42: ライスイン :2017/02/23(木) 22:03:30
注意:銀英伝キャラが多数登場します


 中華民国軍・・・、現在においては最低評価を極めた軍事組織の名前である。
腐敗と汚職が蔓延した官製盗賊団、小学生に銃持たせた方が遥かにマシ、存在する意味が分からない集団など様々な悪評・酷評を得ている稀有な集団であった。
 だが全ての中華民国軍部隊が腐敗していたわけではなく少数ながら真面な部隊も存在し、中には日本軍と互角に渡り合った勇猛果敢な部隊も存在した。



                  孤立大陸外伝03  中華民国第13機甲師団



 1938年3月5日 重慶近郊 中華民国軍防衛線


「ラップの砲兵隊へ連絡、左前方から接近する集団に対して砲撃開始っ!!」

「了解、連絡します。」

中華民国軍第13機甲師団長の楊文里中将が命令し、秘書官も兼ねる通信手のフレデリカ特務少尉が砲兵隊へ連絡する。
隠匿されていた場所からの奇襲的な砲撃に接近中の日本軍歩兵大隊は混乱状態に陥った。

「アッテンボロー中佐とグエン少佐にに伝令、攻撃を開始せよ」

楊中将は次に戦車部隊の一つを率いるアッテンボロー中佐に攻撃を命令する。

「よし、突入だ。日本人たちに民主主義の真髄を味あわせちゃれ。」

「突撃だ~」

その言葉にアメリカから供与されたM3・M4中戦車やM3軽戦車で構成された戦車大隊とドイツ供与の3号・4号戦車で構成された戦車大隊が混乱する日本軍へ向けて突入を開始する。
無論日本軍も黙ってやられる筈も無く帯同していた軽戦車や歩兵の対戦車ロケットで反撃する。だがそれにより戦車部隊にのみ注意が向いてしまった。

「今だ、薔薇騎士連隊を突入させろ。」

後期と判断した楊中将は切り札であるシェーンコップ中佐率いる薔薇騎士連隊に突入命令を下す。

「野郎共、突っ込むぞ。」

「了解です。」

シェーンコップ中佐が搭乗するSd.Kfz.250/1装甲兵員輸送車を先頭に各種兵員輸送車や武装トラックが機銃を撃ちつつ日本軍へ接近。
そして飛び降りた隊員がサブマシンガンや近接戦用の手斧で戦いを挑む。
更にパトリチェフ大尉が指揮する司令部重戦車中隊(KV-1装備)が前進を開始すると情勢は決定的に中華民国軍優位になった。

43: ライスイン :2017/02/23(木) 22:04:05
「応戦しろ、それと援軍も要請する・・・なにっ!!」

日本軍大隊長が軍刀を抜きつつ命令するが途中で接近する何かに気が付いた。

「敵将発見、お命頂戴っ!!」

それは手斧を振りかぶったシェーンコップ中佐だった。大隊長は軍刀で防ぐまもなく首を斬りおとされた。

「敵将討ち取ったり。」

大隊長が戦死した事で日本軍は極度に指揮が低下する。結局は唯一生存していた傘下の中隊長の一人が撤退命令を出して後退するが、途中でポプラン大尉率いる空戦隊の機銃掃射で更に多くの犠牲を出すのだった。


 その夜


「いや~、今日も勝ちましたね先輩。」

勝利により上機嫌になったアッテンボローがビールを飲みながら楊に話しかけてくる。

「・・・そうだね。」

フレデリカから渡されたブランデー入り紅茶を飲みながら返事を返す楊だったが何処か浮かない表情であった。

「まあ無理もありませんな、戦線はどこも押されていますし友軍は頼りにならずですから。」

補給参謀の村井大佐が背後から話しかけてきた。その言葉の通り、中華民国軍は日本軍によって全戦線で押し込まれていた。陸上戦力は数では上回っていたが質では大幅に劣り、航空戦力に至っては消耗し尽くしている状態であった。しかも友軍は一部の部隊を除いて全く頼りにならず、暇さえあれば賭け事や薬物、そして一般市民からの私的徴収(略奪)に溺れるなど堕落しきっている有様だった。

「私は・・・この大陸に民主主義国家を建設するという蒋介石総統の言葉を信じて戦ってきたのにな・・・。」

楊が突如として語り始めた。彼は中華系アメリカ人でアメリカのウェストポイントを卒業後、アメリカ陸軍に勤務し優秀さから30歳で中佐にまで昇進していたが日本軍に対抗する為の軍事力強化を行っていた蒋介石にスカウトされ退役し、中華民国陸軍に移籍していたのだった。
元々熱心な民主主義者だった彼はスカウトの際に中将のポストを打診された事と

