463 :霧の咆哮:2016/08/21(日) 21:49:07
<誰よりも空に憧れた少女の覚醒。或いは一つの可能性(if)>



「私が空に拘るようになった切っ掛け~?」

カラード本部に設けられたリラックススペース。
ふと、同僚の桜子から何気なく聞かれた問いに対し、ルナスカイは、お菓子を食べてた手を止め、う~んと首捻る。
ルナスカイが何故空が好きになったのか、拘るようになったのか。最初の切っ掛けはなんなのか。

彼女が生まれた頃には、既に日本と言う国家は無かった(形を変えただけで制度や帝等は国家時代からかなり引き継いではいたが)現在の日企連最年少のリンクスたるルナスカイは、産まれた頃から日企連が領土を統治するのが当たり前の世代なのだ。

切っ掛けはある意味単純であった。両親が何かの映画か番組だかで見せてくれた、あの透き通るような、何処までも続く蒼穹に、その上空に輝く星空に魅せられたのだ。
あの空を、天空を、実際にこの目で見たい。風のように自由に、思うがままに飛びたい。
それがルナスカイの原点。空と風の字を、機体と傭兵としてのコードネームに名付けた理由。
ならば、将来目指す先は簡単に絞れた。空を飛べるのは旅客機や民間機、もしくは戦闘機のような軍用機。
他には飛行型ノーマルAC、その先の更なる極致。日企連の最高戦力、アーマードコア・ネクスト。
(当時は戦闘用フラグシップ級たるイズモがまだ完成してないので、最高戦力はネクスト)
リンクス募集の検査でAMS適性が合った、それもトップリンクス級の非常に高い数値を示したのは幸か不幸か。
僅か10代前半の幼い少女が決戦兵器の髙い適性者で、他所の企業の例ではそのまま実戦にも駆り出され兼ねないという意味では不幸だろう。
けれども、空を求める彼女にとっては間違いなく幸運だった。髙い適性を持つということは機体とリンクする際には負荷で苦痛を受けることも無いか、僅かで済む。
適性が低ければ敵からダメージを受ける前から、その負荷だけでリンクスを追い詰めるのだから。
リンクスへの志願に両親は猛反対したし、彼女自身リンクスとして殺し合いには抵抗感は勿論あった。
身を案じて反対してくれるのは嬉しいが、それ以上に、何よりも、彼女は空を飛びたかった。
その欲求は、願いは、他の何者よりもどうしてもルナスカイにとっては大事だった。
自分をスカウトに来た担当者と共に必死で説得してると、最終的に折れてくれ、泣きながら見送る両親に後ろ髪を引かれつつ、リンクス養成所に向かった。

「君が検査で私に匹敵する数値を叩きだしたひよこ君か? 初めまして、君の担当教官たるジョシュア・オブライエンだ。これから宜しく頼む」
「は~い、宜しくお願いしま~す~」
「うむ、宜しくな(……訓練生自体は今まで何人も見てきたが、こういうタイプは初だな。天然ちゃん、とやらか?)」

ルナスカイの間延びした返答に微妙に戸惑うような表情を見せるジョシュア。
彼女的には渋いおじ様なのは良いが、出来れば同性の教官の方が色々気兼ねなく相談できたのに、と表情には出さずに残念そうに思っていた。

「ふわ~、凄~い! 本当に風がわかる、私小さなポッドの中にいる筈なのに、凄~い!」

初めてのシミュレーターで感じたのは驚愕と興奮。シミュレーターで作られた擬似的な感覚とはいえ、機体に、ロボットに乗ってるのに風を感じ取れるのだ。
シミュレーターは実機より負荷は軽いとは聞いていたが、本当に痛みも苦しみも皆無で、教官の指示通りに暫く動き回った後、自由に動かすのはとても楽しかった。

教練は進み、実機訓練となっても負荷は一切問題なかった。ここまで来ると流石にジョシュアも記録された数値が伊達ではないと確信するしかなかった
シミュレーターまでは平気、もしくは我慢出来る訓練生はそれなりにいるが、実機に繋げる瞬間でも一切痛みも不具合も感じない者は本当に限られる。
そこまで適性が突き抜けてるのは、日企連の有力リンクスでも、元は別所属のジョシュアやアンジェを除けば一目連、アンノウン、流星位だ。
桜子や虎鶫辺りも適性は高いが、ここまでは届かない。

