866: yukikaze :2017/04/09(日) 01:18:03
リハビリ用として作った代物です。御笑納ください。

零式艦上戦闘機54型

全幅  11.0m
全長   9.237m
全高   3.57m
翼面積 21.30㎡
自重  2,250kg
全備  3,250kg
発動機 金星六二型(1,560hp)
速度  580km(但し実際には570kmが精々であった)
上昇力 6,000mまで6分50秒
航続力 1,400km(正規) 全速30分+1,800km(増漕あり)
武装  九九式二号20mm機銃2挺(翼内・携行弾数各125発)
     二式12.7mm機銃2挺(陸軍のホ103 翼内・携行弾数各240発)
爆装  三式ロケット弾発射器×2(内部には、R4Mロケット弾10発が携帯)

(解説)

三菱が開発したゼロ戦シリーズの最終形態である。
ライバル機であるF6Fと比べると性能的には一歩譲るものの、しぶとく戦い抜き紫電改登場時までの貴重なリリーフとして活躍した機体である。

同機体が計画されたのは、以外にも早く日米開戦前である。
もっともその理由はいささか生臭いものであった。
三菱としては、同機体が傑作であることに誇りを抱いていたが、ただひとつ気に食わなかったのが、機体の心臓であるエンジンが『中島製』であったことであった。
海軍の要求を満たすことを考えれば、自社のエンジンがマッチングしなかったことは理解できているものの、ライバル会社の懐を満たさせるというのは、感情的に我慢できるものではなかった。
故に、三菱としては自社製エンジンを積むことを望んでいたものの、瑞星はどうやっても1,000馬力が限界であり、金星は1,500までは伸びるものの、燃料消費やら何やらで海軍が受け入れるかといえばは困難であり、三菱としては不承不承であったが、ゼロ戦の強化については栄エンジンの強化版で対応することを決定し、それは1942年に実戦配備された零式艦上戦闘機32型(史実零戦五二型甲)に結実することになる。

だが、ここから事態は急展開することになる。
確かに32型はこの時期においては傑作艦上戦闘機であった。
後世『ゼロ戦の求められた姿』と言わしめた同機体は、ソロモンキャンペーンにおいて、ゼロ戦の弱点と言われた降下制限速度や高速時での横転操作が改善されており、アメリカ海軍母艦航空隊の艦戦乗りを絶望の淵にまで叩き込むことに成功していたのだが、その一方で海軍の頭を抱えさせていたのが、ゼロ戦の後継機の不在であった。
この辺は、海軍側の総花的な要求に三菱側が徹底的に振り回された点が大きいのだが、度重なる激務で、十四試局戦の設計中に堀越主任技師・曽根技師が倒れてしまい、長期療養を余儀なくされるという状態(幸い十四試局戦に関しては、非常事態ということで、当時空技廠に在籍していた倉崎技師が、ドイツ留学時にフォッケウルフ社から得ていた機体データを三菱側に提供することで、服部技術部長の指導のもと事なきを得ている。なお、倉崎が戦後三菱に三顧の礼で迎え入れられたのは、この時、三菱の苦境を救ってくれたことへの恩返しでもあった)により、三菱の新規設計能力が大幅にスピードダウンしたことも無視できなかった。
つまり海軍としては、いつ完成するかもわからない次期主力艦戦が実戦配備されるまでの間相手の新型艦戦に対してゼロ戦の改良型で何とかしないといけない羽目になるのである。

867: yukikaze :2017/04/09(日) 01:18:35
これだけでも凄まじく頭が痛いのに、さらに追い打ちをかけたのが、『誉エンジン』問題であった。
中島が社運をかけて開発した同エンジンは、倉崎が、空技廠から事実上の追放をされる代償として直径を史実ハ44に近い形にまで纏め上げさせたことや、燃料噴射装置を組み込ませたことで、実用的な2,000馬力級エンジンとして完成することに成功するのだが、この時中島側は誉エンジン生産に注力する為に、それ以外のエンジン生産を徹底的に絞る(例外は開発中のハ44)ことを要求し、陸海軍もそれに同意したことで、栄エンジンの安定的供給に黄色信号が灯ることになる。
皮肉にも、1942年に、十四試局戦が『雷電』として陸海共用戦闘機として採用され、栄エンジンを利用するゼロ戦や隼の生産数を順次逓減していく方針であったことが、この決定を後押ししていた。

