776 :弥次郎:2016/10/21(金) 23:00:28
大日本企業連合が史実世界にログインしたようです 「国防は軍人の……」14 -月間より週刊、週刊より日刊、日刊よりも…?-




1936年3月22日。アシハラナカツクニ 屋外建造ドック。
艦艇の建造や回収作業が日夜続くアシハラナカツクニの屋外ドックの1つには、100m前後の小型の駆逐艦が収まり、進水の時を今か今かと待ちわびていた。いや寸法がほぼ同じ駆逐艦が5隻も建造ドックに並んでいる。

「本当に1週間と経たずに進水まで進めるとは魂消た……儂は夢でも見ておるのか?」

目の前の松型駆逐艦のネームシップ「松」を見下ろした平賀譲は茫然と呟いた。
確かに全長も排水量も小さいとはいえ、立派に駆逐艦だ。砲と魚雷発射管と機銃を備えている。ハリボテではない。
しかし、案内役の七篠技師は首を横に振る。

「いえいえ、これでも長い方ですよ。以前お見せしましたが、アメリカは130mクラスの戦時量産型の輸送艦を平均4カ月で建造、最短で4日少々で建造・進水させたこともあります。1943年には平均すれば1日3隻も建造されました」
「リバティ船、でしたか」
「ええ。ブロック工法と溶接の導入も兼ねて大量に建造され、2700隻余りが就役、喪失が200隻余り。
 艦齢の限界は5年余りと設計され、また設計上の問題から事故も頻発しましたが、そこはアメリカの工業力でカバーされています。
 つまり、壊れる分を計算に入れて作ってしまえというわけです」

その出鱈目ぶりに、さしもの牧野らも絶句する。
全長120m前後の戦時量産型の輸送艦でそのペース。
無論駆逐艦とは異なるだろうと思ったのだが、ふと思いついて牧野は七篠に聞いてみた。

「ちなみに駆逐艦はどれくらい建造されたのかな?」
「ええっと……フレッチャー級駆逐艦は従来より大型化がされましたが、それでも175隻を3年余りで建造しました。
 さらにフレッチャー級のブラッシュアップ版と言えるアレン・M・サムナー級が58隻、ギアリング級98隻を建造。
 これは実際に建造された数で、前者は計画では100隻、後者は156隻も建造予定でした。
 第一、アメリカはロンドン軍縮条約下でもベンソン級を筆頭に169隻の駆逐艦が建造されていますからね。
 更に止めを刺すならば、WW1時の戦時急造駆逐艦 通称「平甲板型」が273隻も残っています。
 どんぶり勘定でも500隻以上は保有しますね。そしてそれを動かす士官と水兵も育て上げます」
「ご、500……?」
「フレッチャー級 アレン・M・サムナー級 ギアリング級は乗員が300名ほど。さらにベンソン級がおよそ270名ほどです。
 おおまかに計算すれば15万人以上は揃えてきます。ここに整備士や関連する人員も含めれば20万人以上はいますね」

さしもの旧帝国海軍の人員も言葉を失う。
たかが駆逐艦、されど、駆逐艦。特に魚雷と合わせたジャイアントキリングを構想している帝国海軍にとっては、それだけの数が戦艦を狙ってくるかもしれないということでもある。単純に駆逐艦とはいっても魚雷などで戦艦さえも撃沈可能なのだ。
アメリカ海軍の雷撃好きについてはある程度教えられていたが、損害を考慮の上で突撃してくると考えると恐ろしさを感じる。
つまりそれだけの数の魚雷が殺到してくるのだ。無論全力ということはないだろうが、それでも考慮する必要はある。

「アメリカ海軍の恐ろしさは何度もお教えしましたが、特に空母と戦艦は恐ろしいペースです。
 戦時においてアメリカはエセックス級という空母も建造します。4年で24隻ですね」
「4年で…!?」

何人かは遠い目をしているが、やはり驚きの声が上がった。
山本などは知っていたが、やはりびくっと反応した。いや、反応しない方がおかしいというべきか。
その理由は多々ある。それをやや遠い目になった七篠が述べる。

