970: yukikaze :2017/04/10(月) 18:19:40
とりあえず習作狙いで投下。適宜修正はかけます。

17: yukikaze :2017/04/10(月) 23:19:31
17試高高度要撃戦闘機 烈風改(改正後)

全幅   14.5m
全長   11.0m
全高   4.23m
翼面積 23.50㎡
自重  4,200kg
全備  5,700kg
発動機 三菱『木星』21型(2,200hp)中島『勲』21型(2,400hp)
速度  656km(高度6,500mで『勲』搭載機は672km。高度1万メートルでは、それぞれ602kmと620km)
上昇力 6,000mまで5分50秒(『勲』搭載機は、5分20秒)
航続力 1,200km(正規) 全速30分+1,600km(増槽あり)
武装  九九式二号20mm機銃5型×6(翼内・携行弾数各250発)
    五式30mm機銃×4(計画のみ)
爆装  三式ロケット弾発射器×4(内部には、R4Mロケット弾10発が携帯)


(解説)

日本陸海軍が正式採用した最後の戦闘機である。
軍の度重なる要求の変遷に翻弄された『悲運の戦闘機』として名高いが、終戦直前の3ヵ月間に渡り、帝都及び北九州の防空を司り、日本陸海軍防空部隊の最後の煌めきを放つことに成功している。

よく知られているように、同機体は、当初は零式艦上戦闘機の後継機として計画されていた。
開戦直後の計画と言う点で批判される向きがあるが、主任設計技師の堀越技師が度重なる激務から長期間療養に入っていたことなどを考えると、これを以て海軍側の怠慢というのは酷である。
一部には「中島や川西に開発させておけば、マリアナで疾風や紫電改が間に合ったはず」という意見はあるが、これも14試や15試では、誉エンジンの完成がどうなるか不明な状況であり、しかも中島は、艦上戦闘機の経験が遥か過去であり、川西に至っては、そもそも戦闘機を設計した実績がないということを考えれば、三菱一択であった。

だが、海軍を擁護できるのはこの一点のみであった。
それ以外の遅れについては、これはもう海軍の失態と言ってよかった。
海軍が三菱に提示した要件は以下である。

  • 最高速度   高度6,000mにおいて345ノット(638.9km/h)以上
  • 上昇力    高度6,000mまで6分以内
  • 航続力    全力30分+250ノット(463.0km/h)巡航5.0時間(過荷重)
  • 離陸滑走距離 合成風速12m/s時80m以内(過荷重)
  • 降着速度   67ノット(124.1km/h)
  • 武装     九九式20mm二号機銃2挺、三式13mm機銃2挺
  • その他    零式艦上戦闘機に劣らない空戦性能を確保すること

これだけ見れば、別段おかしい点はなかった。
海軍が欲しているのは『ゼロ戦の高性能化』であることが見て取れるからだ。
だが、海軍側がエンジンと翼面荷重に注文を付けた事で、事態は一気に暗礁に乗り上げることになる。

まず、海軍はエンジンを三菱が求めていたMK9(『木星』エンジン)ではなく、既に正式化された『誉』エンジンにするように求め、軽空母にも離着艦しやすいように、翼面荷重を130kg/m2にして欲しいという要望を出している。
この要望自体も別段おかしい所はない。いつできるかわからないエンジンよりも完成しているエンジンを軸にするのは当然であるし、新鋭戦闘機をどの空母でも使えるようにしたいというのも、用兵側の論理としては間違ってはいない。

問題はただ一つ。海軍の要求を全て聞いていたら『絶対に』完成しないという点であった。

971: yukikaze :2017/04/10(月) 18:20:29
この40年後にも似たような事態が、国防空軍において勃発することになるのだが、三菱側の「これを全て満たそうとしても物理的に無理である」という意見に対して、海軍側は内部での意見調整ができずに結果的に「ゼロ戦でもできたんだから、今回も三菱ならできる」という、責任の押し付けをするという愚行をすることになる。
さしもの堀越も腹に据えかねたのか「我々は打ち出の小槌を持っているのではありません。はっきり申し上げてこの内容で全てを満たすのは不可能です。そんなにできるといわれるのならば、空技廠の方々が作られればよろしい。量産に耐えうる機体を作られるならば」と言ってのけ、空技廠側からの罵声を受けるということになったが、堀越のこの懸念は正しく、これ以降も防弾性能やら何やらを積まされた結果、1944年1月に完成した試作1号機の性能は、操縦性・安定性・視界・離着陸性能はともかく、速度はゼロ戦32型並み、上昇性能に至ってはそれ以下という悲惨なレベルであった。
その結果を見た堀越が「だから言ったんだ」と、海軍側担当者を睨みつけ、海軍側は、予想以下の出来による責任問題を擦り付け合う醜態を見せるなど、もはや見苦しい以外の何物でもない状況になり同機体はもはや完全に暗礁に乗り上げることになる。