464 :霧の咆哮:2016/08/21(日) 21:50:48
「う~ん……何か、思ってたのと違うかなぁ~」

実際に実機で飛び回るルナスカイだが、その実、落胆の気持ちも低くは無かった。
元々知識ではある程度わかっていた。クレイドル関係の飛行制限のせいで、今の世界は自由に空を飛べるとはいえない。
実際の空も、あの蒼穹の蒼さに及ばないし、星空も綺麗に見えない。
これでも日企連の領内は環境汚染が抑えられてるので、他企業の領内よりは余程マシな状態だし、映像の記録では高度も状況も違うのだから当然ではあるのだが。
その点はルナスカイも理解していたが、窮屈さを感じざるおえなかった。

そうしている内にルナスカイは見事養成所を卒業し、新人リンクスとしてカラードに登録。
養成所時代から所属するのが決まっていた倉崎の関係者から、新型機体のテスターも受けており、卒業の際に受領した愛機も完成したばかりの新型であった。
理想と現実の食い違いによるモチベの低下が限界か、それもネクストに乗って空飛べるだけマシなのか、彼女の気質の問題か、やる気を出せないだけなのか、本気で努力してても上手くいってないのか。
その答えは教官たるジョシュアにもはっきり判断出来ない。
結局卒業まで機動能力や回避能力は非常に高水準でも、攻撃能力の不安定さはどうにもならず、送り出すジョシュアとしては不安を残しながらも『後は彼女がどこまで成長出来るのか、どう才能を開花させるかだ』と何とか折り合いを付けるしかなかった。
態度は緩いながらも、本人なりに頑張ってはいる様子なのだが。
ジョシュアの予想としては眠る才気は凄いが、それが何時目覚めるかが問題。もしかしたら目覚めない可能性も有るが、殻が破れたら何処まで化けるのかすら分からない器と評した。



「初めまして、リンクス:ルナスカイとそのネクスト:水風で~す。これからも倉崎専属リンクスとして、日企連に所属するリンクスとして頑張っていきま~す~」

カラード登録後、下位ランカーとしていくつか任務をこなし、同僚のリンクス、主に同性のダイスウーメンや鴨川桜子と積極的に交流したり、友好企業のGAグループのメイ・グリンフィールドやリリウム・ウォルコットとも親交を深めたり。
ベテランムーブ全開のアナトリアのレイヴンや有澤社長、アックスブロウにその年齢差から娘の様に可愛がられたり、はたまた、インテリオルやオーメルのリンクスとも交流したりと。
その癒し系の見た目と性格から、邪険にされることも滅多になく、リンクスの中でもコミュ能力も高く、交流範囲自体は広かった。
あの気難しそうなオッツダルヴァやダリオ・エンピオすら、ルナスカイ相手では口は悪くとも、毒気が抜かれた困ったような対応するのだからある意味大物なのだろう。

そんな日々を送るルナスカイに新たな転機が訪れる。
オルカ旅団の密動と日企連の協力、そして史実側(彼女から見れば平行世界の過去)の世界とのゲートの開通。
オルカの空を閉鎖するアサルトセルを排除し、宇宙と言う新たなフロンティアを開拓する目的。
クレイドルだけが邪魔じゃなくて、その先に真に排除すべき存在があったことに、そして今の企業社会が形成される経緯に衝撃を受けたのは、ルナスカイだけでなく他の同僚もそうだった。
リンクス達が集められた会議室にて、既に上位リンクスとして上層部との繋がりが深く事情を先に知っていただろう、大空流星やタケミカズチは良い。
先輩とはいえ中堅どころのアンノウンや桜子は見た目は驚いてるように見えて、あんま驚いてない気がするのは気のせいだろうか。
そんなことは割とどうでも良いとして、宇宙への道だけでなく、今の窮屈な空を解放するその目的はルナスカイにはとても眩しく見えた。
会議じゃリンクス一同、オルカ旅団との協力には最終的に賛成し、日企連のリンクス達がオルカ旅団の蜂起まで準備しながらも、交代で史実側世界でバカンスを満喫する中でルナスカイはどう過ごしたというと――――