778 :弥次郎:2016/10/21(金) 23:01:46
「戦争に間に合ったものだけでも17隻もあります。計画では32隻まで建造予定でした。艦載機はおよそ100搭載可能です。
 すべてのエセックス級を並べれば航空機を最大3200機以上を搭載できます。最低でも1700機は余裕でしょう。
 当然のように艦載機も充実。戦闘機なら1人ですが、爆撃機や雷撃機ならば2人ないし3人は搭乗しますし、整備士も必要ですが問題なし。
 また、エセックス級に並行してミッドウェイ級航空母艦も建造されます。エセックス級のさらに進化形とも呼べるこの傑作空母は一番艦ミッドウェイが1943年10月に起工して1945年3月に進水。間に合いこそしませんでしたが、状況によっては完成し、投入されるかもしれませんね。ちなみに、カサブランカ級護衛空母というのもあります。
 1943年7月に最初の『カサブランカ』が起工し1年で50隻建造されました。並行してサンガモン級とボーグ級の2種類の戦時量産型の護衛空母まで建造しています。全部まとめて100隻はいってますね。そしてここに商船改造空母も加わるので……」
「もういい、やめてくれ……」

降参だ、というように一人の高官が両手を上げる。

「なるほど、補助空母だけでもそれだけというならば恐ろしいことだな。
 エセックス級を君達がやたら恐れるのは、その量産性と性能が故か」
「傑作と言えるエセックス級は恐ろしいペースで建造されますからね。おまけにアメリカらしい空母で艦載機数が多く沈みにくい。
 長く戦争で付き合うにはあまりにも強すぎる相手です。おまけに戦争を継続しながらも、末期には艦対空ミサイルの配備も済ませます。
 まともに空母戦力でやり合うのはあまりにも分が悪すぎます」
「うむむ……」
「航空主兵とするということは、相手よりも多くの戦闘機を用意し、相手よりも多く補充し、相手より長く質を維持できるかが勝負となります。
 そういう意味ではアメリカ相手に削り合いをするなど相手に利するものでしかありません」

アメリカの人口とその国力は圧倒的なものだ。
さしもの日企連も、その数ばかりは超えられない。人間を生産することはできないのだ。
史実側をフォローするという縛りのある日企連にとっては、これは非常に厄介な事案だ。

「だからこそ、軍備を対応できる状態に持っていきつつ、且つ戦争を回避するように動かなければならないわけですね。
 そして戦争時には相手のことをよくよく分析したうえで行動しなければならない。まあ、これは東雲大将の受け売りなのですが」

さて、と一息置いて話題を変える。

「この松型は、史実において戦時量産された同じ名前の駆逐艦をベースとしています。
 全長100m前後、排水量は1500t前後。武装を対空・対潜に搾り、直線を多用することで工事を簡便化したことで最短で7カ月で竣工し、戦力化がなされました。珍しく量産されたと言ってよいでしょう」
「それを君達は1週間で進水までこぎつけた。なるほど、技術差というのはこういうところにも出るのだな」

牧野の指摘に七篠は頷いた。

「そうなりますね。この駆逐艦の特徴はシフト配置方式にあります。これは発電機 ボイラー タービン 減速機の4つを一つの区分として、左舷・右舷のそれぞれを分担させる方式です。これはフランスとアメリカにおいて採用されており、居住性は少々悪くなりますが、その分片方が浸水などによって機能しなくなっても航行可能という強靭性を持ち合わせています。
 簡単に撃沈されないのも、このシフト配置方式によるところが大きいですね。また艦上構造物をオリジナルよりも低めにしているため復元性も高いです。総合的に見るならば、通常の駆逐艦よりは沈みにくいと言えます」
「沈みにくさか…」

誰かが呟く。不沈性。それは日本海軍においては戦艦に主に求められていたことだ。

「はい。内部構造においても散水機(スプリンクラー)や消火器の配置、防火剤の使用、木材などの可燃物の削減によって防御を高めています。
 これによって装甲の厚さなどによって担保される直接防御ではなく間接防御を高めています。生存性の高さとでも言いましょうか、とにかく航行する能力を奪われないことに力を注いでいます。現在建造計画の信仰している紀伊型や比叡、扶桑型などでも、これらの概念は利用されています」
「そういえばそんなことも聞いたような…」
「ダメコン、といったか。空母の甲板はこのままでは一発の被弾で使えなくなりかねないのだったか」

779 :弥次郎:2016/10/21(金) 23:03:01
がやがやと議論の声が造船関係者の間で起こった。
少し前に、史実側の面々の立会いの下で航空甲板の模型に実際に航空爆弾を命中させるという実験を行ったが、史実側の手掛けた飛行甲板の有様たるや、日企連の用意した航空甲板と比べて甚大な被害を受けていた。
無論日企連の用意した航空甲板もダメージを受けていたが、問題なのはそれへの対処だ。日企連側は速やかな消火と簡易の復旧作業を行えたのに対して、史実側の人員の動きは明らかに拙かった。

「ええ。特に一発の爆弾でも爆沈の可能性があります。これはどの艦種にもあり得る事なのですが、可能な限りそれは避けるべきです。
 しかし、技術的に習熟が必要ですから、この松型で学んでいただきます」
「我々の出番というわけか」

