547 :ライスイン:2016/04/24(日) 21:30:53
1938年1月6日 江蘇省国境地帯  日本軍陣地


「定時報告。此方第8監視所、現在まで異常無し。」

「了解、交代要員を送る。」

監視所に配置されていた分隊から後方の中隊本部に定時報告が成される。
大陸及び遼東半島・満州の中国との国境は一部の交易路を除いて高さ3~5m程の石垣で遮断。底に竹槍を仕込んだ落とし穴や鉄条網に各種地雷や
障害物などを膨大な労力(※1)をかけて敷設していた。そして一定距離ごとに重厚なコンクリートで作られた陣地や地下拠点・砲兵陣地を設けていた。
彼らの居る監視所もその中の一つである。

「あと少しで交代が来るか。」

監視所の責任者も兼ねる分隊長は報告を終えると椅子に座り、魔法瓶に入ったコーヒーを飲み始めた。後方に下がれば入浴やベッドでの睡眠、そして
街中の行きつけの飲み屋での飲食が待っている。彼が気を抜いたその時・・・

「分隊長殿、多数の人間が防壁を乗り越えてきます。」

外で監視にあたっていた兵が慌てて飛び込んできた。その報告に分隊長は愛用の89式自動小銃(※2)を掴んで外に出た。それと同時に爆発音が響く。

「今の爆発はなんだ?」

「乗り越えてきた連中が地雷を踏みました。」

分隊長の問いに監視にあたっていた兵が答える。

「連中は殆どがみすぼらしい恰好をして痩せ細っています。恐らく食料を求めての行動かと。」

兵の言葉に分隊長は双眼鏡で確認すると確かに壁を乗り越えてきた連中はみすぼらしい恰好で痩せ細っていた。だが彼は一部が銃を構えているのを見逃さなかった。

「伏せろっ」

分隊長の命令に反応した兵たちは素早く伏せ、その少し後に銃弾が上を通過した。

「緊急報告、此方第8監視所。多数の難民が壁を乗り越え、一部が銃撃してきています。」

「こちら中隊本部、現在各地で同様の事が発生している。直ちに反撃せよ。」

監視所に戻って報告を行う分隊長は中隊本部より各地で似たような事態になっていることを知らされる。

「反撃しろ、撃てぇ」

分隊長の命令の元、彼らは自動小銃や機関銃及び擲弾銃を撃ち始める。そして交代に派遣された分隊も加わって暫くした頃、彼らの近くに砲弾が落下した。

「大丈夫か?」

「無事です。」

分隊長が叫ぶと部下たちから声が返ってくる。どうやら死傷者はいないようだ。

「中隊本部より各隊へ、中国軍がだ規模攻撃を開始した。直ちに罠を起動させたのちに後退し合流せよ。」

通信兵の無線から中隊本部の命令が流れる。彼らはそれに従い監視所などに設置された時限爆弾を起動すると車両に分乗し後退した。



                           孤立大陸 第26話「開戦」

548 :ライスイン:2016/04/24(日) 21:31:27
1938年1月7日、中華民国総統の蒋介石は世界に向けてこう発表した。

「国境付近で日本軍が我が国の民を虐殺した。我々は民を守るべく積極的自衛権を行使する。」

彼は不要な難民の処理を日本軍に押し付け、更にそれを利用して攻撃を加える大義名分を得ようと企んでこの様な行動を行った。
この発表への各国の反応は迅速だった。

「我が国は虐げられている中華民国を救援すべく義勇軍を派遣する。」

ドイツ総統アドルフ・ヒトラーは中華民国支持と日本非難の演説の後に義勇軍コンドル軍団の派遣を発表。これと前後してイタリアとソ連も義勇軍の派遣を決定。
アメリカは国民の多くが親日の為、退役軍人による自発的行動という形をとって傭兵航空団フライングタイガース(地上部隊付)を派遣。英仏は
義勇軍の派遣こそ行わなかったが船舶の提供及び自国植民地の通過許可や物資の支援を決定した。