465 :霧の咆哮:2016/08/21(日) 21:52:03
「……」

その可愛らしい唇からは何も言葉が出なかった。

「どうですか、ルナスカイ殿。うち等が育った世界じゃ見れない、本当に蒼い空をその目に見た感想は。私も初めて見た時は本当に感動しまして――――」

前部コクピットで操縦するパイロットの声は一切届いていない。
ルナスカイの意識は、その心は、目の前に広がる蒼穹に完全に捕らわれ、魅せられていた。
史実側の世界の情報を聞いて、どうしても叶えたい願いが芽生えた。空が封鎖され、汚染される前の、あの映像のような光景。
元の世界ではリンクスになっても見ることが叶わなかったあの光景が、史実側なら見れると聞けば、想いを抑えられるわけなかった。
ルナスカイはバカンスの要望書にその件を書き、担当官に『費用が許容範囲を超えるなら、私がリンクスとして稼ぎ、貯蓄している報酬から必要な代金を支払いますから~』といつものように間延びしながらも、声色は真剣味を滲ませて詰め寄った。
上の人間まで出て来て検討されたが、そこまで熱意を持ってまで叶えたいならばと許された。
そんなプチ騒動を『面白い物を見た』とばかりに笑うアンノウンと、話しを耳にして『ルナスカイの殻が破ける切っ掛けになると良いが』とジョシュアからの後押しがあったという事実は、ルナスカイは知るよしもなかった。

そうして、史実側で日企連が掌握した(実質当時の史実日本領空、南樺太から台湾まで完全に掌握済みなんだが)領空で、日企業製のステルス戦闘機に乗り高高度まで飛んでいた。
この時代の史実側世界に、ステルス戦闘機を発見する術はない。
操縦は通常兵器部隊の戦闘機パイロットが勤めている。ルナスカイは養成所時代に規則として資格を幾つか取り、パイロット資格も持ってはいる。
だが、貴重なリンクスに慣れない操縦させるより、安全の為に習熟した専門家に任せるように指示されていた。
出来れば自分の手で戦闘機を動かし、自由に飛びたかったが、ブランクがあるのも事実なのでぷく~と子供のように?れながらも了承した。

最後に条件が付いたが、念願の何処までも透き通るような蒼穹を見つめたまま固まるルナスカイだが。

「……(グスッ、ヒック)」

無言のままポロポロ涙を流し、泣き出してしまった。

「へあっ!? な、ルナスカイ殿、何か問題起きたましたか!? お腹でも痛くなりました!?」

慌てるパイロットだが、ルナスカイの胸中を二文字で表すなら『感 動』としか言いようがない。
誰よりも空に憧れ、空を愛し、空を目指して来た少女が、その理想の切っ掛けとなった光景その物を、この目で見れたのだ。
泣くほど嬉しくもなろう。

「(グスッ)……ごめんなさい、大尉さん。別にお腹は痛くないの(エグッ)ただ、とてつもないほどに嬉しいの。この空は、私が見たかった本当の空(蒼穹)だから」

ルナスカイから何時もの口癖のような、間延びした口調が抜けるほどの感動と驚喜にその心中は満たされていた。

(私が求めていた空はここにあった。そして、オルカ旅団の計画と日企連の環境再生が上手くいけば、いずれ私達の世界の空ででも、こんな光景を見れるかもしれない。なら、私は――――)

蒼穹を見上げながら内心で決意を固めるルナスカイの中で、カチリッとナニカが嵌った。
この時、ルナスカイの胸中に芽生えた焔の灯火が齎す影響を、まだ誰も知らない。

466 :霧の咆哮:2016/08/21(日) 21:53:31
『To nobles. Welcome to the earth.』

オルカ旅団が計画通り蜂起し、日企連及び内通する勢力も一斉に蜂起する中、ルナスカイはランク2:流星と共に、オーメルグループに残留する貴重なリンクスたるランク15:リザイアの撃破に向かっていた。
ルナスカイは共同とはいえ、リザイアに同行する通常兵器部隊への担当と言うのが当初の予定だった。

「流星さん、少し良いですか?」
「どうしたんだい、ルナスカイちゃん?」
「リザイアさんを相手するのは、私に任せて貰えませんか?」

常識的に考えれば、正気を疑う発言と言えよう。
リザイアはオッツダルヴァ亡き今、オーメル本社の最高戦力としてランク15のナンバーを冠している。
一方のルナスカイはランク34、カラードとしても下から数えた方が早い下位リンクスだ。
カラードのランクは企業の政治力にも左右されるから明確な強さではないし、近しいランクのリンクスは拮抗してるとも言えるが、流石にルナスカイとリザイアの実力差は歴然。
そのまま意見を通すのはルナスカイを死地に送るも同然。故に、流星は即座に却下するべきだった。
事実、ルナスカイのオペレーターはカエルがひっくり返ったように大慌てで発言の撤回を求めていた。
だが、流星の口からはそういう言葉が出なかった。
トップ2に君臨する戦士としての勘が告げていた。
『今のルナスカイは、以前みたいなゆるふわ天然ちゃんなだけではない』と。
また、今まで彼女の独特の口調だった、間延びした喋り方をしていないのも、その勘を後押しさせ、違和感を抱かせていた。
ルナスカイのナニカが、今までとは違うと。

