77: 弥次郎 :2017/03/23(木) 16:48:39
大日本企業連合が史実世界にログインしたようです 「国防は軍人の……」19 -パトリオッティズム-





死屍累々という表現が、そこには具現化されていた。
オリーブドラブの戦闘服に身を固めた軍人たちが、揃って地面に倒れ伏すか、あるいはわずかに身を起こした状態で呻いている。
彼らは投げられ、あるいは関節を決められ、足払いを受け、その戦闘力を失っている。銃火器を使っていれば起こりえないが、しかし、戦場ではあらゆることが起こりうる。それ故に、備えは必要なのだ。

「ハァッ!」

そして、また一人が投げ飛ばされた。
相手の懐に飛び込みながら伸ばした腕、そこに流水の如く腕が流れ込み、絡めとり、そのまま投げられた。
傍目には、勝手に倒れていったと思えるほど、鮮やかな投げ技。受け身をとって立ち上がろうとするその軍人は、しかし喉元に訓練用ナイフが突きつけられているのを見て動きを止める。起き上がろうとするが、機先は制されている。
片腕がいまだに掴まれたままで、相手の体はもう片方の腕が届かせるには遠すぎる。袖口の予備のナイフはこの姿勢では抜けない。
いずれにせよ、決着(The End)だ。死を恐れずに動く前に、ナイフが頸動脈を斬り割くのが速い。

「ふむ、受け身をとれるまでは良かったな」

そして投げ飛ばした軍人 虎鶫はそう評価し、ナイフを油断なくのける。
彼は教えている、一切の油断をすることなく、一切の隙を無駄にするなと。
例えThe Endとなった直後でも、遠慮なく反撃しろと教えている。
礼儀作法は最低限。しかし、その分実戦に力を注ぐのが虎鶫の方針だ。
彼がCQC(Close Quarters Combat)およびCQB(Close Quarters Battle)を教える中でも、それはそのままだ。

「よし、各員休憩をとれ。時間は10分。次は拳銃やライフルを持った状態での格闘戦だ」

そう指示を出した。
返答と同時に悲鳴も上がる。ぶっ続けの格闘戦の訓練は休憩を挟んでいるとはいえ、休んでいるとはいいがたい。
運動量に対して休憩量は少ない。既に息が上がり切っている軍人もいる。

しかし、これは必要だ。少なくとも、虎鶫は経験則とデータから理解している。
本能を呼び覚まし、戦闘技能を叩き込む。これはGAが国家時代に行った検証実験でも明らかになった、最も効率的な訓練だ。
徹底して追い詰めれば人はある種のトランス状態、あるいは自我を滅却した状態に入ることができる。
ある種の悟り、無我の境地ともいえるだろう。その時に軍事訓練を積めば「生存のために必要」と本能が誤認し、下手な理性だけに任せるよりもより身に着けることができる。そのデータや論文についても、すでに一部の軍人には教えてある。
未来の情報とは明言してはいないが、それでも確たる理論と実証に基づくそれは、精神論などとは違う意味での説得力があった。
勿論、これがCSR(戦闘ストレス反応)を引き起こす端緒となるのは理解している。

(ここにいる連中は、教官になるんだからな……)

それが必要なのは、ここにいる軍人がいずれは人に教える立場となり、あるいは過酷な環境でも人を率いる立場になるからだ。
戦場において国家のために身を使い尽くすのが軍人というもの。その程度は、計算済みの犠牲というものだ。
自分だってそうだ。コジマ粒子を浴びやすいリンクスなどになったのも、覚悟の上だった。
その覚悟こそ、人間を強くするのだ。その覚悟を他人に作ってやる人間は、もっと覚悟がいる。

遠く、大日本帝国陸軍の軍人たちは指導された通り、経口補水液を飲み、息を整えている。
休むのではない。整えているのだ。長い集中を保つための、ゆるみをうまく作っている。
彼らが指導を受け始めてまだそれほど経っていない。しかし、下地はあるから学習はかなりスムーズだ。
覚悟もある。意思がある。だからこそ、強い。そこは、虎鶫が評価できるところ。
何しろ、近衛師団も加わっているのだから、保証はある。愛国心(パトリオッティズム)も十分だ。

2.26事件と3.14蜂起の二つを通じて、陸軍の面子はほぼ丸つぶれに近いというのは理解している。
特に近衛師団は陛下の身を守るという役目を負っている。そして、余計なことをやらかしてくれた軍人たちが間引かれたことで、内部の結束はかなり強くなったのだ。そういう意味で、反乱兵はいい仕事をしてくれたと言える。金一封だけは送ってやれるだろう。
精々、三途の川の渡し賃になればいいだろう。

そんなことを思いながらも、虎鶫は経口補水液をゆっくりと飲む。
慌てず、少量を飲むのがコツだ。水を飲んだという事実を体に理解させる。
飲んだと事実を認識させ、水を求める本能を眠らせるのだ。
この技術は、流石に教えていない。この技術は危険すぎるのもある。

78: 弥次郎 :2017/03/23(木) 16:49:29

過去に、これを使い過ぎて自分がやり過ぎてしまったこともある。
あの時は流石に死にかけた。まあ、命を懸けるのにふさわしい場所だったし、実際に必要になった。
帰還してからメアリーに、いや、ただのメアリーに戻った彼女から説教されたのは懐かしい。

