憂鬱×ギアス×種の思い付き書きなぐり。






もしこの世界を文明圏で分けるのならば三つに分れることだろう。
一に日本ブリタニア文明圏。
二に中華帝国インドペルシャを混合した中華連邦文明圏。
そして最後に合衆国オセアニアとユーロピア共和国連合を筆頭とした文明圏。
細部までを論えば更なる分化もやむなしの国際情勢はこの三つが主立った色分けをされる勢力圏として君臨していた。

異なる文明圏同士は今日の勢力図を形作るまでに幾度となく矛を交えてきたがそれはいまも変わらずであった。
豪欧は日ブと対立しつつ中華侵蝕を計画し。
日ブは領域を侵されない限り自ら手を出すことなく。
過去から尾を引く日中対立が豪欧の策動を前にしても両国世論の硬化を招き。
ブリタニアは日中対立解消のため自国が仲介役として双方に交渉のテーブルへ付くよう働きかけ狭間で揺れ動く政情不安定な中華は南北からの脅威に守勢一辺倒。
続く対立は人間が人間である以上はそれこそ致し方なしという他ない。
危ういところで均衡のとれていた三分世界はコズミックギア暦二〇二〇年四月に入り大きな曲がり角を迎える。

豪欧のフィクサーであるオセアニア国家評議会ザフトクライン派とユーロピア三百人委員会をアズラエル派と二分するロゴスジブリール派の積極的平和主義 武力を背景とした他勢力への恫喝外交に眉をひそめていた日ブに対し当事国の豪州から会談の申し入れがあったのだ。
場所は両勢力の最前線と称すべき欧州の最小国シーランド首都シーランド島の迎賓館。
共和国と名の付く国ばかりの中にぽつんと存在する人工島群王政国家はその地理条件にありながらも国家成立の過程から君主制国家群から形成された日ブの文明圏に所属しており建前上日ブに譲歩する豪欧の体裁が整えられていた。

会談の提案者はまさかのラクス・クラインオセアニア国家評議会議長本人。
日付が四月一日だったこともありブラフではなかろうかとの意見も出ていた物の本人が国営放送を通じて日ブ両国との会談を望んでいることを発表する奇手まで用いたことから本気であるらしいことがわかり両国は対応に追われた。
相手は日ブと同等の技術力および国力を持つ大国の国家元首 無碍に断ることもできずさりとて世界を一つにして人々から争いを無くすといった思想を力尽くで強制するような人物が平和というキーワードで繋がったブリタニア第三皇女ユーフェミアとの一対一での個別会談まで条件に持ち出してきたことからどうしたものかと頭を抱えたのだ。

陣羽織にも似た白い装束に身を包み桃色の長髪を編み組のポニーテールにした女性が一礼する。

「お目にかかれて光栄ですわユーフェミア殿下」

対して白のタイトスカートという公務服姿のユーフェミア殿下も一礼した。

「こちらこそ光栄ですクライン議長閣下」

こちらもポニーテール風のひとまとめに結わえた殿下の桃色髪が流れる。

「以前より存じておりましたがこうしてお言葉を交わすのは初めてですわね」

相対する二人は先にクライン議長が握手を求め手を差し出す。

「クライン議長のお噂も我が国に伝わっております」

席に着く二人。
私はクライン議長を見る。

「私のお噂というものがどのようなものかお訊きしても?」

「はい 世界平和のため積極的に行動する平和の使者と」

まるで姉妹なのではと見間違えるほど似通った背格好に髪型と髪色の二人は言葉遣いまでも同じ。
服の色や瞳の色までも。
しかしなにかが違う。
決定的なまでに。
ユーフェミア殿下とクライン議長が似ても似つかない別人だと人間を見慣れている者ほど気付く違和感を覚えるのだ。

「ですがあまり良い意味ではありません」

「良い意味ではない? なぜですの?」

「平和を求めても応じない者へは力を行使し争わせないようにする 他国へと出向きその土地を侵し血を流してまで押し付ける平和に意味などあるのかと」

目を伏せる殿下は閉じた目を見開いた後も厳しい表情を崩さず。
議長はだがそんな殿下に向けた笑顔を絶やすことなく殿下を見つめている。

「私も臣民と同じ意見を持っております 争いを無くす為に争うのは本末転倒というものですわ」

糾弾に近い。
ユーフェミア殿下は争いが嫌いである 日ブに属する誰しもが既知の事柄。
だからこそ言葉で訴える争いのない世界を望んでいるというのにクライン議長は口では平和を謳いつつ自ら争いの種を撒き散らしている 殿下にはそれが許せないのだろう。

「残念ですわ御理解いただけないのは 同じく平和の旗手であるユーフェミア殿下にならわかっていただけるものと思っていたのですが」

議長は訴える。

「できることならば私も力の行使などしたくはないのです しかし世界はいまだ弱肉強食を是としております」

世界平和を望み声を上げても無くならない争いを無くす為にはときに武力も必要である。

「これを打破し世界平和を構築するには大きな力を持ちながらも平和を望む勢力による世界の統合が必要なのです」

それがオセアニアでありユーロピアジブリール派である 日ブも是非その輪に加わって欲しい。

「旧態然とした世界情勢を良しとする中華連邦も 平和に纏まるユーロピアを割ろうとしているムルタ・アズラエル派も両者とも放置しておけばやがて世界に災いをもたらします」

共に世界平和を目指すため日ブ両国指導部への橋渡し役となって欲しい。

「ユーフェミア殿下はブリタニアの高位皇族であり日本の導き手夢幻会の中心人物シマダ卿の御内儀 そんな貴女にお力をお貸しいただければ真の世界平和に大きく近付けるのです」

殿下のお立場なら両国指導部を説得できるとクライン議長はいう。

あまりにも傲慢だ。
両国国民はもとより世界中のあらゆる国家を無視した発言に怒りを覚える。
まるで自分の言葉に酔っているようにも聞こえた。

「クライン議長閣下・・・・・それは平和ではなく世界征服を目指すという非公式の宣言なのですか?」

私も思ったことを殿下はご質問くださった。
すると。

うふふ。

確かにそう含み笑いをもらしたクライン議長はおっしゃった。

「違いますわ 世界を一つにし二度と争いの起らない体制を構築することのどこが世界征服というのでしょうかユーフェミア殿下?」

「━━っ!??」

予想外の回答に言葉を失う殿下に相も変わらず微笑みを絶やさない議長が私には恐ろしく感じられた。

平和な世界を創るため。

そんな大義名分を掲げてこのユーフェミア殿下と良く似ているようで似ていても全く違う人はこれからなにをしようというのだろうか。

日ブ豪欧四カ国会談とは別に設けられていたユーフェミア殿下とクライン議長の会談に立ち会った者のひとりとして会談冒頭の一幕をここに記す。




コズミックギア暦二〇二〇年四月八日午前 シーランド王国首都島迎賓館にて大日本帝国先進技術省シーランド王国特派員××ヒビキ。



あとがき
コズミックギアってのはコズミックイラとギアスを掛け合わせた暦っす。

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最終更新:2017年04月02日 20:01