566 :641,642:2015/12/24(木) 22:50:29

日米蜜月(ユーラシア共産化)ルート考察擬き

大戦に置ける主要会戦記録 『第二次世界大戦~枢軸軍の大反攻~(アメリカ軍編その3)』


『ブリテン島攻略作戦 ~Operation Enduring Freedom~』


旧式戦艦8隻、旧式正規空母5隻、艦隊型軽空母10隻を主力とする海上戦力が護衛、援護に就く大規模輸送船団がアイルランドの『ゴールウェー』とブリテン島西部の『ソルトコーツ』に同時強襲上陸を敢行。機械化に優れたアメリカ軍らしくハイレベルに纏まった高速機動戦力と海上からの濃密な援護によってタイムスケジュール的には宣言通りの一月でブリテン島を陥落させるも、地の利を持つ連合陸軍による徹底的な防衛戦に加え、現地の一部イギリス人による苛烈な抵抗運動の為に想定を遥かに超える損害が発生していた。特にAGF(Army Ground Force/陸軍地上軍管理本部)から『過剰能力』と断罪されていた『M4 シャーマン』の損害も無視出来る様な物でも無かった為、同じく『スエズ運河打通作戦』を展開中にインドや中東で『97式中戦車 チハ』を伏兵による肉弾攻撃等で多数喪失した日本と共に開発中だった新型戦車の開発や製造が前倒しされる事にもなった。


『Operation Enduring Freedom』の作戦スケジュールは大よそ三段階に分かれていた。先ずは先陣にアメリカの誇る最新鋭艦隊による陽動攻撃と諜報戦略で敵航空戦力を削ったうえで連合国の眉目を地中海側に誘導し、第二段階にて主にアイルランド人による編成のレンジスタンス部隊の誘導の元陸上部隊が強襲上陸を敢行しブリテン島を一気呵成に奪取。第三段階にて、ブリテン島を奪われて海に叩き出されるであろう連合軍残存部隊を再補給の完了したアイオワ級やリプライザル級と共に力押しで叩き潰す。全般的にやや楽観的に作戦案が考えられている部分が無い訳では無いが、現地IRAのようなレジスタンス部隊とは既に枢軸側諜報員と接触して軍事、政治的重要拠点はほぼ把握出来ていた。『陸上部隊の障害は艦砲射撃と航空攻撃で』と言う些か乱雑な思考が有った部分は否めなかったようだ。

戦闘開始当日、アイルランド攻略部隊はIRAを筆頭としたレジスタンスの援護の元『ゴールウェー』に強襲上陸を敢行するも、連合軍からの抵抗は微弱であった。元々ブリテン島の防衛網建築が優先されていて、アイルランドには余り大した戦力も置いていなかったうえに、アイルランド人レジスタンス活動によって連合軍部隊は様々な形でかなりの損耗を強いられており、一部地域では枢軸軍の上陸に併せた一斉蜂起にてアイルランドに駐留していた連合軍部隊を余す事無く殲滅していたりもしていた。駐屯している敵兵力は少なく、現地住民の総意は『自国からの連合軍完全排除』で完全一致し、尚且つ輸送潜水艦で密かに続けていたレジスタンス組織への武器弾薬、医薬品供給に戦闘教官等の援助によって、その士気の高さとの相乗効果にてレジスタンス部隊の戦闘力は治安維持用の軽歩兵師団程度なら圧倒的優位に戦えるほどだった。その為にアイルランド攻略部隊を掩護する艦艇は主にコロラド級戦艦『メリーランド』『ウェストバージニア』を除けば巡洋艦やインディペンデンス級空母が主体の所謂軽量級艦隊編成であり、それでもアイルランド駐屯連合軍の虎の子の戦車や重砲部隊を潰すにはコレでも過剰戦力であった。『牛刀を持って鶏を割く戦いなり』とは、アイルランド攻略戦に参加したニホン大好きなとある白人兵士の感想であったと言われている。

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一方ブリテン島攻略部隊は極めて気合の入った編成になっていた。空母や戦艦と言った大型艦艇はコロラド型二隻を除き全て此方の援護に回っている上に、強襲上陸部隊も海兵隊やアメリカ陸軍の中でも指折りの精兵で揃えられていた。兵装に関しても、小銃はアメリカ史上初の軍用制式アサルトライフルである『M3 オオサカ&スプリングフィールド・アサルトライフル』で統一され、バズーカ砲やショットガン等の歩兵用重装備も完備。戦車師団も『M4 シャーマン』で編成され、サポート役の最新鋭自走砲『M48 ジャンクソン』も定数配備済み。その他装甲兵員輸送車や輸送用トラックに各種物資も山の様に輸送船に搭載して来た。その為に『圧政からの解放者』として『イギリス人に感謝される英雄』となれる事を思い描いて、今戦闘が初実戦となる新兵たちは奮い立っていた。ただ、現実はそう甘い物では無かったのだが。


