386 :ぽち:2011/11/21(月) 17:01:20
「くっ」
彼は・・・・・・ハミルカル・バルカスは眼前のモニターに怒りを叩きつける事を辛うじて自制した。
簡単な作戦のはずだった。
世界各地の、特に軍事の要所要所に調整した獣化兵を送り込み、合図とともに覚醒させる、ただそれだけのはずだった。
ただそれだけで全世界は自分達「クロノス」の手に落ち全てをあの方に献上出来るはずだった。
ただ、『奴ら』の関わる所には万が一を恐れ、手を出さなかったのだが・・・・・・

殆どの獣化兵は何故か覚醒せず、辛うじて目覚めた何体かも即座に異常な戦闘力を持つ人間共(一部人間と呼ぶのが憚られるようなのもいるが)に倒されている。
要注意と判断した”クリプトンから来た異星人”を自称する男も既に自分のテレパシーで洗脳しておいたはずなのに・・・・・・

「焦っているようですな、Dr.バルカス」
「!」
その声に振り向くと、見知らぬ男達が居た。
いや、顔は知っている。そして何者なのかも。
何故ここに、など一瞬思ったが、そんなことはどうでもいい。
むしろこの男達がここに姿を現さなかったとしたら、そのほうが大いなる失望を感じただろう。
「やはりお主らかの、嶋田、辻」
そう、警戒厳重な『クロノス』本部のメインルームに現れたのは彼が恐れた者達、『夢幻会』のトップ2と
その護衛を気取っているのだろうか、かの無法大陸北アメリカにおいて数少ない秩序を保つ町ゴッサムの守護者を自称する男だった。

「どうやって獣化兵を抑えたのか、聞かせてくれるかの」
「なに、セレブロという『ミュータントのみを発見するコンピュータ』を知人が所有してるのでね
 事情を話してコピーさせてもらい、獣化兵のみを探知できるように改造した」
「あやつか」車椅子に座す一人の男を思い浮かべる。
「あやつとその一味を手下にしておったのか」
「で、獣化兵たちを捕縛して脳波を少しいじり、受信できるテレパシーの波長を少しだけいじったのさ。
 自覚のある獣化兵さんは指令が来ないのを訝ってるだろうよ。
 ついでに言うとね、彼らは別に我々の配下というわけではない。
 エグゼビア氏のように事情を話したら自発的に協力してくれたのさ」
「くそっ!」
放った衝撃波は、彼らをすり抜け壁に穴を穿っただけに終わった。
「ああ、これは映像というか幻術だよ。
 全く加藤君は良い子孫&弟子を残しておいてくれた」
その姿が薄らいでいく。
「とりあえず今回は挨拶だ。
 次はアルカンフェルとやらの居場所を聞かせてもらうよ」
「あの方を害する気か!」
「彼がこの星と、その生命を愛しているのは知っている。
 ただ復讐につき合わされるのはまっぴら、というだけだ。
 それに『降臨者』はもう滅んでるしね」
「何じゃと?」
「スクラル帝国との戦争で敗れて全種族、絶滅させられたそうだ」
その言葉を最後に嶋田たちは消えていった。
「なんという・・・・・・なんということじゃ」
絶望に塗れたうつろな目でモニターを見る。
ハイヤーンと殴り合ってるのは・・・・・・確かハルクとかいったか?そしてアマゾン族の王女だったか
李剡魋の空間障壁が「ザ・ハンド」なるものの右手で削り取られ、波動の拳で殴り倒される。
ワフェルダノスの「軍団」が大蛇薙の炎とやらで焼き払われ、一人の男が持つ緑色のランタンからの輝きで動きを封じられていく。
シンがアダマンチウムの盾を叩きつけられ、怯んだところを”クリプトンから来た男”が目から放つ光に痛めつけられる。
巨獣神変化を行ったカブラールが、磁力を操る男に苦も無くひねられていく。

優位に進んでいる戦いは一つとて無く、そしてなにより我等が主の宿願は既に果たすことは適わないのだ。
絶望に、膝から崩れ落ちるバルカスだった

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最終更新:2012年01月05日 08:57