885 :弥次郎:2016/10/05(水) 19:21:02
大日本企業連合が史実世界にログインしたようです 幕間 -悪魔、再び-


『作戦を確認します。
 PA-N51に駐留中のアルゼブラのリンクスチームを強襲します。
 リンクスチームは3人。いずれもリンクスとしては新人ではありますが、アルゼブラのイルビス・オーンスタインの教導を受け、
 アルゼブラの精鋭ノーマル部隊バーラット部隊からの転向者も混じっているために、その戦闘力は高いとみてよいでしょう。
 情報はやや不足していますが、いずれの機体もアルゼブラの標準機がベースとなっていることが確認されています。
 作戦領域突入後にECMを展開します。敵ネクストを撃破してください。
 以上、作戦の確認を終了します。御武運を』


この日のUnKnownの愛機の名前は「カンヒサクラ」。そのアセンブリはレイレナードのアリカの脚部にHien-03のコア。
腕部にはオーメルのユディト、頭部にはアクアビットのランスタンを採用していた。そして武装は051ANNR+JPN-LB-AIKUTIと
アルゼブラのKIKU、背中には追加ブースターを背負い、如月の試作型スモークディスチャージャー。そして、
機体表面は真っ黒に塗られ、桜の花びらの様な斑点がいくつもある。新手の前衛芸術にも見えなくもない。

『30秒後、ECM展開します』

オペレーターの言葉にUnKnownは軽くうなずいて戦闘領域へと突っ込んでいく。
既にあちらはこちらを捕捉したはずだ。白昼堂々、アルゼブラのリンクスチームのいる場所に飛び込んでいくのだから。
既に音響センサーや光学カメラはバーラット部隊の姿をいくつもとらえている。バッタの様な跳躍でこちらを追尾しているのが分かる。

『リンクスか?』
『迎撃するぞ!』
『お、おい、なんだこのECM……h……イ、応t……!』

レーダーに強力なジャミングがかかり始めた。
ここに襲撃を仕掛けるのは二度目。
まあ、いい。楽しませてくれるはず。

(いた、ネクスト)

赤いカラーリングのSALAFベースのネクスト。頭部はホロフェロス。皿頭。
事前の情報によればアルゼブラの女性リンクス”ランシャン”の操る『シュルティ』。
セロのテスタメントになぞらえたのか。

886 :弥次郎:2016/10/05(水) 19:22:05
その強さはまだ未知数。そもそも表に出てきて間もないリンクスだ。
それを真っ先に試せる。幸運だ。

(試せばわかる。言葉はいらない)

それが傭兵だから。
2段QBの連発。カンヒサクラは音を置き去りにして加速した。

『な、何……!?』

戸惑う声がノイズ交じりに届く。

(ああ、駄目かも)

外れ。この程度でこれはつまらない奴。
牽制のライフルを放つ。連射で5発。PAが飽和し、減衰していく。やはりBFF製は精度がいい。
射撃を受ける前から後退を選んでいたランシャンだが、戸惑いが動きの稚拙さにつながっていた。

『ジョージ、……ん護を……!』

だが、それでも行動はきちんととった。
後退しながら手にしたアサルトライフル”アカシア”とマシンガン”VANDA”を発砲。
引き撃ちという基本戦術。悪くない。恐らくリンクスチームの一人ジョージ・サマーンが操る「イップス・ショット」。
名前からするに躊躇いながらの援護だろう。だが、警戒はしておく。慎重さと臆病さは紙一重。

(でも狙いが甘いー)

QBでシュルティの射撃を回避する。射線が見え見えだ。
射線を読んで体を、ネクストを軽くスライドさせる。

(!)

