400: リラックス :2017/02/28(火) 21:31:11
それでは

注意、複数作品の設定の取捨選択、及びオリジナル設定、TS要素などが含まれます。
それでもよろしい方はゆっくりしていってね!




例によって天寿を全うした嶋田は、悲しいかな慣れ親しんだ感覚と共に有らぬ方向へと飛ばされていくのを感じた。

何度目になるか解からない転生に、それ自体はいい加減諦めるにしても「たまには楽なシナリオをくれ」と溜息を吐きながら、彼は次の転生先へと無事にたどり着くことになる。

「またこのパターンか……」

いい加減『ああ、転生したのか』という感覚がわかるようになってしまった自分に何とも言えない感覚に陥りながらも、状況を確認するために周囲を見回す。
今回は何時もと雰囲気が違い、応える医者や看護師が居ない、どころか人の気配も無いと言う状況に若干の困惑を持ちながらも意識がハッキリして来くると、どうやら暗い建物の中で椅子に座っているということを理解した。
だるい身体で椅子から立つ頃には意識もはっきりしてきており、目が闇に慣れてきて回りを見渡せる様に成ってきていた。

「城、か?」

周りを見れば、周辺は薄暗いものの石造りの像や柱がそびえ立っていることが分かり、遥か上の方にはひび割れたステンドグラスのような物が見て取れる。

「人気の無い城で一人目覚めるってどんな状況だ?商業ファンタジーかなろうファンタジーか知らないが、今度はまさか魔王としてダンジョンの経営でもやれってか?」

其処まで呟いてふと自分の背中や頭に何時もとは違う感覚を覚え、恐る恐る触ってみる。
其処には人間では有り得ない感覚がしっかりと繋がった蝙蝠の様な真っ黒い羽があり、意識すれば動かすことも可能だった。
頭にはこれまた感覚の通った角が存在した。

周囲を見回して鏡を探し、月明かりの差し込むバルコニーを見つけ、そこのガラスに自身の姿を映してみると……


「デビモンだと……まさか、此処はデジタルワールドなのか?」

其処に写る姿は、デジモンシリーズの悪役として定番キャラとも言えるデビモンであった。

(遂に人間まで辞めてしまったか。まあ、それは良くないが置いておくとして、問題はここが何処かとと言うことと他に転生者が居るかだ。まずはそれだけでも……)

「その様子から中の人が入った物と思いますが、もしかしなくても嶋田さんでしょうか?」

突如として嶋田の考えを遮ったのは聞きなれない女性の声、しかし、何者なのか何となく雰囲気で分かるようになってしまった腐れ縁との再会を喜べば良いのか嘆けば良いのか咄嗟に判断は付かないながらも、嶋田ことデビモンは声の方へ話しかけた。

「そういうお前は、もしかして辻か?」

「そうですよ。それにしても、ラスボスっぽく見えて実のところ中間管理職な所に憑依するとは、本当に嶋田さんは貧乏くじを引かされますねえ」

「それについては言わないでくれ、胃が痛くなるから。所で此処にいるということは、お前もデジモンになったのか?」

「はい、そうですよ今姿をみせますね」

そう言って陰から姿を現したのは複数の羽を生やす小柄な究極体デジモン……ファンからはロリスモンなどと呼ばれることもある魔王型デジモンだった。
驚きながらも嶋田は情報を得るべく会話を続けた。

401: リラックス :2017/02/28(火) 21:32:16
「究極体になってるのはさておき、何と言うかお前の趣味から大分はなれた格好をしてるな……」

「ハハハ、気合と努力と萌えで進化したのは良いですが、まさかこうなるとは思いませんでしたよ」

「確かデジモンの進化には思いの強さも影響するとはいえ、最後のが不味かったんじゃないのか?
それよりも、出来れば状況について説明してくれると有難いのだが」

「それは触れないでください。現状、発覚しているのは確認されたデジモンや情勢から、此処がデジモンアドベンチャーの世界に類似した世界だと言う事が解かってます。 そして懸念事項が幾つか」

「そうか、原作、それも無印に類似する世界か……、それが分かるだけでも、って、懸念事項だと?」

取り合えず、貴重な情報を得て頷いた嶋田だが、辻の言う懸念事項という言葉に嫌な予感がしながらも尋ねた。

「どうも、古代デジタルワールド期のデジモンに憑依し、オリジナルのデジタルワールドだと誤解した転生者がいたようなのです。
なので何が起きても大丈夫なように備えようとしたそうなのですが、アニメか漫画かゲームの別の時間軸か、或いはごちゃ混ぜの世界なのか気づいた時には既にやらかしてしまった後だったと……」

「はあ……まあ、デジモン自体がミスや誤植をそのまま『そういう設定だ!』と押し通すブランドだから本編と違う時間軸で関連に気づけないのも仕方ないかもしれんが……具体的には何を?」

「その転生者達はマシン系デジモンに憑依したのを理解した後、何かが起きた際に対応出来るよう力を蓄えることにしたそうです。自分達がマシン系デジモンだったこともあり、整備可能な施設の建築やクロンデジゾイドの研究、マシン系デジモンの開発が主だったようです。
流石に既存デジモンの改造は自重していたようですが」