”中華の大地に民主主義国家を樹立するために協力してほしい”

という言葉に心を動かされていたが現実は非情だった。
民主主義以前に字すら真面に書けず民度も低い国民に己の事しか頭にない軍・政府高官。蒋介石も実際には己の私腹を肥やす事ばかりに集中し、約束した民主主義国家建設など最初からなかったように振る舞っていた。

「こうなったらあなたが政権を握るか軍の総指揮を執るしかないでしょうな。」

シェーンコップ中佐が突如言い放った。かれはそれだけ楊中将の能力を評価していた。そして彼の指揮下で功績を上げ立場を強化する。
彼にとってみれば日本に寝返った前任者に対するあてつけの意味もあった。

「貴方が政権を握った上で全軍に戦闘停止命令を出したうえで交渉を持ちかければ・・・。」

シェーンコップ中佐は尚も語るが途中で遮られる事となる。

「た・・・大変です、友軍が・・・全戦線で毒ガスを使用しました。」

駆け込んできた中将付従兵のユリアン伍長の報告にその場にいた全員が唖然となった。

44: ライスイン :2017/02/23(木) 22:04:37
ほぼ同時刻 重慶近郊日本軍陣地


「やはりあいつら(第13機甲師団)を排除する必要があるか」

第13機甲師団を排除するために特別に編成された軍団の司令官である東条英機中将は参謀や配下の部隊長たちと会議を開いていた。

「毒ガス攻撃に対して会合は化学兵器や核兵器を使用した全面報復を行うつもりだ。その為にも事前に可能な限り敵を叩き潰さなければならない。
 下手に逃がすと泥沼のゲリラ戦だ。」

「その為にも彼らを確実に撃破しなければなりませんね。」

第13機甲師団を始末する為に編成された軍団。それは

○第2師団(機械化歩兵 仙台) ○第505重戦車大隊(南京) ○京都第1挺身連隊「新撰組」 ○日本外人部隊第1連隊

でほかにも近郊の飛行場に多数の戦闘機や襲撃機などが待機していた。

「それにしても銀英伝キャラ擬きが存在するとは・・・・。」

「まあドイツに金髪の小僧が居ないだけマシですな」



 翌朝 3月6日


「最早覚悟を決めるしかありませんな。」

参謀長のフィッシャー准将が司令部会議の場で意見を述べる。

「各国の義勇軍も日本軍の報復に巻き込まれる事を恐れて撤退を開始しております。」

「だけどね・・・これを見てくれ。」

なおも意見を述べるフィッシャーの言葉を遮って楊は一通の命令書を提示した。それは蒋介石総統直筆の物で

”第13機甲師団は中華民族の先駆けとなり民主主義を守るべく日本軍に対して攻撃を開始せよ”

と書かれていた。だが皆はその意味を察していた。要するに次回の毒ガス攻撃までの時間を稼ぐことと度重なる楊の民主化要請にウンザリしていた蒋介石が合法的に楊を始末する為の物であると・・・。

「仕方ない・・・、出撃するふりをして日本軍に近づいて・・・・降伏しよう。」

楊の決断に一同は安堵する。しかし・・・

「敵襲~っ」

非常警報と共に伝令が駆け込んできた。

「なんだとっ、日本軍が・・・。直ちに応戦しろ。」

慌てつつも楊は反撃を命令する。遂に東条中将率いる軍団が攻撃を仕掛けてきたのだ。
楊の命令に師団は反撃体制を整えようとするが師団全体が戦闘配置につくも奇襲された事と質と量の差で押し込まれつつあった。

「く・・・空戦隊が全機撃墜されました。」

「フィッシャー准将戦死。」

「グエン少佐の戦車が爆散しました。」

様々な悲報が舞い込む中・・・・・

45: ライスイン :2017/02/23(木) 22:05:08
「久しぶりだなシェーンコップ。」

「貴様・・・リューネブルク、日本軍将官の椅子の座り心地はどうだ?」

シェーンコップは元上司にして日本外人部隊第1連隊長のリューネブルク准将と対峙していた。

「降伏しろ、貴様等は中国軍でも数少ない真面な部隊で残虐行にも加担していない。丁重に扱う事を約束しよう。」

「ほざけっ」

リューネブルクの言葉を無視したシェーンコップは手斧で斬りかかるがリューネブルクは落ち着いたようにブロードソードで受け流す。
なおも斬り合いが斬り合いが続くがその時・・・・。