クライド湾に侵入した『ソルトコーツ』上陸部隊は、先ずは陸兵を上陸させる前に沿岸砲台との交戦を開始するも、大して時間を掛ける事も無く目に付く脅威を排除する事に成功する。時間や資源、労働力不足で未完成だったり隠蔽が疎かになっていた砲台が多かった為に、空母艦載機部隊の『スカイレイダー』の精密爆撃や『サウスダコタ級』の砲撃によって大半の砲台は一掃され、海兵隊や陸軍が上陸艇や強襲揚陸艦で沿岸部に乗り込む時に何とか航空爆撃や砲撃の被害を受けなかった砲台が枢軸軍に向けて砲撃を行うも、必然的に発砲した瞬間に隠蔽していた自らの存在を暴露する事になり、爆装で上空哨戒をしていた『スカイレイダー』によって即座に発見され、精密急降下爆撃と弾着観測付の戦艦からの砲撃で連合軍の沿岸砲台は大した損害を与える事無く壊滅状態に追いやられてしまう。

また配備されていた陸上兵力に関してもだが、元々ブリテン島に配備されていた多くの部隊が地中海方面に配置換えとなっていて、枢軸軍の攻勢が早過ぎて予備として残されていた機甲部隊等の機動兵力の再配置が遅れた事も有るが、やはりコレだけの大部隊を水際防御だけで撃退するのには沿岸部に配備された連合軍戦力では余りにも足りなかった。

微弱な損害で上陸し、橋頭堡を確保する事に成功した枢軸軍は、物資揚陸もそこそこに戦車部隊や機械化歩兵師団を先頭にして進撃を開始する。連合軍が配備していた沿岸防衛部隊の数が想定より少なかった為に思ったより敵部隊を艦砲射撃で削る事が出来ず、代わりにブリテン島内陸部にそれなりの部隊の存在が航空偵察によって確認されていた為、連合軍側に対して奇襲効果が続いている内に可能な限り進撃するべきであると上陸部隊指揮官の『ジョージ・パットン』将軍に断じられた為であった。そして後世からの視点や『たられば』論で見れば、この判断はある意味英断であり、ある意味誤断であった。前者の意味合いは、連合軍は『Raging Bull Charge』と喧伝されたパットン将軍の速攻によって不十分な陣地や防御態勢、さらには友軍との合流や連絡が絶たれた状態での不利な戦闘を余儀無くされた為に各個撃破に成功した事であり、後者は、枢軸軍の韋駄天攻勢によって追い詰められていった連合軍の内イギリス、ソ連軍を中心とした部隊が、ある部隊は政治士官や督戦隊に銃口を向けられた為に、ある部隊は『ヤンキー共にこの国を渡す訳にはいかない』と死兵化して徹底抗戦を展開した上、一部地域ではブリテン島内の民間人の多くが民兵、義勇兵として動員または強制的志願にて戦場に放り込まれ、又洗脳的共産主義教育を受けた少年兵が暴走した政治士官の指示によって各村落や民間都市で、一般市民を強制的に巻き込んでの凄惨な市街戦が発生してしまった事だった。

569 :641,642:2015/12/24(木) 22:55:48

強襲上陸の第一波にて大した損害も無く『ソルトコーツ』の港湾施設や市街地を完全制圧する事に成功した後、続々と上陸した後続部隊が周辺地域を占領して回る中、『M4 シャーマン』や『M7装甲兵員輸送車 Hunting dog』に搭乗した歩兵部隊が一先ずスコットランドの最大規模を誇る都市である『グラスゴー』へと進撃を開始する。
『グラスゴー』はイギリスでも有数の大都市で有る為に整備された空港が存在し、また歴史的に造船業や経済でブリテン島内でも有数の力を持ち、地理的にもブリテン島の丁度中央部に存在すると言う、枢軸軍によって仮にこの都市を拠点化できれば、ブリテン島攻略に対して大きな弾みを付ける事が可能になる戦略的重要拠点であった。
これまでに枢軸軍航空部隊が積み重ねた戦歴が、ブリテン島中央部に位置するグラスゴー空港を奪取できればブリテン島全域の制空権奪取はとても容易な物と断言させられるだけの説得力を生み出していた。だからこそ、少しばかり性急とも言える進撃をする事になったのだが。