○ドイツ コンドル軍団  司令官:フーゴ・シュペルレ中将

Fw190A:24機、 Me262:8機(※3)、 Fw190F:24機、 Ju87D:24機、 Ju88:12機

4号戦車H型:32両、 3号突撃砲G型:12両、 ヴェスペ自走榴弾砲:12両、 対空戦車メーベルワーゲン:16両、 ティーガー1重戦車:8両 

歩兵:1個連隊 

○イタリア フォルツァ 軍団  司令官:ジョヴァンニ・メッセ少将

Mc202:24機、 Re2001:24機、 SM81:16機

3号戦車L型:24両、 P40重戦車:12両、 da 90/53対戦車自走砲:8両

歩兵:2個大隊

○ソビエト  マルクス軍団  司令官:ゲオルギー・ジューコフ中将

Yak-9D:36機、 MiG-5:18機、 Il-2:24機、 Pe-2:32機

T-34/76中戦車:24両、 KV-1E重戦車:12両、 BT-7M快速戦車:30両、 BT-7A砲兵戦車:20両、 SU-122 自走砲:18両、 ZSU-37自走対空砲:12両  

狙撃兵:3個旅団(機械化1、自動車化2)

○アメリカ フライングタイガース  司令官:ジョセフ・スティルウェル少将

P-40Nウォーホーク:20機、 P-38Fライトニング:12機、 XP-55アセンダー:8機、 F6F-3ヘルキャット:24機(内4機は試作の夜戦型)

M4A1中戦車:24両、 M6重戦車:6両

歩兵:海兵隊1個大隊


という義勇兵の範疇を超えた膨大な戦力で試作機や実験機等が多数含まれている事から実戦試験や日本軍に通用するかの性能評価が目的であることは一目瞭然であった。
なおフライングタイガースに爆撃機が含まれていないのは”義勇軍の目的はあくまでも防衛である”という国民へのアピールや”現時点で貴国と戦争する意思はない”
というルーズベルトによる日本への譲歩(笑)の為であった。更に欧州各国及び豪州から参集した義勇兵(笑)からなる”国際旅団”も存在していた。
同時に中華民国へ各国の戦車・航空機を含む旧式兵器や武器弾薬が多数供与される事になっていた。
これ等の義勇軍や物資は実は前年度より通常の貿易船やソ連領内を経由して陸路で密に送られていてヒトラーの演説時点で殆どが配置完了していた。
またこれとは別に追加で義勇兵を送ろうとはしたが余りにも露骨すぎる行動に切れた日本が

「義勇兵であろうが我が国と戦争中の中国に味方する以上攻撃対象となる」

と声明を出した後に攻撃を開始(なおアメリカ船舶は政治的理由から除外)。義勇兵という事で護衛を付けられなかった追加の独伊義勇軍を輸送する船舶の多くが
拿捕又は撃沈され、生存者は海賊扱いで逮捕。後に両国が日本に補償金を支払う事で返還された。
また同じく海路で輸送中の中国向け兵器を満載した英仏の輸送船の大半が拿捕され積荷の兵器は接収された(船舶と乗員は補償金と引き換えに返還)。

 1938年2月14日、各国義勇軍が到着し供与兵器の配備を終わらせた中国軍は約200万人の兵力で日本領へと殺到した(真面なのは国民党軍及び義勇軍の約40万ほど)。
強固な要塞線と強烈な砲爆撃によって90万人以上が戦死したが国境線の突破に成功。備蓄弾薬の多くを消費した日本軍は増援と補給が到着するまでの間、後方の
予備要塞線まで避難民を護衛しながら後退していった。

549 :ライスイン:2016/04/24(日) 21:32:03

 1938年2月17日 東京・夢幻会会合場所

「大陸では・・・些か押し込まれている。」

杉山大将がそう告げた。

「練度は低いが圧倒的な兵力とバイオソルジャー(薬物中毒兵)は脅威だ。結構吹き飛ばしたんだが尽きる事無く湧いてくる。大規模な爆撃隊の増援が必要だ。」

「虎戦車の出現が確認されました。全て撃破しましたが現用主力の90式中戦車が砲戦で4両撃破されました。連中の軍事技術の進歩は侮れません。」

「欧米の連中、相当量の旧式兵器を供与した様で運用は稚拙ですが中国軍の火力が大幅に上がっています。」

情報部その他からも我が軍不利な報告が届く。特にティーガーの出現は自軍戦車が撃破される可能性が大幅に向上した事の表れであったからだ。
同時に中国兵の圧倒的な数と欧米製の旧式兵器の組み合わせも自軍の被害の向上につながっていた。

