245: ライスイン :2017/05/01(月) 23:00:07
1939年7月1日 イギリス ロンドン


「食べ物と服を寄越せ~」  「ジャップと戦争するより災害復興を」  「無能な政権は退陣しろ~」

津波の影響で荒廃した首都ロンドンの各所では疲れ果てた形相の・・・それでも怒りを抱える市民達が各所でデモを行っていた。
水没したロンドン以南は未だ完全に水が引いておらず、ロンドンも都市機能が完全に回復していない状況で物流の寸断や穀倉地帯の汚染等からくる食糧不足によりロンドンだけでなく本土全体が餓えていた。

「無能な軍の首脳を吊るせ」  「役立たずの軍隊を解体しろ」

この状況で日本に対して勝利しているならまだマシだっただろうが現実は核とミサイルと爆撃で重要拠点を叩かれ、通商破壊で海外領土や同盟国との通商すら寸断されており控えめに言っても国家破綻が現実を帯びており戦争を続けていられる状況ではなかった。

「不味い、このままでは国が崩壊する。日本とは講和は出来んのかっ!!」

厳重に警備されたロンドン北部の臨時政府庁舎でチェンバレン首相が絶叫していた。

「駄目です、先の大戦以降の数々の工作や裏切りで講和は不可能です。スイスで接触した外交官からは反日連合から脱退し無条件降伏するようにとの・・」

「くそっ!!」

講和どころか無条件降伏を要求されたと聞いたチェンバレンは悪態をついた。彼は形ばかりの謝罪と賠償金(それも分割支払い)、そして海外領土の割譲(重要でない地域)を持ちかければ日本は応じると本気で考えていた。そして講和後に他の連合国との講和を仲介すれば国威と国民の士気は向上し謝礼も期待でき国の復興も大幅に進むと本気で考えていたのだ。それは最早追い詰められてが故の妄想でしかなかったが。

「カナダへの脱出は不可能だし支援してくれる国も無い・・、こうなったら提案通り本気で北欧を攻めるしか・・・」

一度は政府・王室をカナダへ脱出させる事も考えたが航路も安全ではなく、経済規模や資源も低く数少ない重要拠点も核攻撃を食らっている為に長期持久は不可能であった。また今現在の国内状況で脱出を選択すれば確実に反乱が起きで国家が崩壊する。其れゆえか最後の手段として反日連合内の欧州諸国で主にドイツやフランスの提案で計画されていたのが農業が非常に発展していて埋蔵資源も多く、工業力もそれなりに高いデンマーク ノルウェー スウェーデンフィンランドなどの北欧諸国への軍事侵攻であった。

 先の世界大戦以前より日本と親密な関係を維持している北欧諸国は数年前より日本と共同で研究開発された疫病や寒冷に強い農作物の栽培に成功し農業生産高を飛躍的に上昇させていて余剰作物は主に欧州諸国へ輸出されていた。大戦勃発後も反日連合との戦争を回避するために日本の黙認の下で輸出を続けていたがここ最近は代金の未払いなどが相次いでいた事(※1)やこれ等の問題について交渉に当った反日連合側の担当官の暴言(※2)および農作物を積んだ輸送船の拿捕未遂事件(※3)等の報復で輸出が完全に停止させられていた。この措置に英仏独などは軍事侵攻も考えたが日本の協力で自国に対抗できるだけの軍備を整えた北欧諸国に対し、戦えば必ず勝つが無視できない損害を被る。しかも農地や工業施設は荒廃して得る物も無く、おまけに友好国を蹂躙された日本の更なる怒りに晒されてアトムの光を追加で配達される。これらが予測された為に軍事侵攻は躊躇されていた。
しかし現状では躊躇していられないほど悪化していた。

「フランスもドイツもイタリアもソ連も状況は悪い。アメリカもあの有様で支援は期待できないしギリシャやバルカンのアホ共も暴走しそうな勢いだ。」

チェンバレンは語る。
フランス帝国ではド・ゴール皇帝の戦争指導に対する反発が強まり共和制復帰を求めるデモが全土(海外含む)で繰り広げられ治安が悪化していた。
これに核攻撃によるインフラ破壊や農地の汚染などによる食糧不足と疫病流行も重なり暴動や内ゲバも発生。状況はまさにバスティーユ監獄半歩手前であった。
 ドイツではヒトラーの強権により暴動などは一切なく、食料もそれなりに供給されていた為に一応は平穏であった。但しその代償として旧ポーランド地域では無慈悲かつ徹底的な収奪と民族浄化が繰り広げられていた。健常者は強制労働に従事させる奴隷か慰安婦にさせられ、そうでない者はソイ○ントシステムばりの缶詰工場に送られて主に奴隷向けやソ連へと輸出される謎肉缶詰となっていた。