「本気で言っているんだね?」
「はい」
「ランク2の権限として作戦指令の変更を行う。但し、なるべくこちらの近くで戦うことと、APが6割を下回ったら直ぐに撤退すること、それが条件だ。良いね?」

流星からの譲れない一線だった。自分が共同する戦いで、まだ16歳に過ぎない可愛い後輩を見す見す死なせるなど、彼の矜持が許さない。
了承したルナスカイに対し、愕然とした様子で今度は流星に抗議する彼女のオペレーターだが、流星のオペレーターが何とか諌めた。
その上で流星に改めて確認を取る。
『それで良いのか』と。

「こちらでも直ぐフォロー出来るように留意するさ。ただ、覚悟した方が良いかもね。ルナスカイちゃんは多分、とんでもないことをやらかす」

?マークを浮かべて困惑する二人のオペレーターを尻目に、流星の抱いた予感は見事に的中する。

「相手は日企連の大空流星に、確かルナスカイだったかしら。日企連のトップランカーが相手とは、相手に取って不足無しね。ノーマル部隊はルナスカイを決死で足止めしなさい」

リザイア率いる部隊と接敵し、向こうは至って常識的な判断を下す。

「……ん?どういう積りよ大空、まさか新人に私の相手をさせる気? 見縊られた物ね、この私が」

不愉快そうに告げるリザイア。当たり前と言えば当たり前。
先に言った通り、トップリンクスがノーマル部隊を蹂躙する中で、リザイアの前に立ち塞がるのが、所詮はランク34に過ぎない新人なのだから。
リザイアの認識としては、舐められたようにしか見えない。

「とっとと片づけて上げるわ、貴方に相手してる暇なんてないの」

優々と見下すように告げるリザイアが、猛然とルナスカイに襲い掛かった。

467 :霧の咆哮:2016/08/21(日) 21:54:52
二機のネクストが戦場で目にも止まらぬ速さで交差し、砲火を交える。
銃弾が相手の装甲を穿ち、抉り、破壊する。
しかし、砲火でダメージを受けるのは一機のネクストだけで、その戦況は完全に一方的。

「馬鹿な、私が捕えられない!? 相手はランク34に過ぎないのよ!?」

リザイアの愛機:ルーラーはオーメルの新型軽量2脚、ライールをベースにした高速戦闘仕様。
元々機動性の高い軽二にリザイアの場合は、肩部に追加ブースターまでその速度は圧巻。
そのスピードで相手を翻弄し、ショットガンや拡散ミサイルで削りながらブレードで切り倒すのが彼女の得意戦法である。
対するルナスカイの愛機:水風も倉橋の新型軽量逆脚ショウキをベースにした高速戦闘仕様の機体だが、それにも増して余りにも速い、速過ぎた。
確かに以前のルナスカイ相手ならば、経験や技術の差も有り確かにリザイアの勝ちは揺るがなかっただろう。

「この戦闘機動は、まるでアナトリアの傭兵やジョシュア・オブライエンのような、まさか……そんな、有りえない!?」

既に戦闘前のような見下す余裕など消し飛んでいる。
どれだけ反撃しようとも、ショットガンの散弾も、ブレードも、拡散ミサイルも掠りもしない。
反撃の隙を晒す度に、アサルトライフルの弾丸がルーラーのボディにめり込み、ダメージの負荷がリザイアを追い詰め、更に焦燥感を高めさせる。
水風が振るう攻撃は、以前のような粗さは無く、恐ろしいほど正確にルーラーに命中している。