こうした事態に完全に呆れかえっていたのが、軍令部次長として辣腕を振るっていた栗田であった。
ソロモンでの負傷から、海上勤務をするのには支障を来していたとはいえ、明敏なる頭脳を持つ彼は、日夜、軍令部に生息している「プライドは高いが、責任能力もなければ想像力もないバカども」をやり過ごしつつ、密かに終戦へのグランドデザインを描くべく奮闘していたのだが、この悪い意味での官僚思考を見て、「ああ・・・やっぱりこいつらじゃダメだ」と、見切りをつけつつ、断を下すことになる。

まず彼は、烈風の艦上戦闘機としての計画を完全に停止した。
前線においては、「いつ来るかわからない新兵器」よりも「確実に届く兵器」が必要なのである。
この時期、F6Fと互角以上に戦える紫電改が完成していることを考えれば、少なくとも烈風に拘る必要性などどこにもなかった。彼はあと1年で戦争を終わらせるつもりであったからだ。

次に、今回の一件で、三菱に責任を負わせていた海軍側の担当者達を閑職に回してのけた。
『自らの無定見さで、戦時において貴重な資源と予算と時間を無駄に費やすとは何事か』という論理の前に、彼らは何も言うことはできず、戦後もこのツケによって、就職等でえらく苦労する羽目になるのだが、それはまた別の話である。

そうしておいて、彼は、三菱に対して、艦載機型を停止する代わりに『高高度要撃戦闘機』として、1945年初旬までに完成できないか打診することになる。
この時の要求としては

  •  エンジンの選定は三菱に一任
  •  短時間の急上昇よりも高高度までの持続上昇を重視し、高度10,000mまで15分
  •  武装は20mm6門乃至は30mm4門。これにロケット弾発射器4基
  •  速度は10,000m付近で600kmを超えること
  •  防弾は強固にすること。少なくとも12.7mmへの対処は必須
  •  運動性については、敵重爆への反復攻撃を主とし、敵戦闘機との格闘戦は、雷電以下で良し

『高高度からくる敵重爆を落とすことだけを考えろ。それ以外はいらん』という、恐ろしく割り切った内容であったが、栗田にしてみれば、マリアナが陥落してB-29が襲来するようになった場合、最悪はB-29と原子爆弾のコンボだけは何としても防ぐ必要はあった。
故に彼としては『高度10,000mでもB-29の安住の地ではない』ことを示す機体が必要だったのである。
三菱にしてみれば『今更勝手なことを』という気分ではあったが、しかし高高度要撃戦闘機ならば艦上戦闘機よりも数は出るということと、海軍の要求は相変わらず高いものの、その分割り切ったものであり、しかも三菱側で選べる余地も多いことから、1944年3月には、海軍側の要望を受け入れ、突貫での作業が開始されることになる。

972: yukikaze :2017/04/10(月) 18:21:00
同機体の最大の特徴が、8.95という高アスペクト比の主翼を採用した事である。
高高度性能(高速での持続上昇・持続旋回)の面を考えた場合、アスペクト比は高い方がよかったことによるのだが、ここら辺は雷電でも取り入れられた手法であり(但し雷電は6.4程度であったが)それをさらに追及したものであった。
無論、細長い翼で高速性能を追求して翼厚比を小さくすると、捩れ強度の確保が難しくなることから、これまた雷電で取られたような、横操縦に抗力板を使い、捩れ強度中心に近い位置に動翼を置くことで、主翼にかかる捩りモーメントを低下させ、捩れ変形による操縦性への影響を抑えている。
もっとも、抗力板は高速時にこそ効果を発揮するものの、低速時には極端に効きが低下する欠点があるため、補助翼と抗力板を併設し、低速時には補助翼のみ動かし、対気速度の上昇とともに抗力板の動きを大きくし、逆に補助翼の作動角は小さくする機構を組み込んでいる。
戦時設計であることを示すように、三菱の設計陣は、可能な限り既存の技術を流用することで、早期の実戦配備を図ったのであった。

ちなみにこの主翼改正に伴い、翼面積は試作1号機の30.86㎡から23.50㎡に大幅に削減されている。
確かに揚力は速度の二乗に比例することを考えれば、翼面荷重が高ければ高速性能を比較的得やすくなる半面、高高度だと揚力の媒体となる空気が少なくなるので、そのぶん翼面積を確保する必要がある点や、翼面積の減少は、機関砲を片翼3門搭載しないといけない関係上、翼内タンクの減少に繋がり、ひいては航続力の減少にもつながることにもなるのだが
そうした懸念に対して、堀越はまるで親の仇を見るかのように翼の図面を見ては、誰もが唖然とする速さで、翼面積を削り取っていった。