246: ライスイン :2017/05/01(月) 23:00:42
イタリアは辛うじて統制を保っていたが元々酷かった地域間対立はさらに高まっていた。またドイツのような過激な政策が採用できず、残された植民地からの収奪も思うようにいかず一部では餓死者も出る有様でバチカンに頼んで連日行っているお祈りも効果が出ていなかったその為ムッソリーニは北欧侵攻とは別にギリシャやバルカン諸国を誘ってトルコ及びマケドニア アルバニアへの侵攻を準備していた。
 中でも特に酷いのがソ連で核の汚染や流通の壊滅に加えて農業政策の失敗や共産党の苛烈な収奪などが重なった結果、餓えや疫病による死者だけでも1000万人を超えていた。さらに状況が一向に改善しないいらだちから極度の不信感の塊と化したスターリンが粛清を乱発(※4)し軍事・政治・党の全てがガタガタ。
さらに状況を悲観した地方党組織や軍部隊の反乱や虐げられた少数民族の蜂起も加わって対日戦争どころではなかった。

「やむを得んか。北欧諸国には一定量の食糧の無償提供を要求、断れば軍事侵攻すると脅しをかけよう。」

チェンバレンは決断し、具体的な内容を決めようと閣僚を呼ぼうとするが突如として大きな足音と共にイーデン外相が入室してきた。

「緊急事態です、フランス帝国でクーデターが発生しド・ゴール皇帝が殺害されました。首謀者と思われるルブラン宰相が大統領に就任し共和制への復帰を宣言。
  同時に反日の聖戦の継続をすると表明していますが併せて国土復興への支援も要求してきています。」

あまりの事態の急変にチェンバレンは思考が追い付かず呆然とするばかりであった。



                          孤立大陸 第30話「欧州の惨状とハワイ沖海戦」



1939年7月8日 01:00 台湾沖  米潜水艦アルゴノート


「薄汚いジャップ共め、神の裁きを受けろっ。」

深夜の台湾沖に浮上したアルゴノートの甲板で残虐そうに艦長が呟いた。彼の指揮するアルゴノートの他に多くの特殊任務を帯びた潜水艦が日本勢力圏内に侵入しようとしていたが大半が強固な哨戒網に発見され撃沈。予定地点に辿り着いた艦はアルゴノートを含めても10隻程度であった。

「艦長、砲撃準備が整いました。」

搭載されている2門の6インチ砲の発射準備を指揮していた副長が報告する。

「宜しい、では特殊砲弾を発射せよ。」

命令に従い毒ガスが充てんされた特殊砲弾が陸地へと吸い込まれていく。

「どんどん撃ち込むんだっ!!くたばれジャップ~。」

ハイテンションになった艦長は更なる砲撃を命じる。
アルゴノートは急報を受けて駆け付けた哨戒機の爆撃で撃沈されるまで砲撃を続けた。
毒ガス砲弾は一部が市街地に着弾し、死者30名以上を発生させる惨事となった。

247: ライスイン :2017/05/01(月) 23:01:14
1939年7月15日  東京 夢幻会会合場所


「ふざけた事をしてくれたな、腐れヤンキー共めぇっ!!」

会合の場では珍しく嶋田が怒りに身を任せて吠えていた。普段なら制止するはずの辻も怒りに震え拳を握りしめている。
アメリカ軍は深夜に浮上した潜水艦からの砲撃だけでなく浸透させたゲリラによる毒ガス攻撃(爆弾や時限式噴霧装置、迫撃砲など)をも日本勢力圏各地で行っていた。
流石に警戒が厳重すぎる本土へは行われなかったが警戒が比較的手薄な海外領土や友好国の日本人居留地が狙われていた。もっともそれですら攻撃を行った部隊の殆どは未帰還であったが・・・。

