940 :888:2016/10/15(土) 22:17:49
では……

ダン・モロ 星になる


愛機が行動不能になってからどれ位時間がだっただろうか。

コクピットの中は暗闇の中だ。
そんな中で曖昧にで有ろうとも時間を知る術を彼は持ち合わせて居なかった。

無論、機体の機能が完全に停止したわけではない。

ジェネレータはオールグリーン、知覚系は全て機能するし、駆動系も跳んだり歩いたりはともかく体を動かすのには不自由しない程度に機能している。


今はそれら全てを最低限に抑えシャットオフしてあるからだ。


あの自律戦車が“かつて有ったかもしれない司令部”に通信していたとすれば、きっと増援の自律兵器がここに来る。


自分や、コジマで動く重機ことキルドーザーはともかく、他のリンクスなら自律兵器―――しかも旧時代に撃破されることも無いだろう。

ならば、このまま愛機の中に身を潜めて救援を待つのが一番で有ろう。

そう判断が出来る程度には、彼は慎重(おくびょう)であった。


まさかネクスト一機が行方不明になっているのにあの日企連が静観するとも思わない。
人型兵器が飛び回るような戦場で中でこんなに物は意味が無い、と言う者もいるサバイバルキットの確認も終わった。
あとは、ただひたすら待つのだけだ。


だが、何もする事がないと自然に頭は自分勝手に働き出す。

自分はその程度だ、と適当に処理されてロクに捜索を打ち切られているのかも知れない。

と。

或いは、シャットオフした機体の周りに自律戦車が我慢に耐えかね動きますのを今か今かと待ち受けているのではないか?

自律戦車を母機とする小型対人兵器が死体に集る羽虫のように飛び回っているのではないか?

考えが浮かべば浮かぶほどマイナスな方向に思考がズレていく。

恐怖の感情を押さえきれなくなり、センサーを点灯させる。
ゆっくり、カメラを左右に回す、周囲に敵は……無し。

レーダー、熱反応、レーザー測定、磁気。
各種測定を一つ一つ確かめ、そして安心を取り戻した。


そして、気付いた。
この地域に、異常気象として降り続ける雨の幕の向こう側に球状の屋根を備えたビルが有ることに。

アレは……レーダーサイト……なのか?


そんな施設の側で戦闘が有っても駆けつける自律兵器が来ない、というのはおかしい。

ならば機体から降りても問題ないだろう。
そう結論付けると、機体の手でひさしを作ってコクピットを解放した。

あの施設に、連絡をとれる“何か”が有ることを祈って。



ーーーその3分後情けない悲鳴と護身用の拳銃の銃声が廃墟の町に響いたのは皆も想像に難くないだろうが

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最終更新:2016年10月17日 10:52