアだったが内戦が起こると予想されていた
スペインではフランコ将軍がアッサリと無血クーデターで政権を奪取。手頃な相手のはずのアルバニアもトルコと軍事同盟を結んだので手出し不可能。
そこで何処とも同盟を結んで居らず、そして国力・軍事力が低く嘗ての因縁の相手であるエチオピア相手に戦争を仕掛けようとしていた。

「まだ連中はエチオピアが連邦に加盟を打診している事も先行して軍事援助を行っている事も掴んでないみたです。」

少し前まで軍事顧問としてエチオピアに出向き、牟田口少将と交代で帰還した東条がが呟いた。

「「「イタ公には地獄を見てもらおう」」」

会合の場に気味悪い声が木霊した

924 :ライスイン:2016/03/18(金) 23:13:28
 1937年2月12日、イタリア軍はエチオピアに宣戦布告し植民地エリトリアから侵攻を開始した。理由はエチオピアによるソマリランド内での破壊活動や
エチオピア国内のイタリア人や親伊派のエチオピア人に対する不当な措置を挙げていた(もちろん事実無根)。
侵攻したイタリア軍はバドリオ大将を総司令官に陸海空及び黒シャツ隊併せて20万人。主力であるL3系列の軽戦車や最新のL6/40軽戦車やda47/32対戦車自走砲
に加えてG.50やMC.200など生産を開始したばかりの最新鋭機を投入するなど乏しい予算からも可能な限りの兵力を投入したイタリアは絶対の自信を持っていた。
しかし・・・。

「なんで土人共があんな強力な兵器をもっているんだ?」

「こっちの戦車が一撃で破壊されたぞ」

先頭を切って進撃していたアリエテ機甲師団はエチオピア軍戦車隊の迎撃を受けていた。接敵前までは楽観的な雰囲気が漂っていたアリエテ機甲師団であったが
日本から供与された74式中戦車改4型を装備したエチオピア軍の戦車隊に驚愕していた。動きはまだ未熟だが巨大な戦車が100両以上迫ってきて自分達の戦車を
一撃で吹き飛ばしていくのだ。さらに空では数こそ少ないが81式艦上戦闘機(憂鬱96式艦戦)を装備したエチオピア航空隊に翻弄され地上援護どころではなかった。
更に都市部に侵入した部隊はエチオピア軍の遊撃部隊(パンツァーファウストや擲弾銃などを装備)に翻弄され、毒ガスを仕様しようと輸送すれば情報を入手した
日本軍事顧問団の一木少佐が非公式に指揮するエチオピア軍挺身隊に倉庫ごと破壊され自軍に被害を出す始末。
そんな状況が続き、負け続けたイタリア軍は侵攻から3週間ほどでエチオピアから叩き出されソマリランドへ逆侵攻を受ける有様だった。

「なんたる様だ、土人如きに負け続けるとは」

「バドリオを更迭しろ。」

国王やムッソリーニ、そしてファシスト党上層部などは総司令官バドリオ更迭を求めたが代わりの指揮官の成り手が見つからず(敗北必死の戦場には誰も行きたがらなかった)
Ⅱ週間後に漸くロドルフォ・グラツィアーニ中将に決定した時点でソマリランドの1/4を損失していた。

「不味いぞ、増援が間に合わない、このままではソマリランドを損失してしまう。」

「くそぉ・・・和平しかないのか・・・」

代わりの司令官の決定に無駄に時間をかけ過ぎたせいで援軍投入は間に合わず、損害が多すぎて残存戦力では守りきれない。ここに至り勝利の可能性が潰えた事を悟った
イタリア首脳部はエチオピアと関係の良い日本(笑)に講和の仲介を依頼。そしてトルコの首都イスタンブールで始まった和平協議は5月5日に成立した。内容は