『グラスゴー』近在の町である『ペイズリー』制圧の為に市街地内部に突入するまでの戦闘経過は、正直に言って気持ち悪くなる位極めて順調であった。枢軸軍の電撃戦に浮足立ち、司令部から指示を受け取る間も無く混乱した状態で右往左往する連合軍の小規模部隊を蹴散らしつつ、A737道路沿いに進んでいたアメリカ軍は、航空偵察により『ペイズリー』に立て籠る連合軍の部隊を発見。事前に準備していた民間人退避勧告ビラを艦載機部隊が『ペイズリー』だけで無くブリテン島全土にもばら撒く中、アメリカ陸軍は既に制圧していた住宅地の『リンウッド』に居を構え、後続の補給、増援部隊の到着を待っていた。燃料や弾薬、兵員士気等には特に戦闘継続に支障は無かったのだが、流石に民間人が多数市街地に取り残されている中で戦闘する気にはなれなかったのだ。敵兵士だけなら兎も角、非戦闘員を無差別に巻き込む市街戦は必然的に民間人への誤射が発生するのは幾らなんでも避けようが無く、味方部隊に対して心身共に膨大な負担を強いるのは『先の戦争』を戦い抜く上でも『可能な限り』避けたかった。

しかし、最終的に軍使すら派遣したアメリカ側の『配慮』は、ロンドンに存在した連合国イギリス軍司令部による『徹底抗戦命令』によって無に帰し、混乱の中脱出に成功した一部市民を除く多くの民間人が都市内に取り残された上に、『志願兵』や『義勇兵』と言う形でマトモな訓練も無しに動員された多数の民兵の存在が、この古くから修道院や教会が複数存在する、日本で言えば奈良の様な町である『ペイズリー』に決して消える事の無い悲劇の歴史を刻みこむ事になる。

570 :641,642:2015/12/24(木) 22:58:24

民間人を退去させる為に行ったビラまきによる警告も軍使による勧告も聞き入られなかった為に、アメリカ軍は『M4 シャーマン』と共に『ペイズリー』への攻略を内心嫌々ながらも開始する。とは言え、この時点ではアメリカ軍も一般市民を戦闘員として動員している可能性には殆ど辿り着いておらず、精々が『陣地建築に動員された程度だろう』と楽観的に考えていた。常識的に考えれば訓練を受けた事の無い一般市民を動員した所で何の役にも立たないどころか戦闘の邪魔にしかならない可能性の方が高い為、戦闘時は屋内か地下等の非戦闘区域に押し込めているとアメリカ兵は思っていた。『幾らなんでも自陣営の民間人位はちゃんと保護しているだろう』と言う共産主義者への余りにも甘すぎる偏見若しくは幻想は、『ペイズリー』に侵入して初めに接敵した敵兵の姿にて瞬時に崩壊した。見るからに粗製銃や手製の武具と思わしき物体を抱えて、後方の味方部隊に銃口を向けられながら自軍の真正面から突撃して来た『敵兵』は、軍服も着用せず、様々な叫び声を挙げる少年や子供、老人に女性と言った『保護されるべき民間人』だった。


大多数の初陣が今戦闘であるアメリカ兵が受けた精神的衝撃は兎も角として、連合軍が真面に訓練を行ってすらいない民間人に適当な武器を持たせて死地に追い遣り、『口減らし兼敵兵の弾薬消耗』と『戦死者を英雄として祭り上げての士気高揚』と言う都合の良い一挙両得を狙った目論みは早々に破綻した。ひねりも何もなく通称『OSアサルト』と呼ばれた『M3 アサルトライフル』が十全に訓練された歩兵全員に配備され、装甲車や戦車による切れ目の無い援護、そして消耗した物資や兵員は大量に配備された補給用トラックが橋頭堡から途切れる事無く前線に補充し続けていた。それに対する連合軍がアメリカ軍に対して勝っていた事と言えば、それこそ故国防衛と言う事で一部部隊の士気が高かったことを除けば民兵で水増しして出来た兵員の数位なもので、肝心の歩兵火力や戦車は圧倒的に劣勢だった。イギリス陸軍の正規兵
ですら未だにボルトアクション式ライフルが主流である中、『ペイズリー』に掻き集め、戦場に送り込まれた民兵に与えられたのは倉庫で埃を大量に被っていた旧式銃と一部ステンガンや手製爆弾程度な物であった。中には銃器を与えられなかった為に自宅や博物館等で保管していた刀剣類や鎧を装備して戦場に飛び込んだ民兵すらいた。

