446 :888:2016/10/27(木) 14:40:42
朽ち果てた廃墟の中を、ダンは慎重に歩みを進めていた。
足の先まで神経を集中させ、周囲の物音に耳を尖らせるーー


いかに臆病な彼とは言え、普段は軽い警戒で済ませ、体力の温存と探索を優先する。
これ程までに神経質になって歩くのには理由がある。

先ほど、古い酒瓶を踏みつけて盛大に転倒、大きな音を立ててしまったためだ。


ーー建物に入った時点で盛大な“くしゃみ”をしているのだが、どうにも都合よく頭から抜けているらしい。

しかし、探索が進めば進む程、ダンの顔から明るさが消えていく。

ここは軍事施設などでは無く単なる廃墟、特に商業施設跡だと嫌でも理解できたからだ。

外部への救援も、脱出手段も望み薄。

無人兵器相手に無駄に発砲し、歩き疲れただけ。
これなら機体に籠もって居た方がましだった。

ため息を付くと、あたりに散らばる適等な残骸の上に腰掛ける。
どうやら元は商品棚のようで、腰を掛けた弾みに、年月を経て風化したプラスティック製の置物が地面に落ちて、砕けた。

その様を眺めていたダンはふと、今回の依頼を思い出し少しだけ、元気が出てきた。

“商品”足り得る物を探す時点でここ程“当たり”も無いだろう。

建物内を正確に把握すれば報酬の増額も期待できる。
十中八九、愛機の修理費でアシは出るだろうが報酬は少しでも多い方が良い。

そう結論付けると、暗視ゴーグルを取り出し、本格的な探索を開始した。


以上です。 次回、ゆめみちゃんの登場です。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2016年11月07日 11:18