「ですが制空権は確保しました、間もなく総反撃に移れます。」

漸くの朗報に一同の表情が明るくなる。空軍や海軍航空隊は震電改(ターボプロップ・2重反転プロペラ)や天山改(A2Dスカイシャーク)といった治安維持や
欺瞞目的に配備していた旧式機部隊を下げて陣風や疾風といった音速越えの新型機部隊と入れ替えて敵機掃討を実行。圧倒的な性能差で早々に制空権を
確保していた。

「わかりました。ですが中国が前回同様に毒ガスを使用した場合はどうします?」

「流石に核は使えないからMOABやデイジーカッター及び焼夷弾を使用するつもりです。また念のためにサリンも輸送します。」

中国軍による化学兵器攻撃の可能性への対処を問う近衛首相に対して杉山が答えた。

「まあやむを得ないでしょうな。」

この言葉に反対する者は会合参加者には居なかった。


 1938年3月5日  大陸各戦線


「撃ち抜く・・・!止めてみろ・・・!」   「汚物は消毒だー!」  「痛いのをぶっ喰らわせてやれ!」

大規模な増援を受けた日本軍による盛大な砲爆撃を開幕音として総反撃が開始された。空には富嶽や飛鳥だけでなく試作中の斑鳩といった多数の超重爆が各種爆弾を吐き出し、
護衛を除いた戦闘機・攻撃機が爆撃や機銃掃射を行っていく。地上では90式中戦車や最新鋭の97式主力戦車が砲撃を加え野砲・自走砲が支援を行う。

「小日本めェ・・・戦車隊を出せェ」

無論中国軍も黙ってやられる筈も無く、欧米から供与された戦車を装備した蒋介石直属の第13機甲師団(※4)と2個機械化歩兵師団を出撃させた。しかし・・・

「目標・・・中国軍戦車、撃てっ!!」

大半が90式や97式の遠距離射撃で倒されていく。運良く接近できた中国軍戦車もいたが歩兵戦闘車の大口径機関砲や対戦車ロケットに撃破され松明と化してく。
また各国の義勇軍も装備の違いから存在が目立ち、最優先で攻撃されていった。
 この日行われた日本軍による総反撃により中国軍&義勇軍は多数の兵力と優良装備の大半を失い後退を開始した。

550 :ライスイン:2016/04/24(日) 21:33:09
~重慶 義勇軍合同司令部~


「不味い・・・まさか此処まで日本軍が強いとは・・・。」

ジューコフが呆然としながら言った。

「彼らが奇妙な形のジェット機を配備していることは掴んでいたが・・・。」

シュペルレも持ち込んだ航空戦力が全く歯が立たず呆然としていた。彼に残されたのは重慶防空の為に秘匿していたMe262のみであった。

「それにこのままでは追い詰められた蒋介石が暴走しかねない。」

スティルウィルも蒋介石の暴走の可能性に懸念を示す。彼ら義勇軍の本来の目的は自国の新兵器の実戦テストと中華民国を利用して日本を弱らせることで
現時点で日本と戦争する気は全くなかった。

「それにシマダの暗殺作戦も失敗してしまった・・・。」

再び口を開いたジューコフが悔しそうに述べた。彼は日本国内に残存している共産主義者(※5)から海軍大臣にして旧ロシア帝国皇女の夫である嶋田繁太郎大将が
前線視察を行うという情報を入手。諜報網の壊滅を覚悟で詳細な情報を入手した上でコンドル軍団のMe262部隊に協力を仰いで襲撃を決行したのだった。