その様な悲惨な状況で、しかも後方から酷薄な笑みを浮かべる政治士官率いる督戦隊に銃を突きつけられていると有っては、幾ら『故国防衛』と言う本来ならば自らを奮い立たせる格好の大義名分が有ったとしても士気が高揚する訳も無く、アメリカ兵から大量に叩き込まれる『シャーマン』からの榴弾や『OSライフル』の小銃弾によって民兵部隊がパニックを起こし悲惨な状態へと変貌する中、とあるヒスパニック系アメリカ兵からの咄嗟の閃きによる具申によって、部隊に配備されていた迫撃砲や特注の狙撃銃が民兵部隊を飛び越えて督戦隊に降り注ぎ、又上空から『スカイレイダー』による精密急降下爆撃によって督戦隊が壊滅すると、前後から攻撃を受けて全滅判定を受ける程の損害を受けつつも何とか生存していた少数の民兵は、アメリカ軍からの降伏勧告に抵抗する事無く次々と武器を投げ捨てて投降した。

571 :641,642:2015/12/24(木) 23:01:14
『ペイズリー』に侵攻した直後に『敵国軍が守るべき自国民に貧相な装備を持たせて督戦隊付きで突撃させた』と言う小説やコミックに出て来る『悪の帝国』そのままの行為を受けるアクシデントこそ有った物の、序盤に発生したそれ以外は比較的通常通りの都市攻略戦であった。『ウッドサイド墓地』で英国軍と銃撃戦が起こったり、降伏勧告に応じずに修道院に強硬に敵部隊が立てこもった為に止む無く修道院ごと敵部隊を爆砕する等と言った『後世の人間に色々言われそうだな』ととある兵士が溢した様な事態も発生していたが、コレばかりは戦争である以上仕方が無く、終戦後にはアメリカから資金を拠出しての修繕活動も行われた為に現地イギリス人も特に何かを言いだす事は無かった。そして通常の戦闘ともなれば、圧倒的火力と物量に潤沢な物資補給を受けるアメリカ軍に対して、日本軍との戦闘でインドとの航路が遮断されて兵力や物資補充が思うように行かず、なけなしの同盟国や自国兵力も幾らかが地中海側に移動しているイギリス軍ではまともな戦いになる事は少なかった。

火力、兵力、そして機動力に劣る共産イギリス軍に残されていたのは自国領内と言う地の利程度の有利しか無く、再起を期しての後退戦術を取ろうとしても大量にトラックやジープ、装甲車が配備されて完全機械化が成し遂げられているアメリカ軍の機動力の方が圧倒的に優れており、先進国としてブリテン島に一定度整備されていた道路を活用した包囲戦によって大半のイギリス軍は脱出する事も叶わずに降伏か玉砕がの選択肢を強要され、その包囲下に置かれたうちの一割程の部隊が『ペイズリー』の様に民兵を動員しての徹底抗戦後の玉砕か、惨敗続きで狂気に陥り守るべき自国民を虐殺し始める等の暴走が行われるも、殆どの部隊は自国民や兵士をこれ以上死なせない為に降伏を選択した。そしてここでも『両手両足を縛られた状態で拳銃自殺』『流し台に顔を突っ込んでの入水自殺』『踏み台が無い状態でかつ吉川線や二重の索状痕が残った首つり自殺』等と言った政治士官の自殺が多数報告されている。

イギリス軍のなりふり構わない戦闘とアメリカ軍の持ち込んだ戦車や装甲車による機動戦や艦載機による爆撃、更には戦闘による混乱により既に長引く戦争で飢餓や困窮で限界一杯だった市民が暴徒化した為に発生した各所での略奪等によってブリテン島の建造物や遺産、そして大地や相互信頼までもが否応無しに荒廃し、崩壊して行く中、海では教官から輸送機操縦士、さらには退役者や民間機しか飛ばした経験が無い人間すらも掻き集めて有り合わせの機体と装備でアメリカ機動艦隊に夜間強襲を決行した、RAFと海軍航空隊最後の航空攻撃も発生していた。特にそこまで大きな意味が有った訳では無い。戦術的に言えば対地支援にでも回した方がよほど効果的だったかもしれない。この命令を下したロンドンの共産党政権の考えとしては、単純に『意地』と『プライド』が原因であったと言われている。ブリテン島から逃走した後、欧州本土での陸戦に巻き込まれてイギリス共産党幹部は書記長を含めてその殆どが戦死か行方不明となった為に現在となっては推測でしかないが『我が国の海を踏み荒らすヤンキー共の存在に耐え切れなくなった』等の感情がこの行動を起こさせたのだろうと言う事であった。ただこの説は余りにも共産党員を『ただの感情論で動く狂人としてしか見ていない』と考える人間もそれなりに居り、『アメリカ艦隊に打撃を与えて本国へ帰還させる為の軍事行動』と考える一部学者も居たが、イギリス国民を含めた世界の殆どがその説を支持する事は無かった。実際の所、本当の『真実』は未だに闇の中である。

