360 :弥次郎:2016/09/10(土) 23:24:45
大日本企業連合が史実世界にログインしたようです 幕間 -アルテリア・カーパルス占拠-


『私一人でもいいのだが……』
『念には念をということだ。企業連もリンクスを促成で戦場に送り込んでくる可能性があるのは知っての通りだ。
 オーメルもなりふり構わずだろうな』

日企連保有のネクスト搭載の潜水母艦かいりゅう型の船内。
ハンガーに固定されているネクストは2機。アステリズムとフツノミタマであった。
既に戦闘に向けて両機は起動しており、リンクスは既にコクピット内部でいつでも戦闘態勢に入れる。

『そちらの機体、資料のものと違うのだな?』
『ん?ああ、UnKnownほどじゃないが、カラードマッチだと手を抜いてる。
 本来のスタイルなんてのは隠すに限る。蜃気楼に乗ったテルミドールにも通用したぞ』
『一体どうやったのだ?』
『それは言えないな。まあ、手早く片を付けるには相手の意表をつくしかない。
 ここで躓くのは許されない。だとするなら、それを惜しみなく使うさ』
『期待させてもらおうか』

そっけのない会話。
しかし、両者は集中を高めている最中。おそらく、会話も無意識だ。
ジュリアスにしても、タケミカヅチにしても、マインドセットに余念がない。
アルテリア施設への奇襲は時間をあわせ、短い期間に一気に行う。
既に日企連はオーメルらに宣戦布告をしており、情報によればオーメルのリザイアがルナスカイに撃破されている。
そうなると、このカーパルスにオーメルやローゼンタールの派遣できる戦力は自ずと限定される。

『さて、さっさと脱落してもらおうか。ローゼンタール』

目標はローゼンタール最高戦力にして象徴的存在『ノブリス・オブリージュ』だ。

361 :弥次郎:2016/09/10(土) 23:25:40
アルテリア・カーパルス。
欧州 ローゼンタールの支配地域におかれた有力なアルテリア施設だ。
ローゼンタールの保有するアルテリアの中でも最大規模であり、クレイドルを支える重要な屋台骨でもある。
しかし、それ故に大量の電力が集まる場所でもある。エーレンベルグを起動させ、衛星軌道を掃射するにはここの電力を
利用することが必要だ。そうでなくても、ローゼンタールという巨大企業を屈服させるためには、ここを襲撃し、
派遣されてくるであろうネクスト戦力を撃破することが望ましいのだ。いや、むしろここを襲撃すれば、ネクストを
おびき寄せることができると言った方が正しい。支配企業としての矜持が、ここを守らざるを得ない状況に追い込んでいる。

そして、そのカーパルスを守る守備隊はネクストの奇襲を受けた。
一機は日企連のタケミカヅチの操るフツノミタマ。もう一機は、ORCA旅団のジュリアス・エメリーのアステリズム。
軽量二脚の二機は、そのスピードを生かして厄介な大型砲やノーマルを重点的に破壊していく。圧倒的なスピードだ。
火力にしてもアステリズムは強力無比なハイレーザーライフルHLR71-VEGAがあり、フツノミタマはショットガンと
アサルトライフルの連射、そして背部武装のパルスキャノンとプラズマキャノンで一気に蹴散らす。

他にもかいりゅう型から発進したVシリーズAC部隊がアステリズムとフツノミタマに続いて攻撃を仕掛ける。
中の人の錬度の差もあり、カーパルス守備部隊は瞬く間に駆逐されていく。
続けて長距離をグライドブーストで飛行してきたVシリーズや通常戦力がカーパルスの占拠に取り掛かる。
残る仕事は歩兵の駆逐とコントロールの奪取。そうすればここに集まる電力はORCA旅団と日企連の手に落ちるのだ。

『敵ネクスト反応を確認』

一通り兵力の揚陸が完了した時、オペレーターが2基のネクストに通達する。

『OBで接近中。機体照合、確認撮れました』
『来たか、ノブリス・オブリージュ』

その名の通りのネクストが接近していた。
猛烈な速度でカーパルス目指して飛行してくる。

362 :弥次郎:2016/09/10(土) 23:26:39
『予定通りやる』

アステリズムはその両手の武器をいったん手放し、置かれている巨大な砲に近寄っていく。
その巨大な砲は如月技研の製作した据え置き型試作コジマキャノン『ヒノカグツチ』。
元々はネクストの搭載する背部武装として開発されたが、凄まじい威力を持つ一方で、引き換えに重量とエネルギー消費が
とてつもないものとなっており、タンク以外の運用が非常に難しくなってしまった。そこでいっそのことネクストに搭載せずに、
固定砲台として使用するのはどうかというアイディアが出されて完成した。一撃でネクストを消し飛ばすそれは、
ネクストがしっかりと支えてやらなければまともに発射することができない兵器だった。VシリーズACが運んできたこの巨砲は、
ノブリス・オブリージュの方向へと向けられていた。砲塔は偏差射撃ができるように旋回可能だが、基本的に射角は限定されている。
そして、徐々にコジマ粒子が充てんされ、チャージが進んでいく。

