972 :ひゅうが:2016/07/30(土) 12:55:34
神崎島ネタSS――幕間「日はまた…」



「あの二人は?」

「記録をむさぼり読んでいます。さすがは好奇心の信徒。」

「そう邪険にするものでもないかと。大淀さん。ああいうタイプでもなければ計算も苦手なのに物理学を一新したりはできませんよ。」

「これは失礼しました霧島さん。」

「まぁ、好奇心を満たすために進んで米国政府に利用されたりして司令を苦慮させたから怒っているのはわかりますよ。ふふ。」

「き、霧島さん!…もう。」

「ずっとみてますもんねー。」

「あうう…はい。」

「ごほん。」

「そう妬くな大和。…で。霧島。金剛先輩とゆかいな仲間たちは?」

「シンガポール、マリーナ・ベイにて帝国海軍の手配した油槽船『富士山丸』と会同。給油を行ったのちにインド洋へ抜けました。」

「シェルトン・トーマス総督は航海スケジュールに配慮して晩餐会への招待をとりやめ、メッセージカードと花束を下さったそうだ。
出港時は『UW(御安航を祈る)』を東洋艦隊各艦が挙げてくださったそうだ。」

「さすがは英国。えげつないことも多々やるけれどもこういうところはすごいわね。」

「利根は…まぁうまくやっているか。」

「あのメンツでは足柄が苦労していそうですけどね。」

「確かに。あとから直行しつつある帝国側の『足柄』も南シナ海に入ったそうだ。対応に差がつけられるのは避けられないが、どちらも順調な航海中。
今のところ、妙な潜水艦との接触は再び報告されていないようだな。」

「うむ。我々、41センチ砲に積み替えた大和型戦艦が出動した合同演習を反対方向で行っているからだろうな。」

「武蔵。大和ともども苦労をかけるな。」

「いやなに。4万トンから5万トンくらいになってしまうが別にかわまんさ。海に出られるだけで私は幸せだよ。」

「わ、私も…はい。」

「はっはっは。で、神風。本土派遣組の目から見て、所得倍増計画の実現性はどうだ?」

「うーん。ま、うまくいくとは思うわ。東海道新幹線の起工とともにうちから作業用の重機をいっぱい陸揚げしたでしょ?
あれを銀座のパレードで披露して『来たれ若人』ってやったせいか人手の方はどんどん集まってきているわね。
道路の方はまず東北の方の国道整備からはじめたから、大凶作後のあのあたりは一息ついているみたい。ただ――」

「ただ?」

「ほら。あれあったでしょう?労働者向けの飲食とかの需要。それに反社会勢力が目をつけたらしく、いくつかのところで場所代と称して金銭の要求が行われた例が激増しつつあるわ。
例の大陸浪人系。」

「やはりきたか。対策は?」

「さすがこの時代。いろいろすごいわぁ…2.26の汚名返上とばかりに警視庁が抜刀隊を再編成して――」

「まて。抜刀隊? 警視庁突撃隊じゃなかったのか?」

973 :ひゅうが:2016/07/30(土) 12:56:06
「え?ええ。物騒になっているからって。」

「なんとまぁ…せめて機動隊だろう…いや内務省もやる気十分なんだろう。たぶん。」

「治安の方は、先方に任せようか…本土の陸軍は?」

「M24チャーフィーの運用にすら苦労する本土の現状にショックを受けているわね。
関東軍は念願の機甲師団複数をまとめた『機甲軍』を編成してご満悦。
スツーカもどきを配備できたのもきいているわね。」

「それで北進されたら困るが…梅津総司令なら大丈夫か。」

「それで、むしろ積極的に土木整備を行うべきという意見が大半よ。私が訪問したら、いくつか財閥系も含めて接触があったわ。」

「具体的には?」

「あの重機がほしい。将来的にはどんな重さの戦車を通せる道がいるのか。海軍だけズルい。エトセトラ」

「うん。健全…なのだろう。で、ほかは?」

「黒部の方は、来年までには2本ともトンネルをほりぬき、黒部ダムの2基同時起工に移る予定。その他の用地買収は、公示地価の倍で地主の頬を引っぱたいて何とか。
ただ同然で用地確保するような節約方法は私が止めさせたし。
青函トンネルは、調査の結果データがそろったので、そろそろ正式発表の予定だそうよ。」

「順調か。それで、肝心の海軍…いや工業地帯の方は?」

「大神工廠と光工廠の建設予算が通ったからすでに。うちからの原油積み出しを見越して、史実のように四日市や京浜各地に石油化学コンビナートの建設が開始されているわね。
地震対策もあわせて。」

「…やはり地震対策ははかどっていないか。」

「というよりも、過剰品質と思われているみたいね。南海の方では人口規模が小さいこともあって真剣な対策が議論されはじめたけど、名古屋や東海道のあたりは…」

「あのあたりはなぁ…」

「それでも三菱や中島、愛知などの航空メーカーは工場の耐震化や各所への分散を承知してくれたわ。エンジンの安定供給を約束したのがきいたようね。」

「それなら結構。」

「そのかわり、あきつ丸と秋津洲が悲鳴を上げているわよ。そろそろ島に帰りたいって。
TBMの輸送や戦車のピストン輸送、少々働かせすぎじゃない?」

「輸送拠点として竜宮島が使えることになったから、そろそろ一段落だ。…休暇をやらんとなぁ。」

「そうして。この間、富士山麓でいい加減な士官を思い切りやりこめていたんだから。だいぶストレスたまっているわよ。」


「…概ね順調か。わが島の手は日本のすべてを救えるほど長くはない。
…例のアレは?」

「すでに極秘裏に各地に輸送済み。特許局とのわたりも、理研のプラント班とも連絡済よ。」

「うん。」


翌日、理研から全世界に向けて2つの感染症の特効薬発売のニュースが発信された。
同時に行われた青函トンネル建設決定のニュースは、閉塞した時代からの転換を人々に感じさせた。
満州事変以来安定しない日本の公債は急騰を開始。折しも膨大な建設需要に伴うヒトの移動に伴い、投資に数十倍する莫大な需要が各地に発生しつつあった。
そして誰かがささやいた。
「もはや恐慌後ではない」
ただそれだけかもしれないが、景気は「気分」がたぶんに作用するものというこれは証左だろう。
こうして発生した好景気のことを経済史は、先の高橋是清による積極財政を日本神話から「岩戸景気」と呼んだのに対応し、「いざなぎ景気」と呼称することになるのである…。

974 :ひゅうが:2016/07/30(土) 12:57:14
【あとがき】――というわけでまたしても幕間。
走り出したら止まらないのが日本クオリティ。

976 :ひゅうが:2016/07/30(土) 13:19:20
あと艦隊を支える輸送艦隊も動いています。
彼女らはその輸送任務で…
で、帰りによった演習で精神主義者をフルボッコにするくらいストレスがたまるという。

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最終更新:2023年11月15日 20:45