572 :641,642:2015/12/24(木) 23:04:03

臨時編成かつあらゆる機体を掻き集めたアメリカ機動艦隊への攻撃隊の陣容はある種の威容を誇っていたが、イギリス軍の絶望的内実を如実に表していた。毎度お馴染みの『スピットファイア』シリーズや少数ながら残存していた『ランカスター』等の主力機は当然の事、近日漸く量産が始まった『タイフーン』の改良型である『ホーカー テンペスト』やまだ開発中だった物を無理矢理実戦投入させた『ファイヤフライ』『スピアフィッシュ』、世界最強の木製機と自他共に認める『デ・ハビランド モスキート』と言った一線級相当機だけで無く、既に旧式化、陳腐化した為に格納庫や滑走路の隅等に置かれていた『ソードフィッシュ』や『アルバコア』『ハリケーン』も使用されていた。こうでもしなければ、性能差以前に根本的な『数』すら揃えられなかったのだ。頼りになる筈の欧州本土方面軍からの援軍は先のアメリカ海軍の装甲空母部隊によって受けた重すぎる打撃から未だに回復しきれておらず、戦力的に如何しようも無かったとはいえ、形式上イギリスは見捨てられていた。

ロンドンからの命令でアメリカ機動艦隊に対して攻撃する事になった物の、質も数も完全に劣勢である中何とか少しでも打撃を与える為に『夜間攻撃』と言う奇手を選んだイギリス空軍と海軍航空隊の合同攻撃隊だったが、事は危急を要する為に掻き集めた教官級から素人クラスに至るまでの技量が見事なまでに懸け離れた人員だらけのパイロットに訓練を施す暇など有る訳も無く、出撃前に短時間ブリーフィングを行っただけでのぶっつけ本番での出撃を余儀なくされた。『こんな連度と無茶苦茶な機体編成で戦果なんて挙げられる訳が無い』と出撃の中止か、せめて数日だけでもと訓練期間を求めた将官も数名程度とは言え居はしたのだが、帰ってきたのは基地にへばり付いていた政治士官からの拳銃弾とイギリス共産党からの重ねての出撃強要命令であった。

結局攻撃命令が覆る事も無くイギリス軍臨時攻撃隊は辺りが暗闇に包まれる中出撃を開始するが、先行して出撃した教官クラスのパイロットは兎も角として、それ以外の『飛行機を操縦した事はあるが軍用機に触るのはこれが初めて』と言う素人パイロットには、夜間離陸等と言う難易度の高い操縦経験が有る筈も無く、松明等で照らされた滑走路上で離陸に失敗して大破、炎上する面々が続出するも、大量に掻き集めた事も有って割合的には兎も角数だけで言えばそこそこの機数が離陸に成功していた。とは言え、それでも友軍機に加えて機位や高度を見失ってアメリカ艦隊を視界に収める事も出来ずに行方不明や不時着水、墜落した素人パイロットが再度続出した為、本当に敵艦隊を補足して攻撃出来た訓練未経験な素人パイロットは全体の15パーセントに届くかどうかと言った所であり、戦後の集計や調査によって判明した事実からすると、極めて不謹慎な表現になってしまうが、彼らの死は、完全なる『無駄死に』であった。