「まさにヤンキー死すべし慈悲は無い・・・ですね。」

そして辻がブチ切れている理由・・・、それはジャカルタを襲撃した工作部隊が起した女学院襲撃事件であった。
ジャカルタの日本軍物資集積地を狙って行われた米軍工作部隊20名による襲撃は台湾の件を受けて強化されていた警戒網に引っかかって失敗。工作部隊はジャカルタ市街を毒ガスやペスト菌をばら撒きながら逃走した挙句に郊外の聖アストライア女学院ジャカルタ分校に逃げ立て篭もった。最終的には特殊部隊が突入して工作員たちを排除したが工作員が射殺される寸前に所持していた最後の毒ガス容器を割ってガスが拡散。200人以上の女学院生徒が犠牲になるという痛ましい事件であった(※5)。

「奴らの狙いは何なのだろう?」

会合メンバーの一人が呟いた。

「恐らくだが・・・我々に戦争を続ける価値を失わせるのが目的だろうな。」

総研の分析結果を見ながら近衛が言った。

「そうしておいて自分達からある程度の賠償金や領土割譲を前提とした講和を持ちかけるか・・・、ふざけるなっ!!」

参加者達はアメリカのあまりの身勝手さに憤った。

「ならば奴らの希望を尽く断ってあげましょうか。丁度真珠湾には太平洋艦隊主力を始めとした艦隊が居るようですしね。」

こうして会合はアメリカ側の希望を打ち砕くべく真珠湾攻撃作戦に取り掛かった。



 1939年10月12日 ハワイ西方海域 アメリカ太平洋艦隊  旗艦モンタナ

「ジャップ共め、我々がやられているばかりでは無い事を教えてやる。」

ノースダコタの艦橋で太平洋艦隊司令長官のキング大将が吠えていた。今回出撃したのは太平洋艦隊…実質アメリカ海軍のほぼ全力といった陣容であり主力だけでも

○戦艦

 モンタナ級2隻、ノースダコタ級2隻、サウスダコタ級(Dプラン)5隻、コロラド級4隻 テネシー級2隻、ニューメキシコ級3隻

 ペンシルベニア級戦艦2隻、レキシントン級巡戦12隻

 ○空母  エセックス級4隻、ヨークタウン級3隻、レンジャー、ワスプ     

という編成で空母に搭載されている艦載機もF6Fヘルキャット・F4Uコルセア・TBFアベンジャー・SB2Cヘルダイバーという最新鋭機で統一されていた(※6)。

「そして海軍初のジェット戦闘機部隊も用意してある。これでジャップのジェット機を叩き落してやる。」

空母エセックスに先行量産型60機が搭載してあるアメリカ軍初のジェット戦闘機F-10Aフリーダムも彼に自信を与える材料となっていた。

「敵艦隊との距離が300㎞を超えました。」

「よし、攻撃隊発艦。ジャップ艦隊を海の藻屑と化してやれ」

自信満々のキングの命令に応えるように短時間で空中集合し日本艦隊へと向かう攻撃隊およそ250機。大半の将兵はこれで片が付くと思い込んでいたが一部の参謀は

「なぜこれほどまで接近したのに日本艦隊からの攻撃が無いんだ?」

と疑問に思っていた。その疑問は数時間後に晴れる事になる。

248: ライスイン :2017/05/01(月) 23:01:48
数時間後  日本海軍ハワイ攻略艦隊 旗艦 隼鷹


「電探に反応有り、米軍攻撃隊接近。距離凡そ100㎞です。」

「よろしい、長距離対空誘導弾撃ち方始めぇっ!!」

電探手からの報告を聞き司令長官である塩沢幸一大将は93式長距離艦対空誘導弾の発射命令を下す。
大出力のレーダーによる正確な誘導の元、次々に発射された50発近い誘導弾が敵編隊に向かっていく。動作不良などで10発が脱落したがそれでも40発が命中し直撃や近距離爆発で60機前後を撃墜させた。

「続いて防空戦闘機隊が向かいます。」

予め発艦し上空待機していた雷風や陣風が空対空誘導弾を抱えて生き残った米攻撃隊に向かい、誘導弾や多銃身機銃で次々と撃墜していく。
一部のフリーダムで構成された部隊が辛うじて射程内に接近しロケット弾攻撃を行ったが命中せず、これより20分後には米攻撃隊の姿は完全に空から消滅した。