『空き巣とは、なんとも情けない。匪賊には誇りもないのか?
 生きやすいものだな、うらやましいよ』

タケミカヅチはその音声をしっかり録音していた。
ゲームをプレイしていた時も思ったが、やはりふらやましい、と言っているように聞こえる。

『捉えた、ノブリス・オブリージュだ』

巡航モードのOBで、水平線の彼方から象徴的なレーザーキャノンを背負ったネクストが飛行してくる。
そして、そのネクストにオープン回線でジュリアスが呼びかけた。

『久しぶりだな、ジェラルド・ジェンドリン』
『何故君が…ジュリアス・エメリー』
『貴様に構っている暇はない。そこをどいてもらおう』

一方的に言ったジュリアスは、すうっと息を吸う。
一瞬それを止め、丹田に力を籠め、オープン回線で、叫ぶ。

『コジマァァァァッァァァァァア!』

その声は、轟いた。
カーパルスの防衛ノーマル部隊や日企連のVシリーズAC部隊、歩兵たちや、母艦の通信回線にも。
そして、3機のネクストにも。

『キャノォォォォォォォォォン!!!!!』

ジュリアスは、吠えた。
吠えて、同時に、引き金を引いた。
それに応え、試作コジマキャノン『ヒノカグツチ』は期待通りにプラズマ化したコジマ粒子を吐き出す。
ネクストさえ軽々飲み込むコジマの輝きは、いっそ美しいほどだった。

『え……なっ!?しまっ……!』

ジェラルドは、我に返った。
旧知の仲であったジュリアス・エメリーとの再会。そして、予想外の兵器と、予想外の通信。
高潔な騎士である一方で、常識的すぎるジェラルドはジュリアスの常識外の行動にあっけにとられてしまったのだ。

363 :弥次郎:2016/09/10(土) 23:27:19
『躱したか、流石に簡単にはいかんな』

タケミカヅチはその目でノブリス・オブリージュが被弾直前に辛うじて身をかわしたのを見た。
残念ながら、直撃は回避しても高威力のコジマ兵器の余波でPAは消し飛び、装甲もまるで火傷をしたかのようにただれており、
自慢の『破壊天使砲』もすでに形を失っていた。どう考えても戦闘を続行できる状態ではない。

『無念……離脱する!』

辛うじて間に合ったことで命を長らえたノブリス・オブリージュに選べたのは、撤退だった。
無事だったOBを起動し、反転して撤退していく。

『ふう。すっきりした』
『な、なんだ今のは……』
『何、日企連の技術屋にぜひ叫んでくれと頼まれた。存外気持ちのいいものだな』

どことなく晴れやかなジュリアスの声に、タケミカヅチは目を白黒させるしかない。
クールビューティーを絵にかいたような印象をジュリアスから受けていたのだが、どう考えてもあれは、なんだ?

『貴様が言う様に、意表をついただけだ。
 私とあいつは浅からぬ縁があるし、いきなり叫べば呆然とする。貴様も驚くなら、あの男も驚くに決まっている』

既にジュリアスの声は平静を取り戻している。
感情の少ない、冷徹な声だ。
あれは演技だったのか、はたまた本気だったのか。

(如月の変態どもめ……ジュリアスに何を吹き込んだんだ?)

