625 :ライスイン:2016/06/10(金) 22:52:59
お久しぶりです。
ただ今から孤立大陸の外伝2作目を投下します。
少しネタ成分あり。

626 :ライスイン:2016/06/10(金) 22:53:59
 1938年2月某日 重慶 義勇軍合同司令部


「それは本当なのか?」

「間違いない、日本国内の同志からの報告だ。海軍大臣のシマダが近々航空機で前線視察する。」

シュペルレの問いにジューコフが自信満々に答える。

「そうか・・・なら忌々しいシマダを消すチャンスだな。」

メッセも同意する様に発言する。

「直接狙うのは我々のジェット機部隊がやろう。丁度R4M空対空ロケット弾と特別仕様エンジンが届いたところだ。」

「ならば我が赤軍が護衛機を引き付けよう。」

コンドル軍団のMe262ジェット戦闘機4機が嶋田の搭乗機を狙い、護衛機をソ連軍が数に任せて引き付けるという方針に決まった。

「ならば我々は別の地域で陽動を兼ねた攻撃を行おう。」

「万が一シマダが脱出した時に備えて交戦予定地域に地上部隊を送り込む。」

そそて他の義勇軍部隊が陽動を行い、万が一脱出した嶋田を捕虜(若しくは死体確保)にするために地上部隊の派遣も決定された。



       孤立大陸外伝02  海軍甲事件



 1938年3月7日 大陸某地方前線空域B7R  93式重爆撃機「飛鳥」要人輸送仕様  機内


「反攻作戦は順調なようだな。」

防弾仕様の窓から外を眺めながら嶋田は安心したように呟いた。前線部隊の士気の鼓舞や生の意見を聞く事、そして更なる作戦の打ち合わせもあった。

「英米独伊ソの義勇軍戦力もかなり消耗している様です。」

「占領地の治安も安定し出してきていますな。」

副官(熟練T督)や随行員の伊藤整一少将(はいふり派 ※1)がそれぞれ意見を述べる。

627 :ライスイン:2016/06/10(金) 22:54:32
「だが中国軍の事だ、不利になれば再び毒ガスを使いかねないぞ。」

それまでに決着を・・・と嶋田が言おうとした時、

「前方空域に多数の敵機発見、急速接近中。」

電探を見ていた副操縦士が叫んだ。

「何故ここに敵機が、まあいい・・・振り切るんだ。」

落ち着いた様子で指示を出す嶋田。だが進路変更には少し遅すぎた様で敵機が目視できる距離にまで接近されてしまった。

「敵機はソ連機の模様、護衛機が攻撃を開始しました。」

今回は味方基地からの援護が期待できたため(※2)に護衛機は91式艦上戦闘攻撃機「雷風」が12機程度しかいなかった。
一方のソ連機はI-16(Type 24)やMiG-1及びYak-1で構成されていたが50機以上と数では大幅に勝っていた。
護衛機がソ連機を引き付けている間に空域を離脱する嶋田機。しかし・・・突如として機体を衝撃が襲った。

「な・・・何だ?」

衝撃で椅子から投げ出された嶋田が窓を除くと4機のジェット機が周囲を飛んでいるのが見えた。

「Me262・・・ドイツ軍機か。」

嶋田が呟いた。この機は要人輸送用に改造されていて装甲は厚くなっているが武装が一切なかった。しかも先ほどの攻撃で速度が低下していた。

「操縦士及び副操縦士負傷っ!!」

操縦席を見に行った副官が大声で知らせてきた。両名とも命には別条はなさそうだがとても操縦できるような状態ではなかった。

「やむを得んか畜生っ」

嶋田はそう叫ぶと操縦席へと向かっていった。


ほぼ同時刻~近隣空域~


「やはり空を飛ぶのは気持ちが良いな。」

ゲーリング総合航空の社長であるヘルマン・ゲーリングは愛機のHe92「サラマンダー」の操縦席内で呟いた。

「全くですな。」

無線からは相棒のエルンスト・ウーデットの同意する声が聞こえてきた。彼らは日本軍から販売の・使用の許可が出た短距離空対空誘導弾を搭載しての
試験飛行を行っていた。

「私達ももう年ですからな、飛べる内に飛んでおきませんと。」

「そうだな・・・。」

ウーデットの声に相槌を打ちゲーリング。自分達とて老化による衰えは避けられない。飛べなくなってしまうまでに満足いくまで飛んでやる。
そう決意を新たにしたゲーリングだが突如として入ってきた緊急無線に驚愕した。