573 :641,642:2015/12/24(木) 23:06:48

一方イギリス攻撃隊の内実を知る由も無く襲撃を受けたアメリカ機動艦隊だが、アメリカにとっては幸運な事に、イギリスにとっては極めて不運な事に、ごちゃ混ぜ編成のイギリス軍攻撃隊が捕捉したのは『トーマス・キンケイド』が指揮する空母『レキシントン』を旗艦とした正規空母5隻、ノースカロライナ級戦艦2隻で編成された機動艦隊だった。尚この時は、残りのインディペンデンス級空母やサウスダコタ級戦艦はブリテン島中北部への支援に回っていた。防御力が比較的弱いインディペンデンス級空母なら兎も角、『正規空母』相手では上手く直撃させなければ先ず撃沈どころか戦闘力を喪失させる事すら難しい為に、マトモな兵士が少なく数の水増しに素人が一定数混ざっているこの攻撃隊では、戦果を挙げられそうにない事位は教官勢には直ぐに分かったが、督戦を受けている以上、攻撃しないと言う選択肢は存在しなかった。そしてイギリス空軍の教官たちが予想した通りに素人たちはアメリカ軍が展開する『鋼鉄の暴風雨』の前に例外無く次々と被弾撃墜してゆき、熟練の教官たちも『近接信管』の猛威の前に抗い切れずに同じく素人パイロットたちと一緒に多数が打ち落とされていった。

但し、全くの損害皆無でアメリカ軍が切り抜けられたかと言うと、そうでは無かった。夜間迎撃ではいくら世界的に見ても高精度な電子の目が有ったとしても昼間迎撃と比べればどうしても索敵漏れが出てしまうのは避けようが無く、また出撃させたレーダー装備の夜間戦闘機型『F6F ヘルキャット』も数的には20機にも満たない程度の為にそれなり以上の戦果は期待するのは流石に酷であり、いくら『近接信管』付きの対空砲火を無数に敵編隊に叩き込めたとしても、夜間戦闘で必然的に発生する混乱により生まれる『穴』を突破して来るベテランは必ず存在した。皮肉にも、マトモに訓練を受けていない素人パイロットの大目立ちしながら行う無茶苦茶な攻撃が図らずしも対空砲火群の注意を引き付けた為に、意外と敵空母に攻撃出来た機体は多かった。無論『出来ただけ』であり、戦果が挙げられるのかどうかは別問題であったが。


夜間強襲航空攻撃から夜が明け、黎明に基地に帰投した機体は、出撃前から分かりきっていたとは言え極めて少なかった。敵アメリカ艦隊の懐に突入した教官たちはその多くが本国近海の海で散り、生還した教官も被弾の為に基地まで辿り着けずに墜落したり、機上負傷した為に着陸後に死亡すると言った事例が多発し、元々帰還する可能性が極めて低いと確定していた臨時徴兵パイロットたちが生きて基地に戻れた人数は、もっとも生還率の高かった基地でも十指で数え足りる程度の惨状だった。
そして生還者からの報告では戦果は夜間の為に要領を得ない不正確な物のみだったが、イギリス共産党はラジオ放送で大々的に『大戦果』を報道。現在ブリテン島北部を制圧し、アイルランドから転進した部隊と共にブリテン島中部の都市である『マンチェスター』や『リーズ』と言った諸都市を攻略中のアメリカ軍に対して士気を少しでも挫く為の情報戦に打って出るも、その足掻きは『プリマス軍港』への航空攻撃で即時破砕されると言う惨事へと発展する結果に終わった。

574 :641,642:2015/12/24(木) 23:09:47
大西洋艦隊所属第21任務部隊指揮官『トーマス・キンケイド』中将が指揮する『レキシントン』を旗艦とした機動艦隊はイギリス空軍による夜間航空攻撃を受けるも、損害としては任務部隊の旗艦である空母『レキシントン』に被雷二本と自爆機一機、『エンタープライズ』に至近弾による極僅かな浸水、フレッチャー級駆逐艦1隻に撃墜機が直撃して中破判定を受けた程度であり、被弾した艦艇全てが戦闘続行に支障は無かった。一応参謀から被弾した『レキシントン』を本国に帰還させるよう具申されたが、司令官の『トーマス・キンケイド』は『麗しき復讐姫たち(リプライザル級装甲空母の事)がこのブリテン島に戻ってくるまで祖国に帰る心算は毛頭無い』と宣言し、ブリテン島全土にラジオ放送で『アメリカ艦隊の大惨敗』が報道される中、挨拶代わりにプリマス軍港への航空攻撃を行ったのだった。なお余談となる話だが、
ブリテン島制圧後に欧州本土へ宣伝工作を行う為にラジオの電波に力技で割り込む電子制圧艦が配備されたのだが『もっと早く配備されていれば、あの放送に割りこめたのに…』と第21任務部隊の誰かが言っていたらしい。