「まったく・・・裏切者共め。」

シュペルレが吐き捨てた。嶋田機(飛鳥・要人輸送仕様)を発見したアドルフ・ガーランド大尉が率いるMe262隊8機は多数のソ連軍機が護衛を引き付けている間に襲撃を敢行したが
”偶然近場を飛んでいた”ゲーリングとウーデットが搭乗するHe92「サラマンダー」(92式戦闘機「火龍」)に阻止されて全機撃墜。急派された日本軍特殊部隊によって
捕虜にされたのだった(後に満州に亡命してスカーフェイスに入隊)。

「き・・・緊急報告、中国軍が・・・毒ガスを使用しました。」

慌てた伝令が飛び込んできて報告する。

「どういうことだ・・・化学兵器は一切供与してないはずだぞ。」

ジューコフが叫んだ。彼らは日本軍による報復を恐れて蒋介石の要望を無視して化学兵器は供与していなかった。
彼らは知らなかったが蒋介石は援助マネーで在野の科学者を雇い、密に工場を建設して毒ガスを生産していた(生産品はルイサイトとマスタードガス)。

「不味いな・・・日本軍による報復が行われる前に退避すべきだ。目標は既に達した。」

スティルウィルが呟いた。義勇軍は戦力の大半を使い果たした状態であり兵器の実戦評価という目標が達せられた以上、速やかに退避すべきだと考えた。

「だが安全に退避するには日本の勢力圏を通過する必要がある。何か手土産が必要だ。」

「なら毒ガスの在処を調べよう、その他の情報を併せて日本に提供すれば人間だけは通過できるかもしれない。」

シュペルレの示す懸念にスティルウィルが提案した。後方の援蒋ルート(ソ連領の甘粛省、青海省など)は警備の中国兵が大勢配備されている。
ここを使えば怪しまれて拘束されてしまう。ならば手土産を持参して日本に頭を下げて通過させてもらう方がマシかも知れない。
この提案に一同は賛成し、2日かけて毒ガスの生産工場や貯蔵施設を発見。その後は新しく送られてきた装備の実戦試験を名目に残存全義勇軍が出撃と見せ掛けて前線に移動。
日本軍へと軍使を向かわせた。この事態にシナ派遣軍司令官の板垣征四郎大将は政府(夢幻会)に指示を仰ぐべく連絡を取った。

551 :ライスイン:2016/04/24(日) 21:33:43
1938年3月10日 東京・夢幻会会合場所


「災難でしたね嶋田さん。」

「まったくだ、海軍甲事件になるところだったよ。」

怪我が治っていないのか頭部と腕に包帯を巻いた姿の嶋田を辻が労う。

「ですがこのお蔭で国内に残っていた不穏分子をほぼ一掃できました。」

阿部内相が怪我の功名だと述べた。嶋田機襲撃の一報を聞いた彼は直ぐに情報部や特務機関と共同で大規模な調査を密に行った。そしてスパイなどの不穏分子の
一斉検挙を実行し直前に海外に脱出した極一部を除いて全て検挙していた。

「ですがまだ米内シンパに共産主義者・売国奴がこんなにいたとは・・・。」」

阿部は今回の情報漏洩の件で把握していなかった不穏分子が大量に居たことに無念さを抱いていた。
暗くなった雰囲気を変えようと近衛が話題を変えるべく切り出した。

「板垣大将から報告のあった欧米軍事顧問団の申し出はどうしましょう?」

「忌々しいが受けるしかないだろうな。」

伏見宮が苦虫を潰したような表情で言った。欧米軍事顧問団が渡してきた情報には化学兵器工場の詳細な位置や出荷先が書かれていた。
今回の中国による化学兵器攻撃は砲弾やガスボンベからの放出によるものは少数で大半が便衣兵による都市部での自爆同然の散布で市民にも犠牲が出ていた。
なので早急に生産設備を破壊する必要があり調査を進めていたが中々情報が集まらなかったのだ。