「攻撃隊を発進させろ、併せて打撃艦隊も前進を開始。敵艦隊を叩けっ!!」

続いて攻撃隊発進と打撃艦隊の全身命令が下される。今回のハワイ攻略艦隊の編成は

○機動艦隊(本隊) 艦隊司令:塩沢大将(兼任)

隼鷹型空母:隼鷹 飛鷹 大鷹 海鷹

翔鶴型空母:翔鶴 瑞鶴  (アングルドデッキ化など近代化改修済み)

雲龍型空母:雲龍 海龍

金剛型防空戦艦:金剛 榛名

関ヶ原型防空巡洋艦:関ヶ原 三方ヶ原 鳥羽伏見 壇ノ浦

阿賀野型巡洋艦:阿賀野 能代 矢作 酒匂 大淀 仁淀

白露型駆逐艦×4 神風型駆逐艦×12 峰風型駆逐艦×10


○打撃艦隊  艦隊司令:古賀峯一中将

大和型戦艦:大和 武蔵 信濃 甲斐

近江型戦艦:近江 筑前 (近代化改修済み)

播磨型戦艦:播磨 三河 (近代化改修済み)

雲龍型空母:嵐龍 雷龍 

大井型重誘導弾巡洋艦:大井 北上

香取型巡洋艦:香取 鹿島 香椎 橿原

阿賀野型巡洋艦:春日 日進

初春型駆逐艦(改暁型)×6 神風型駆逐艦×4 峰風型駆逐艦×10


○原子力艦隊 艦隊司令:南雲忠一中将

大鳳型原子力空母:大鳳 白鳳

天龍型原子力防空巡洋艦:天龍 龍田 夕張 名張

鞍馬型超甲種巡洋艦:鞍馬 伊吹

阿賀野型巡洋艦:浅間 常盤 吉野 高砂

白露型駆逐艦×4 神風型駆逐艦×8

でこれらの正面戦力に加え、後方には厳重に防護された補給艦や工作艦からなる支援艦隊に加え、周辺には多数の潜水艦も潜んでいた。
そんな中、一つの電文が舞い込んだ。

「長官、本土より入電。”ペ○カン便は荷物を届けた”との事です。」

「宜しい、これで奴らの帰る家は無くなったな。」

249: ライスイン :2017/05/01(月) 23:03:01
重爆部隊によるハワイへの爆撃成功電を聞いた塩沢大将は上機嫌になった。だがそれもすぐに変化した。

「駆逐艦白露より緊急連絡。着弾した敵ロケット弾より毒ガスの発生を確認、艦橋要員全滅・・・との事です。」

「おのれっ!!真面な手段では対抗できぬからと毒ガスに頼ったか。」

塩沢大将を始め艦橋要員全員が怒りを募らせる。白露は自身に向けて放たれた多数のロケット弾を回避していたがうち一発が偶然にも艦橋に着弾。
発生した毒ガスに艦長以下艦橋要員が全滅。現在は偶々ダメコンの指揮で艦橋を離れていた副長が指揮と操艦を行っている状況であった。

「近藤中将に打電しろ、情け容赦なく腐れ外道共を全滅させろとな。」



 約1時間後 ハワイ西方海域 アメリカ太平洋艦隊  旗艦ノースダコタ


「馬鹿な・・・攻撃隊が全滅・・・ハワイ基地も壊滅だと・・・。真珠湾にはフリーダムの予備に加えてロケット戦闘機も居たはずだぞ。」

憔悴しきった様相のキング大将が絶叫した。期待を込めて送り出した攻撃隊は駆逐艦1隻を撃破した事と引き換えに全滅。真珠湾軍港を始めとしたハワイ諸島の主要軍事施設も富嶽や斑鳩といった戦略爆撃機や通常型弾道弾及び在庫一掃セールとばかりに旧式化した潜水艦用飛行爆弾などを使用した猛爆撃により大打撃を受けていた。特に衝撃的だったのは真珠湾の重油タンク群が爆撃により全て失われた事とハワイ島の弾薬貯蔵施設の壊滅及びオアフ島市街地に現地陸軍司令官ショート中将にすら知らぬうちに設置されていた毒ガス貯蔵施設が流れ弾により破損し漏れ出した毒ガスにより市民や兵士が5000人以上死亡した事であった(※7)。またキングが期待したアメリカ初のロケット戦闘機F-09Aジャスティスであるが編隊援護機仕様の斑鳩によって接近する前に多数が撃墜されていた(戦果は体当たりによって富嶽を1機撃墜)。

