878 :弥次郎:2016/09/14(水) 00:40:16
大日本企業連合が史実世界にログインしたようです 幕間 -嘗ての龍は化石となりて……-




その空間は、ひたすらに静かだった。
汚染物質を塵や砂などを一緒にして風が吹き荒び、嘗ての繁栄の残滓である建造物にぶつかり、荒れ狂っていた。
繁栄の象徴であったビル群は、すでに見る影もない。いや、むしろ手ごろな遮蔽物として利用されたのか、弾痕や人為的に破壊された跡が生々しく残っている。ふわふわと舞うのは、雪ではなく未だに稼働する工場からの廃棄物や空気中のちりが一緒くたにまとまって出来上がった、ダストスノーと呼ばれるものだった。
その量は尋常ではない。浅く雪が積もったかのようになっているのだから、その量がうかがい知れる。
そして、日企連のマークを付けた可変型4枚プロペラの大型ヘリが低速でダストスノーの中を飛行していく。
護衛役の戦闘ヘリやノーマルらを引き連れたそれは、機内に異邦人を載せていた。

「嘗ては北京だった場所です。そちらの言い方で言えば通州ですな。
 国家解体戦争時、リンクス戦力を持たない中華系企業はここを拠点にして全土の支配を目論みましたが、
 当然のように失敗。共産党政権末期の、地方軍閥の割拠の時代を迎えている中で企業と国家が結託しての動きでしたが、結局のところ共産主義は合致しないとの判断から各企業によって攻撃を受け、首脳部が全滅。
 そのまま無政府状態となり、日企連とアルゼブラ テクノクラートの3企業の思惑もあって緩衝地帯となっています」

日企連の案内役は淡々と事実を伝えていく。
日企連側の世界にやって来た史実側の臣民や社員は、日企連の意図もあって嘗ての首都を見学していた。
その光景の凄惨さ・悲惨さに、誰もが言葉を失っていた。

『緩衝地帯……いや、むしろ空白地帯か』
『静かだな。何もかもが無くなって、死そのものと言ったところか……』
『コジマ汚染は少ないとはいえ、ここまでとはな……』

日企連側の空気や空気に含まれる病原菌を吸い込まないために分厚い防護服を着ている史実世界からの派遣員は、無線機越しに会話をする。史実側の空気を詰め込んだタンクをドローンが牽引する車両に詰め込み、酸素と二酸化炭素を交換することで防護服の内側は一種の閉鎖環境と化している。そうでなければ、空気中の病原菌におかされ、3日と経たずに病院の集中治療室送りになり、二度と出ては来れないだろう。

「数回ネクスト戦力の投入が検討されましたが、日企連国土の西側は風上となるため中止され、ノーマル部隊が中心に投じられました。
 テロリストの排除も何度か行われましたが、結局自治政権は樹立されず、おまけに都合のよい不法投棄場となったことでここは死の街となりました。人が生きているような痕跡はわずかに見られますが、もはやどうにもなりません」
『人がいるのですか?』
「ええ。「レヴナント・シティ」と呼称される犯罪都市の一種が地下に広がっています。
 共産党政権が嘗て開発を進めた、核戦争を想定した地下シェルターがベースとなっています。
 内部ははっきり言えば伏魔殿状態。解放した瞬間犯罪者や薬物などが溢れ出ます」

その時、眼下に残骸となった兵器の塊が見えた。
どれほど前の物か、すでに劣化して久しい。また、廃品目当てのミグラントが剥ぎ取ったのか、装甲板や砲塔などはほとんどない。
しかし、ミグラントが色々と剥ぎ取ったのはごく最近のようで、その痕跡が生々しく残っている。

『日企連はここに進出しないのか?』
「こんな自業自得の街を、どうすればいいのですか?
 汚染を取り払ったところで、誰もすみたがりません。水源や風上にはより多くの汚染物質が存在しているため、日企連は汚染防止のための隔壁をわざわざ作る羽目になりました。人が住めるまで改善するには100年はかかりますよ。
 これは国家時代から放置され続け、時には攻撃手段として用いられたこともあり、簡単には排除できません。
 そして地下のレヴナント・シティを全て潰す。とてつもない労力です。それだけの予算があるなら、海上都市を安全な場所に作った方がいいに決まっています」

879 :弥次郎:2016/09/14(水) 00:40:55
『う……』
「日本列島が数少ない生活圏なのですよ。アジアもくそもありません。
 国家時代の主義主張の多くが無意味だと分かっています。それとも……アジア主義などを訴えますか?我々の目の前で」

日企連の案内役の言葉に、史実側の一人の閣僚が口をつぐむ。
主義主張など、日企連の前ではいかなるものさえも説得力がない。
共産主義?資本主義?アジア主義?大東亜?社会主義?
だからどうした、と笑い飛ばせるのは、ほかならぬ日企連のみ。
何しろ、それだけの歴史をたどってきたのが日企連なのだから。

「アジア主義にのっとって中華に深入りし過ぎて、貴方達は戦争へなだれ込んだ。
 いや、今なだれ込みかけている状況でしたか。教えられて尚、突っ込みますか?」
『いや、それは……その……そういうつもりでは』
「日企連の力を借りて拡大に走るなど、陛下は望まれてはいない。
 好き勝手に解釈されては困りますな」

釘を刺しておく。
大陸への進出を狙う財閥や派閥はいまだに残っている。
馬鹿は中華の幻想を抱くが、その結果は歴史が証明してきた。

「目に、心に焼き付けてください。無策が、怠慢が、好き勝手に遊んだ結果がこれなのだと」
『……』
「ここにあるのは、時代の変化を受け入れずに朽ちていった恐竜の化石です。
 龍はもはや、過去の遺物と化したのですよ」