暫く呆然としていた日企連とORCA旅団の戦力だったが、やがて我に返った。

『敵増援を確認、ローゼンタールの『トラセンド』です』

オペレーターの声に二人は意識を切り替えた。

『やはり来たか。二機で連携すればいいものを……』
『あいつは手柄第一だからな。自信家といえば聞こえはいいが、ただのうぬぼれ屋だ』

呆れたようなジュリアスにタケミカヅチも相槌を打つ。
企業におもねり、欲を隠そうともしないリンクス。それがダリオ・エンピオという男だった。
トラセンドというネクストの名前も、超越する、という意味である。

『ふん、ジェラルドめ。貴族の義務など御大層なご託を……くくっ』

ダリオは高揚感を隠さなかった。
目の上のたん瘤たるジェラルド・ジェンドリンが無様に敗北して撤退。
重要な拠点であるカーパルスにはネクストが二機。もし勝利できれば自分こそがローゼンタールの、そしてカラードの上位に入る
多くのリンクスが日企連になびいた今、ダリオの邪魔をする者はいなかった。絶好の好機。こんなものなど、めったにない。
もはや、ダリオにはそれしかなかった。自己過信と自尊心の塊が、ネクストを動かしていた。
勝てるかどうかを考える事さえ、やめていた。

364 :弥次郎:2016/09/10(土) 23:28:08
『あの男のしりぬぐいをしてやるとするか』
『黙れ三下。お前は前から気に食わなかったんだよ。30秒で終わりにしてやる』

そして、タケミカヅチはショットガンとライフルをリロード。
フツノミタマはふわりと舞い上がり、OBを起動する。

『ジュリアス、あれを片付けてくる。防衛部隊は任せた』
『ああ、任せておけ』

『ヒノカグツチ』は一発こっきり。そうなると真っ向から迎撃することになる。

『負ける気はしない。企業連の犬、無様に死ね』

そして、フツノミタマはカーパルスから飛び出す。二機のネクストは海上で会敵。
OBを緩めたトラセンドはレーザーキャノンとレーザーライフルを発砲するが、フツノミタマはOBを維持したまま突貫する。

『時間もないんでな』

何を、とダリオが思ったとき、フツノミタマはショットガンとライフルを連射した。
一気にトラセンドPAが減衰していく。きっちり近距離で張り付いたタケミカヅチはそのまま連射を続けた。
OBは解除され、通常推力になったフツノミタマは、しかしうまくOBの速度を維持したままだ。

『くっ!』

ダリオは舌打ちをし、フツノミタマから逃れようとQBを繰り返す。
しかし、それをタケミカヅチは許さない。チェーンガンの連射とレーザーライフルをPAと装甲で受け止めつつも、
ぴったりとトラセンドとフツノミタマの距離を一定以下に抑え続けていた。度重なる連射は、徐々にトラセンドに
ダメージを与えている。無論反撃するが、相手の方がよりダメージを与えていた。

『オーダーマッチと大して変わらないな、エンピオ。
 少なくともジェラルド・ジェンドリンはついてきていたぞ』
『何だと!?』
『はっきり言えば、お前はコネなしだと怖くもない。企業連に尻尾を振る能力だけは高いようだがな』

次の瞬間、トラセンドのレーザーブレードが振るわれる。

『貴様……!あの男と俺を比較するな!』
『おっとあぶない』

しかし、レーザーブレードを予測していたタケミカヅチは上方へのQBで回避した。
追いすがるようにチェインガンの射撃が襲い掛かるが、タケミカヅチは広い空間を生かして飛翔し、的を絞らせない。
空戦機動能力に優れる日企連の新型標準機JPN-HAYABUSA-02はタケミカヅチの操縦に応え、トラセンドの攻撃を悉く回避する。
原作をプレイしたタケミカヅチならではの2段QBによって、フツノミタマは常識外の加速でトラセンドを振り切っていた。
一旦距離をとると、フツノミタマはトラセンドの背後へと回り込もうと高速で飛行していく。
連続した射撃がフツノミタマを狙って放たれるが、いずれも軽やかに回避される。

『遅いな。遅すぎる』

トラセンドの周囲を旋回しながら射撃を続けるフツノミタマは、緩急を織り交ぜたQBと上下への回避しつつ距離を詰めていた。
ダリオは距離をとろうとするが、タケミカヅチは許さない。機体の出力の差もあって、徐々に距離が縮まる。

365 :弥次郎:2016/09/10(土) 23:28:44
『ひとつ教えてやろう』

トラセンドのバックウェポンのレーザーキャノンの発砲。しかし、余裕で回避するタケミカヅチ。
反撃のプラズマキャノンがトラセンドのPAを剥ぎ取る。タケミカヅチはそれを即パージ。使い捨てだ。
重量が軽くなり、フツノミタマの速度がさらに上がった。そのままの勢いでショットガンとライフルのラッシュが
PAの剥がれたトラセンドを削り、破壊していく。