さて海でそんな血生臭い茶番劇が行われている中、『リーズ』や『マンチェスター』を制圧した後、ブリテン島でも第二位の人口と有力な工業力を誇る都市である『バーミンガム』郊外にてこのブリテン島で最初で最後である大規模戦車戦が発生した。不期遭遇戦による戦車戦は之までにも発生していたが、指揮系統が確立した状態での組織だった戦車戦はこの戦闘が初めてであった。イギリス軍からはソ連から供与された『T-34/76』を主軸に自国産戦車の防御力に関しては一級品である『New Era 歩兵戦車』、補助戦力として機動力に優れた『巡航戦車 Mk.VIII Red spear』、アメリカ軍からは後に『T-34』とのパクリ論争が発生する『M4 シャーマン』と支援砲撃を行う『M48 ジャンクソン』と言うラインナップだった。

初期の戦闘展開は、制空権を完全に握ったアメリカ軍がじわじわと攻め寄せるのを、自国領内を隅から隅まで把握しているイギリス本国軍による巧みな防衛戦術の前に一進一退となる。『シャーマン』は確かに攻走守全てに優れた性能を誇っていたし、実際戦車戦に置いては『Red spear』相手には殆どの場合圧勝し、『T-34/76』や『New Era 歩兵戦車』相手でも正面切っての戦車戦では比較的優位に戦えていた。だが、イギリス軍全てが馬鹿正直に真正面からの戦闘を
仕掛けて来る筈も無く、歩兵を蛸壺に伏せてからの奇襲攻撃やダックイン戦法と言った通常の戦術だけで無く、ビルや民間施設を自ら爆破や倒壊させてアメリカ軍への攻撃や進路妨害を試みる等と言った末期戦を感じさせる戦闘も行われていた。

とは言え、制空権を完全に奪われている以上空から襲い掛かる『A-1 スカイレイダー』やロケット弾等で爆装した『F6F ヘルキャット』を数少ない対空砲火のみで全て撃退するのは到底不可能であり、また『M48 ジャンクソン』は狙撃兵や戦車等が籠る建造物や大地を昼夜問わずに耕し続け、止めにイギリス軍からは無尽蔵としか感じられない程の戦車、歩兵部隊関係無しに襲い掛かる無数の銃砲火と大量の増援部隊の前に、イギリス陸軍の勇戦敢闘も空しく、戦車戦が開始した日時より丁度3日にて、アメリカ軍は物量攻勢による力技で『バーミンガム』に敷かれた防衛ラインを強引に突き破った。そしてこの時のイギリス共産党は『バーミンガム』を首都『ロンドン』の『盾』とするべく優良な部隊を多数『バーミンガム』に配備させていた事も有って、『バーミンガム』以南に配備された戦力は『民兵を戦力として加味した状態ですら』一個師団以下の戦力しかいないと言う配備状況であった。しかも、艦載機部隊からの偵察によって『バーミンガム』から『ロンドン』に至るまでに配備された敵部隊は、隠蔽がお粗末だった為に早期に発見され、爆撃によって追い散らされていった。つまり、後は散発的に出現して無謀な突撃を繰り返す共産主義狂信者を轢殺しつつ敵国首都『ロンドン』まで突っ走るだけだった。

575 :641,642:2015/12/24(木) 23:12:48

そしてアメリカ軍の猛攻で半ばパニックに陥りつつあるイギリス共産党であったが、そんな中アメリカ本土より再度補給や人員入れ替え等を済ませて、漸く出撃可能な戦力を揃えられた戦艦『ウォースパイト』を旗艦とした自由イギリス軍と、同じく戦艦『ロレーヌ』を旗艦とする自由フランス軍、そして先日共産軍の横っ面を張り倒したリプライザル級装甲空母8隻とアイオワ級戦艦6隻、加えて単発機の発着艦も一応可能である航空母艦型の『エセックス型』強襲揚陸艦も戦列に加わった大艦隊が白昼堂々とコーンウォール半島の先端部に存在する『ペンザンス』へと上陸を開始する。先んじて『トーマス・キンケイド』率いる第21任務部隊がプリマス軍港へ航空攻撃をかけている最中に戦艦『ノースカロライナ』『ワシントン』による艦砲射撃によってコーンウォール半島に存在した沿岸砲台等の目立つ軍事施設を事前に破壊していた為に、初陣で自由英仏軍が少々もたつく程度の支障のみで上陸と制圧に成功する。その後は先陣部隊の奮戦によって作られたブリテン島南部の戦力空白地帯をガソリンが有る限り『ロンドン』にまで全力で走り抜けるだけと言う状況が積み上げられていた。そしてこの状況に、イギリス共産党は耐えられなかった。