「くっ、このままでは……! んぐっ、あぁぁ!」

アサルトライフルのリロードの隙に慌てて距離を取ろうと、追加ブースターも全開にして連続クイックブーストしても、先回りされ被弾するルーラー。
相次ぐダメージによりリザイアの口から悲鳴が零れる。
ダブルクイックブーストに連続ダブルクイックブースト。
クイックブーストの際に非常に繊細な操作を行うことで、通常より遥かに超える加速力を発揮させる高等技能。
安定して使えるのは、今まで数多くのリンクスが世に出ながら、砂漠の英雄アマジーグ、アナトリアの傭兵、アスピナのジョシュアの3人だけと言われている。
(実際はアンノウンも余裕で出来るし、最近首輪付きも使えるようになったのだが)
これはその習得難易度の高さも問題だが、通常のクイックブーストより強力な加速を、それも連続で行うということは、それだけリンクスにも負担がかかる意味を持つ。
それ故に上位軽量機使いでも、その技術の優位性を理解しながらも、ハイリスクさから習得を目指そうとする者は滅多にいなかった魔技だ。
事実、その習得を目指して足掻いた末に自滅したリンクスも記録に残っている。
しかし、ルナスカイはこのような尋常でない速度で飛び回りながら、機体に振り回されることも無く、完全に制御していた。
伝説の一角に、数多くのリンクスが諦めた頂きに、今、ルナスカイが並ぼうとしている。
欠点だった攻撃能力が改善され、元々高かった機動能力が更に高められたルナスカイの、水風の戦闘映像を見比べた場合、10人中10人がパイロットが別人に入れ替わってるのか疑うレベルで豹変していた。

「……お見事、よ。ただの下位リンクスならばいざ知らず、イレギュラーならば私の首を取るにふさわしいわ」

その言葉を最後に、ルーラーのカメラアイから光が消え、倒れ伏した。

468 :霧の咆哮:2016/08/21(日) 21:56:07
『ルーラーの機能停止を確認……』

呆然と、それだけを呟く流星のオペレーター。
流星も同タイムでノーマル部隊を殲滅し終えたが、敵を倒しながら時折ルナスカイとリザイアの戦いを見ていた。

「まさか、ここまでの逸材だったとわ……レイヴンさん、ジョシュアさん、アンノウンさん、首輪付き君に続く5人目のイレギュラー、か。どこぞのリハクじゃないけど、まるで見抜けなかったよ」
『……! ……!』
「あ、はい? 大丈夫ですよ~。凄~く、疲れましたけど~」

自分のオペレーターに返答するルナスカイは、何時もと同じ様子で。まるで先ほどまでの戦闘は幻だったと思ってしまいそうな。
だけど、無傷で佇む水風と、ボロボロになって近くに倒れ伏すルーラーの姿が現実だと証明している。

「また大騒ぎだろうな、あの会合で」

遠い本社で報告を受けて驚愕に包まれるだろう、同胞含むお偉方の姿を想像し、苦笑を浮かべる流星であった。
実際、原作にいない意味では二人目のイレギュラーの出現で、夢幻会はてんやわんやの大騒ぎとなり、それを聞いたアンノウンは腹を抱えて爆笑。
『これだから現実(リアル)ってのは面白いんだ』と零したらしい。
序に倉崎内部のルナスカイファンクラブでは宴となったそうな。



第二次リンクス戦争中・戦争後の反日企連派の残党狩りで、ルナスカイは開戦前は新人扱いだったのが嘘のように多大な戦果を挙げ続けた。
ある時はカブラカンの無人機を武装が弾切れになった後に、出撃前に事前に格納していたブレード2本で殲滅。
一応、同様に出撃前に腕部をブレード適性が高いハヤブサに変えてはいた。
(それに奮起されたように、別のカブラカンを桜子が撃破していた)
またある時はインテリオルが破れかぶれで放った、リンクス候補生が乗るネクスト3機に対し、僚機のメイと共に応戦。
自身は無傷、メリーゲートも小破程度で容易く撃破と無双ップリを知らしめ、いつしかウィンが『真鍮の乙女』の二つ名を持つように、敵からは『嘆きの風』味方からは『疾風の妖精』という二つ名を頂いた。
戦争終結後、高齢リンクス達が引退する前の最後にと派手に開催された、味方陣営のリンクス達による総当たり大シミュレーション大会では首輪付きやアナトリアの傭兵、アンノウン達と壮絶な戦いを繰り広げた。
引退後のリンクス達も途中から乱入して来た結果は、ジョシュアには勝って見事に師を越えてみせ、アナトリアの傭兵やアンノウンには経験の差で敗北。
首輪付きには相討ちで引き分けとなり、それ以外が相手なら全て勝利した。
ジョシュアとしては、可愛がった生徒が化けるとは思っていたが、まさかここまで上り詰めるとはと、教官冥利に尽きる心情であった。
アンノウンからも『数年後が楽しみ』と本当に嬉しそうに賞賛される、見事な闘いぶりであった。
なお、テルミドールやウィンみたいな、若手の他のトップランカーは新人に一気に追い抜かれたショックで膝を付いていたが。
ルナスカイが開戦前のカラードリンクス最年少な為に、一番の年下に、マスコットみたいだった少女にボッコボコにされた点で余計ダメージが増したとも言う。

