946: 同志岡田真澄 :2016/12/11(日) 17:00:37
では、時間になったので投稿します。憂鬱本編の世界線を予定しています。


「一発ネタ ウルフェンシュタイン?」
1936年中国大陸北東部のとある寒村にて


漢陽88式小銃や中正式歩槍などドイツ製の銃をライセンス生産した代物を持った兵士たちが、住民が誰一人としていない寒村で焚火を行い暖を取っている。モーゼルC96を腰にぶら下げたリーダー格と思われる男は、アメリカ製の煙草を吸って暇潰している。

彼らはこの中国大陸では良く見かける軍閥所属の兵士達で、アメリカが背後にいる奉天軍閥の連中だ。奉天軍閥はアメリカ製の兵器で統一しているのが基本だが、前線では敵兵士の使用する銃火器を使用する兵士もちらほら存在した。
理由は簡単だ。そのほうが敵から簡単に弾丸を回収できるので弾不足には困りにくくなるし、銃声が同じなので相手を混乱させることが出来るからだ。なのでこの様な装備で彼らは武装していた。

この男…上士(曹長)率いる20人の兵士たちは、共産党シンパが居ると通報があったこの寒村を含む一帯へと上官と共に約80人ほどの部隊で調査のために来たのだが、住民が誰一人として居なく住んでいた痕跡が見当たらないので、不審に思った上官が彼に16名を預けて他へと捜査に向かったので、彼らからの連絡をこうして待機しながら待っている状況だ。

誰もが余りにもこの寒村に何も無いので良い暇つぶしもできず、かなりだらけていた。上士と一緒に予め持ち込んでいた煙草や酒などの嗜好品を嗜む者、何か目ぼしい物品が無いかと家探しをする者、欠伸をしながら何とか周囲の警戒を行う者、上官からの連絡を待つ間、各々好き勝手に行動していた。そんな彼らを獲物として狙う複数の目が見張っている目があることを知らずに。


ガサッ
バキバキ


「ん?何の音だ。お前、見て来い。もし何かいたらお前の判断に任せる。頼むぞ」

「了解しやした上士殿。まぁ、どうせ野良猫なんかが近くで動き回っているでしょう。おい、お前たちも俺についてこい」

「おぅ」

「分かった」


少し離れた所から何かが草むらで動き、地面に落ちている小枝を踏んで折る音が微かに聞こえてきたので、上士は近くに居た部下に音の発生源に向かう様に命じた。その命令に応じて1人の兵士が他にも2・3人程引き連れて現場へと向かう。

5分から10分経過したら直ぐに戻ってくるだろうと誰もがその後姿を見ながらそう思っていた。しかし、彼らは30分経過しても戻ってくることは無かった。何時まで経っても戻ってこないことを不審に思った上士は、残りの部下を引き連れて彼らの捜索も兼ねて先ほどの音が聞こえた方角へと突き進んでいった。


そして歩いて10分後、彼らが見つけたものは・・・・・


「ヒェ……」

「うわぁ、何だこれは……」

「ひでぇことしやがる……」


全身を大きな獣らしき生物によって喰い尽くされた彼らの死体であった。ほとんど骨だけとなっており、僅かに肉片が骨にこびりついている状態だ。顔は大きく風穴を開けられて脳味噌ごと喰われたらしく空洞となっており、大きく食い破られた胴体から見える中身から臓器はほとんど切れ端が残っているぐらいで全て喰い尽くされており、数分前まで生きていたとは思えない様な悲惨な死体だ。

しかし、明らかにこれ等の死体には疑問が彼らの脳裏に思い浮かぶ。一体下手人は誰なのかと。明らかに人間がやる所業ではない。ならば動物の可能性がすぐ思い浮かぶが、このあたりの土地に熊や猛虎など大型の肉食動物は存在せず、野犬ならいるがそれでもここまでの惨劇を作り上げることは余程の大群でない限り不可能だ。

そもそも発見次第発砲したり悲鳴を上げるなどして、何かしらの方法でこちらの注意を惹きつけるだろう。しかし、それらの音は一切聞こえなかった。ということは、何か対応する前に奇襲されてそのまま無抵抗の状態で殺されたのか?彼らには一体何がこの場で起きたのか全く見当が掴めず、困惑の表情を浮かべるばっかりだった。とにかく遺体を回収しようと一行が死体に近づいき、足が体に触れた瞬間だった。

947: 同志岡田真澄 :2016/12/11(日) 17:02:39
パパパパパン!
パパパパパン!