01:イタリアは虚偽の理由でエチオピアに侵攻した事、並びに毒ガスの搬入や各種非人道的行為について謝罪する。

02:賠償金の支払い及びエチオピア側が鹵獲した兵器や物資を正式に譲渡する。

03:今後10年間ソマリランド駐留兵力を陸上5000人、航空機50機に制限する。

04:国境から5㎞の遅滞を非武装地帯とする。

であった。何とか領土割譲だけは免れたイタリアだったが国民は大激怒。各地で暴動が勃発し一時はファシスト党政権も危うくなったがムッソリーニの必死の演説と
全ての責任をバドリオに被せる事で一応は沈静化した(後に軍法会議にかけられて不名誉除隊→数日後に暴走車に轢かれて死亡)。


 1937年10月2日、東京にて日本連邦の結成式典が盛大に行われた。盟主である日本帝国の他、参加国のタイ王国 ベトナム王国 エチオピア帝国 イラン帝国
そして先月正式に独立したばかりのインドネシア共和国の代表らが盛大な式典の中で高らかに連邦成立を宣言した。
これに対してイギリス・ドゴール朝フランス帝国・ソビエト連邦・ドイツ第3帝国等の欧州諸国や中華民国及び大朝鮮帝国(※16)が

”日本の世界支配の野望の現れである”  ”世界最悪の極悪国家が本性をむき出しにした”

などと一斉に非難。ただアメリカはルーズベルトが非難声明を出したものの国民の多くは好意的であった。


 そして第2次エチオピア戦争終結から約半年後の11月6日、イタリアはドイツと連名で突如日本を非難した。
内容は先の戦争における日本のエチオピア支援に関してであり”不当な介入”とやらを強く非難するものであった。
これに先の連邦結成を非難した反日各国も相乗りして日本非難キャンペーンを実施。遂には日本が脱退した国際連盟にて対日制裁が話し合われる事態になるのだった。

926 :ライスイン:2016/03/18(金) 23:15:05
※1:空軍基地で一応は戦闘機が拝眉されているが実態は巨大なロケット打ち上げ施設。

※2:ロケット本体の何処かに某艦娘の絵が描かれている。

※3:空軍地上攻撃機部隊(痛い子)の中隊長。憂鬱本編よりも早く生まれて(転生)いて無駄に才能が高かったことから各種選抜試験をクリアして抜擢された。

※4:ハイゼンベルグやフォン・ブラウンなど日本や満州へ移住した自国出身の多数の科学者が参加していることを知って。

※5:功績を上げ過ぎた為、憂鬱本編よりも早く大将に昇進し大臣職に就いた(責任を押し付けられた)。

※6:中東の油田利権を欲した英国や共産政権樹立を企むソ連に度重なる干渉を受けていた。

※7:先の大戦時に製作された74式中戦車の最終発展型で改3型(若しくは3型仕様に改造した改1・2型)のエンジン等を換装し、無線機や照準器を最新の物に変えた。

  性能  重量33t 75㎜50口径戦車砲×1、7.7㎜機銃×2 装甲厚20~65㎜ + 車体・砲塔正面20㎜ 乗員5名 速度:38㎞/h

※8:勿論ドイツの自作自演で殺されたドイツ兵も武装SS所属の朝鮮系ドイツ人兵士。

※9:ドイツの脅威を訴えての兵器の無償供与やドイツを先制攻撃で潰そうといった度を越した要求を度々行っていた。

※10:低価格のポーランド製品を多数輸出しアメリカ製品に高関税を課していた事やアメリカ統治下の東プロイセンを自国領土と主張し返還を迫っていた。

※11:不況により軍事予算が大幅に削減され、その予算も歩兵や騎兵に多く回されたせいで戦車の国産を早々に諦めていた。

※12:本文中にもあるが日本に対抗する為に民需などを犠牲にして軍関係に重点的に予算配分していた為、史実よりも若干早く配備できていた。
   なお海軍はお寒い限りで米国製の改レキシントン級巡戦2隻とヒッパー級重巡4隻が主力。

※13:編入した旧ロシア王国領の安定化等様々な政治的問題に専念せざるを得なかったスターリンはトハチェフスキーなどの粛清を除いて軍に関わる暇が殆ど無く。
   気づいた時にはT35が制式化された挙句500両以上生産され、後継車両のT100やSMKも制式化直前だった(関係者は後にシベリア送り)。