脅すような、それでいて祈るような言葉。
その時、護衛期から通信が入る。

『ツグミ3よりアルバトロス、ノーマルとMTを多数補足。恐らくレヴナント・シティのミグラントと推測される』
「アルバトロス了解。アルバトロスからツグミ全機。至急ミグラントの排除に乗り移られたし」
『ツグミリーダー了解』
「せっかくです、我々の世界の戦闘をお見せしますよ」

アルバトロス、史実側の派遣員が乗ったヘリは進路を変更し安全な方向へと護衛と共に撤退していく。
代わりに、地上を歩行していた護衛のVシリーズAC部隊が前進する。おそらく、呪文のような会話で迎撃の算段を立てているのだろう。
だが、それを含めても史実側には良い薬となるだろう。日企連に私怨や怨恨で抗うことがどれほど絶望的なことなのかを知ることができる。

そして、戦いは、あっけないほど簡単に終わった。
この時の偶発的な遭遇戦は史実側が持ち込んだ8mmフィルムによって撮影がなされ、その映像は史実側の臣民と社員に
とてつもない衝撃をもたらした。3.14蜂起などで用いられた人型や日企連の保有する戦力が如何に出鱈目なのかを改めて突き付けたのだ。

880 :弥次郎:2016/09/14(水) 00:41:36
追記:日企連製世界間環境順応緩和スーツ

全重量:363㎏
全高:3.4m
お値段:現代の価格でおよそ43億円(酸素/二酸化炭素交換機および消耗品などの外部機器除く)
動力:水素燃料バッテリー(充電式)
搭載機能:ほぼ宇宙服と同等 加えてトイレ機能やパワーアシスト機能を搭載
移動方式:二足歩行もしくは移動用モジュール(スケート靴やスキーブーツを履いたような外見 電動式)
外見&簡単なイメージ:化学防護服と宇宙服を掛け合わせた大型の服。

概要:
日企連が開発した史実側世界の住人が防疫期間や順応期間を短縮乃至実質0にするためのスーツ。
コジマ汚染の遮断や病原菌の持ち込みをシャットアウトするために開発された。
本来は活動しやすい宇宙服の開発の過程で生まれたもので、

史実側の人間が基本的に1度着用したら殆ど脱がないことを前提としている。
そのため、使い捨てのおむつを内部で交換し、食事に関しても史実側の空気を満たした専用の与圧室内部で手短に取るか、専用の管を通じて史実側の水を通して飲む必要がある。そのため、史実側の派遣員が行動する際には与圧室を搭載した大型車両か船舶あるいは飛行機が随伴し、酸素/二酸化炭素交換機を接続していることが望ましい。

史実側の人間が背が低く手足が短いことを考慮し、脳から贈られる信号をキャッチするバンドを手足に巻き付け、義手義足が装着者の動きをトレースするという方式をとっている。また重い本体を動かしやすくするためにパワードスーツから移植してきたパワーアシスト機能がついており、移動速度や運動能力に関して言えばむしろ生身よりも楽で速い。
一応空気交換や消臭機能もあるのだが、スーツ内部の臭いに関してはお察しください。

しかし、画期的なスーツであることの対価で製造コスト及び運用コストはすさまじいものとなっており、日企連さえも大量生産をあきらめて簡易量産へと舵を切った。

882 :弥次郎:2016/09/14(水) 00:42:53
追記 日企連世界のシナの状況について:
日企連の意図もあって分断工作を実施。
既に主要な資本は国外退避が完了しており、汚染された大地にしがみつくようにしてレヴナント・シティがいくつも存在する。
日企連にとってはちょうど良い訓練場ともいえる。

技術発達の速さに制度や大きすぎる故に社会機構の変革が進まない&

徐々に共産党政権が実験を失うor形骸化

民間企業が力を持ち国外脱出や地方での独自勢力を構築(ここら辺に王小龍が混じっていたりする)

眼が眩んだ政府が指導(国有化)を強制

企業間同士&政府間の内輪もめ勃発

からの、ネクスト関連技術の発達の遅れ(日企連の的確なアシストもある)

完全に出遅れ、日企連の思惑もあって綺麗に分割される

レヴナント・シティ同士で倫理観が黄巾党レベルまで低下し、群雄割拠の時代に

日企連が適度に間引きつつ、汚染が飛んでこないように手入れ&汚染拡大阻止・防衛・流民阻止の役目を持つ3つの隔壁を建造。
それぞれウォール・シーナ ウォール・マリア ウォール・ローゼ、あるいはまとめて新万里の長城。

現在はミグラントやレヴナント・シティが溢れかえり、匪賊やテロリストの温床と化している

884 :弥次郎:2016/09/14(水) 00:45:19
以上となります。wiki転載はご自由に。

夢幻会がほんとに1世紀近くかけて分断・弱体化を仕掛けたことでお隣の大陸は残念なことに。
ま、あと100年くらいすればミグラントの中から三国時代の劉備や孫権 曹操、あるいは秦の始皇帝のような突然変異的な英雄が出てくるんじゃないですかね(適当

あとはあまりにも行き来に必要な期間が長期に及ぶので、言い訳じみたスーツを作ってみました。
隔離されたスーツですから、これを着ておけば大体OKです。なお、着る国家予算と化している模様…

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最終更新:2016年09月17日 12:57