「ぎゃっ!」

「ぐわっ!」

「がぁっ!」


突如近くの地面や草むらに上手く隠れ潜んでいた謎の兵士たちの集団が、ひょこっと銃口だけ出したまま未知の銃火器を連射して奉天軍閥の兵士たちを穴だらけにしていく。中には銃身の下に装着された筒から擲弾が飛び出し、兵士たちを数人ごと纏めて吹き飛ばしていく。運悪く銃口の先に立っていた兵士たちは穴だらけとなったり、爆発のエネルギーで木っ端みじんに吹き飛ばされたりと次々戦死していく。


「伏せろ!お前ら伏せるんだ!」


慌てて上士を含めた数少ない歴戦の兵士たちが即座に地面にひれ伏すことでその奇襲攻撃の魔の手から逃れ、他にも生き残っている幸運な兵士に頭を地面に伏せて車線から逃れるように銃声にかき消されぬよう大声で指示を下す。その声を聴いた兵士たちは慌てて地面に伏せて銃撃が止むのを必死に願う。

そしてポケットから手榴弾を取り出して銃弾が飛んでくる方角へと投げようと何人かが試みるが、その時銃撃が突如ぴたりと止み、代わりに狼の遠吠えの様な声が聞こえてきた。しかも、その遠吠えは野生の狼のとは違って少し機械的で、何やらガションガション機械の作動音が遠くから薄っすらと聞こえてくるからだ。この洗浄には不釣り合いなその音の正体が気になった奉天軍閥兵士たちは、つい顔を上げてそれが聞こえた方角へと視線を向けた。するとその目に映ったのは・・・・・


「おい、何だよあれ……?」

「嘘だろう……」


彼らの目に映ったのは、文字通り鋼鉄の獣であった。約1.5m以上の背丈はあろうかという体格を持ち、外見上は狼の様だがまるで熊やトラの様だ。口元にはたっぷりと血糊が付着しており、どうやら先ほどの死体の下手人はこいつらみたいだ。とりあえず上士を含めた数人は抱えている小銃で奴らに狙いをつけ、そのまま引き金を引いた。しかし、


パァン!
パァン!
カキン!
カァン!

「畜生!弾丸が弾かれた!」

「おいおいおい、何て厚い皮膚…いや装甲を持っているんだ!」


金属製の胴体に弾丸は簡単に弾かれ、少し被弾した箇所を凹ませたぐらいだ。そして逆にこの攻撃が気を引いたのか、鋼鉄の狼たちはウォン!と一声吠えると走り出して飛びかかって来た。慌てて彼らは伏せた状態から起き上がり、くるりと背なかを見せて逃亡を試みるも直ぐに追いつかれ、その無防備な頭部や首元にナイフのような牙が力一杯刺し込まれた。

即座に噛まれた兵士の首は余りにも噛む力が強すぎてそのままばきっと首の骨が折れて即死し、獣が牙を引っこ抜くとその跡に出来た2つの穴から大量の血が滝の様に噴き出す。そしてその返り血をたっぷりと体に浴びた獣は真っ赤に染まったまま次の獲物を殺すと飛びかかる。

他の獣は無防備な逃げる背中に右手前足の爪で大きく引き裂き、悲鳴や呻き声を上げて地面に倒れるとそのまま背中に前足を載せて逃げれないようにし、更に爪で何度も何度も引き裂いて兵士を肉片にしていく。上士の男もその手口で殺された。他の生き残りの兵士たちは銃が効かないので即座に逃げることを選んで走っていたが、次々と追い付かれて同じような目に遭う。こうして奉天軍閥の部隊は生存者を出さずに全滅した。そして母体の部隊も、別の場所で同じような襲撃を受けて全滅していた。
そしてその襲撃現場を写真に収めた先ほどの謎の部隊は、痕跡を消して隠ぺい工作を済ませるとそのまま鋼鉄の獣たちを引き連れて速やかに撤収した。