「防空戦闘機が全滅しましたっ!!」  「護衛艦艇が集中的に叩かれています。」  「ロケット弾多数飛来。」 「後方の空母が日本軍別動隊の空襲で壊滅」


キングが絶叫している間も日本軍攻撃隊の空襲は続く。彼らは駆逐艦や巡洋艦など護衛艦艇を集中的に叩き艦隊を丸裸にしてった。そして打撃艦隊所属の各艦が射程距離に入り次第対艦誘導弾を次々と放っていく(大井型も大事を取って96式と同距離で99式を発射)。

「撃てっ!!撃ち落とせぇぇぇぇっ!!」

キングが狂ったように絶叫する。この時点で後方に下げた空母は日本軍別動隊(原子力艦隊)の攻撃により壊滅。護衛艦艇も大半が損傷を受けるか沈むかしていて無傷は主力の戦艦のみという状況だった。そして突如として轟音が響き渡る。

「レ・・・レキシントンにロケット弾が命中、轟沈します。」  「サラトガ爆沈っ」  「サウスダコタ大傾斜・・・沈没します。」

大井・北上が放った99式重対艦誘導弾24発が途中で5発が脱落したが次々と飛来し命中していく。96式も戦艦に対しては威力不足ながら多くが命中し損害を与えていく。
これら誘導弾攻撃の結果ノースダコタ級のユタとサウスダコタ級のサウスダコタ及びレキシントンとサラトガを含むレキシントン級6隻が沈没。
他にレキシントン級4隻が大破した(レキシントン級は艦隊前衛に配置されていた為、多くが命中。装甲も薄い為、大被害を出した)。
そして遂に砲戦が展開される時がやってきた。


 約30分後 日本海軍ハワイ攻略艦隊・打撃艦隊


「敵艦隊が射程内に入りました。」

「砲戦用意」

敵艦隊が射程距離内に入った事で司令官の古賀中将は砲撃の準備を命じる。全員が夢にまで見た艦隊決戦に心を躍らせるが古賀中将自身は特にその気が強かった。

250: ライスイン :2017/05/01(月) 23:03:38
「目標・・・敵艦隊先頭のモンタナ級、撃てぇ!!」

古賀中将の命令の元、大和を始めとした各艦が一斉に砲撃を開始する。異常な練度と電探による照準、そして空襲と誘導弾攻撃で米艦隊が疲弊していた事もあって初弾にも関わらず多くの命中弾が発生した。

「モンタナ級に命中弾・・・炎上しています。」  「コロラド級1隻爆沈します。」

米艦隊に多数の損害が発生し中には爆沈する艦も出ていた。だが当然無傷でいられる筈も無く、米艦隊も反撃を開始し打撃艦隊にも損害が発生する事となった。

「播磨に命中弾2、足が止まりますっ!!」

米艦隊の放った45.7㎝砲弾と40.6㎝砲弾が播磨に命中、内45.7㎝砲弾は装甲の薄い部分を貫通して艦内に飛び込んで爆発した。そして砲弾は通常の物ではなかった。

「播磨より緊急入電、敵砲弾は毒ガス砲弾なり。我戦闘不能、損害の回復に努める・・・との事です。」

この報告に司令部は唖然とした。本隊への空襲で米軍が毒ガスロケットを使用し被害が出た事は報告されていたがまさか砲弾にまで毒ガスを使用しているとは考えてもいなかったのであった。それと同時に嘗て友好関係にあり交流も深かった米海軍の堕落っぷりに皆が怒りを募らせた。

「後方の雲龍と海龍に戦闘機を爆装させて敵艦隊を攻撃させろ。本隊にも支援要請、同時に潜水艦隊にも攻撃する様に打電しろ。」

必要な指示を出し終えた古賀中将は米艦隊の方を見詰めそっと目を閉じた。

「(俺の願ってやまなかった艦隊決戦を汚した報いを受けろっ!!)」

心の中で米海軍を罵ると古賀は目を開ける。

「砲撃を続けろ、奴らを全員神の元へ送ってやれっ」

古賀は力強く命じた。
この後、本隊の支援を受けての空襲と後方に回り込んだ潜水艦からの雷撃も加えて空海(海中)立体攻撃を敢行。凡そ1時間後に米艦隊は文字通り全滅。
生存者は全体で1000人にも満たなかった(日本軍の攻撃の激しさと共に搭載していた毒ガス砲弾が砲撃で破壊され毒ガスが漏れた事にもよる)。
同時に日本側の被害だが戦艦播磨が中破・近江と甲斐が小破しただけで沈没した艦は無かったが毒ガス砲弾の着弾により艦隊全体で1000人を超える
死者が発生していた(※8)。