※14:朝鮮人から愛を与えられたドイツ人女性が母親でドイツ国内では差別の対象となっていた。そこで国家の為に働き名誉を得てドイツ人と認められようという
   SSの勧誘に応じて入隊。多くが10代後半から20代。

※15:バルカン半島南部やサウジを除く中東の大半など未だに広大な領土を保有している。

※16:アフリカのトーゴランドに建国された朝鮮人国家。低賃金労働者としてアフリカに派遣された居た頃より増え続け、人口は一時600万人まで迫っていたが
   英仏に使い潰されたり周辺部族との争いや未知の疫病の影響で人口は現在200万人程度。因みに彼らの目標は朝鮮半島奪還と日本滅亡。

927 :ライスイン:2016/03/18(金) 23:15:41
おまけ1 帝国海軍新型艦艇

○天龍型原子力防空巡洋艦

20000t 15.5㎝60口径速射砲×2 57㎜70口径速射砲×4 20㎜近接防御機銃×4 93式長距離艦対空誘導弾連装発射機×2 92式中距離艦対空誘導弾連装発射機×2

    324㎜3連装対潜魚雷発射管×2  搭載:回転翼機×1 速力:33kt

01:天龍  02:龍田  03:夕張(1937年12月)  04:名張(1938年1月)

 帝国海軍が建造した初の水上原子力戦闘艦。艦隊防空を主眼に長~中距離対空誘導弾と対艦/対空両用の速射砲を装備。また近接防御用の多銃身機銃や対潜魚雷も搭載した。
主な任務は原子力空母の護衛や艦隊防空。4隻の建造が決定しているが大型かつ高価な為、以後は廉価版の建造が計画されているが予算承認されるかは未定。


○隼鷹型空母

64000t 57㎜70口径速射砲×10  試作20㎜近接防御機銃×8  25㎜機銃他 速力:33kt  搭載機;80~100機

01:隼鷹  02:飛鷹  03:大鷹  04:海鷹

1920年代後半から30年代前半にかけて建造された大型空母。建造当初からアングルドデッキなど多数の新機軸が採用されている。
本艦より電探連動の多銃身機銃の採用を開始している。

○大鳳型原子力空母

70000t 57㎜70口径速射砲×10  20㎜近接防御機銃×8  25㎜機銃他 速力:33kt  搭載機;80~100機

01:大鳳(1938年8月)  02:白鳳(1939年2月)  

 帝国海軍が建造中の初の原子力空母で隼鷹の船体を若干拡大し原子炉を搭載した。効果かつ実験的な意味合いも強い為、建造は2隻のみでこれらの運用結果を持って
次の艦の設計を決める予定。


○大和型戦艦

132000t 50口径51㎝3連装砲×3(核砲弾対応) 15.5㎝60口径連装速射砲×8 12.7㎝54口径連装速射砲×10 57㎜70口径速射砲×8 20㎜近接防御機銃 他

速力:33kt

01:大和(1938年6月)  02:武蔵(1938年11月)  03:信濃(1939年3月)  04:甲斐(1939年7月)

 帝国海軍が建造し始めた最後の戦艦で最新技術や今まで培ってきた経験が惜しげも無く投入されている。排水量に比べて主砲の口径が小さく砲門数が少ない。
しかしその分を他に充てていて砲塔も大型で旋回速度も速く、発射速度も最大で1分間に5発、防御力も56㎝砲に対応するほど強固である。最大の特徴としては
核攻撃に対する防御機構を備えている他に多数の核砲弾を搭載していて通常の砲弾では対応できない高重要度目標への使用を想定している。