948: 同志岡田真澄 :2016/12/11(日) 17:07:09
3日後
日本:某所


「---以上、無事に実験は大成功となりました。予算は約束通り下るでしょう。まぁ、そのかわり色々と要求や注文が付きましたが貴方にとって苦ではないでしょう。とにかくおめでとうございますヴィルヘルム・ストラッセ博士――いやデスヘッド様。ここでは倉崎博士と呼んだ方が宜しいですか?」

「いいや、ここではその名前ではなくデスヘッドで構わんよ。倉崎と名乗ると〝この世界の私”と名前が被ってしまうからな。お互いに別々の名前で呼び合うことを決めているんだ。だからこれらかもデスヘッドの呼称で構わんよ」


一人の女性秘書がとある施設の地下に築かれた研究所で何枚もの書類を持ちながら、そこの所長を務める年老いた白人の白衣を着た男に先の中国大陸で行った秘密実験の結果を報告する。彼の言う通り今回の実験結果を報告されたこの国の実質的な支配者である秘密結社「夢幻会」は、男に前からかなりの資金援助を行っていたのだが、これを機に更なる援助を約束すると同時に色々な注文を付けていた。

この白人の老人の名前は通称「デスヘッド」――ヴィルヘルム・ストラッセ。本来ならウルフェンシュタインというFPSゲームの元祖ともいうべき伝説のゲームシリーズの最新作に登場する親衛隊大将の博士で、ダド・イシュードという古代から続く秘密結社から強奪したテクノロジーを悪用し、生み出した数々の超兵器や一世紀先のテクノロジーでドイツの大躍進に非常に貢献した人物だ。

しかし、この世界では彼の体内にもう一つの人格が存在しその精神を見事乗っ取ったことで、彼は大戦後の混乱期にあるドイツから家族を引き連れて日本に移住し、自身の記憶にある秘密結社「夢幻会」へ援助を求めたのだ。その中身の人格の正体は、夢幻会の中でも重要メンバーの一人でマッド技術者でもある倉崎だ。厳密にいうとこの世界の倉敷ではなく、平行世界出身の倉崎だ。

彼はこの世界の自分に何とか接触してこの秘密を話し、彼は自分しか知らないようなことを話されたので信用して後に夢幻会の意思決定を決める会合で彼を連行し皆の前に差し出したのだ。嶋田ら夢幻会の中心メンバーも最初は大いに驚くと同時に不信感を抱いていたが、彼が夢幻会の最高メンバーでないと知りえない情報を話すとこれは本物だと思い信用してくれた。

この世界において彼はこの体の本当の主が何故か保有していたウルフェンシュタインシリーズに登場する数々の超兵器を生産する事に熱中しており、夢幻会からの資金・資材援助を受けてその生産のためにコンピューターや自動装填装置などの開発に従事し、日本の技術レベル向上に貢献したのでこの世界では日本の科学レベルは他国よりも3~40年は先を進んでいた。


例えば民間では、30年代には既に新幹線(こだま700系)が鹿児島から札幌まで開通し、各家庭にはカラーテレビにエアコンなど昭和50~60年代の生活環境で暮らすのが多く、パソコンやアーケードゲームも登場してそろそろインターネットが普及するレベルに達しており、災害時や忙しい時に役立つレトルト食品やコンビニなどが広まっていた。

軍隊では、まず銃の装弾数が弾丸のケースレス化などで2倍に増加したり、90年代の米露の双方の軍隊の良いポイントをミックスした装備(RPG-7・AKM・FN MAGなど)で統一、21世紀の先進国の様に兵士個人個人がボディーアーマーを着用したり、強化外骨格でM2を一人で持ち運んでターミネーターごっごが出来るようにし、ジェット戦闘機や攻撃ヘリが空を舞い、原子力空母や潜水艦が大海原を駆け巡るという明らかにオーバースペックなレベルとなっていた。

また、彼は夢幻会を通じてこれ等の中でも他国に普及しても可笑しくない史実の技術を世界に広め、代わりにその見返りなどで辻と手を組んで大儲けに走った。そうして憂鬱本編と比べると反感は減りある程度史実よりも科学レベルが進歩(例:1936年の時点でT-34戦車登場・ガーランド銃が10発装填式になる)したが、その代わりに本編以上に多くの人材(アインシュタインやカラシニコフ等)や資金などを手に入れることに成功した。