 開戦に勝利した日本軍は翌日にハワイ諸島に対する上陸作戦を敢行。通商破壊による物資不足に加えて爆撃による軍事施設の壊滅や毒ガス漏洩で軍民併せて多数の死者が出た事による深刻な士気の低下及びそれによる軍と市民の対立など政情不安定な状況で抗戦は不可能と判断。
ハワイ準州知事と陸軍司令官ショート中将が連名で降伏を行い上陸当日にハワイ諸島は日本軍の手に渡ったのだった。


 1939年10月15日 ユタ州ソルトレークシティ  臨時ホワイトハウス


「馬鹿な・・・負けただと・・・・。」

「艦隊は全滅、ハワイ諸島は占領されました。また漏れ出した毒ガスによる被害が拡大した事で深刻な士気低下も発生しております。」

ロング大統領は補佐官からの報告に愕然としていた。合衆国の威信と期待を込めて送り出した艦隊と新兵器は壊滅しハワイ諸島は占領された。
また司令官にすら存在を知らせずに貯蔵された毒ガスが漏れた被害で多数の損害を出した陸軍や毒ガス砲弾の誘爆で多数の乗員が死傷した海軍では深刻な士気低下と共に毒ガスの取り扱いを拒否する司令官や艦長が続出。また開戦前に行われた非道な作戦の数々やハワイの惨状がマスコミや議会に漏れた結果、全米各地で猛烈な反政府デモが発生。またロングに懐柔・脅迫されている議員の多くもロング弾劾へと動き出していた。
この事態にどう巻き返しを図ろうか必死に考えていたロングだが更なる悲報が舞い込んだ。

”ドイツ軍、東欧諸国と共にソ連へ侵攻”

”イタリアとギリシャがトルコ・マケドニア・アルバニアへ侵攻”

”フランスにて共和政府とドゴール派による内戦勃発”

”イギリス領インドにて超巨大サイクロンが発生、同時に疫病の流行と反英運動が激化”

251: ライスイン :2017/05/01(月) 23:04:39
※1:信用のある外貨と対価に出来る品目の不足が原因。

※2:白人国家なのだから我々に協力して当然といった傲慢かつ上から目線での言葉が相次いで発せられていた。

※3:大半は点数稼ぎの現場の暴走だったが極一部で餓える自国民を助ける為にやむを得なく行った者も居た。

※4:実務に精通していた中堅層や経験豊富な現場の指揮官の多くが粛清された。これにより唯でさえ非効率だった行政機能・軍事力が壊滅的に低下した。

※5:女学院に立て篭もった米工作員グループは日本軍・警察の突入を人間の盾を設置することで防ぎ、その間に校内各所に残りの毒ガスや細菌を設置。
 そして憂さ晴らしをするかのごとく女学生や女教師を”ロマンス”していった。このおかげで最終的には突入して工作員全員を射殺したが漏れた毒ガスや米工作員の強引な”ロマンス”によって女学生に200人を超える死者と多くの”ロマンス被害者”が発生していた。

※6:これ等の内、現在も生産継続できているのはヘルキャットのみで残りは核攻撃以前に生産され工場壊滅などで再生産不可能。

※7:毒ガス貯蔵施設を整備していたのは参謀本部から極秘命令を受けていた第666工兵大隊(防備、通常の工兵部隊扱いで増派。ショート司令官にも知らされていない極秘行動だった為、漏洩時は陸軍による効果的な救援活動が出来ず、更に同大隊が被害状況を無視して無事な毒ガスの搬出や施設復旧を行おうとした為、激怒した住民や保安官等との銃撃戦に発展。通報によって事態を知ったショート司令官の命令で同大隊の残存人員はテロ及び反乱の現行犯で制圧拘束の上、軍刑務所に投獄された。