ルナスカイは少なくとも残党狩りが終わるまではリンクスとして活動し続けたことは記録されている。
その後の足取りは定かではないが、その願いの通り、空に、宇宙に関わり続けたのは確かだろう。
ルナ(月)スカイ(空)の名が表わす通りに。

「ネクストはもう使えないけど、Vシリーズの空戦特化試作機体でこの蒼空を飛ぶのた~のし~! 倉崎のおじちゃん達に『今日は自由にして良い』と言われたから、限界まで飛ぶぞ~!」



END

469 :霧の咆哮:2016/08/21(日) 21:57:10
以上です。ルナスカイに付いて妄想膨らませてたら止まらなくなった。
その過程でいつのまにか新たなイレギュラー級にまで成長してるし。
以前設定投下した際は、ルナスカイは覚醒しないなら中堅どころ程度に成長しても収まり、覚醒したとしても、流星級の次代のトップランカー位の積りだったんだが。
ルナスカイはその後どうしたのか、限界まで空を飛べる仕事を選び続けたのか、宇宙にまで手を伸ばしたのか、途中から自分の世界の空を綺麗にするための研究者に転向したのか。
或いは早々に乙女らしく良い人と家庭を持って専業主婦にでもなったか。
どうなるかは各自のフロム脳ってことで。明確な進路を決めるか悩んだが、絞り切れなかったのだけど。
本当は出撃前か、リザイアとの対決前に高らかに詠うルナスカイの覚醒シーンみたいなの入れたかったんだが、良い文面が纏まらずに没にした。

序にルナスカイとメイにさっくりやられた3人のリンクス情報

○:ユウグレサクラ ACネーム:トライブレード01
○:ワンダーチェリー ACネーム:トライボム02
○:ブロッサムスプラッシュ ACネーム:トライバスター03

非常に珍しいどころか初めて確認された三つ子のリンクス姉妹。まだ訓練性だったのだが戦況悪化に伴い促成育成で実戦投入。
トライブレードは頭部とコアをラトーナ、腕と脚部がセロのアレと同じで、両腕にインテリオルブレード、背部にパルスキャノンとチェインガンを積んだ軽量前衛型。
トライボムはコアと腕部はテルス、頭部は新型アルドラ、脚部はオーギルで、両腕にレーザーライフルとアルドラバズーカ、背部にアルドラグレとレーダー、肩部にASミサイルを積んだ中量中衛型。
トライバスターは脚部はアルギュロス、頭部とコアはランセル、腕部が新型コジマ武器腕で、背部にPA制波装置とレールキャノン、肩部にPA回復装置を積んだ重量後衛型。
戦法としては三つ子らしく息の合ったコンビネーションで、ブレードが切り込み撹乱するのを、ボムやバスターがレールガンやバズーカで援護しつつ、バズーカやグレを食らって硬直した相手にコジマキャノンとブレードを叩き込むのが必勝戦法、だった。
理論上は。
実際には突っ込んだブレードを水風が、相手が実弾に極端に弱いラトーナベースなのも有り瞬殺し、その最中にも援護射撃を行っても一向に当たらずに焦りを募らせたボムに水風が新たに襲い掛かる。
ブレードとボムが水風にかかりっきりということは、バスターはメリーゲートとタイマンを強いられるわけで、レールキャノンを撃っても実弾に強い重二のメリーゲートには効果が薄く、何よりもバスターじゃ腕が未熟なせいで、動きが遅いメリーゲートにすら中々当てられない。
コジマのチャージも安定性が低いアルギュロスベース故に、バズーカを食らった衝撃でキャンセルされ、後はミサイルカーニバルでやられるだけ。
最終的に、水風は当然のように無傷で、メリーゲートはレールキャノンを何発かとボムが自棄になって撃ち捲った流れ弾のグレネードを1発受けただけで三機のネクストを撃破した。
姉妹皆で好きな桜から傭兵ネームを決めたが、花の通り儚く散った。撃破されても命は一応助かったが。

470 :霧の咆哮:2016/08/21(日) 22:00:34
wiki転載はご自由に。

462はミスです、すみません
纏める際は、改めて投下した>>463からお願いします

今までは設定や、資料纏め位で、まともに健全短編を仕上げるのは初めてだったんで疲れた・・・

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最終更新:2016年08月23日 10:01