直感的にQBをキャンセルし、ジャンプ。
QBのタイミングを計ったうえでのレールガン。案外狙いは悪くない。
シュルティは背部のレールガンを撃ち捨てにした。恐らく、速度差を埋めるため。

(前言撤回。面白い)

火力が落ちることも承知だろう。だけど、逃げることを前提ならば必要だ。
あと残るは攪乱を担当する軽量逆関節のネクスト『ハイ・エルボー』を操るリンクス”タイロニア”。
攪乱・援護・本命の射撃戦中心のリンクスチームの中でも重要な役目だ。
しかし、まだ仕掛けてこない。まだこちらを観察しているのか。

(バーラット部隊もいる)

ロケットが着弾する。しかしカンヒサクラはとっくにそれを読んでQBしている。もはや反射の領域。
自分とロケットの間にビルを割り込ませ、爆風から機体を守る。テクノクラートのロケットの威力は脅威だ。
それを余裕で回避しながらも、UnKnownは彼我の戦力比を計算する。
ネクスト1機に対して、相手はネクスト3機とノーマル10機以上。地の利は相手にあると言ってもいい。

(でも……!)

UnKnownはゾクゾクする。
それは興奮。脳内を脳内麻薬が走り抜ける。
そして、本能よりも深く刻み込まれた衝動に任せ、UnKnownは加速した。

887 :弥次郎:2016/10/05(水) 19:22:56
コクピット内にドラムとギター、ピアノの3つがまじりあうスピーディーなフロムズ・ソフトウェアの曲が流れる。
曲名はPanther。ネクストのコンピューターにインストールしておいたそれを流す。
ノリがよくないと、この先生きのこれない。勢いがあれば何とかなる。
テンションが高まる。
楽しい。

(上方に敵機が1発見)

ハイ・エルボーを操るタイロニアは眼下に敵ネクストを捉えていた。
戦闘開始の直後に上空へとジャンプし、そこから付け狙っていたのだ。

『いただきだぜ』

ASミサイル武器腕から大量のASミサイルがばらまかれ、敵ネクストに殺到する。
敵はうまく避けている。だが、それでいい。本命は左背部のグレネードだ。
ミサイルで攪乱して、本命をぶつける。適当にばら撒くだけでも効果が期待できるのがASミサイルの利点だ。

『オラオラどうしたー!』

叫びながらもグレネードを発射。直撃は避けたが、PAが減衰した。
敵は逃げ一択。つまらない相手だ。もっと撃って来いと思う。
そうすれば、隙ができる。そこを味方が攻撃する。促成ではなく、訓練を経てきた連携に彼は自信があった。

『!?』

何かが飛来。独特の光。レーザーブレードか。
UnKnownがライフルから外して投擲したAIKUTIだった。それによってPAが一気に消失していった。
そしてカンヒサクラは逃げていた状態から反転。すさまじい勢いでハイ・エルボーの横を通り抜け、すれ違いざまに足をつきだす。
接近するためにQBを使用していたタイミングで繰り出された足は、的確にバランスを失わせた。空中でつんのめるようにして
ハイ・エルボーは望まない下方向への加速を望まない出力でしてしまう。

『お、わ……!?』

必死に機体を立て直し追いすがろうとした。無理やり整えようとして、何とかうまくいきそうだった。
しかし、そこを狙ったカンヒサクラのライフルから放たれた弾丸が、ハイ・エルボーのメインブースターを的確に打ち抜いた。
あとは、そのまま墜落するだけ。初速が時速500km以上の自由落下で、ハイ・エルボーは地面に落ちていく。

『ああああ!?』

叫び声を上げる。もし彼がもっと訓練を積んだリンクスならば、即座に体勢を立て直せただろう。
だが、彼はいまだに新米。とっさの判断という点においては劣っていた。

『タイロニア!?』

金属音が、そして、それに混ざって僅かな気持ちの悪い音が、PA-N51に響いた。
音の発生源にジョージは急いで接近する。見えた、ハイ・エルボーだ。

『嘘だろ……』

巨大な鉄の塔に、元は電波塔だったのかもしれないが、それにハイ・エルボーが突き刺さっている。
コアの部分がそれによって完全に貫通。そしてハイ・エルボーはピクリとも動かない。完全に力を失っている。
PAが焼失した状態で、QBの初速が加わった自由落下で突きささったのだろう。瞬間最高速度は、考えたくもない。
カンヒサクラは肩部のスモークディスチャージャーを使用し、一気に煙幕を展張。QBで煙の中に紛れ込む。

888 :弥次郎:2016/10/05(水) 19:23:59
『よくも……!よくもおおおおぉぉぉ!』

イップス・ショットはそれを追いかけ、持ち得る火力を浴びせた。
軽量のレーザーキャノン、大型ロケット、そして両手の銃火器。
これまでの臆病ぶりがウソのような全力射撃。
しかし、敵ネクストはそれを容易く回避。スモークの中に紛れるようにして逃げていく。

(絶対逃がさない!)