「では板垣君には申し出を受けるように伝えよう。それと徹底的な報復もな。」

杉山はそう言うと場を辞して参謀本部へと向かった。
この連絡は即日で板垣の元に届き、彼は欧米軍事顧問団に対して”人員及び自動車のみ・戦車等の兵器は残置”を条件に受け入れる事を通達。
彼らはやむを得なくこれを受け入れ、日本軍警備の元にイギリス領福建省へと向かった。そして・・・


 1938年3月25日、世界は再び震撼した。中国軍による化学兵器攻撃に対して行われた日本軍による報復が凄惨を極めたからだ。

「皆殺しにしろっ!!、裁きは神に任せればいい。」

報復作戦司令官である儀峨徹二中将の訓辞を受けた航空隊は一斉に重慶へ向けて飛び立った。・・・そして重慶は地獄となった。

「おのれ東洋鬼め、慈悲はないのか?」

中国軍のとある老将は己の同僚たちが仕出かした事を棚に上げながら叫ぶ。
日本軍は重慶全域で無差別爆撃を敢行。通常爆弾だけでなく焼夷弾や集束爆弾そしてサリンも躊躇わず使用した。
さらに目標であった化学兵器工場やその貯蔵施設に対しては通常爆弾で建物を倒壊させた後にバンカーバスターで耕し、さらに焼夷弾で焼き払った後に
サリンを散布するという徹底振りであった(極一部ではダーティボムも使用された)。
また今回の戦争で中華民国とは真面な和平を結ぶのは不可能と判断した日本は発電所や道路・鉄道等のインフラを徹底的に破壊しつつ占領地から
鍋や電柱に至るあらゆる金属資源を収奪し領土まで撤退。その後に中国側まで跨いだ重厚な防衛線を再構築するのだった。

552 :ライスイン:2016/04/24(日) 21:34:26
 1938年8月15日 ホワイトハウス

「不味い・・・このままでは日本を悪者にして宣戦布告が出来ん。」

ルーズベルトが机に突っ伏しながら悩んでいた。現在も続いている日中の戦争を利用して日本を糾弾し宣戦布告する企みが頓挫し掛けているのだ。
日本が毒ガスを含む徹底的な報復を開始した知らせを聞いた彼はこれを利用することを考えたが先に中国側が毒ガスを使用して市民にすら犠牲が生じた事や
自分達が行った資金援助の大半を懐に入れていた事が発覚した事で利用することが不可能になったからだ。

「失礼します大統領、朗報です。」

いつの間にか入室してきたロング副大統領やハル国務長官にフーバーFBI長官が笑みを浮かべながら報告してきた。

「共和党や民主党内の閣下に敵対的な派閥の議員連中のスキャンダル情報を収集しました。」 フーバー

「それらに関連し有力な連中の買収も完了しています。」 ロング

「例の亡命政府設立の準備が整いました。欧州各国への根回しも完了しています。」 ハル

其々が行った報告を聞いたルーズベルトはそれまでが嘘のように笑みを浮かべる。

「良くやった、では年末の国際連合総会で発表するようにしてくれ。序に丁重に日本も招待する様に。」


 1938年12月25日 スイス・ジュネーブ 国際連盟議場


「脱退した我が国を呼びつけるとは・・・。」

「いったい何を企んでいるのでしょうな。」

臨時で国連特使に任命されジュネーブに派遣された吉田茂の愚痴に副使の白洲が相槌を打つ。今回の二人の派遣は

”大陸の混乱が世界経済に悪影響を与える事を懸念した国連が調停を行う”

という理由で極めて低姿勢で招待してきた為であった。
そして議長が開会を宣言しアメリカ代表が発言を求める。吉田と白洲は和平勧告だと思っていたがアメリカ代表が手招きし、連れてきた連中を見て驚愕した。