※8:念の為、歓喜能力の強化と防護服の配置及び生物化学兵器への対処方法を全将兵に教育していた為、この程度の被害で収まっていた。
(何の対策も取っていなければ被害は万を上回っていたと後に算出された)。


○おまけ   日本海軍新型艦艇 及び 米軍新兵器


○初春型駆逐艦(改暁型)

 4600t 15.5㎝60口径単装速射砲改2型×1 93式短距離艦対空誘導弾発射機×1 96式艦対艦誘導弾4連装発射機×2 20㎜近接防御機銃×4 324㎜3連装対潜魚雷発射管×2 速力:33kt

 暁型の発展型となる駆逐艦で軽量化された15.5㎝速射砲と短SAMを搭載した重武装型。


○白露型駆逐艦

 4800t 12.7㎝54口径単装速射砲×2 93式短距離艦対空誘導弾発射機×2 20㎜近接防御機銃×4 324㎜3連装対潜魚雷発射管×2 速力:33kt

 暁型の設計を流用して建造された大型防空駆逐艦。命中精度と発射速度を向上させた新型の速射砲と短SAM発射機を2基搭載したのが特徴。
 現時点では建造数が少なく機動部隊にのみ配備されている。


○神風型駆逐艦

 3400t 12.7㎝54口径連装速射砲×2 57㎜速射砲×2 96式艦対艦誘導弾4連装発射機×1 20㎜近接防御機銃×4 324㎜3連装対潜魚雷発射管×2 速力:35kt

 艦隊の主力を担う汎用駆逐艦。主要な武装がユニット化されていて対空・対艦・対潜全ての任務に対応可能。

252: ライスイン :2017/05/01(月) 23:05:16
○峰風型駆逐艦

 2900t 12.7㎝54口径連装速射砲×2 8連装噴進魚雷発射機×2 20㎜近接防御機銃×4 324㎜3連装対潜魚雷発射管×2 速力:34kt

 対潜に特化した駆逐艦で開発されたばかりの8連装噴進魚雷発射機(アスロック)を装備している。


○阿賀野型巡洋艦

 6700t  15.5㎝60口径単装速射砲改2型×2 92式改中距離艦対空誘導弾連装発射機×2(RIM-2D相当) 96式艦対艦誘導弾4連装発射機×2

      20㎜近接防御機銃×4 324㎜3連装対潜魚雷発射管×2 速力:33kt

 戦後を見据えて建造された汎用巡洋艦。夢幻会の意向で開発中の誘導弾垂直発射管(実用化はかなり先)を僅かな改修で搭載できるように最初から設計されている。

同型艦:阿賀野 能代 矢作 酒匂 大淀 仁淀 春日 日進 浅間 常盤 吉野 高砂・・・・・


○香取型巡洋艦 

 17000t  20.3㎝60口径3連装砲×3 12.7㎝54口径連装速射砲×6 57㎜速射砲×2 20㎜近接防御機銃×6 324㎜3連装対潜魚雷発射管×2  32.5kt

日本帝国海軍最後の最後となる純砲戦型巡洋艦。1分間に最大12発発射可能な長砲身の20.3㎝砲とそれに耐えうる巡洋艦としては最高レベルの重装甲を備える。
指揮通信能力や拡張性も高く、戦後は外洋艦隊の旗艦や練習艦として運用される予定。

同型艦:香取 鹿島 香椎 橿原


○大井型重誘導弾巡洋艦

 17600t 15.5㎝60口径単装速射砲改2型×1 99式重対艦誘導弾連装発射機×12 20㎜近接防御機銃×8 324㎜3連装対潜魚雷発射管×2  32kt

 建造途中でキャンセルされた香取型の5・6番艦の船体を流用して建造された対艦誘導弾運用に特化した巡洋艦。開発されたばかりの射程250㎞の99式重対艦誘導弾をスラヴァ級の様に艦橋を挟んで両舷に搭載。誘導の為の大出力レーダーを搭載している為に自衛火力は低いが運用次第では小規模の艦隊なら単独で殲滅可能。

同型艦:大井 北上   「12射線の重対艦誘導弾、2回行きますよ~」


○雲龍型空母  40000t  57㎜速射砲×6  20㎜近接防御機銃×8   搭載機:50~60機

 対米戦や各外洋艦隊の空母を更新する目的で多数の建造された新型の空母。翔鶴型の設計を元に、若干小型・簡素化し武装も必要最小限に抑えられているが最初からアングルドデッキやカタパルトなどが装備され居るなど性能は高い。大型空母が充実した後は強襲揚陸艦などに改装された。