949: 同志岡田真澄 :2016/12/11(日) 17:08:18

更に現在ではウルフェンシュタイン本編に登場した数々の超兵器を実現する事に成功し、それらの実用化の一環として様々なテストを行っていた。先日の奉天軍閥の部隊全滅は、その実験の一環として行われたテストの一部に過ぎなかったのだ。ちなみに何故奉天軍閥が標的にされたのかというと、夢幻会の方針で中国大陸での軍閥同士のバランスを保つ為である。

ここ最近アメリカの支援が強まり勢力が急速に拡大していたので、これ以上アメリカと奉天軍閥の影響力が大陸で強まるのを良しとしない日本政府と夢幻会の方針の下で今回の実験が決まったのだ。中国大陸は日本にとって絶好の資源保有地であると同時に実験場所でもあった。ここで帝国は旧式化した兵器を割高で多く流出したり要人を暗殺する等して紛争を煽っていた。

今回登場した狼型の兵器の名前はパンツァーハウンド。普通の小銃弾程度なら弾き返してしまう装甲に覆われたロボット犬で、車体をも噛み砕く強靭な牙や人工知能を搭載し、戦闘兵器として足場の悪い入り組んだ地形でも活躍する。主に戦線後方での治安維持や、激戦区での偵察任務など戦闘が予測される場所で使用する事を検討している。


「ふふふ、ふはははははぁ!もうすぐミュンヘン会議が行われる時期が来る。そしてその後には一心不乱の大戦争の切っ掛けとなるポーランド侵攻が待っておる。その時こそこの国が世界の主役へと躍り出る時だ。あぁ、早くこの子らが活躍し蹂躙する時が来るのが待ち遠しい…!」


デスヘッドは自分の進言で某動画の様にポーランド侵攻に日本が公式に関わることが決定し、ポーランドで自分が生み出した数々の超兵器がようやく表舞台に立てる日が来るのでテンションが高まっていた。夢幻会はこの圧倒的な科学力と軍事力を活かせる今ならまだ39年に独ソ両国ならば容易く陥落させることが出来ると予測しており、その準備のためにダンツィヒへ彼の生み出した兵器で統一された約1個師団程度の戦力を派遣する事を検討していた。

更にイタリアとの関係を密かに深める事に成功しており、ドイツに攻め込んでもイタリアは日本に宣戦布告無い事を誓わせ、英仏両国とも軍事同盟を締結する事に成功して見事連合入りを果たしていたので、英・仏・伊の三か国を兵站の供給地として利用しながら後方からの一撃を恐れずに攻め込むことが出来るのだ。おまけにいざという時にはドイツに宣戦布告して部隊を派遣する事も一応約束していた。史実通りの部隊編成だがそれにイタリア軍も加わるので後方の治安維持などに役立つと計算していた。

しかし、まだ彼らはモロトフ=リッペンドロップ協定を知らないので当然だがソ連とドイツが密かに手を組んでいるとは全く知らない。ゆえに対ドイツ戦ではドイツに宣戦布告してくれるだろうが、対ソ連戦では同じく宣戦布告するのかは分からない。ともあれ日本は連合国入りすると同時に枢軸と共産陣営の双方を叩けるのでアメリカとの戦争の可能性は一応考慮する必要がなくなり、政府上層部や夢幻会には少し精神的余裕が生まれていた。

果たしてデスヘッドのスーパー技術を取り入れた超帝国と化した日本は、一体どれほど史実を歪ませるのか?次回「ポーランドでスピリタスを」


(アメリカ某所にて)

「うん・・・・?一体此処は何処なんだ?アーニャやファーガスは大丈夫なのか?デスヘッドはきちんと殺せたのか・・・・?」

950: 同志岡田真澄 :2016/12/11(日) 17:15:37
以上です。
ニコニコ動画の某動画製作者のhoi作品が好きで、その中でもポーランドを救う物語が大のお気に入りだったので、これを実現するにはどうしたら良いかと考えたらウルフェンシュタインのデスヘッドの科学力があればワンチャンかも?という発想の元、このネタは生まれました。

この作品の大日本帝国は、既に原子力空母(ニミッツ級クラス)・潜水艦(ロサンゼルス級クラス)を所有し、戦艦は51cm3連装4基搭載した戦艦を密かに6隻保有しています。全ての重/軽巡洋艦は、米海軍のデモイン級(毎分12発/分発射可能)やウースター級(毎分30発/分発射可能)レベルです。

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最終更新:2017年02月08日 20:20