「連中は倉崎の爺のような連中だったと、それで?」

「それと並行してエネルギー確保のため、偶然発見された大きなエネルギー結晶の解析を行っていたそうなのですが、それを回収している際に配下のデジモンがあるデジモンと交戦してしまったそうなのです」

「あるデジモン?」

「……アルフォースブイドラモン、それもゼロと名乗る個体だったとか。パートナーとなる子供はいなかったようですが」

「ロイヤルナイツの一角じゃねーか!しかもVテイマー01の主人公デジモンかよ!
てことは、そのエネルギー結晶体というのは……」

「デジメンタルの欠片だったようですね…… 本編終了後に分割して各地に封印された物だったとか」

「それを回収して回っていたマシン系デジモン……何と無く想像はつくが、その先は?」

「御察しの通り、自然の力を宿すネイチャースピリッツとの間に対立が生じました。しかも、既存デジモンの改造は自重していたものの、開発したマシン系デジモンの実戦データを取るため凶暴なデジモン相手に戦闘データを取ることはしていたことから不信感も強かったようです」

更に言えば、その『凶暴なデジモン』というのにデジメンタルの欠片に近づく者が出ないようわざと配置されていたデジモンが含まれていたことから、ネイチャースピリッツ側からは『凶暴なデジモンの徘徊するエリアに当たりをつけてデジメンタルの回収を目論んでいた』という風に疑われてしまった訳だ。

更に悪いことに、転生者達の生み出したマシン系デジモンは最初に与えられた命令にとことん忠実で、妨害すべく動き出したネイチャースピリッツのデジモン達との争いが頻発するようになっていた。

(ネイチャースピリッツはあくまで勢力であり、高度に組織化されていた訳でなかったことから、転生者達からすると戦闘があったという報告も『縄張りを荒らされると思ったから襲いかかって来た』のと区別がつきにくく把握が遅れたのも大きい)

転生者達が慌てて方針転換すべく動いた時には既にネイチャースピリッツとの争いは不可避な状況になっており、大規模な戦いの末にネイチャースピリッツは敗北、アルフォースブイドラモンも行方不明となったらしい。

402: リラックス :2017/02/28(火) 21:33:05

「微妙にオリジナル要素が入ったのかクロスしたことによる調整なのかはわかりませんが、この時にオーバーライトの激しい古代種が負担を減らすべく既にデジメンタルの一部を利用したアーマー進化が確認されたそうです」

「つまり、この世界における超究極体への進化用のアイテムだったデジメンタルとアーマー進化用のデジメンタルは遡れば同一の物だったと」

「そうなりますね。性能は原作と似たような感じだったそうです。
まあ、それ故に完全体や究極体を人工的に生産出来た転生者達には勝てなかったようですが……」

「設定上、究極体クラスの力を発揮出来るアーマー体はマグナモンくらいだからな……クロスウォーズじゃそれも長いこと維持出来ないことが判明したし……というか転生者達がメタルエンパイアもどきを作り上げてるじゃないかそれ……」

結果、当時の一大勢力であったネイチャースピリッツは壊滅し、勢力が大きく変わることになる。

此処で問題なのはアーマー進化が存在するということは02に至る世界線である可能性が浮上したこと。

壊滅したネイチャースピリッツの中に後に未来の選ばれし子供達のパートナーデジモンになる個体の祖先?が含まれてたんじゃないのか、という懸念等々……

「という訳で、ネイチャースピリッツの生き残りの保護に動き、デジメンタルを一部返却後、守護デジモン達に保護を頼んだそうです。
私は彼らと出会ってから後、様々な可能性を考慮に入れて観測を続けましたが無印アニメ系列に近い歴史の可能性が非常に高いかと思われます。
ちなみに、その組織は今も転生者達の互助組織として存在してますよ」

「そうか……ということは、他にこっちに来てメタルエンパイアもどきに合流した連中もいるんだな?」

「はい、本拠地のあるフォルダ大陸で主に活動しています。 メタルエンパイアでなくファンタズムパーティという名前ですが。
私がレディーデビモンになっていたことから大体想像がついたので原作悪役デジモンを探してあちこちを巡りましたが、ダークマスターズやヴァンデモン、それからデーモンも転生者でしたよ。予想通り、馴染みの人が憑依していましたね。
他にも夢幻会メンバーが転生しているデジモンは居ると思われます。
未確認情報ですけどサーバ大陸の砂漠地帯でピラミッドから飛行物体が飛んでいるという情報や大型軍艦の艦隊が航行していたという目撃情報もありますから恐らく倉崎翁や南雲さんが居るのでは無いかと思いますが……気になることも多く判明しまして」

「嫌な予感しかしないが、何だ?」

「冨永さんがベルゼブモンになってサーバ大陸をバイクでヒャッハーしていたのと、転生者ではありませんでしたがミレニアモンやデスモンを確認したと言えば大体想像がつくのではないかと」