”緊急連絡・・・緊急連絡・・・付近の友軍機は直ちに空域B7Rにむかえ、嶋田閣下を乗せた輸送機が襲撃を受けている。繰り返す・・・”

「なんだと・・・シマダが」

その無線を聞いたゲーリングの脳裏に当時敵でありながら身を挺して自分を救助してくれた友人の姿が脳裏に浮かんだ。

「いくぞウーデット、シマダを助けるぞ。」

「了解です。そうこなくっちゃな。」

628 :ライスイン:2016/06/10(金) 22:55:04
空域B7R  93式重爆撃機「飛鳥」要人輸送仕様  機内


「ちいっ、しつこい」

嶋田は負傷した操縦士に代わって機体を操縦しながら悪態をついた。護衛機は性能では圧倒するも数の差に阻まれて援護は期待できない。
緊急無線は発したが何時援軍が来るかすら不明であった。

「操縦訓練を受けていてよかったな。」

嶋田は飛行資格を維持するために定期的に訓練を受けていて(※3)この種の機体も何とか操縦できていた。
だが護衛機は性能に勝るとはいえ圧倒的多数のソ連機に阻まれており、飛鳥も最初の攻撃によるダメージが大きくMe262を振り切る事が出来ていなかった。

「敵機、ロケット弾発射態勢っ!!」

負傷しながらも窓から外を観測していた副官が絶叫を上げる。4機のMe262の内、2機がR4Mを発射しようとしていた。

「くそったれっ!!」

悪態をつきながらも回避機動を行おうと操縦桿を強く握る嶋田。・・・だが突如としてMe262が爆散した。

「な・・・何がおこったんだ?」

突然の出来事に混乱する嶋田。すると無線から

「久しぶりだな、助けに来たぞシマダ」

という声が聞こえてきた。

「ゲーリングか」

友人の参戦に嶋田は思わず喜びの声を上げた。


 空域B7R アドルフ・ガーランド


「作戦は失敗か・・・。」

Me262の操縦席でガーランドは呟いた。本国から届いた特別仕様のエンジンに換装したMe262特別仕様機をもってしても任務完遂は適わなかった。
シマダの搭乗機は既に離脱し護衛を引き付けていたソ連機も駆け付けた日本軍機に駆逐されつつある。つい先ほど僚機のメルダースも撃墜されてしまった。
幸いパラシュートで脱出に成功していたが。そして・・・

「ヘルマン・ゲーリング、いまだ健在ということか・・・。」

ガーランドは嘗ての祖国の空の英雄が駆る、戦乙女(レ○ス)の絵が描かれた先進的なジェット戦闘機を凝視する。その数秒後、彼自身も撃墜された。


 その後、嶋田は近くの日本軍飛行場に機体を着陸させた。その数十分後にゲーリング達も同じ飛行場に着陸。
そして嶋田とゲーリングの2人が固く握手をする光景は写真に撮られ、翌日の世界各国の新聞に掲載されるのであった。

629 :ライスイン:2016/06/10(金) 22:55:38
後日 旅順・日本軍病院


「君がガーランド君だね。」

「ヘルマン・ゲーリング・・・・。」

この日、ゲーリングはある目的の為にガーランドとメルダースが収容されている旅順の日本軍病院を訪れていた。彼はメルダース同様に脱出に成功した後に
日本軍の確保され捕虜になっていたのだ。