「吉田さん、あれは米内と石原です。」

「間違いないっ、それに鳩山もいるぞ。」

驚愕する二人を余所にアメリカ代表は演説する。

「我が国は日本国内で虐げられている人々を助け、彼らが正当な権利を取り戻すことが出来るように支援することを決定しました。」

続いて米内が

「悪逆非道を繰り返す現政府を打倒し世界と強調できる正しい日本を取り戻す為に”日本共和国(※5)”亡命政府の樹立を宣言します。」

この言葉を聞いた吉田は秘書に対して直ちに本国へ報告する様に指示をする。その間も演説は続き最後に石原が

「日本共和国が政権を回復した暁には次の事を実行することを約束します

1:日清戦争以後に獲得した領土を放棄し該当国に返還。

2:返還予定地に存在する資産の無償譲渡。

3:大陸復興の為の援助。

4:軍備の大幅削減。

5:完全民主化。

日本を正常な国にするためにご協力願います。」

と述べて演説が終了した。そして議決が取られ、北欧諸国とトルコ・イラン・エチオピア・タイ・フィリピンが反対する中で賛成多数で日本共和国の承認が認められた。

553 :ライスイン:2016/04/24(日) 21:35:02
 1939年1月1日 東京・夢幻会会合場所

「ふざけやがってルーズベルトめ。」

温厚なはずの近衛が珍しく汚い言葉でルーズベルトを罵っていた。
国連会議の後、ルーズベルトはハル長官を特使として日本に派遣し通称”ハルノート”と呼ばれる要求を突き付けてきた。
内容を要約すると

”貴国は政府を解散し日本共和国の指導下に入れ”

という大日本帝国の解散と米内らへの政権譲渡を要求する内容であった。更に決断を促すためと称して米国領内にある日本資産を全て接収し、日本共和国に
譲渡したり、日本との通商関連の条約をすべて破棄し、新たに日本共和国と結び直すという事まで行っていた。

「奪われた資産は最小限に抑えましたがそれでも痛い事には変わりません。もっとも報復として在日米資産は全て接収しましたが。」

辻も怒りを滲ませながら報告する。昨年後半からアメリカの動きが怪しいとの報告を経ていた彼は在米資産を第3国を通す形で日本へと持ち帰るように会合を通して
各企業に勧告していた。そのおかげで損害を最小限に抑えられたがそれでも奪われた資産は莫大な額に上った。

「奴らは各国にある大使館・領事館や軍、在留邦人及び企業に自分達の指揮下に入るように要求しています。もっとも何所も応じていませんが。」

「国民も怒り狂っています。今までの成果をすべて否定した上に皇室の廃止まで主張しているのですから。」

国内および領域内に賛同者はほぼ居ないことが確認され一応は安堵する。

「ですがもう戦争は避けきれません、各地の部隊に前倒しで物資を配分し臨戦態勢を取らせます。」

「奴らが外道攻撃を行った場合に備えて衝号作戦及び報復核攻撃の準備も整えさせます。」

嶋田や東条も準備御行うことを伝えた。そんな中近衛が・・・

「では嶋田君、また総理を頼むよ。」

と戦時を理由に再び嶋田を総理にすげようと提案し、これに他の会合参加者全員が賛同する。

「また俺かよ畜生。」


 1939年1月5日、日本で近衛総理が辞任し後任に現役の海軍大将である嶋田繁太郎が就任した。
就任の記者会見で嶋田は国連の要求をすべて拒否し、資産の返還と米内達の引き渡しを要求。これを受けて国連では欧米主導で対日軍事制裁が決議された。
これを受けてアメリカではルーズベルトが正当な政権である日本共和国の政権回復の為の対日宣戦布告を議会に提案。FBIによる脅迫と買収工作により
上下両院ともに対日宣戦布告を決議。国連各国に諮ったうえで1月29日に国際連盟の総意という形で日本に対して宣戦布告を行った。


※1:工兵や民間建設業者だけでなく、捕縛した不法入国者等のアジア系犯罪者を強制労働させた。

※2:三八年式実包使用した自動小銃で計上はAK-47似。

※3:日本のジェット機の情報を知ったヒトラーがメッサーシュミットに最優先での開発を命令し開発に成功していたが史実以上にエンジンが不安定で
   中国に派遣できたのは選りすぐりの良質な部品で組み立てられた8機のみ。整備も酷く面倒で開発スタッフも同行。

※4:4号G型や3号L型、KV-1など供与された戦車の中でも高性能な物を集めて編成された蒋介石の切り札。英国系やドイツ系など外国人傭兵が多く参加し
   練度も高い。因みに師団長はブランデー入りの紅茶が好きな歴史研究家志望の男。