同型艦:雲龍 海龍 嵐龍 雷龍・・・・


○99式重対艦誘導弾  弾頭重量:800㎏  動力:固体ロケット+ラムジェット  飛翔速度:M2.0  最大射程:250㎞

 1939年初頭に完成したばかりの大型の艦対艦誘導弾。従来のロケットに加え完成したばかりのラムジェットエンジンを搭載した結果、戦艦の装甲を貫くために大量の高性能爆薬を搭載したにもかかわらず飛翔速度は音速の2倍に達した。ただし大重量に加えて誘導には大出力のレーダーが必要な為、運用できる艦は大井型に限られている(他艦には搭載できないわけでもないが大規模改装が必要)。

253: ライスイン :2017/05/01(月) 23:06:37
○グラマン F-10Aフリーダム GE-J-01ターボジェットエンジン:750㎏×2  最大速度:742㎞/h 航続距離:800㎞

 12.7㎜機銃×6 R4M空対空ロケット×12(6発ラック2基) 5インチ対地/対艦毒ガスロケット弾「モンキースレイヤー」  最大搭載量:500㎏

 希少資源の輸出や一部市場開放と引き換えにドイツから供与されたジェット・ロケット技術を元に1938年末から開発が始まったジェット戦闘機の一種でアメリカ初の実用ジェット戦闘機。
Me262の設計が流用され早期完成及び空母運用の為に若干小型・簡素化された。所謂アメリカ版「橘花」。 生産場所が日本との戦争を想定して中部に建設された地下工業地帯であった為、核による攻撃を辛うじて免れることが出来、生産は現在も続いているが資材不足で大幅に遅延。ハワイ沖海戦直前には再産された大半が空母エセックスに配備されていた。後述のジャスティスと共にアメリカの「自由」と「正義」を守る戦闘機として大々的に宣伝されている。


○ベル F-09Aジャスティス GE-J-02ロケットエンジン:1700㎏  最大速度:900㎞/h 37㎜機関砲×2 R4M空対空ロケット×12 航続時間:約8分

 アメリカ初の実用ロケット戦闘機でドイツで生産中止となったMe163の実機ごと製造権を譲渡され、若干の手直しの後に生産された。日本の爆撃機への対策の為に武装を30㎜から37㎜機関砲に変更し、空対空ロケット弾を搭載。重量増加と技術的な問題で速度が低下している。航続距離が短く危険な燃料を使用するなど問題も多いが生産が容易で充分な対空武装と速度を持つことが好まれてハワイ沖海戦直前の時点で200近くが完成し、半数がハワイに配備され残りが臨時首都など重要拠点に分散配備されている。
上記のフリーダムと共にアメリカの「自由」と「正義」を守る戦闘機として大々的に宣伝されている。


○5インチ対地/対艦毒ガスロケット弾「モンキースレイヤー」  飛翔速度:900㎞/h  射程距離:1.8㎞  弾頭:榴弾+毒ガス

 配備中の5インチFFARを元に開発された対地/対艦用の毒ガスロケット弾で対空火器の射程外から確実に人員を殺傷する事が狙い。
愛称のモンキースレイヤーは黄色猿(日本人)を狩るという願い(と人種差別観)が込められている。イメージとしてはディ○ギルのハ○パー放射ミサイル。


 いかがでしょうか?
かなり期間が開いてしまいましたがやっと30話を投稿できました。
今回は展開が急すぎた事や米国の極悪非道ぶりが加速していましたがこのSSの設定上、そうさせて頂きました。
それと前々から言われてきた事ですが日本軍の兵器を強化し過ぎたでしょうか?それと戦闘描写が上手くなくて申し訳ありません。

 次回は崩壊する反日連合の惨状と米国(ロング)の更なる狂気っぷりを書く予定です。


~予告~

 太平洋艦隊は壊滅しハワイは日本軍の手に落ちた。同時に反日連合は加盟国同士で内ゲバを行い空中分解。
頼るべき味方を失い真面な手段では日本軍に対抗するのは不可能であると確信した米国は更なる狂気に陥って行く。

         次回”反日連合の崩壊と終局への準備”

掲載お願いします。

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最終更新:2017年05月04日 20:05