自由イギリス軍を先頭に首都『ロンドン』へと入城した時、既にイギリス共産党首脳部はブリテン島より脱出し、欧州本土のソ連軍に保護されていた。彼らは『正統イギリス政府』の樹立を宣言し、ブリテン島に対して『侵略者』に対する徹底抗戦をラジオ等で呼びかけ続けるも、当のブリテン島住民は自分たちにマトモな武器も訓練期間も与えずに安全地帯から銃を突き付けて戦場に追い立てたイギリス共産党政権よりも、今までの物資不足を一息に解消させた、アメリカから来た自由イギリス政権の方を支持した。とは言え、元々逆恨み的な反アメリカ感情が根本に有ってこの第二次世界戦争が始まった経緯の為に、口にこそ出さなかったが心の奥底で『偉大なる我がイギリス帝国の誇りを溝に捨ててアメリカに媚を売っていた連中』に反感を持つ人間はそれなりに居た。無論の事、そう言った事を考えずに只々戦争が終わったと思って喜び、アメリカから大量に持ち込まれた食料や燃料に無心にがっつくイギリス人の方が多数派だったが。


『イギリス共産党首脳部』と言う大魚を逃してしまったとは言え、最終的にブリテン島全土を完全平定する事が出来た事は戦略的にも大勝利以外の何物でも無く、アメリカ本土や同盟国の日本帝国では号外の新聞やラジオ放送が乱れ飛び、アメリカ国民からの軍や政府への支持や戦時国債購入が激増する等の御祭り騒ぎとなるも、現場の軍人たちはそう騒げる心境では無かった。AGF曰く『過剰能力』だったハズの『M4 シャーマン』はブリテン島制圧戦の中で戦車戦や歩兵による伏撃によって多数の戦車を喪失、または損傷した。アメリカの国力からすれば問題無く直ぐに補充出来る程度の損害では有ったのだが、それでも制空権を確保して戦況的にかなり優位だったハズの戦闘で無視できない数の戦車を撃破され、傷付けられた事実には変わりなかった。それに、この『Operation Enduring Freedom』の作戦指揮に当っていた『ジョージ・パットン』将軍は『猛将』では有ったが、『最終的に戦果が出たのなら『大きい犠牲が出たとしても』別に構わない』として対策を講じない様な『猪武者』や『無責任将軍』では無かった。それに元々『オペレーション・リサーチ』はアメリカ軍にとって最大級の得意分野である。

576 :641,642:2015/12/24(木) 23:14:17

『Operation Enduring Freedom』の総決算としては、アメリカ軍に『機甲戦力と連度を主軸とした全般的戦力の更なる強化』と言う他国人から見れば『そんな事出来れば苦労しない』と言いたくなるような課題を残しつつも、総合的には概ね満足いく結果に終わった。確かに『イギリス共産党首脳部』と言う大魚を逃したのは惜しくは有ったが、『イギリス共産党政権』その物が実質的に崩壊している以上、今更手持ちの兵力が小隊程度でイギリス本国人の支持を失ったスーツ姿のイギリス人共産主義者がどう足掻こうが大した事は出来ないと断定されていた。そしてそんな奴らの事よりも優先的に処理しなければならない任務は幾つもあった。代表的な物が『ブリテン島の民間人への避難勧告と誘導、保護』『イギリス人、アイルランド人を飢えさせ、凍えさせない為の各種物資の大量運搬』『アメリカ本土~ブリテン島間までの通商路の安全確保の為の対潜掃討』『欧州本土から来襲すると予測された航空戦力に対抗する為、そして欧州大陸に上陸する為の戦力移動』『新型戦車や新型戦術爆撃機の開発促進』の5つであった。


…そして、ブリテン島と言う最大の策源地を確保した枢軸軍と、未だ欧州本土で大きな力を持つ共産連合軍との間で『バトル・オブ・ユーロ』と呼ばれる戦史に永久に残るであろう大規模航空戦が、枢軸軍がブリテン島を制圧した後のおおよそ一か月の時間をインターバルを開けて、盛大に開幕する事となる…。





577 :641,642:2015/12/24(木) 23:18:07
ハイ、これにて終了となりまする―。クリスマスやと言うのに何ぞ
血なまぐさい事書いたなーと思います。まあ今回ので今年の書き込みは
終わる事になりますかね。書き貯めしないと。

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最終更新:2016年10月13日 15:39