こうした事態に三菱は、1942年8月に、ゼロ戦の強化として考えていた、栄エンジンの更なる強化版の搭載を事実上諦め、この時期においては比較的供給に余裕のあった金星エンジンをゼロ戦に搭載する計画を立てることになる。
この三菱の見通しは、彗星の増産によって破綻し、結果的には火星と火星の18気筒化である土星エンジンの予想以上の増産などから、結果的には、金星の18気筒化である木星エンジンの生産化に大きく遅れることになるのだが、この点で三菱を批判するのは酷であろう。
三菱は、零観を制作した佐野栄太郎技師をリーダーとしたチームで、ゼロ戦の改修を進めることになる。

同機体の最大の特徴がエンジン換装にあるのは言うまでもないことではあるが、もう一つ同機体の特徴と言えるのが、武装及び防御の強化にあった。
むしろ、馬力強化による速度向上をある程度まで犠牲にする代償として、武装と防御構造を強化したといった方が正確なのだが、これはアメリカ側の12.7mm機銃の猛烈な射線に対して艦戦パイロットから「アメちゃんの猛烈な弾幕相手には、今の状態ではかなり骨が折れる」と指摘する声が多く、同時に雷電の防御力に『ヒヨッコでもこいつに乗れば少なくとも生きては戻れる』と称賛の声が上がっていた事から、可能な限り防弾に気を付けることになる。
また、武装についても機首の7.7mmを廃止した代わりに、両翼に陸軍が海軍のエリコンを採用する代わりに海軍が採用したホ103を2丁装備している。
余談だが、同機銃は『大空のサムライ』こと坂井三郎が絶賛し『エリコンよりもこいつを4丁積んだ方が絶対よかった』と発言しているが、F6Fの防御能力を考えればエリコンの方が効果的であり、坂井に批判的な杉田は『あの人の空戦は台南空で止まっている』と、酷評している。
変わった所では、雷電の代名詞とも言うべき三式ロケット弾発射器も2基装備できるようになっているが、これは爆撃能力がゼロに等しいゼロ戦に限定的な対地・対艦攻撃を与えようと計画されたものであったのだが、実際には対重爆用以外では、空気抵抗等もあってパイロットからは好まれず、実戦使用は少ない。

なお、運動性能についてはなんとか32型のそれを維持していたものの、航続力については32型の2割減になっており、本来ならば大問題になる所であったが、既に占領地拡大方針が明確に否決されている現状においてはそれほど問題とされていない。
速度については、計画では580kmを目標とされ、公式記録でもそうなっているが、実際には570kmが恩の字であり、このことも『32型の武装及び防御の強化ver』と言われる所以であるが、これも許容範囲としている。
むしろ、翼面荷重の増加による着陸速度の上昇が問題にされており、結果的に千歳型や龍鳳・瑞鳳においてはマリアナ沖では32型が使われる羽目になっている。

同機体は、1944年初頭には正式採用されると共に、母艦航空隊に最優先で供給されることになるが、既にこの時期には、次期主力艦戦として内定していた紫電改も量産体制に入ろうとしており、最初から限定的な生産でしかないことが明らかであった。
もっとも、マリアナ沖海戦では母艦航空隊の主力艦戦として、F6F相手にやや劣勢でありながらも、攻撃隊の突破口を作り(なお、アメリカ海軍は、かつては攻撃が当たれば瞬時に落ちていたゼロ戦が意外にしぶとく、しかも炸裂弾を放つ機銃が4丁あったことから、『20mm砲を4門積み、防御力を高めたジーク』として、警戒を高めるよう注意喚起している)、レイテ沖でも、紫電改と共にハルゼー艦隊の艦載機に出血を強要するなど、ゼロファイター伝説の掉尾を飾る機体であった。

現在は、宜野湾の『大和ミュージアム』及び、呉の『海軍記念館』等において静態展示されているほか、三菱航空において、1機の動態作業が進められている所である。

868: yukikaze :2017/04/09(日) 01:27:26
投下終了。史実六四型の爆撃能力なくしただけじゃんと言うなかれ。

こいつの特徴は徹頭徹尾『貴重なリリーフとして間に合った』事に尽きる。
どんな兵器でも『必要な時』になければ意味がない。
確かにヘルキャットと比べると見劣りするけど、武装と防御力はこれまでのとは格段に強化され、且つ空戦能力の低下もそこまでないこと考えれば必要最低限の性能は確保している。

まあアメリカ海軍にしてみれば「多少厄介ではあるが、舐めてかからなければ倒せる」扱いでレイテにいったら、こいつと紫電改が襲来し「ちょっとマテ!! きいてねーぞ」という声とともに、ヘルキャットが紫電改に叩き落される羽目になっているから、ある意味腹だたしい機体でもあるだろうけどw

しかし・・・書いてみて思ったのが、戦後夢幻会世界での太平洋戦争って、史実同様、航空機用エンジンに悩まされるなあと。主に必要数量の増加の意味で

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最終更新:2017年04月09日 10:54