QBを重ねて、必死に追いすがる。
タイロニアは、ノリが軽くて気に食わなかった。
でも、いつも心底明るくて、楽しげで、羨ましかった。臆病でおどおどする自分とは全然違う。
一緒のチームになれたことはすごい幸運だった。
そんなタイロニアを殺した。許せない。絶対に殺してやる。
殺す。殺す。殺す!

だが、その射撃を邪魔するものが現れた。シュルティだ。

『邪魔するなぁ!』
『馬鹿!味方ごとうつんじゃないわよ!』
『あ……?』

よく見る。
それは、敵ネクストではない。
見覚えのある形のそれは、バーラット部隊のノーマルにそっくりだった。
逆関節のそれはよく見なければ敵ネクストと見分けがつきにくいものだ。。
ノーロックでばら撒いたのが仇となったか。だが、もう遅いのだ。

『う、うそ、うそ……嘘だろおい!』

一転して、ジョージは狼狽えた。
フレンドリーファイアなどというレベルではない。
一方的に彼らを、味方を虐殺してしまった。

『冷静になりなさい!冷静に判断しないと死ぬわよ!』

常に冷静なランシャンだが、やはり動揺していた。
撃墜されるならばともかくあんな死に方をするとは思いもよらない。
エグイ死に方。それが、まさに似合う。だが、戦闘はまだ続いている。止まるわけにはいかない。

『ECMもジャミングも酷い……敵ネクストはどこに?』
『わ、分からない……バーラット部隊との通信もろくにできない』

とりあえずと索敵を厳に行う。
スモークディスチャージャーによる煙幕はいまだに残っている。
QBの音だけが不気味に届く。断続的にばら撒かれているのか、はたまた戦闘領域外から打ち込まれているのか、絶えない。

889 :弥次郎:2016/10/05(水) 19:24:59
その時、ランシャンは何かを捉えた。
そして本能のままに動いた。

『危ない!』
『ランシャン!?』

突き飛ばされたことでイップス・ショットは助かった。
だが、ブレードを繰り出す直前で敵ネクストはターゲットをシュルティに変更し、一瞬の停滞もなく突き出した。
射突型ブレードは、定められたとおりの機能を働かせる。ブレードを射出するための機構が起動、炸薬がさく裂。
強力無比なブレードが迫る。

『っ!?』

シュルティのコアは一気に抉られた。というより、潰れた。
ぐしゃりと、一気に潰れ、脱出の暇もない。
そして、カンヒサクラはそのカメラアイをイップス・ショットへと向けて発光させる。
次はお前だと、宣告している。

『あ……あ……あ……あ……!』

武器を向けるが、引き金が引けない。
イップス・ショット。失敗を恐れてトリガーが引けない心理状態。
それを敵前で、命のやり取りをする場面で起こってしまった。

『やらせるな!』
『撃て!撃て!』
『化け物が!』

それをカバーするべくショットガンとロケットの援護射撃が飛んでくる。
バーラット部隊だ。しかし、敵ネクストはPAでそれらを防ぎ、煩わしげにライフルを発砲する。

『やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』

オープン回線が悲鳴で飽和する。
イップス・ショットを守らんとするバーラット部隊は、カンヒサクラに駆逐されていく。
まるで虫を払いのけるかのように容易く撃墜されていく様は、ジョージの精神には過酷過ぎた。
イップス・ショットは武装を闇雲に連射しながら、飛び出す。もはや、正常とはいえなかった。

『え?』

目の前に、怪物がいた。
ネクストの形をしていた。
そしてそれは、射突型ブレードを構えていた。
それがぶつかればどうなるか。

(死ぬ……!?)