※5:ルーズベルトが対日宣戦に利用する為に設立に尽力した組織で首脳部は日本から脱出させた反体制派や国外の反日日本人及びアジア系で構成されている。
   因みに首脳部は 大統領:米内 国防長官:石原 外務大臣:鳩山

554 :ライスイン:2016/04/24(日) 21:35:34
おまけ  日本陸軍戦闘車両

○90式中戦車  製造:三菱重工

重量42t 90㎜60口径戦車砲×1、12.7㎜機銃×1、7.7㎜機銃×1(同軸)  装甲厚30~180㎜ 乗員5名 速度:48㎞/h 外見:史実T55似

帝国陸軍の主力を務める中型戦車。戦車師団を中心に配備されていたが97式の配備に伴い歩兵師団の戦車大隊に回されたり自走砲などに
改造されたりしている。


○94式重戦車  製造:陸軍兵器廠

重量65t 120㎜60口径戦車砲×1、12.7㎜機銃×1、7.7㎜機銃×1(同軸)  装甲厚50~250㎜ 乗員5名 速度:40㎞/h 外見:史実IS-7似

 陸軍兵器廠が開発した分厚い装甲と全周囲からの砲撃に対する良好な避弾経始が特徴。主砲は長砲身の120㎜で開発時点で自国を含めた
全ての戦車を遠距離から撃破できる威力を持っていた。しかし性能を突き詰めすぎて高価になった為、生産数は600両と日本の戦車としては少ない。
配備先は大洗戦車教導団を除くと第501重戦車大隊(リビア)・第502重戦車大隊(エリトリア)・第503重戦車大隊(ハバロフスク)
第504重戦車大隊(ジャカルタ)・第505重戦車大隊(南京)・第506重戦車大隊(ハノイ)・第507重戦車大隊(新京)と海外重要拠点の
方面軍直轄部隊に集中配備されている。


○95式軽戦車  製造:川崎重工

重量23t 76.2㎜65口径戦車砲×1、12.7㎜機銃×1、7.7㎜機銃×1(同軸)  装甲厚13~50㎜ 乗員5名 速度:65㎞/h 外見:史実M41似

 川崎重工が開発した軽戦車。軽量かつ高速でありながら攻撃力も高い。主に捜索連隊や騎兵部隊に配備されているが一部では歩兵師団の
戦車大隊にも配備されている。また安価な為、友好国へも輸出され始めている。


○97式戦車   製造:三菱重工

重量45t 105㎜51口径戦車砲×1、12.7㎜機銃×1、7.7㎜機銃×1(同軸)  装甲厚???㎜ 乗員5名 速度:53㎞/h 外見:史実T-62似

三菱が開発した最新鋭かつ初の主力戦車。開発されたばかりの複合装甲を車体・砲塔前面に採用している。重戦車ほどではないが高価な為、
戦車師団のみに配備が続けられている。


○88式装甲兵員輸送車(M113A2)

陸軍が大量に採用している装甲兵員輸送車で多彩な形式がある。基本兵装は12.7㎜機銃か40㎜自動擲弾銃。


 いかがでしょうか?かなり強引ですがやっとWW2にもっていけました。
日本が強くなりすぎた為に欧米の技術力もある程度向上させました(Me262やトラに地獄猫など)。
また拙作の日本は中国の例を見るように相手の攻撃に対しては過剰な位報復を行います。ですので欧米の将来はお先真っ暗・・・かも。
それと艦艇や欧米の兵器・編成が書ききれなかった為、別枠で書こうと思っています。

~予告~

 ついに念願の対日宣戦を果たしたルーズベルト。彼は北欧やトルコなど宣戦に賛同しなかった国家を脅しつけて中立を確約させたうえで
軍事行動を開始する。手始めに戦力が手薄と思われていた遠方の領土を狙うがそれこそが地獄の始まりだった。

次回”水葬戦記”

掲載お願いします。

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最終更新:2016年06月21日 17:52