「単刀直入に言おう、我がゲーリング総合航空に来ないかね?日本側からも了解を得ているんだが(※4)。」

「私に祖国を裏切れと・・・。」

ゲーリングの言葉に困惑するガーランド。

「義務を果たした君達をあっさりと捨てた・・・裏切ったのは君たちの祖国だろう。」

そう言いながらゲーリングは中立国経由で入手したドイツの新聞をガーランドに手渡した。そこにはガーランドとメルダースを裏切者として激しく糾弾する
宣伝省のコメントや軍を不名誉除隊にし、資産没収の上で国籍はく奪・国外追放にするといった空軍省の声明が記載されていた(※5)。

「・・・・・」

実はガーランドもこの事は知っていた。入院中に偶々聞こえてきたドイツ語のラジオ放送で紹介されていたからだ。これにより祖国から見捨てられ、今まで築き上げた
全てを失って気落ちしていた彼はゲーリングの勧誘に心を動かされた。そして次の言葉が決め手となる。

「日本軍の最新鋭機を操縦できるし活躍すればするほどナチ共を見返せる。それに可愛い娘もたくさんいるぞ。」

「ぜひ参加させてください。」

ゲーリングの言葉にガーランドは即答した(因みにメルダースは既に参加を決めていた)。

「わかった。手続きの為にしばらく時間を空けるのでそれまでにこれらを読んで必要事項に記載しておいてくれ。」

ゲーリングはガーランドに入隊手続きや移民手続きに関する書類や幾つかの資料を置いて部屋を出ていった。
ガーランドは言われたとおりに資料を手に取って読み始める。

「おおっ、これは・・・。」

そしてある本を食入る様に見始めた。その本のタイトルには”萌え萌え世界大戦”と書かれていた。

630 :ライスイン:2016/06/10(金) 22:56:11
※1:艦これ派やアルペジオ派など多数ある帝国海軍萌え派閥の一つで最近発生した一番新しい派閥。

※2:緊急時は近隣の味方航空基地から援護が駆け付ける手はずになっていたが共産シンパ等の工作によって一時的に機能がマヒしていた。

※3:飛行資格維持の為の訓練の際に悪乗りした宮様らによってジェット戦略爆撃機などの操縦もさせられていた。なので現役の海軍機や陸軍機の
   ほぼ全てを操縦できるようになっていた。

※4:犯罪行為に加担して無い事が立証されていた背景に加え、優れた他国のパイロットの取り込みや外交上の宣伝といった思惑もあり、
   ゲーリングが身元引受人となる事で事実上の恩赦となった。

※5:嶋田とゲーリングが握手する記事を見てブチ切れた総統閣下の八つ当たり。ガーランドとメルダースを日本に内通した裏切り者扱いし、
   作戦失敗などの全ての責任を押し付けて過剰ともいえる処分を行った。もっともこれによってドイツ軍の士気が一時かなり低下し
   立て直しに苦労する事となる。


おまけ  用語集


ゲーリング総合航空:傭兵航空団スカーフェイスから発展した航空関係の総合企業で社長はゲーリングで副社長がウーデット。

          ○航空警備部門(スカーフェイス隊) ○航空教育部門(飛行学校経営) ○航空輸送部門(貨物・旅客輸送)

          ○製造部門(民間用中~小型機や他社の各種機体の部品の製造など ハインケル社と提携)

          など複数の部門を抱える準大手企業に成長しつつある。

Me262特別仕様機:嶋田機襲撃の為にドイツ本国から輸送した特別仕様のエンジン(高出力化の代わりに耐久時間が極端に短い)に換装したMe262の事。
         各種備品も耐久性を犠牲にした高品質な物に換えたために最高速度は920㎞/hに上昇したがエンジンを含めた機体寿命が12時間以下と
         なった。

萌え萌え世界大戦:夢幻会系出版社が発刊した先の大戦を舞台にした漫画本で全6巻。何故か大半の登場人物が”女性”になっている。因みにR-15指定。


 いかがでしょうか?本編が難航している為、息抜きとして外伝の2作目を書きました。
内容は本編26話で述べた嶋田襲撃に焦点を当て、さらにゲーリングを活躍させてみました。

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最終更新:2016年06月21日 20:18