93 :弥次郎:2016/10/07(金) 00:20:40
大日本企業連合が史実世界にログインしたようです 「国家改造」3 -カッサンドラかく語りき-


「つまり、可能なのですね?」
「当然」

新能登からアシハラナカツクニを経由して帝都にとんぼ返りした松永安左エ門は代行内閣の前で力強くうなずいた。
代行内閣の閣議は通常非公開なのだが、松永安左エ門 福澤桃介 島秀雄 木川田一隆 池田勇人をはじめ、
松永が関与した電力中央研究所から多くの人間が参加していた。いずれも、この帝国に電力を供給する企業からの参加者だ。

「発電量倍増計画。五か年計画に合わせたこれらの進行は、日企連の支援と教導の元ならば容易く実現できるものだ」

発電量の倍化。いや、単純に2倍というレベルではない。3倍4倍と増やすことができる。
そんな夢物語も、日企連が関わると付ければ途端に現実味を帯びてくるのだから恐ろしい。

「送電のための設備も、むしろ工事によって多くの仕事を生み、需要を生み出す。経済も活性化する。
 アメリカがニューディールでやったことと同じです。我が国にできないはずがない。儂は出来ると、断言する」

松永は言い切る。
その自信があった。何しろ、それだけの証拠を新能登やアシハラナカツクニで得てきたのだから。

「根底には我が国に最も合致すると思われる水素燃料発電と植物培養燃料が一番だろうと推測される。
 なにしろ、水素燃料は、日企連の資料にあった衝号発電(原子力発電)のようなリスクは少ない。
 原油を中東から輸入するにしても、いずれは枯渇する。この列島に資源が少ないことを考えれば、
 首根っこを押さえられる要素は少ない方がよい」

うむうむ、と頷く会議の出席者。
資源豊富な土地を持たない帝国にとっては、とてつもなく重要な問題だ。それこそ死活問題になる。
それだけ国家を支える血液と言える原油などの問題はデリケートで、優先度が高い。

「そういえば例の発電についてはどうなっているのかね?」

そこで立ち上がったのは仁科芳雄。理研の長岡半太郎研究室に属し、史実においても量子論、原子核、X線などの
当時の日本でも最先端の研究を行った人物である。ついでに言えば、終戦の日に原爆についての解説をラジオで行った人物でもある。

「衝号発電についてですが、理研の衝号研究室は遺憾ながらも大々的に行うべきではないと結論いたしました」

衝号発電。それは、この場にいる人間には一種の暗号として使われている。
即ち、核関連技術を用いた原子力発電だ。岡田代行内閣は、その研究を利権に委託。
その扱いについて議論させていた。そして今日の会議は、それを公表する日でもあった。

「資料にある通り、衝号発電は非常に効率よく発電が可能であります。しかし、その為には大掛かりな設備と、
 環境に放出される多量の熱湯、および放射性廃棄物の最終処理という問題が山積しております。
 日企連の技術であれば、恐るべきことに、これを緩和は出来ます。しかしその技術が拡散することは『核の抑止力』の
 タガを外すものであり、現に秘匿すべきかと。然るに、衝号発電の普及は是が非でも避けるべきかと」

94 :弥次郎:2016/10/07(金) 00:21:31
仁科は、若干震える声で言った。
それは下手をすれば自分の研究を停滞させてしまうかもしれない、恐ろしい結論だから。
だがそれでも、彼は大義を優先した。後の時代の結論から判断し、結論を出した。

核の抑止力。
核爆弾の威力と大量にばら撒かれる放射性物質による被害によって担保される、協力だが、同時に極めて恐ろしい抑止力っだ。
もし仮に放射線を簡単に取り除く技術が出来上がってしまったら。その時、核は「威力が強力な爆弾」に変わる。
しかしながら、その核の放射能といった問題が解決されたわけではない。問題なのは、放射線の問題が長期的に無視されてもいいということだ。

「確かに。効率が良いのは評価すべきだが、かと言ってその危険性を無視してはいかんな」
「しかし、研究自体を行うことをやめるのは百害あって一利なしと思われます。
 放射線というのは、使いようによってはレントゲンやX線といったものに応用が利くものでありまして、医術的な発達にも必須と言えます」
「うむむ……」
「『史実』においても宇宙線の研究においては我が国は先進国と渡り合うものとなっていました。
 それに後れを取らぬためには、やはり各所に研究施設が必須となります」
「だが、どこかしらで研究する必要はあるといっても、それを教えられたうえで受け入れてくれとは言えまい」
「うむ……迂闊な場所に設けては災害が起こった際の危険性が高まるな」
「いっそ海上都市でやればよい。隔離することがたやすいならば、それが一番の抑止力となる」
「では仁科博士、その方向で調整を頼む」
「わかりました」

それと、と岡田代行内閣総理大臣は居住まいを正し、鋭い視線を送る。

「K号発電は当然のように厳禁。畏れ多くも、陛下自身が拒否なされた。異存はないか?」
「当然だ」
「うむ……発電量は素晴らしいが、日企連の世界のようになっては元も子もない」
「理研としてもそれは賛成です」

K号発電、言うまでもなくコジマ発電だ。
誰もがその恐ろしさを知らされている。その驚異的な発電量と、致命的な汚染の実態を。

「儂としても、その方法は絶対にならんと思っとる」
「我が国は海洋国家で多雨国家。雨が降れば燃料が得られるのはありがたい。雨が降れば、それだけ燃料が得られるのだからな」
「うむ。海水のとりすぎは良くないが、そこは通常の石油などとの混成でカバーすればよい」
「植物精製燃料もあるのだからな。岸さんがあの資料を持って来た時は驚いたが、本当ならばこの国はもはや無限の燃料を得たと同義だ」
「これで我が国は輸出国になることもできる。ふふふ……自分で言うのもなんだが、恐ろしいな」
「また、これは日企連の新三菱からの提案だが、無線通電技術という電線を介さない送電方法もあるらしい」
「は?」
「……いや、まて、電機は回路が無ければ流れないのではないのか!?」
「落ち着け。彼らの常識を我らの常識で語るな」

岡田代行内閣の閣議はその日も熱い激論を交わした。
しかし、彼らが日企連の常識の外を行く技術に驚きや戸惑うことが多かったのは言うまでもない。
彼らは、カッサンドラの予言と知ってなお、日企連の力を利用する。彼等こそが、この帝国の臣民なのだから。

95 :弥次郎:2016/10/07(金) 00:22:08
以上です、wiki転載はご自由に。

またもやひゅうが氏リスペクトになってしまって心苦しいのですが、それをすれば簡単に書けるというジレンマ。

核は使わないに越したことはありません。
ただ、それが科学発達に重要でもありますので、ちゃんと研究はされる土壌を作らないといけません。
200年も先に出された結論を見れるとか、史実側の研究者にとってはまさに驚きの状況ですな。
一応AC4世界は「史実の延長」という時系列ですので、放射能汚染の除去技術が確立されているという仮定に基づいています。

でもこれ、本文でも述べたように核の抑止力が崩壊するトリガーになりかねませんなぁ……
AFの存在と合わせれば、核戦争の時計の針を進めたと言えるかもしれません。
日企連が介入したことの、いわばツケですな(メガマンX並感

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最終更新:2016年10月10日 10:31