史実側の技術屋や造船関係者が大きくうなずいた。

「無論、シフト配置方式を採用しても沈むときは沈みます。しかし、極めて単純化されて量産性が高い護衛戦力は非常に有用です。
 質もそうですが、ある程度の数が無ければ成り立たない所もありますからね」
「なるほど。確かに簡単に沈んでもらっては困るな。可能な限り人員は生き延びてもらわねばならん」
「作りやすさ、か。これまで考えられてはいたが、ここまで割り切ったものは初めて見たな」
「現在、この松型は溶接技術の指導も兼ねて建造中です。来週にもまた6隻が進水しますね。
 竣工後には対潜対空戦闘の教育の場としても使用予定で、また搭載される電探は八木アンテナを組み合わせた電探、
 史実で言えば『三式一号三型電波探信儀』となっております。性能そのものは心もとなくもありますが、それでも
 この時代では性能は十分となっております。回転そのものも自動化されていますからね」
「まあ、及第点というべきか……我々に届くものと言えばそれくらいなのだからな」

中村の後任である艦政本部長の百武源吾中将が気になったことを問いかけた。

「対潜装備…潜水艦を発見する方法についてはどうなっているのかね?」
「そちらについてはブラウン管を用いた97式能動水中探針儀(アクティブソナー)と現行の93式水中聴音機を改良した
 93式水中聴音器改を搭載予定です。これによって水中に潜む敵艦発見能力がかなり向上しております。
 あくまで、これまでのと比較すればですが」
「ああ、気にしないでくれ。我々の技術の未熟さは分かり切っているのだから」

山本は七篠の表情を見て慌ててフォローする。
しかし、七篠は首を横に振る。そこには苛立ちと悔しさがにじんでいる。

「こればかりは心情の問題です……より良いものを提供できない悔しさというものがありますので。
 使う側に十全の品を出せないのは、企業としては心苦しいものです」

その言葉に、少し史実側は意外さを感じた。
神をも恐れぬ所業で国を乗っ取った企業と言えば失礼なのかもしれないが、利益のために何でもするような企業と日企連は思われていた。
それは間違ってはいないのだが、案外人間らしいところもあるのだと思ったのだ。

「話を戻します。このように対艦対空戦闘に必須の射撃管制装置は現在、日企連の指導下の日本光学の元で改良が進められています。
 現在は91式ないし94式高射装置を使用していますが、2年後をめどに全面更新の予定となっております。それまでに電探手をはじめとした専門教育を終えた水兵の養成を行う必要があります」
「うむ、そこは現在推進中だ。優秀な人材は奪い合いになっているがね」
「航空屋も鉄砲屋も水雷屋も大わらわだからな」
「まさに月月火水木金金だな」

海軍の猛訓練ぶりを例える言葉を誰かが持ち出す。
しかし、七篠は大真面目な顔でツッコんだ。

「日企連も休めませんから、おあいこですよ」
「違いないな、ハハハ」

しばし笑いあった一行は歓談しながらも視察を続行する。
今日くらいはゆっくりしたいと、誰もが昨日に続いて思っていたのは余談である。
昨日どころか、2月26日以来ずっとであるのが事実だったりするのだが。

780 :弥次郎:2016/10/21(金) 23:04:05
以上となります。wiki転載はご自由に。

米帝が一番のチートだと思います(小並感
何ですかね、あの国。ずるいを通り越して向こう岸。
艦隊決戦になったらUnKnown@ナインボール・セラフで熱烈歓迎しなくちゃ
いや、まてよ…イズモのユニットを引っ張ってきて海上要塞「常世国」とすればいいのか、そうだ、そうしよう(錯乱

真面目な話に戻りますが史実松型の建造をはじめました。
史実でも量産されたこれはいい教材なんですよねー。
ブロック工法、工程の簡略化、対潜対空特化となっていますし。
溶接の実験台として頑張ってもらいます。

松型をベースに建造すれば輸送艦を短期間での建造も可能ですから、史実にとってもかなりいいでしょう。
史実で活躍した輸送艦も意外と駆逐艦くらいの大きさだったりしますからねぇ。
ヘリを積めばMACシップやCAMシップのようにも使えますし、便利です。
さて、次は量産型工作艦ですな。日企連の輸送艦の穂高型をベースにすればバンバン量産できますね。
250m級ですのでそのまま空母にも改装できますし、輸送艦のままでも活躍できる。

さて、次は夜戦演習だ…
あと金山とかインフラ整備の様子も書きたいなぁ…

通し番号を13から14に修正

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最終更新:2016年10月24日 11:10