考えたとき、ジョージの精神はついに飽和した。
ブレードがぶつかる前に、イップス・ショットは倒れ伏した。

890 :弥次郎:2016/10/05(水) 19:26:01
『敵ネクストの沈黙を確認。どうします?バーラット部隊は放置で構いませんが』

UnKnownはオペレーターには殲滅することを伝える。
どうせ、今後バーラット部隊が障害となる可能性は高い。ならば、潰せるときに潰すのが一番だ。

『了解しました』

UnKnownの操るカンヒサクラはとっつきをパージ。格納からレーザーブレードを取り出す。
とりあえずと、イップス・ショットを無力化する。こんな奴を殺しても、面白くない。
ライフル1丁とレーザーブレードだけで、如何に短時間で、効率的に、そして美しく倒すか。
既にUnKnownの意識はそこにしか興味がない。仇討ちに燃えるバーラット部隊を前に、UnKnownは新しいおもちゃを
前にした子供のように純真に笑う。ノーマルで格上のネクストに挑む。自分ではシミュレーションでしかできない挑戦だ。
羨ましい。早くにネクストにのるために名乗り出たのに、こういうところで足かせになるとは。残念。

数時間後に急行してきたアルゼブラの増援部隊が目撃したのは、全滅に追い込まれたバーラット部隊の残骸と、
惨殺という言葉さえ通り越したネクストが3機。そして、レーザーブレードで切り取られた鉄骨がまるで十字架か
墓標であるかのように突き立てられていた光景だった。

ネクストに搭乗していたリンクス3名のうち、2名はほぼ即死。
辛うじてイップス・ショットに搭乗していたジョージのみが無事だったが、戦闘に起因すると思われる精神的なショックから
廃人同然にまで追い込まれていた。日常生活さえもおぼつかないレベルでのショックを受けていた。記憶の混濁や精神の錯乱から
ほぼ死亡したも同然の状態に追い込まれた。ただ、彼は死ぬまでうわごとのように一つの言葉を繰り返していた。

「怪物が襲ってくる」

その怪物の正体をアルゼブラが知ることになるのは、第二次リンクス戦争が終盤になるまで待たねばならなかった。

891 :弥次郎:2016/10/05(水) 19:27:19
以上。wiki転載はご自由に。

マニューバキル1 とっつきキル1 発狂死1となりました。


簡単にスケープゴートの説明

ランシャン ACネーム:シュルティ
サラーフにオーメルの皿頭をアセン。ライフルとマシンガン、アクセントに背部レールガン。典型的な中距離型。
ミサイルを搭載することもあったが、今回はインテリオルのレールガンを搭載。
アルゼブラのノーマル部隊からリンクスに転向した女性。冷静な判断力に定評があり、実戦経験も豊富。
しかしUnKnownの前では誤差でしかなかった。とっつきにより死亡。


ジョージ・サマーン ACネーム:イップス・ショット

サラーフベースにマシンガン ハンドロケット エコレーザー 散布ミサイル。どちらかといえば支援よりに立ち回る。
相手の気配や動きを察知して慎重に狙うタイプで、なかなか撃たないことからイップス・ショットとあだ名されていた。
どんな性格や為人かというと感情がよりあらわで優しいRDである。しかし、黒い鳥であるUnKnownの前では(ry
唯一無事だったが廃人同然のために除籍。一生を保護施設で過ごした。



タイロニア ACネーム:ハイ・エルボー

ハイ・エルボーはINJILをベースにASミサ武器腕とアルゼブラグレネード、拡散ロケットとECMメーカーという
完全撃ち下し型ネクスト。攪乱に特化しているために対ネクスト戦では少々火力不足。内装関連は速度に優先して
割り振っているため、重量が軽いことと合わせてすさまじい速度を発揮する。
性格はかなりノリがいい男性で、ロックなどが大好き。
しかし勢いに任せたところが大きく、作中にもあるように速度は出せてもコントロールが上手くなかった。
足を引っかけられ、ネクストごと電波塔に突き刺さって死亡。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2016年10月10日 10:24