913: ひゅうが :2017/01/28(土) 21:19:02

神崎島ネタSS――「ルーチン・エラー」



戸尾子は、毎日きっかり4時30分には目を覚ます。
5時には総員起こしの喇叭とともに鎮守府本庁舎の灯火がつけられるのだが、その頃にはすでに髪をセットしており、急いで運動場へ駆け出す駆逐艦娘たちの横を悠然と歩いていく。
そして、秘書官(艦)による訓示の横に控える大淀に、連絡簿を渡す。
それが終わった後は、事務方と作戦方の双方に顔を出して連絡事項を伝え、6時きっかりには提督執務室のドアをノックする。

「失礼します。」

「入れ。」

一礼しつつ、まずは5cmほど扉を開き、それから一気に自分の体を室内へ入れたあとで後ろ手でドアを閉める。

「本日の周辺海域詳報です。また、台風10号がグアム沖に発生したことを確認しました。」

「その様子では、本島への接近はないとみていいのだな。」

「はい提督。本日の演習海域の状況に異常はないものと考えられます。」

大淀とお揃いの眼鏡をくいと書け直し、ついで背後の三つ編みが揺れる。
顔をわずかに上げたのだ。
鎮守府の統合軍令本部勤務の幕僚、それも鎮守府提督の次席副官を兼ねていることを示す銀色の飾緒(作戦担当幕僚は金色の飾緒である)は微動だにしない。

「どうした。」

神崎提督は、書類に目を落としたままでそう言った。

「何がでしょう?」

「少し機嫌がよくない様子だ。」

そんなことは――と言いかけて戸尾子は黙り込んだ。

「リジィのことか。」

「不覚ですね。」

顔をしかめる代わりに、戸尾子はふっと息を吐く。

「いずれ、来る。」

提督は相変わらず顔を書類に落としたままである。

「ありがとうございます。」

神崎戸尾子、彼女は、自分が極めて思い出に乏しい人格であるがゆえの面白みのなさを自覚している。
もちろん、個性がないというわけではないのだが、大淀のようなそれはない。
歴史がない、というのはいささかつらいところがある。

だからこそ、先ごろ幕僚から正規の艦隊勤務に昇格したリジィが当直秘書官(艦)をつとめ、かつ本日の演習があの最長寿戦艦の一角であるアイオワを旗艦としていることを書類で確認し、わずかに心が乱れた。
まったく、「有能な幕僚であり副官補佐」であることを自分に任じている身としては不覚もいいところだった。

「気にしないでくれ。」

「なら――」

「何か?」

「いえ。いずれ――」

「戦塵を駆けるときに、か。うん。」

提督は、そこではじめて書類から顔を上げた。

「待っている。」

ああもう、反則だ。

――大和型三番艦にして、装甲空母「信濃」は、顔がほころぶのをおさえきれずに「はい」と返事をした。

914: ひゅうが :2017/01/28(土) 21:19:34
【あとがき】――今は、これが、精一杯

918: ひゅうが :2017/01/28(土) 21:32:45
とりあえず未実装艦についてはこんな感じでスタッフとして控えているということで…

920: 名無しさん :2017/01/28(土) 21:38:18
リジィって誰だろう?

921: ひゅうが :2017/01/28(土) 21:41:30
QE級2番艦。ウォースパイト。
スパ子だとちょっとアレなので…

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最終更新:2023年12月10日 18:12