      • しょうがないじゃないか、丸2日かけて警備の隙を窺ったんだから。

そういったら、張り倒された。というか、グーで殴られた。
そして、病院に引きずって行かれ、徹底して看病を受けた。
まあ、あの時の潜入(スニーキング)はメアリーとの決闘のダメージを引きずっての状態だったのだ。3週間も缶詰にされた。
リンクス戦争が片付く前に、戦時体制でガチガチに固まっていたBFFへと侵入する。危険というレベルではなかった。

新婚旅行がイギリス出張からの病院とはなかなかにない経験だと思う。
思い出すだけで、頬が緩む。あの時は、本当に楽しかった。
今も楽しいが、あの時はツンツンばかりのメアリーがデレデレで、一生モノとなった。
如月から手に入れたカメラは役に立った。あれは秘蔵だ。

(さて、と)

次は銃火器を持った状態でのCQCおよびCQB、それも屋内戦闘を想定する。
ここは小笠原諸島の一角なので目立った家屋はないのだが、そこは問題ない。
休憩時間が終わるころに、大型輸送ヘリがアシハラナカツクニから資材をここまで輸送する予定だ。
いや、家屋ごと運んでくると言った方が正しいだろうか?これは野戦築城の訓練も兼ねてのものだ。
将来的にはこういったヘリボーンも当たり前のようにやってもらわなければならない。

予定をPDAで再度確認した後、ふと自分用の荷物に覚えのないケースが置かれているのが見える。
拳銃にしてはやや大きい。生体認証装置を解除し、そのケースを開け放ってみる。

「うげ……マジかよ」

中には、拳銃が、区分としては自動拳銃が収められている。
奇妙なことに、それはアサルトライフルにも似ていた。しかしストックは存在せず、極端に銃身が切り詰められている。
ケースにはドラムマガジンとボックスマガジンも付属されている。付属の弾丸はと見れば、5.56×45mmNATO弾だ。
そして、彫刻(エングレーブ)には何ら戦術的優位性(タクティカルアドバンテージ)もない文字が刻まれている。
そう、「報国者」と刻まれているのだ。無駄に達筆。しかもこれは削りだしだ。

(あの合法ロリ偽名ガンスミス……!)

あれか、蛇をリスペクトしろというのか?それとも「真の愛国者」になれとでも?
確かにこの世界においては蛇のミームもジーンも存在しないことは確認されている。
だからこそこれはもう不要となったはずだ。自分も暇を持て余した防疫期間で体の一部にするまで訓練をした。
が、流石に片手でフルオートは厳しかった。使えないこともないが、流石に戦場に持ち込むものではないと判断せざるを得なかった。
ともかく、方法は分からないが、どうやら送りつけてきたらしい。

(クソ……隠す時間もないか)

丁度、真上をヘリが通過していく。恐らく家屋の投下が始まったのだろう。
教導を受けている部下たちがここにきて、ついでにこの銃に気がつくだろう。
そら、足音が複数迫ってきているのが聞こえる。隠すには時間が少ない。
諦めて、同時に着信したメールをPDAで開く。

『目指せ、特殊部隊の父!』

あとであの合法ロリ〆る。
そう誓った虎鶫は覚悟を決めた。

79: 弥次郎 :2017/03/23(木) 16:50:21
報国者

日企連のガンスミス達が製作した突撃自動拳銃。使用銃弾は5.56×45mmNATO弾を使用する。
アサルトライフルと同じ銃弾を使いながらも拳銃のように扱うという、極めて野心的なコンセプトで開発された。

その正体はMGSシリーズに登場したパトリオットを再現したものである。
この銃は日企連がゲートを超えた世界が「この世界は別な創作物の世界ではないか?」という懸念を抱いたことに端を発して開発された、言わば「世界観検証装置」の一つであった。原作同様にXM16E1をベースにしており、同じようにドラムマガジンを装着している。
給弾機構は無限の形を作っている。MGSの世界観においてはこのような機構を持てば銃弾を無限に撃つことができる筈であった。
しかし、これを史実側で使った結果は通常通り弾切れが起こるか、そもそも給弾がなされないなど結果を示した。
他にも無限の記号を縫い込んだバンダナや旋毛の形が無限の形のかつらなど試作されたが、いずれも効果を発揮しなかった。

その検証を終えた後にこの愛国者は持て余され、陸軍での教導にあたっていた虎鶫やMGSファンの元へと届けられ、主に飾って楽しむなどの使い道を得ている。ほぼハンドメイド品であるために生産数は50丁にも満たない。
南部麟次郎も何仙姑を通じて得たこの銃のコピー品を試作したが、MAC11などを製造した方が楽であることから量産はしなかった。
が、史実側陸軍には妙に琴線に触れるものがあったらしく、希望者には鑑賞用モデルが配られた。
その後の特撮やアニメなどにおいてはどことなくこれに似た銃が登場するようになったのだが、ご愛敬である。

80: 弥次郎 :2017/03/23(木) 16:51:40
以上。wiki転載はご自由に。
やりたいと思って時間をかけて書いた。反省は愚か後悔もない。
ただ満足だけがある。

MGS3でパトリオット縛りの「真の愛国者をめざして」をしたのを思い出しますね…
何しろ煙草型麻酔銃もCQCもナシ(パトリオットで殴るのはOK)なので、咄嗟に眠らせてとかできないんですよ。
ボス戦も、特に時間縛りのあるザ・ボスと大佐相手は苦労しました。
あとC3狙撃が一番苦労しました。理論上はあてられるんですが、ぶれにぶれましてね…

さて、本編書かなきゃ

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最終更新:2017年03月27日 09:39