53 :第三帝国:2016/08/09(火) 22:13:20
艦これ×神崎島ネタSS————閑話「未来俯角」


ようやく、解放された。
先ほどまであちこちで料理を食べる暇もなく、
ベタ金の将官や佐官相手をしていた野中五郎中尉は、
ジョッキのビールを飲み干し、安堵の溜息を吐いた。

連合航空艦隊演習を終えての合同慰労会。
本来ならばたかが中尉に過ぎないが注目されることはなかったが、
中攻隊の壊滅、加えて本土に対し爆撃を許すなど帝国の惨敗とも言える結果の中。

結果的に撃墜判定を受けたとはいえ、
敵旗艦への攻撃を成功させるなど神崎島に一矢を報いたことで。
上層部からは大いに注目され、ゆっくり食べるはずが将官佐官との会話で埋め尽くされた。

「それに比べ、アイツらは・・・」

翻って部下達は気楽だ。
何せ偉い人間を相手しなくてならないのは将校である自分なのだから。

現在部下たちはグラーフ・ツェペリンと名乗る金髪の少女に話かけられ、
鼻の下を伸ばしに伸ばしているが、まあ今日は多めに見ておこう。

あるいは、自分も誰かに声でもかけてみるか?

「よう、楽しんでいるか?」
「あ、ああ・・・」

と、思ったがこれまでの人生でも最も驚愕した存在がやって来た。
自分とそっくり――――いや、違う。
自身にとって未来人である存在、野中五郎少佐だ。

「何せ今日は鳳翔だけでなく間宮、伊良湖の参加。
 それにドイツ、イタリア艦所属の連中が腕を振るったからな、食べるだけでも楽しいだろ?」

「・・・確かに、」

今回は立食式で自由に選んで食べることができ、
肉じゃが、豚の煮物、刺身といった和の料理だけでなく、
ドイツのソーセージ、イタリアの生ハムを始め多様な料理が揃っており、
慰労会に招待された陸海軍の人間は美食を堪能し、猛烈な勢いで胃袋を満たしつつあった。

酒も葡萄酒に焼酎、
それにビールまで複数種類が取りそろっており、
足りないのは強いていうなれば女だけだと野中は考える。

「ああ、そうだ。
 あの別嬪さん達に挑戦しても無駄だ。
 何せみーんな、おれたちの大将に惚れているからな、つけ入る隙間もないぜ」

「何!?」

思わず、神崎提督がいる所に視線を向ける。
そこでは丁度海軍次官と神崎提督の逆立ち耐久競争に周囲の人間が盛り上がっており、
艦娘たちは熱心に黄色い歓声で神崎提督を応援しており、彼女らが浮かべる表情で察する。

くそ、キザな野郎だとは思ったが・・・。

「まあ、料理だけを楽しんでおけ。
 こんな機会はなかなかないからな」

そう未来の自分が言うと、
エビチリソースという料理を皿に盛りつけ食事を始める。
ぼんやりと美味しそうに頬張る自分の姿を眺め、ふと思いつく。

54 :第三帝国:2016/08/09(火) 22:13:54

「その、」

「やることは変わらなかったぜ、
 魚雷を抱いて海面スレスレに飛行し敵艦への肉薄攻撃。
 爆弾を抱いて周囲に炸裂する対空砲火への恐怖を抑え、敵陣へ爆弾を運ぶ」

出会った時。
最初に言っていた前の戦争。
すなわち大東亜戦争で最後はどうなったのか?
そう尋ねようとした時、未来の自分は語り始めた。

「だが、クソみたいな作戦指導に、クソみたいな戦局。
 おれは死ぬことを怖くなかったが最後はクソの役にも立たない自殺行為で部下を道づれにしちまった」

吐き捨てるように言葉を綴る。
その重く苦しい表情から最後は直ぐに察せられた。

「だが、ここの大将は違う。
 引くことを恥とせず、いくら追い詰められたかと言って、
 十死零生のようなクソな作戦を立案するようなことは決してない、許さない。
 それにおれたちの大将は『史実』が辿ったような未来を歩むことを良しとしていない。
 ・・・だから、おれは帝国海軍ではなく今の提督に付いて行く、あの人の指揮なら必ず生きて帰れる」

じっと自分を見つめる未来の己。
自分に見つめられていることもあって居心地の悪さを野中は覚えた。

「後悔するような選択をするなよ、
 後悔する中で死んじまったおれが言うのだから・・・じゃあな」

こちらの沈黙を余所に未来の己はそう言うと颯爽と去った。

「未来、か」

残された野中が呟く。
俯角して覗くことができた未来の己。
それとその先にたどり着いたものに思考に浸る。

柄じゃねぇ、感傷に浸るなんて。

しかし、直ぐに思考を打ち消す。
奴が語る未来は奴だけの物で過去の物。
おれの未来はおれだけが作り出す――――ふん、せいぜい足掻いてやるさ。

と、そこまで思考に浸っていた時。
部下たちが野中の周囲に駆けつけて来た。

「親分ぅううううんん!!」

って、何だ!?



この後血涙を流して神崎提督を呪う部下たちの呪い酒に巻き込まれるとはこの時は思わなかった。





おわり

56 :第三帝国:2016/08/09(火) 22:17:58
以上だす。
神崎島との演習後に慰労会が開催されたんじゃないか?
後、野中一家といえば艦これにもいるし、もしも本人が対面したら?
という妄想から生まれました。

しかし今回は会話のテンポが悪かった・・・。
あと、キャラの把握がむずい。

それでも楽しんで頂けたら嬉しいです。

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最終更新:2023年11月23日 13:35