「リューネブルク准将だったね・・・私たちは日本軍へ降伏する。」

楊が降伏を申し出た。その言葉に場は凍りついた。

「楊中将、何を・・・」

斬り合いを止めて距離を取ったシェーンコップが狼狽えるように尋ねた。

「もうこれ以上の抵抗は無意味だよ・・・。先程重慶の総司令部から首脳部が避難する時間を稼げという命令が届いた。」

日本軍の攻撃に驚いた蒋介石は重刑を捨てて逃げる準備をする時間を稼ぐため。楊に対して絶対死守命令を発していた。

「それに私達を監視していたアラルコンの督戦隊も空爆で吹き飛んだ・・・。障害は無くなったよ。」

降伏する事への障害は無くなった・・・、楊の言葉にシェーンコップは生き残っていた部下に武器を捨てるように命令する。

「了解しました、只今を持ってあなた方の降伏を認めましょう。」

リューネブルクは楊たちが武器を捨てたのを確認すると降伏を認め、護送車両の手配をする。
そして到着した日本軍憲兵隊の護送車両に生き残った第13機甲師団の生き残り(楊たちを含めて1000名程度)は乗せられて交差鈴市近くの収容所に移送される事になった。


●おまけ  第13機甲師団主要部隊編成

○師団司令部

 師団長:楊文理中将

 参謀長:エドウィン・フィッシャー准将

 補給参謀:村井大佐

 督戦隊(アラルコンSS少佐):兵員 50名

 司令部重戦車中隊(パトリチェフ大尉):KV-1重戦車 12両

 司令部警備中隊(ラオ大尉):兵員 300名 + 19-K 45mm対戦車砲×6 、M1909 76mm山砲×8

 機動偵察隊(マシュンゴ准尉):パナールTOE-M32装甲車×4

○薔薇騎士連隊(機械化歩兵連隊 実質大隊規模)

 連隊長:シェーンコップ中佐

 第1中隊(シェーンコップ直卒):Sd.Kfz.250/1装甲兵員輸送車×1 Sd.Kfz.251/1装甲兵員輸送車×12

 第2中隊(リンツ大尉):Sd.Kfz.251/1装甲兵員輸送車×12

 第3中隊(ブルームハルト大尉):軍用装甲トラック×14両

 第4中隊(デッケン大尉):Sd.Kfz.222装甲偵察車×8  Sd.Kfz.250/10 3.7cm対戦車自走砲×4

 第5中隊(クラフト大尉):Sd.Kfz.250/7 8cm自走迫撃砲×6 、2号15cm自走重歩兵砲×4


○第1戦車大隊

 大隊長:アッテンボロー中佐  M4中戦車×8両 M3A1中戦車×12両 M3A1軽戦車×16両 

○第2戦車大隊

 大隊長:グエン少佐 4号戦車F2型×4両 4号戦車C型×15両 3号戦車A型×10両 Nb.Fz.多砲塔戦車×5両

○師団砲兵隊

 隊長:ラップ大佐   M1918 155mm榴弾砲×4、M101 105mm榴弾砲 ×8、GPF 155mmカノン砲×4

○師団空戦隊(ボブラン大尉):P-40N戦闘機×16

46: ライスイン :2017/02/23(木) 22:05:54
●おまけ2  用語解説

中華民国第13機甲師団:蒋介石が特別に編成した精鋭部隊の一つで切り札的な存在。各国から供与された高性能な装備が最優先に供給されていて人員も比較的優秀な人物が選抜され、指揮官も国外から招聘された優秀な人物が就いている。

薔薇騎士連隊:ドイツ系傭兵部隊で先の大戦終了時に失職した軍人の再就職と国外で制作した兵器の性能試験や実戦経験の維持などを目的として編成された国策傭兵部隊。現在は連隊丸ごと蒋介石に雇用され第13機甲師団に編入されている。
歴代12人の連隊長の内、6名が軍閥や匪賊・蛇論社との戦いで戦死。3名が任務を勤め上げ本国召還し現役復帰。
3名が日本軍支配地域へ亡命している。

師団空戦隊:フライングタイガースとは別に派遣された予備役のアメリカ陸軍航空隊パイロットからなる部隊。


●おまけ3  一部人物の解説とその後

○楊文理

  中華民国陸軍第13機甲師団師団長で階級は中将。中華系アメリカ人でウェストポイントを優秀な成績で卒業し、中華系ながら30歳で中佐に昇進するなど有能な人物。欠点は過度の民主共和政信望者でスカウトに来た蒋介石の