「……まさか、デ・リーパーやルーチェモンみたいな他作品の悪役もいるのか?」

「アルフォースブイドラモン・ゼロがいましたから、他作品のデジモンがいても不思議はないかと。
それだけでも十分に厄介ですが、DIGITAL_MONSTER_X-evolutionの世界線とも関わっていた場合、デジタルワールドの容量オーバーと、それに伴ってイグドラシルによるプロジェクトアークが実行される可能性すらあります」

403: リラックス :2017/02/28(火) 21:35:47
「……ちなみに、今は時間軸的には原作のどの辺りだ?」

「ヴァンデモンの調査によると現実世界に迷い込んだデジタマをパロットモンが回収に向かった事件がつい先日発生したことがわかってます」

「光ヶ丘事件か……となるとアポカリモンの排除までは大分時間があるな。そして対処しなければならないのは原作通りならアポカリモンと、そいつによる歪みで生じたとされる黒い歯車やダークケーブル、劇場版のディアボロモンやアーマゲモンも入れておくべきか」

原作に近い歴史である以上、主人公に相当する人物の誕生とデジタルワールドへの来訪、そしてそれを引き起こした原因が存在していることも前提として考える必要があった。

「無印や02なら、こちらから手を出さなければ選ばれし子供達と衝突する心配は少ないか?」

「黒い歯車やダークケーブルで他のデジモンを操ったり襲いかかったり、現実世界への侵攻を企てたりしなければ大丈夫でしょう。尤も、それで原作通りにアポカリモンを倒せるまでに成長してくれるかが問題ですが……アポカリモンと戦っている場にはケンタルモンやオーガモンも入り込めた以上、最悪は我々が加勢しても良いかと」

「02に関してはブラックウォーグレイモンはデジモンカイザーがダークタワーを作らなければ誕生せず、デーモンやヴァンデモンはこちら側、及川もヴァンデモンに踊らされなければ闇落ちや暴走は心配しなくとも良いだろう……ミレニアモン関連をこちらで気をつけて一乗寺賢のデジモンカイザー化さえ防げば、ほぼ全てのフラグをヘシ折れるな」

指折り確認して懸念事項を確認していく。

「むしろ、及川を仲間に引き込めないか?アークプロジェクト対策にリアルワールドで別のサーバーを用いて避難先を確保すれば」

「それも可能なら行っておきたいですね。まさか、デジモンが増え過ぎないように定期的に間引く、なんてことをやる訳にはいきませんし」

「やったら確実に討伐対象になるな。ロイヤルナイツですら悪役っぽくなるのに……」

この後、フォルダ大陸に本拠地を置くファンタズムパーティで行われた話し合いの結果、基本的にアポカリモンを倒すまでは主人公達にはノータッチ、或いは影ながらのサポートを行うこと

そして02のフラグをヘシ折りながらアークプロジェクトに向けての備えを行うことが決定された。

「どう見ても悪役な我々が余りに動くのも色々とアレだしな」

「しかし、原作のサポートキャラなんて不親切設定にも程があるし」

「ナノモンとゲンナイさんとでファーストコンタクトの時(メール)の印象を比べたら、ゲンナイさんの方が遥かに胡散臭いからな……」

とまあ、方針が決まった後に雑談をするのはお約束。

そして、

「それと、やはり代表は必要なので、それはまた嶋田さんにお願いしたいと思います。取り合えず時間は有りますから頑張って究極体まで進化して下さいね」

「畜生!また、貧乏くじかー!」

嶋田さんが代表役を務めることになるのもやっぱりお約束なのである。

それから、技術畑の転生者が他の作品のデジヴァイスを作ろうとしたり紋章やデジメンタルの解析を行おうとしたり、超巨大マシン型デジモンの建造に挑戦しようとして胃と頭を痛めたり、

そして、文字通り魔王になった辻~んに扱かれて無事(?)究極体まで進化したものの、魔王型デジモン複数を含む強力なウイルス種が多数所属し、急激に力を伸ばす勢力としてウイルスバスターズに目を付けられる羽目になったり、

エージェントや守護デジモンから警戒されたり、更には何故か存在していたゲーム作品や漫画作品の悪役デジモンから接触されたりと、気の休まらない日々を過ごすことになるのも。

404: リラックス :2017/02/28(火) 21:41:27
以上、無印、02を通じて選ばれし子供達がどうしても倒さなければいけないのは実はアポカリモンだけで、その気になれば知らんぷりで片付きかねないので目的らしい目的というか課題を追加しただけ。

某所で目にした設定をパク……参考にしてぶち込んでみた。が、わざわざ出演(名前のみ)してもらったは良いがかなり扱いが悪くなった。ごめんよゼロマル……

古代デジタルワールド期に活動した転生者の方々?もしかすると嗚呼、我ら地球防衛軍の議長達かも……

捕捉

アポカリモンが倒されるまで、現実世界の1分はデジタルワールドの1日である。
嶋田さんことバルバモンの明日はどっちだ。

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最終更新:2017年03月06日 10:31