その上で彼は、翼面積の削減分の重量を上回るレベルで、機体の構造強化と重装甲を組み込んでいる。
彼が手本としたのは、トラックで撃墜され回収されたF6Fであり、胴体内燃料タンクには、ゴムによる自動防漏式だけでなく、12.7mmに対する装甲板を組み込み、コクピットの全周や胴体付近にある翼内燃料タンクにも、胴体燃料タンクと同じ防御構造を組み込むなど、敵重爆への徹底的なまでの反復攻撃が可能になるよう、機体構造と防御に気を使ったものになっている。

結果的に、試作2号機は1号機と比べて自重は1t近く重くなり、航続距離は大幅に減少し、戦闘機との空対空戦闘能力も悪化することになったが、その反面、急降下制限速度は450ノット(833.4km/h)を軽くクリアし、武装については20mm機銃を6門、3式ロケット弾発射器を4基搭載と当時の日本においても最強の重武装を誇り、なにより「ちっとやそっと撃たれたところで、こいつは落ちない。こいつは空飛ぶ戦車だ」と、『最高の雷電乗り』と言われた赤松貞明中尉が、B-29要撃戦後に絶賛するなど、対重爆用戦闘機として考えれば、充分な能力を有していた。

エンジンについては、三菱の希望通り『木星』21型を積んでいる。
これは、高高度性能を高めた『火星』二六型エンジンに倣って、吸入口と過給器を改良したタイプである。
三菱としては、高高度用エンジンとして、排気タービン乃至は、過給機を二段二速にしたエンジンが最善であると認識していたのだが、現時点での自らの手札にはないことから、それよりはだいぶ落ちるとはいえ、技術的にはハードルの低い方策を採用している。
もっとも、三菱側も同エンジンでは性能がギリギリであることを認めざるを得ず、(三菱にとって実に腹だたしいことに)中島で試験が最終段階に入っている『勲』エンジン(史実ハ44-12)搭載型も並行して設計を行っている。
重量としては、『勲』が数十キロ重く且つ直径も50cmほど大きいことから、単純に搭載した場合、重心や空力の問題が発生するのだが、三菱側には全くと言っていいほど余力がなかったため、この件については、極めて異例ではあったが、空技廠及びエンジン換装の経験を持つ愛知の人員を使うことによって対応している。
まあ愛知にしてみればいい迷惑であったのだが、この時の判断により、東南海地震において打撃を受けた三菱での生産で混乱が発生したのに対し、1945年3月から生産を開始できた烈風改二(『勲』搭載型)が、その穴を埋めた事から、極めて幸運であったと言える。

同機体を最も有名にしたのは『源田の剣』こと三〇二空の活躍である。
前任の小園大佐が、帝都爆撃による一般民衆の犠牲の責任を感じて自殺未遂を行ったことで、その後任として着任した源田実は、持ち前の豪腕を発揮して、部隊の立て直しに奔走。
主力こそ雷電及び雷電改であったが、高高度要撃戦闘機として烈風改二、夜間戦闘機として天雷を配備することに成功させ、アメリカ陸軍が、オペレーションアイスバーグの完全なる失敗を受けて行われた『オペレーションバグハウス』作戦(東京を保有するB-29の全力を以て焼け野原にする計画。空中給油部隊を利用して高高度からの侵入を果たす部隊に気を取られたところを、時間差で低空から侵入する部隊の攻撃で止めを刺すことを企図した)において、高高度の領域がB-29の安住の地ではないことを示し、(烈風改二が高高度から侵入したB-29の集団30機を、ロケット弾の一斉発射と20mm機銃6門で壊滅させた)予想外の事態に慌てた主力部隊60機も、天雷と雷電改の盛大なる歓迎会の前に、東京への侵入も果たせず壊滅させ、事実上これが最後の日本への戦略爆撃となっている。

生産機数こそ、東南海地震等の影響により、烈風改と改二を併せても100機弱という数字で終わったが、終戦間際の派手な戦果(何気に北九州でも鉄壁の守りを果たした)もあいまって、同機体こそ日本陸海軍中最強の戦闘機と呼ぶ声もある名機であった。

973: yukikaze :2017/04/10(月) 18:34:14
投下終了。なにこの日本版Ta152Hという機体。
勿論、オリジナルと比べると、性能的に劣っているんですけど、そこら辺は高馬力でねじ伏せることで、最低限ラインまで抑えています。

武装が多くね? と、思われるかもしれませんが、烈風高高度運用型(A7M3)の武装がまさにこれなんですよねえ。
無論、翼面積がだいぶ減少していますんで、増漕つけての2,200kmも、まあ実際の戦闘では1,700km程度で終わっていそうですが。

源田は普通に三四三空ネタ。
終戦決定ギリギリでの帝都上空の攻防戦って燃えません?
ひゅうが氏。書いてもいいのよ(チラチラ)

まああくまでリハビリ用の習作ですんで、修正かける所あればかけます。

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最終更新:2017年05月04日 12:32