○原子力潜水艦 伊666 十六夜 

 帝国海軍初の原子力潜水艦で性能は史実スキップジャック級相当。実験艦であり本艦の運用実績を持って次の原潜の設計を決める予定。


○伊200型潜水艦  現在の帝国海軍の主力潜水艦で性能は史実のうずしお型(初期型)相当。

928 :ライスイン:2016/03/18(金) 23:16:14
おまけ2 現在の日本海空軍主力機

○倉崎重工 96式艦上戦闘機 「陣風」 ターボジェット:4.8t×2 最大速度:M1.45 航続距離:3200㎞ 武装:95式25㎜多銃身機銃×1 爆弾・誘導弾など3.8t

 倉崎が開発した最新鋭の艦上戦闘機で外見はF/A-18似。高性能だが大型の為、翔鶴型以降の大型空母空母でしか運用できない。


○三菱重工 96式艦上攻撃機 「流星」 ターボファン:5.9t 最大速度:M0.9 航続距離:4500㎞ 武装:95式25㎜多銃身機銃×1 爆弾・誘導弾など7.5t

 三菱が開発した核や大型爆弾も運用可能な重艦上攻撃機で外見はA-7似。開発されたばかりのターボファンを採用、陣風同様に翔鶴型以降でしか運用できない。
 空母運用に必要な装備を取り除いた型を空軍が採用している。


○倉崎重工 91式艦上戦闘攻撃機 「雷風」 ターボジェット:3.9t 最大速度:M1.1 航続距離:2800㎞ 武装:90式25㎜機銃×2 爆弾・誘導弾など3.5t

 倉崎が開発した艦上戦闘攻撃機で外見はA-4似。小型空母でも運用可能なサイズで空軍でも多数が採用されている。


○中島重工 95式戦闘機 「疾風」 ターボジェット:5.2t 最大速度:M1.5 航続距離:3400㎞  武装:95式25㎜多銃身機銃×1 爆弾・誘導弾など3.1t

 中島が開発した空軍用の単発戦闘機で外見はF-16似。価格が上昇したせいで配備が中々進まず本土への配備が優先されている。

○ハインケル He92「サラマンダー」(92式戦闘機「火龍」)  

 ターボジェット:1.3t×2 最大速度:M1.25 航続距離:2400㎞  武装:90式25㎜機銃×2 爆弾・誘導弾など2t

満州に本社を置くハインケル社が開発した軽戦闘機で現在の空軍主力戦闘機。外見はF-5A。レーダー等を装備した全天候型でありながら低価格で運用・整備が容易。
ハインケル社では本機を元にした友好国供与用の戦闘機も開発中。


○倉崎重工 94試重爆撃機「斑鳩」 (B-52 後に99式戦略爆撃機として制式化)

○ハインケルHe193「グライフ」(93式重爆撃機「飛鳥」 B-47.生産能力不足の為、倉崎や中島でライセンス生産)

○中島重工 88式重爆撃機「富嶽」 (憂鬱富嶽)


いかがでしょうか?
結構強引な展開をさせましたがなんとか日本を(欧米からの)孤立に持って行けました。次回で開戦に持っていく予定です。
また日本を強化し過ぎたので欧米各国も多少強化する予定です。
 蛇足ですがドイツは軍事技術こそ上昇したものの余裕がない為にヒトラーがレーム以降の粛清などを躊躇った為、国防相はブロンベルク元帥のままでフリッチュも在職中。
ソ連ではスターリンが気付いた頃には多砲塔戦車がいつの間にか量産されていたというハプニングが発生。アメリカでは国民の多数が親日傾向でそれを崩そうと
フランクリンが奮闘しています。


~予告~

 国際連盟の場で大々的に日本叩きを始めた欧米各国。それに乗じた中華民国は支援目当てに対日紛争を引き起こし、ドイツとアメリカが義勇軍を派遣する。
国民の親日傾向に苛立ったルーズベルトは様々な手段を駆使して上下両院の議員を取り込む一方で対日圧力と挑発を強化した。しかし中々乗ってこない日本側に苛立ちが
頂点に達したルーズベルトは遂に奥の手を用いて強引に開戦に持ち込むのであった。

次回”開戦”

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最終更新:2016年03月20日 00:21