『フツノミタマの「フツ」とは物を断ち切る音の事らしい。武御雷の持つ剣とは、物を切り裂く魂そのものということだ』
『だからどうした!?』

薙ぎ払うようなチェインガンの掃射。しかし、PAが受け止め、逆にリロードの瞬間にショットガンによってチェインガンが破損する。
コンピューターの判断でトラセンドからチェインガンがパージされた。
立ちあがったフツノミタマのパルスキャノンがじわじわとトラセンドの装甲を溶かしていく。そして、追い打ちのように
ショットガンが襲い掛かった。ガリガリと装甲が削れていくトラセンドは、なんとか後方に下がろうとするが、張り付かれ、振り切れない。

『こういうことだ』
『な!?』

次の瞬間、両腕の武器を投げ捨てたフツノミタマはマニピュレーターから巨大なレーザーブレードを展開していた。
否、マニピュレーターどころか肘のあたりまでが丸ごとレーザーブレードとなったかのようになっている。
長大な刀身は紫の光で構成されていて、どう考えても格納武器ではない。

『日企連の新商品、武器腕レーザーブレードだ。
 まあ、オーダーマッチでは一度も使ったことのない装備だがな』
『き、貴様……まさか手を抜いて……!?』
『奥の手というのは隠しておくものだ』

言うが早いか、フツノミタマはQBの連続で一気に距離を詰めた。2段QBの連続。AMSを通じて負荷がかかるそれを、
タケミカヅチは連続して行う。

『いくぞ!』

ダリオはQBで後方に下がろうとする。
しかし、遅い。
雷から逃れようなど、人の身でできる事ではない。
瞬く間に、彼我の距離はPA同士の干渉が起こるほどにまで迫っていた。

366 :弥次郎:2016/09/10(土) 23:29:26
『ちょこまかと!』
『遅い!』

レーザーライフルの射撃。それを紙一重で交わし、フツノミタマは踏み込む。
一閃。
通り抜けざまに、左の腰部がざっくりと切断される。その激痛に、ダリオはうめき声を上げる。
だが、フツノミタマはとまらない。軽やかなQTで旋回すると、勢いのままに回し蹴りを放ち、レーザーライフルを持つ
トラセンドの腕をレーザーブレードの刺突によって切り落とした。

『ぐっ……この!』
『ふん!』

そのすきをついて照準を合わせたが、レーザーキャノンがレーザーブレードで斬り飛ばされた。追撃のように繰り出された
フツノミタマの蹴りによってトラセンドは姿勢を崩す。蹴られた勢いをそのまま回転に変えてレーザーブレードによる刺突を繰り出すが、
繰り出したトラセンドの腕が逆に肘のあたりから先をレーザーブレードで切り落とされる。
休む間もなく突き出されたフツノミタマの左腕がコアへと深々と突き刺さった。PAを突き破り、装甲を食い破る。
そして、貫通した。

『ぐおおお……!』

AMSを通じて激痛が走る。
コクピット直撃ではない。
というより、コクピットをわざと狙わなかった。

『痛いだろう?』
『ぐ、ぐぐぐ……き、きさ……ま!』
『さよならだ』

感慨もなく、タケミカヅチは右腕もトラセンドのコアに突き刺し、両腕を一気に一気に上下に振りぬく。
左右に分割されたトラセンドは、そのままカーパルスを囲う海へと落ちていく。
確認するまでもなく、内部でリンクスは即死だ。海中で一度巨大なコジマ爆発が起こり、そして何も浮かんでこなかった。
終わってみれば、本当に30秒も経っていない。

『トラセンドの撃破を確認。
 通常戦力もアステリズムに駆逐しつつあります』
『となれば、ミッションは成功か』
『お見事でした、タケミカヅチ』
『あんなのに勝ってもうれしくはないが、賛辞はありがたく受け取ろう』

斯くして、アルテリア・カーパルスは日企連とORCA旅団の手に落ちた。
この戦闘でローゼンタールはネクスト戦力を一気に失い、促成戦力に頼らざるを得ない状況に追い込まれた。
そして、促成リンクスは当然のように役には立たず、無様な敗北を重ねていくことになるのだが、それはまだ先のことであった。

367 :弥次郎:2016/09/10(土) 23:31:02
以上となります。wiki転載はご自由に。

タケミカヅチ「ダリオ・エンピオ、死亡確認!」




アクアビットマンを見たら思いついた。
反省はしているが後悔はしていない。今は(カーパルス襲撃を)反芻している。
誰もが一度はやる、開幕コジマブッパ。

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最終更新:2016年09月12日 08:59