     「中華の大地に民主主義国家を樹立するために協力してほしい」

 を信じて要請を受諾しアメリカ陸軍を退役し、中華民国陸軍に移籍した。ただ優秀な軍指揮官と自身の身を守る精鋭を欲しただけの蒋介石に民主化など行うつもりも無く騙された形となり現実と理想の狭間で苦悩していた。
  対欧米戦終了後に保釈されたあと、日本(夢幻会)の計らいで交差鈴市に新設された戦史博物館の館長にに就任。
 同時期に秘書官だったフレデリカと結婚し従兵だったユリアンを養子に引き取る。
 その後は非常勤の交差鈴大学歴史学科教授を務めながら余生を過ごす。

○フレデリカ特務少尉

  上海のアメリカ租界副領事グリーンヒル予備役少将の娘で匪賊に誘拐された時に楊に助けられて一目惚れし、楊とは知己だった父に頼み込んで楊の秘書官になった。戦後に楊と結婚。

○ユリアン伍長

 楊付の従兵。上海在住のドイツ系アメリカ人の孤児で生きる為に高額の給金に釣られて国民党軍に志願した
 ・・・ということになっているが実は日本情報局の工作員。

○シェーンコップ

  薔薇騎士連隊の第13代目連隊長で階級は中佐、女癖が悪くそれが原因で多くの問題を起している。。元は武装SS特殊部隊の少佐だったが手を出してはいけない人物(某金髪の野獣)の妻に手を出したことが原因で武装SSを追放され、知り合いの伝手で薔薇騎士連隊に入る。
 戦後は外人部隊に誘われたがそれを断り蛇論社にスカウトされ入社。最終的には副社長にまで昇進する。

○アッテンボロー

  豪州陸軍の所属で階級は少佐。豪州陸軍から義勇兵の形で派遣されており、師団では中佐の階級で戦車大隊を率いる。
 ウェストポイントへ留学しており1期上の先輩だった楊を慕っていた。対欧米戦後に釈放されジャーナリストになるも取材の過程で核の乱れ撃ちで放射能塗れになった祖国の状況を知り激怒。楊の制止も無視して民主主義の闘志(テロリスト)に転身し同志を集め大陸各地で民主化運動(テロ行為)に身を投じる。最後は新京でデモ(テロ)を行う準備をしていた所をアジトへ突入してきた蛇論社の部隊と銃撃戦になり、同部隊を率いていたシェーンコップに射殺される。

○エドウィン・フィッシャー准将

 第13機甲師団の参謀長を務める英国陸軍の予備役大佐で軍事顧問として中華民国に派遣されていた。空襲で戦死。

○グエン少佐    ベトナム系のベテラン傭兵。日本軍戦車の砲撃搭乗する戦車を撃破され戦死。

47: ライスイン :2017/02/23(木) 22:06:26
○村井大佐    

  補給参謀を務める元日本陸軍少佐。陸士・陸大を優秀な成績で卒業した秀才だが親中派のアジア主義者という危険人物。
 日中友好や日中軍事同盟を盛んに唱えるなど空気を読まずに危険思想を主張し過ぎた為に予備役編入すら許されずに軍を叩き出された。
 その後、大陸に渡って国民党軍に志願。日本軍で得た知識・経験を元に対日戦及び工作で活躍。第13機甲師団編成後は補給参謀に就任。
 最後は混乱の最中にユリアンによって密に射殺される。

○アラルコンSS少佐

  リューネブルク亡命を機にSS本部から薔薇騎士連隊監視の為に派遣された督戦部隊を率いる非常に好戦的な男。
 本来は薔薇騎士連隊のみが管轄であったが蒋介石の依頼で第13機甲師団全体の監視を任されている。ただ本人を含め督戦部隊は全員一般SS所属の為、戦闘力は非常に低い。最後は爆撃により死亡。

○リューネブルク准将

 日本軍に新設された外人部隊の第1連隊の連隊長で階級は准将。元はGD師団で大隊長を務めるなど有能な男だったがとある日本人女性と熱愛の末に結婚していた事が発覚した事が切欠で軍を追放されたが優秀さを惜しまれて薔薇騎士連隊に連隊長として赴任した。赴任後は中華民国軍の教導や匪賊・軍閥討伐で活躍するも日本人妻と離婚するよう様々な方面からの圧力に耐えかねて妻を連れて日本に亡命。そして経歴が評価されて新設された外人部隊で連隊を任される事になった。戦後は正式に日本国籍を取得して帰化。


 いかがでしょうか?
かなり乱暴な展開と人物設定になってしまいましたが以前から構想していた銀英伝キャラをぶち込むSSを作ることが出来ました。
ラインハルトやその他のキャラは今の所登場させる計画はありません(本編にオスカー・金・ロイ○ンタール)という名を出した程度です。

掲載お願いします。

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最終更新:2017年03月01日 19:56